一日署長
大倉崇裕(著)
/光文社
作品情報
警察学校を首席卒業の五十嵐いずみに課せられた仕事は、なぜか警視庁の一室での資料整理。地味な作業に彼女はふて腐れてばかり。しかしある日、パソコンの画面が発する光に包まれたいずみは、自分が1985年の署長室にいて、署長の身体に憑依していることに気づく。折しも署では、資料で目にしたばかりの未解決事件捜査の真っ最中。狼狽えている間もなく、いずみは思いがけず、“一日署長”として、現場の最前線に赴くことに!
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商品情報
- シリーズ
- 一日署長
- 著者
- 大倉崇裕
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 光文社
- 書籍発売日
- 2023.06.30
- Reader Store発売日
- 2023.06.21
- ファイルサイズ
- 0.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.2 (15件のレビュー)
-
警視庁資料編纂室に配属された新人女性警察官が、時を遡り過去の迷宮入り事件を解決するSFミステリー連作短編集。
◇
看護師から警視庁の警察官へと華麗な転身を図った……はずだった。…
警察学校を首席で卒業。本庁勤務ということで希望に溢れ登庁した五十嵐いずみに下された辞令は、資料編纂室勤務。その資料編纂室は庁舎地下にあり、窓1つない暗い部屋である。
そこでいずみを迎えた西脇敬三という初老の巡査部長は、簡単に引き継ぎを済ますと職場を去っていった。つまり資料編纂室の定員は1人だけなのだ。
仕事は過去の捜査資料をひたすら PC 入力するという事務作業で、まるで窓際業務のよう。こんな職場なら辞めてやると毒づきつついずみが資料の入力をしていると、突然パソコンの画面から放たれた眩い光がいずみの身体を包んでいき……。
(第1話「一九八五」) 全5話。
* * * * *
大倉さんの作品というだけで予備知識なしで手に取りました。イベントで1日署長体験をした女性の話かなと思ったら、まったく違っていました。
新米女性警察官が着任早々、警視庁内でも(恐らく)上層部しか知らない特殊任務を拝命します。
その任務とは、過去の未解決事件が発生した時点までタイムリープして捜査を解決に導くというものでした。ただし、ここからが大倉さんらしいこだわり設定。
まず、五十嵐いずみが身体ごと事件現場に跳ぶわけではなく、いずみの意識だけがタイムリープして当時の捜査関係者に憑依するという点。つまり、いずみは慣れない他人の肉体で動かないといけないということなのです。これだけでも大変です。
次に、憑依相手は捜査官ではなく、なんと所轄署署長であるという点。
当時の署長は全て男。狭い世界ですが、体育会系のお山の大将で、パワハラ・セクハラはザラ。しかも定年が近いヒヒオヤジなので加齢臭も気になる老醜の極み。
20代のいずみには酷な憑依で、気の毒な限りです。(でも笑えます。)
さらに酷なのが、とにかく条件的な動きづらさがあるという点。
署長はキンキラキンの飾りがついた大仰な制服姿。町では目立つことこの上ない。おまけに肥満体であったり生活習慣病持ちであったりします。捜査を迅速に進めようとしても動けないのです。
なのに、いずみに与えられた制限時間は「1日」だけであるという点。
普通ならギブアップして辞表を出すと思うのですが、いずみは違いました。
なぜか。それは、いずみのキャラ設定にあります。いずみはこんな女性です。
①優秀
警察学校首席。法令や規則などの座学や逮捕術などの実習はもちろん、運動や武道もそつなくこなせるということでしょう。
②負けず嫌い
どんなことでも、やる限りはきっちりやってみせようと頑張り、投げ出さない。
③正義感が強い
捜査資料を入力しつつ未解決事件には批判的で、仕方ないで済ますのを許さない。
④元看護師
医師や患者と意思疎通を密にし、必要とあらば丁々発止のやり取りをしてきたはずで、舞台度胸もコミュ力も持ち合わせています。また、出血や傷痕を見ることに耐性があり、遺体を前にしても平静を保てるでしょう。
かくして、いずみは1日署長を立派に務め上げるのです。
事件が迷宮入りになる分岐点を見出したいずみが、捜査をコントロールして解決に導くさまは痛快そのもの。
また、それまで署内で嫌われ者だった署長ですが、憑依したいずみがうまく立ち回って事件解決のお膳立てをしたことで、署員から見直されるというおまけも楽しい。(本人にはいずみが憑依していたときの記憶はないので、その整合性をどうするかまでは描かれていません。でも気にならないほどのエンタメ性の高さです。)
シリーズ化して欲しい作品でした。続きを読む投稿日:2024.03.28
このレビューはネタバレを含みます
軽い気持ちで楽しめるエンタメ小説。署長にしかなれないという面白さと、署長という肩書きの便利さがこの小説のキモ。生まれてもいない時代に遡ってしまうのが面白いなあ。
レビューの続きを読む投稿日:2024.05.07
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