バツ3の看取り夫人と呼ばれていますので捨て置いてくださいませ【電子特典付き】
夢見るライオン(著者)
,セカイメグル(イラスト)
/ビーズログ文庫
作品情報
借金返済のため、若くして余命わずかな高齢貴族のもとへ嫁がされた男爵令嬢クロネリア。社交界では『看取り夫人』と呼ばれ、もう幸せな結婚は諦めていた。だが3人目の夫を看取るために訪れた公爵家で美貌の令息イリスと出会い!?陰ながら支えてくれ「ずっとここに居て欲しい」と言う彼に、クロネリアはようやく居場所を見つけることができて・・・・・・?【電子限定!】ここでしか読めない!書き下ろしSS「謎の看取り夫人ブーム」を収録!
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
クロネリアの洞察力というか人間観察力の凄さが光る。
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あと圧倒的包容力。
余命の短い、それでいて性格難ありなご年配の方に無理矢理結婚させられながらも、彼らの不安を理解し、何だったら改心させ、未練なく満足しきった状況で旅立たせる。
聖母か、彼女は。
これらの観察力や包容力が、実家で母と共に虐げられ、心を壊した母と過ごしたから身についた技量だというのには涙を禁じ得ないが。
あと、どこまでも自分の幸せに関しては諦めきっているところも。
他人のことばかり慮って、自分自身のことには無頓着。
まだ18歳の少女なのに、悟りきっているのが辛い。
2人のご年配を看取り、すっかり「看取り夫人」という渾名が定着してしまったクロネリアの3人目のお相手は妻に先立たれてすっかり気力を亡くし、弱り切ってしまった公爵。
この公爵には2人の息子が。
家族間もすれ違いからこんがらがっているところに、金にがめつい実家の父の評判と独り歩きした噂のせいもあって、クロネリアは最初全く歓迎されなかった。
ここでもいじめに遭うんかいという。
特に弟アークからの嫌われっぷりは凄かった。
まあクロネリアの観察力をもってすれば、そんな彼の本心もお見通しだったので、寧ろ可愛らしく思っていたようだが。
変な意味で逞しいのだ、彼女。
公爵自身には身の上話をする前から受け入れられていたので、そこはまだ救いか。
あと、案外兄のイリスが容易に転がってくれたので。
自覚は遅かったけれども。
自分のことは完全に棚上げで献身的に尽くす、しかも拗れていた家族の絆も取り持つクロネリアに、公爵家の皆も絆されていく。
終盤近くまでは、公爵一家の家族再生物語として読んだ。
だから最終盤で、遺言状開示からイリスのプロポーズの展開にはちょっと驚いた。
イリスの恋心自覚シーンはあったけれども、クロネリアには恋心の明確な自覚シーンが確かなかったので。
彼女は看取り夫人として相手を看取ったあとは、また実家に戻り、そして次の看取り先へ嫁ぐのがルーティーンとなっていたので、公爵家に留まる選択肢は彼女の中に存在していなかったし(つまり公爵様は……察してください)
実家に虐げられている母を残しているという足枷もあるため、実家の命令は絶対。
彼女に選択の余地はなかった。
そこをうまく外堀埋めたのがイリスだった。
流石、有能だけはある。
ただ家族としてイリスもアークも同じように大事に思っていたクロネリアに、あの場でイリスを選択した決定的理由・積極的理由があったのかなと思うと少し疑問。
年齢差だけでいうなら、アークよりは確かにお似合いなのだが。
先述の彼女の恋愛描写が希薄というのもあるし、彼女を実家の呪縛から解き放つためには、実家から籍を抜き当分看取る必要のない相手に嫁ぐ戦法はかなり有効。
つまり、看取りループからの脱却のための結婚とも取れてしまう。
クロネリアの性格上、そんな打算で動く子ではないんだけれども。
でも、この方法は作中でもクロネリアが「イリス様自身が犠牲になる必要はない」と指摘していたし。
ここでクロネリア自身から「私もイリス様のことが好きだから結婚をお受けします」の言葉が出てこない。
決定打になったのは「実家に残してきた母と一緒に暮らせばいい」だったし。
足枷の除去。
もう実家に脅かされることなく暮らせる居場所の確保。
プロポーズを受けた理由が、以上のことによる安堵からだったのではと思って、ちょっと首を傾げた。
イリスへの恋心、あの場でありましたかという。
どちらかというと、イリスに対する思いも家族愛の延長だったようでもあったし。
まあ、そういう結婚があってもいいとは思うが。
最後はアネモネの花言葉を持って彼に応えていたので、それはそれでよしだったのだが、もう少し彼女の恋愛に対しての描写があってもよかったのになあ。
いや、あの諦念状態で生きてきた彼女に、それを求めるのは酷なのかもしれない。投稿日:2023.05.21
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