川のほとりに立つ者は
寺地はるな(著)
/双葉社
作品情報
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
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この作品のレビュー
平均 3.8 (558件のレビュー)
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『川のほとりに立つ者は』、この後に続く言葉は何だろう。そう考えながら作品を読み始めた。タイトルにつながる展開は、すぐには訪れなかった。そのことが、読み進める興味にもなっていった。物語の構成はchapt…er1から9までの内容に分かれていて、月日が前後するものもありながら、全体としては時系列に出来事が起こり、それぞれの物語が展開されていった。主な登場人物は、29歳の原田清瀬と松木圭太で、2人は一緒に暮らしていた。
冒頭に『夜の底の川』というタイトルの作品の内容が出てくる。この『夜の底の川』は物語のタイトル『川のほとりに立つ者は』とつながっていく。そして、物語の展開に合わせて、『夜の底の川』の意味も明らかになっていく。
清瀬はカフェ「クロシェット」の店長として働いていた。そのような中、突然、病院から連絡が入る。松木が歩道橋から階段を転げ落ち、意識不明の重体という内容。混乱する清瀬。この状況に、清瀬と同様に私も混乱しながら、この作品の展開が気になって読み進めていく。松木の事故の原因となったことは、なかなか明らかにはならなかった。
松木と一緒に倒れていたのは、岩井樹だった。松木とは同じ小中学校で、同級生。大人になって、月1回食事をする関係としてつながっていた。しかし、なかなか転落の真相は明らかにならず、知りたい気持ちが膨らんでいた。
樹と付き合っているという菅井天音。清瀬と松木、樹と天音の背景と関係が徐々につながっていく。ただ、明らかになっていくことで、悲しさや寂しさも感じつつ、それでも、生き抜こうとする強さも感じる。自分の気持ちは明らかになっていっても、相手の気持ちはどうすることもできないよな。そんなことを考えつつ、登場人物の思いも受け止めながら読み進めていった。
松木は清瀬に、樹と天音のことを詳しくは話していなかった。このことが清瀬に誤解を生じさせていくことにもなっていた。恋人に伝えることと伝えないことはあるだろうな。ただ、知らなくてもいいことと知っていたらいいことはあるだろうな。その立場によって、知らなくてもいいことと知っていたらいいこととも違うから、すれ違いや軋轢も生じるのだろうな。
樹の家は「おべんとうのイワイ」を営んでいた。そこに、天音が客として訪れたのが出会いだった。そこで、樹は天音から手紙を受け取る。そこから、樹の気持ちが動き始め、松木を巻き込みながら、樹と天音の関係が進展していく。微笑ましく感んじていた樹と天音の関係が変化していく。その展開には驚きとともに、胸が痛む。仕方ないでは済まない事態だろうけど、どうすることもできない状況に感じられた。純粋な思いは尊いけれど、傷つくことになると苦しいな。それも、自分の気持ちのままに行動すること、それこそ自分が選んだことではあるのだけれど。
『夜の底の川」』の出所も明らかになる。これも、伏線として、この作品世界をつくっていく。ラストのつながりでは、胸にグッとくる。仕方ないという思いと仕方なくないともがく思いが同時に膨らむ。物語の後半から、天音の心や背景が徐々に明らかになっていく。そのことが、今回の松木と樹が病院に運ばれたことへとつながっていってやるせない。どうすることもできないもどかしさを感じながら読み進める。樹の困難さ、それを知って、寄り添い支える松木。そのことを知らなかった清瀬。登場人物の誰もが精一杯生活しているのに。近くにいても分からないことや、伝えてないことはあるだろうな。その背景には、それぞれの理由があるのだろうな。
天音に真相を確かめようとする清瀬。本当の思いや真相を知ることは、辛いこともあるけれど、知らないよりもいいかな。松木と樹が歩道橋から階段を落ちていくシーンの状況が明らかになる。そこには、それぞれの思いと天音に関係する人物の思いが絡み合う。その中で、この転落が起こっていた。登場人物のつながり、願い、背景が複雑に絡み合っていく。徐々に絡み合っていたものが解きほぐされていくが、それと共に切なさややるせなさも感じる。ただ、登場人物の純粋な気持ちも溢れてきて、心地よさも感じた。寺地さんの丁寧な描写に惹きつけられていく。
清瀬が読む『夜の底の川』の最後の場面。作品世界の現実と『夜の底の川』のシーンが鮮やかに切なく重なっていく。最後は清瀬と松木のシーン。それぞれの生活があり、生き方がある。良いか悪いかではなく、正しいか間違いかでもない。あるのは、それぞれの生活と生き方。それを分かりつつ、どうしたいのかと考え選んで生活していくのだろうな。
最後はホッとした思いで読み終えた。寺地さんの作品を久しぶりに読了した。登場人物が魅力的な寺地さんの作品世界を思う存分味わった。次の作品も楽しみになった。続きを読む投稿日:2024.04.20
いつも優しい人なんて本当はいない。その時の環境や状況によって感情も異なれば周りに対する態度も当然変わるものだ。そんな時、一方的に「嫌な奴」というレッテルを貼り付けるのではなく、もしかしたら何か事情があ…るのかもしれない、と相手の立場に立って考える。というよりそういう思考を始めから所持しておくのが大切だと教えてくれるような良い本だった。ただ物語として少し物足りなかったのと、作者が伝えたいとする意図が見え透いていた点で少し評価は下がる、、気がする。続きを読む
投稿日:2024.06.24
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