陰陽師の家を継ぐ「トンデモ」姫に婿現る? 慶長四(一五九九)年。安土桃山時代も末期、江戸時代が始まる前の京の都に、周囲が手を焼くトンデモ姫がいた。名は幸徳井桜子、年は十五。陰陽師を排出する家のひとつ、幸徳井家のひとり娘だ。名門というわけでもなく、ほどほど貧乏な公家の跡継ぎである桜子は、母を早くに亡くし、父は誰なのかわからないという有様。一部で「あやかしの子だ」と噂されるのは、桜子が生まれ持った神通力と剛力のせいだ。 「私に触ると怪我するよ」――というのは誇張でもなんでもなく、触れればすぐさま物を・・・
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昔むかし、京の都には鬼のような姫がいた。
慶長4(1599)年、京の都には鬼のような姫がいた。あやかしとの間に生まれた娘であるという噂や、そもそも女性らしからぬ・・・・・・どころか人間離れした強さから「あやかし姫」とささやかれた、悪名高い姫君である。
さて、この国には陰陽師というものが存在する。朝廷に仕え、暦を作り、吉凶を占い、怪異を退ける術者だ。
「あやかし姫」こと幸徳井桜子は、陰陽師家として高名な安倍家と加茂家の流れをくむ幸徳井家の跡継ぎ娘。婿とりの必要があるが、その条件は「自分がいじり倒しても死なない男」。もはや誰とも結ばれないのでは・・・・・・と思われていたところ、このたびようやく婿が決まった。
名は柳生友景、柳生一族の剣士の青年だった。
桜子のお眼鏡にかなったのだから強いことは強いのだが、友景はびっくりするほど地味な男でおまけにぐうたら。
「陰陽師の仕事は面倒だから嫌いなんだ。剣術も疲れるから嫌いなんだ」
「呆れた。じゃあ何が好きなのよ」
「お前が好きだよ」
そこに愛はあるが、友景は「桜子が妖怪だから好き」らしい。複雑な気持ちを抱えたまま、祝言の日が近づいて・・・・・・!? -
陰陽師の家を継ぐ「トンデモ」姫に婿現る?
慶長四(一五九九)年。安土桃山時代も末期、江戸時代が始まる前の京の都に、周囲が手を焼くトンデモ姫がいた。名は幸徳井桜子、年は十五。陰陽師を排出する家のひとつ、幸徳井家のひとり娘だ。名門というわけでもなく、ほどほど貧乏な公家の跡継ぎである桜子は、母を早くに亡くし、父は誰なのかわからないという有様。一部で「あやかしの子だ」と噂されるのは、桜子が生まれ持った神通力と剛力のせいだ。
「私に触ると怪我するよ」――というのは誇張でもなんでもなく、触れればすぐさま物を壊し、遊べば人を壊す。この世のものはなにもかもヤワすぎて、人も獣も妖怪も桜子の相手にはならないのだ。そのくせなぜか、京に巣くう妖怪たちはこぞって桜子に懐く。ゆえに、花も恥じらうお年頃だというのに、桜子はあやかしの首魁扱いされてしまうのだった。
そんなある日、桜子はひとりの剣士と出会う。陰陽の術にも長けたその青年は、柳生友景。どうやら彼は、桜子が本気をだして絡んでも「壊れない」理想の相手のようだが・・・?
やわらかスピリッツでのコミカライズも大人気、「蟲愛づる姫君」シリーズの著者が贈る、もうひとりの「トンデモ姫」の物語、ここに開幕!
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