センス・オブ・ワンダー(新潮文庫)
レイチェル・カーソン(著)
,上遠恵子(著)
/新潮文庫
作品情報
雨のそぼ降る森、嵐の去ったあとの海辺、晴れた夜の岬。そこは鳥や虫や植物が歓喜の声をあげ、生命なきものさえ生を祝福し、子どもたちへの大切な贈り物を用意して待っている場所……。未知なる神秘に目をみはる感性を取り戻し、発見の喜びに浸ろう。環境保護に先鞭をつけた女性生物学者が遺した世界的ベストセラー。川内倫子の美しい写真と新たに寄稿された豪華な解説エッセイとともに贈る。(解説・福岡伸一、若松英輔、大隅典子、角野栄子)
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商品情報
- シリーズ
- センス・オブ・ワンダー(新潮文庫)
- 著者
- レイチェル・カーソン, 上遠恵子
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2021.08.30
- Reader Store発売日
- 2021.08.30
- ファイルサイズ
- 13.1MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (107件のレビュー)
-
再読。単行本版の森本二太郎さんの表紙の写真の印象が、あまりに強すぎて、今回の川内倫子さんの写真は綺麗すぎるのが気になり、最初はどうかなと思ったが、次第に、これはこれでいいなと思えるようになってきて、…川内さんは、「母の友」の連載でもお馴染みだけど、改めて光の表現が上手い方だなと思う。
『センス・オブ・ワンダー』=『神秘さや不思議さに目を見はる感性』の素晴らしさを唱えた本書は何度読んでも、最初のシーンの、嵐の夜の波飛沫を投げつけてくる海を見て、心の底から湧きあがる歓びに満たされて、一緒に笑うレイチェルと、その甥ロジャー(当時1歳8か月)に、限りない共感を寄せてしまい、そこには知識や理屈で考える以前の(知ることは感じることの半分も重要ではない)、何か本能的な、とてつもない大きな力で満たされた圧倒的なものの存在感を、ただただ実感させられるだけではなく、私たちの知らないものに出会ったことへの歓喜の叫びもあり、そうした世界の神秘さや不思議さを感じられることの素晴らしさは、きっと人生を彩り豊かなものにしてくれるであろうことを、本書は教えてくれる。
また、それに加えて、本書の意義深い点として、1962年に彼女が書いた『沈黙の春』の後に、本書を完成させようとしたが、志半ばに未完となった経緯があり(1967年4月14日、56歳で死去)、その『沈黙の春』が、環境汚染と破壊の実態を世に先駆けて告発したことにより、彼女の先見性を証明した作品であることから、本書は、『破壊と荒廃へつき進む現代社会のあり方にブレーキをかけ、自然との共存という別の道を見いだす希望を、幼いものたちの感性のなかに期待している』といった、『環境教育の必要性』を唱えた作品であることに、改めて気付かされたことが、私にとって大きく、おそらくそれは、現代の方が、よりシリアスに考えなければならない重要事項だと感じ、私たちは生きていることもそうだが、その前に自然に生かされているといったことも、そろそろ実感しなければならないのだと思うが、どうなのだろう。
そして、文庫版だけの特典として、新たに寄稿された四人の解説エッセイが、また興味深い。
まずは、生物学者の福岡伸一さんの、『人間は細胞のレベルでみると、つくりやしくみは酵母やハエと殆ど変わらない』が、ひとつだけ人間が他の生物と異なる点は、『ことさら長い子ども時代がある』ことであり、それが脳を鍛え、知恵を育み、文化や文明をつくることに繫がり、要するに、それらがつくられた始まりは遊び心だったということであり、改めて、『大人になるとやってくる倦怠と幻滅』にも納得のゆく思いとなり、大人になること(色気づくこと)は、どうしても闘争、競争、警戒が優先される喪失の物語なのだと気付くことにより、素晴らしき感性を思い出すきっかけを与えてくれるのは、現代社会の真っ只中に於ける、一服の清涼剤から、一生大切にしていきたい、そうした思いへと変わることを期待しているのだと、私は思った。
次は、批評家、随筆家の若松英輔さんであり、レイチェルの眼差しは、自然科学者というよりも『自然詩人』のそれであることから、文学(哲学)と科学は共存しうる点に興味を覚え、そして、『人間の知識ではいまだに説明できない、何かを感じ続けること、それが人間を真の意味で人間に近づける』ことにより、『もう一つの自己発見の道程』に繋がることの素晴らしさは、この後の大隅典子さんの解説、『微小な生物にそれぞれの生活や世界があることを知ることは、人間を相対化できることにつながる』からも読み取れて、『センス・オブ・ワンダー』には、ある種の恐ろしさや崇高さが含まれることによって、自分自身を見つめ直すことができて、そこで新たに生まれ出るのが、自然への畏怖や敬意であり、そこから自分の立ち位置を考えることは、おそらく自分自身への愛おしさも、より湧いてくるのではないかなと思わせるものがあった。
そして、上記でもふれた、神経科学者の大隅典子さんであり、ここでの、『幼い頃に体験したことは、覚えているという自覚が無くても、脳の中に刷り込まれていると信じて良い』に、とても嬉しいものを感じられたりしながら、特に印象的だったのは、『明瞭でディジタルな刺激だけではなく、曖昧でアナログな刺激が子どもにとって(大人にとっても)必要』であり、今は動画で手軽に世界各地で起こる様々な自然現象を見たり聞いたりすることができるが、私はそれと、実際に生で見て聞くことが、全く同じであるとは思わず、それはあくまでも媒体を通したものしか感じ取ることが出来ないが、実際に見たときには、視覚も聴覚もそこの空気感含めて、より感性が際立ち、更には、その生の存在感を嗅覚も含めた五感全てで、ありありと感じられるだろうし、また、その五感の面白さとして、夜の闇だと
それらが研ぎ澄まされることがあり、そこでは視覚が抑えられ、音や匂いに更に敏感になることから、小さな差異に気付きやすくなることも興味深く感じられた。
最後は、童話作家の角野栄子さんで、彼女自身、34歳になって物語を書く仕事を始めて、こんなに好きだったんだと気付いたことにより、『何歳からだって、好奇心を持ち、想像力を育み、創造することができると、信じている』といった思いには、感性を磨くことのみならず、人生に於いても心強い気持ちにさせられ、励まされるものがあった。続きを読む投稿日:2023.11.24
この本はお守りになる。
心の拠り所になり、自然のない人工建築物に囲まれたビル砂漠で生きるわたしの癒しとなった。
始まりから既に良い。
強い雨の降る中、海岸へ行きうねり声をあげる波を前にした著者と甥は…笑い声をあげるシーン。
そうだ、笑ってしまうんだ。
自然の姿をありのままに感じると、感情を整理する間なんてない。
ただ、すごーい!!と、
その畏敬さに感服するのだ。自然の荒々しさは恐れや怖さを内包する。それに気づく時、まさにセンス・オブ・ワンダーを私たちはありありと感じることができる。
センス・オブ・ワンダーとは、この本の訳者曰く、 神秘さや不思議さ(驚きやドキドキ)に目を見張る感性、なのだという。
驚く。
自然は私たちに忖度しない。当然だ。
天変地異は私たちに操作できず、また予測もできない。
時には再起不能なほどの災いをもたらすことだってある。
しかしそんな飼い犬に手を噛まれるような仕打ちを受けたとしても、わたしは自然を嫌いになることはないだろう。
大きなパワーと神秘性を併せ持つ自然の前では、人間なんて無力で、ちっぽけな存在でしかない。
数百メートルのビルを立てられる頭脳と技術を持っていても、数メートルの津波が来ればみんな押し流されてしまうのだから。
この本はYouTubeの Flierで知った。生命誌に長く携わる 中村桂子さんが紹介されていたのを拝見し、書店で手に取った。
田舎に住んでいた子供の頃、わたしは道端の草花に食いつき、ブンブン飛んでいるトンボや蝶を追いかけ、用水路の魚やタガメを食い入るように見つめていた。
ナマズを網で捕まえ大喜びしていた頃から10数年が経ち、あの頃の毎日ドキドキワクワクが尽きなかった心はどこへ行ってしまったのか。
日々の仕事、人混みの中疲弊する心に気づく余裕もなかった。
この本を読み、毎日激動だった子供時代に戻れたように思う。
大人を続けていく中で、新しい発見にドキドキしたり、好奇心に突き動かされたりワクワクする体験は非常に少ない。やもすると子供時代の気持ちすら忘れ去ってしまったかもしれないのに。
それほど子供時代の感性は絶大だった。
ビルなんて一棟もない田舎で育ち、情緒のある母親に育てて貰えたのは、今思うととても幸せなことだった。
P41 (子供と一緒に自然を探検することは、自身の感受性に磨きをかけること。それは、しばらく使っていなかった感覚の回路を開くこと。)
子供は独特な価値観を持ち、大人ではなし得ない発想、発言を繰り出す。
それに驚き、流すのではなく、共感し寄り添う。
それが大人の思いやりであり、自らの感受性(センス・オブ・ワンダー)を高める方法であるのだ。
解説の福岡さんがいいことを言っている。
「何かひとつ好きなことがあること。それがずっと好きであり続けられること。好きなことはあなたを飽きさせず、静かにあなたを励まし続ける。」
好きだと思える幸福。
松浦弥太郎さんも著書で言っていたが、
「好きなものは自信を持って好きになればいい。」と。
周りから冷やかされようと、自分の好きな自然をこれからも愛していきたい。続きを読む投稿日:2024.06.03
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