TOKYO REDUX 下山迷宮
デイヴィッド・ピース(著)
,黒原敏行(訳)
/文春e-book
作品情報
戦後最大の怪事件、「下山事件」。その闇にイギリス作家が挑む未曾有のミステリー大作。
下山国鉄総裁、変死体で発見。おりしも国鉄は、GHQの方針により大規模な人員整理に着手したばかりで、労働組合や左翼分子による犯行が疑われた。
GHQ上層部のウィロビーらの命で捜査を担当することになったGHQ捜査官スウィーニーは、裏社会とのコネを手がかりに占領都市の暗部へと潜ってゆく。総裁の死は他殺か自殺か。警視庁捜査一課と捜査二課が対立し、マスコミや世論も揺れる中、スウィーニーの捜査線上にGHQの謀略機関〈本郷ハウス〉の影が見え隠れし、彼は徐々に戦後の“黒い霧”に呑み込まれてゆく・・・・・・。
1964年、6月。初のオリンピックを目前にする東京で、下山事件に関する作品の取材を進めていた探偵小説作家・黒田浪漫が失踪した。編集者を名乗る男の依頼で黒田の行方を追うことになったのは元刑事の私立探偵・室田。だが消えた作家の足跡を追ううちに、室田は東京の暗い半面にひそむ黒い黒い迷宮に少しずつ踏み込んでゆく・・・・・・。
そして1988年、12月。病床に臥せる天皇の容態を憂えて沈む東京に、翻訳家ライケンバックはいた。かつてCIA工作員として日本に派遣され、やがて日本文学の研究者として東京に住むことになったライケンバックのもとに、戦後の忌まわしい事件の亡霊がやってきた。彼の運命を狂わせた下山事件。その亡霊が、今、ここ、昭和の最後の年に。あのとき、占領下の東京で何があったのか――?
犯罪小説史に異形の刻印を黒々と刻む〈東京三部作〉、完結編にして最高傑作の誕生。
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商品情報
- シリーズ
- TOKYO REDUX 下山迷宮
- 著者
- デイヴィッド・ピース, 黒原敏行
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2021.08.24
- Reader Store発売日
- 2021.08.24
- ファイルサイズ
- 3.9MB
- ページ数
- 440ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (6件のレビュー)
-
下山事件といえば日本史の教科書にも載っているような有名な事件。不謹慎だが、あまりにドラマチックな謎のため、フィクション、ノンフィクション問わず、たくさんの作品が発表されてきた。ご多分に洩れず、私もそれ…らの数冊を手にし、ああでもない、こうでもないと、いろいろ想像を巡らせたクチである。
本書はその下山事件をテーマに、戦後日本の、東京の闇に潜っていく。3部構成となっていて、おもしろいのは第一部がGHQの捜査官ハリーの視点で語られること。外国人を主人公に下山事件を扱った作品を私は寡聞にして知らない。
第二部には江戸川乱歩がモデルと思われる探偵作家も登場する。実際、事件後、乱歩はじめ当時の探偵作家たちが下山事件を推理した文章をこぞって発表していることを興味深く思い出した。しかし、これを海外の作家が書いたとは、驚きでしかない。
ただ、とても評価の高い本作だが、私は読むのに難儀した。文章は「、」で延々と続けられ、「。」で区切られることがあまりない。会話も「 」で括られることなく、地の文に組み込まれる。文章が途切れることなく続くので主語も判然とせず、また場面も唐突に変わる。原文は読んでないが、おそらく、これに近い独特の文体で、訳者の方が工夫を凝らしたのだろう。それも含めて評価が高いのだが、私には読みにくかった。
正直、もっとノンフィクション寄りの内容かと思っていた。ただタイトルにある迷宮感は大いに味わえた。陶然と、惑わされた。本作は〈東京三部作〉の掉尾だとか。前のニ部作は…どうしよう。続きを読む投稿日:2022.03.24
下山事件は中学生の時、松本清張の「日本の黒い霧」になぜかハマってしまい、戦後日本のドロドロの原形質に触れた気がして、ずっと心の底に沈殿している謎でした。時々、この事件、出版物として目の前に現れるのです…が、なぜか積読のままに放置してしまっています。例えば柴田哲孝「下山事件」もその一冊。「日本の黒い霧」のインパクトが凄かったからかな…そんな中、あるTV番組でで直木賞を取った佐藤究が超おススメしていたので、「テスカポリトカ」よりも先に読んでしまいました。たぶん、真相解明の本ではなく、フィクションだったので気易かったのかもしれません。でも、1949年、1964年、1989年、つまり事件発生、一回目の東京オリンピック、昭和天皇崩御、昭和の歴史の特異点で蘇る下山事件は、戦後日本の奥底を流れる誰も見ることのできない地下底流と化している気がします。その闇への好奇心はまったくリアルタイムでもなんでもない自分の深層にも入り込んでいる気がして、それが怖くなりました。本書に描かれる下山事件に関わった人々のモヤモヤ感への共鳴が、ちょっとだけ起こってしまいました。この小説をデイヴィッド・ピースという英国人が書いていることにも驚愕。出口のない気持ち悪さが、ノワールと言われるジャンルなのであると思いますが、訳者のあとがきで語られる日本文学や歴史上の人物、さらには自著も巻き込んだ気持ちいいまでの緻密な構成…この作者の只者でなさ感にさらにびっくり。今回、初めての作家ですが、これは本書を完結編とする三部作の第一作「TOKYO YEAR ZERO」第二作「占領都市」にも遡らなくちゃいけない、と思いました。また積読?続きを読む
投稿日:2022.02.11
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