この作品のレビュー
平均 3.3 (5件のレビュー)
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ずるいですよ!
図書館の策略にはまりました。
ちょうど目の高さにこんな本を、しかも表紙が見えるように置くなんて卑劣じゃないですか。
目が合いましたよ。
「あ~、カワイイ犬だ……ん? 待てよ。カワイイか…? これ。なんか遠い目しとらんか? よくよく見ると妙に首輪が締まってるけど、キミ、それ平気なの?」
「ええんや。ワシはこれでええんやで~」
会話してしまいました。人生に、犬生に達観しているような表紙の犬と。
で、借りてしまいました。
50人の作家さんたちによる、犬に関するエッセイやらマンガやら。
1人約3ページくらいの短いものなのでサラサラいけます。
なぜか男の書いたものは固くて説明っぽくておもしろくない。逆に女性の書いたものは読みやすくて情緒にあふれてていいです。
たとえば、米原万里さんの愛犬ゲンを手に入れるまでの顛末。「犬猫の仲」
雑誌で、処分されようとしている犬を見て、引き取ろうと決心した万里さんは、泊りがけのセミナーで一緒になった真性愛犬家の真梨子さんに相談するも「あなた、遠いハスキー犬より近くの駄犬よ」と説得され、気になっていた処分間近の犬は他の人に既に無事保護されていたのを電話で確認したうえで、その「メチャクチャ不細工なの。フフフ、でも愛嬌があって、ずいぶん性質の良さそうな犬なのよ」と勧められた犬を持ち帰ることに。
――上野駅では、真梨子さんと二人がかりでケージを運び、山手線に乗り換え、五反田駅からわが家まではタクシーを利用した。長旅のあいだゲンはワンとも発することもなく、かといって臆した様子は少しもなく、顔をのぞき込むとまるで、
「心配するこたあありませんよ」
とでも言うように、軽く尻尾を振る。何ていいヤツなんだろう。
江國香織さんの「雨はコーラがのめない」より。からの一節。
曲者なのは道に落ちているセミで、一見死んでいるように見えるので、雨は突進してしまう。調べたいらしい。セミがおどろいて羽を広げてジジジジと騒ぐと、雨はもう一メートルくらいとびすさって動けなくなる。飴玉をのみこんだみたいな顔でセミを見つめ、紐をひっぱっても足を踏んばって動かない。それからきゅうきゅう鳴いて、恐かった、と表明する。
(中略)
「全てのものを自分の目でしっかり見て、必要ならにおいをかいだりつっついたりもしてみて、判断してから恐がるひとに、私もなるよ」
雨に、そう言ってみる。
小川洋子さんの「とにかく散歩いたしましょう」もいい。
「ラブ、鳴いてもいいんだよ」
もう既に颯爽と歩くことができず、後ろ足をよろよろ引きずっているラブに向かって私は言った。
「撫でることで少しでもお返しできるのなら、いくらでも撫でてあげるよ」
耳の遠くなったラブは、私の声に気づきもしないまま、ただ月を見上げるばかりだった。
白洲正子さんの「飼犬に手を噛まれる」
――がぶりと手首をやられてしまった。
私はびっくりしたが、彼もびっくりした。真青になって(たしかに犬は顔色が変る)、きょとんとしている。そこら中に血がほとばしり、床の上が真赤になった。こうしてはいられないと、私は近所の医者へ飛んで行き、十幾針も縫った上、狂犬病の注射まで打たれて帰って来た。
それからが大ごとだった。犬はすっかりしょげ返り、ごはんも食べなくなった。私の包帯を横目で眺めながら、消え入りそうな顔をする。慰めて貰いたいのはこっちの方だったが、一所懸命話しかけたり、散歩に連れて行ったりする間に、少しは元気を取戻した。完全にご機嫌を直すまでに、ひと月以上はかかったであろう。今でも「これ、誰がしたの」といって、手首を見せると、恐縮して下を向く。それがかわいいので、何度でもやりたくなるが、気の毒なので我慢している。
種田山頭火さん。
犬の話より最後の一文がよかった。
とんぼが、はかなく飛んできて身のまはりを飛びまはる、とべる間はとべ、やがて、とべなくなるだろう。
そしていちばんいいなと思ったのは、服部みれいさんの「愛としての犬、そして猫」
まさか自分が犬を飼うとは思っていなかった。
自分は完全に猫派で、飼うならこれからも猫だろうと信じていた。
(中略)
犬を飼うようになって、本当にこれまで知らず、そして気づいたのは、犬は愛そのものだということだ。なぜ、人々がこんなに動物が好きなのか。犬好きや、猫好きがいるのか。簡単なことだった。動物たちが、愛だからだ。人々は愛に惹かれる。猫だって同じだ。わたしがかいたあぐらに、しずしずと乗って、丸くなって眠るとき、猫は、愛だ。愛のかたまりが、わたしの足の中で眠っている。これはたまらない気持ちになるし、ありがたい気持ちにもなる。
犬は、愛として生き、愛として歩き、愛として食べている。愛が躍動している。思わず抱きしめてからだを撫でてやる。ゆるく尻尾を振り、犬もわたしもなめるなどをし愛を交換する。
以前わたしが、縁側であるマッサージを受けていた。犬はすぐそばでそれを見ていた。マッサージの後半で、からだを手でぽこぽこと軽く叩く手技になった。そうしたら、犬は、突如施術者に吠えた。「やめろ!」といっているのだ。「ご主人さまを叩くな!!」と吠えるのである。犬ならではのわかりやすい愛の発露である。
こんなわかりやすい愛の顕現を、わたしたちは容易に感じながらこの世界を生きるという恩恵を受けている。
全体的に良かったのだが、大トリを務める最後の川端康成さんが最悪だった。
この方は、ほんとに愛犬家なのだろうか?
やれ、なんとか種はどうとか。
純血種を飼ふことは、愛犬家心得の一つである。だの。
――私の経験によれば、犬はさう死ぬものではない。ヂステンパアにかかった仔犬など、私の家にはまだ一頭もない。戦々競々として犬の健康に神経を悩まされてゐるわけではなく、スパルタ式といふことを私は口癖ににして、ただ大綱をつかんでゐるだけだが、その方が反って丈夫なのは、人間の子を育てる場合と変わりがない。
大作家様に対して失礼だが、なにほざいてんだコイツとしか思えなかった。奥さんが陰で苦労してるだけではないかと思った。
あげくに。
――雑種がお産をしては、仔犬の始末に困るからである。けれども、純血種の仔犬だと、相当な値段で犬屋へ売れる。
(中略)
こんな風に売れたのはまぐれあたりにしろ、結局なんでも、いいものを買っておけば、損はないのである。
当時は避妊処置など一般的ではなかったのだろうと鑑みても、まったく愛も情も感じられない文であった。感じられたのは「俺の犬の飼い方は正しい。きさまら愚民どもも参考にしたまえ」というおごりしかない。
そういう人もいるだろう。気に入らないがそれはいい。だが、この本の編集部は何をもってこんな人の文を、しかも最後の締めに載せたのか。まったく理解できない。
この作家シリーズは、「作家の犬」「作家の犬2」「作家の猫」「作家の猫2」「作家の酒」「作家の珈琲」などなどあるらしい。
もう、手に取ることはないだろうけど。
レビューが長い(;´Д`)ツカレタヨー
犬と暮らしたいな。猫もいいよね。鳥も捨てがたいな。
(´Д`)ハァ…続きを読む投稿日:2023.06.03
文で 絵でたのしむ
著名作家50人による、
犬にまつわる物語。
”作家と猫”もあります。
デザイン学科2年投稿日:2023.12.11
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