ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録
少年アヤ(著)
/双葉社
作品情報
最高な友人なのに、ずっと会えないでいた。理由は、自分がゲイだから。それを言えなかったから――という冒頭からはじまる、日常を綴りながら、人との関係や自分をたいせつにしない生き方を改めて、人生を再生する物語。愛されることはせつない、くるしい。こんなに普通の日常が泣けるって、ない!と連載時から話題に。恋人と堂々と手をつなぐこともできず、友達にはどこかうそをついて生きている気がしていた。そんな著者による、ままならない世界への叫びをつづった小説的エッセイ。
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この作品のレビュー
平均 5.0 (3件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
すごくよかった。びっくりした。
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本屋メガホンさんの『透明人間さよなら』をきっかけにこの本のことを知った。
日々透明にされること、その事への怒り、悲しさが記録されていた。
自分の大事なアイデンティティから目を逸らして見なかったフリを続ける、それでも別の角度からは愛情を注いでいる距離感の掴めない、それでもこれまでずっと一緒にいた、著者的には大切な存在の家族。自分を傷つけている存在を、それでもその温かい側面を無視せず捉えてまっすぐにもがいている姿に痺れた。(私は全て切り捨ててしまうタイプなので…)。
本来ならいい人、根はいい人、大事な人。そんな人たちに悪意なく自分のアインデンティを否定されたり無視されたりして、揉めたく無いけれど痛みを無かったことにはしたくなくて、という苦しさに共感した。
これを書籍にして言語化してくれる人がいて嬉しい。
これを読んで、「そりゃこれ読んだら本屋作るわ」って思った。私たちには痛みを言語化してくれる言葉や書籍、存在が必要だし、私もお金が貯まって赤字経営にならないようないい感じの場所を手に入れたら、クィアのための本屋さんを開くのもありかなと思えた。
すごくよかった。投稿日:2023.06.07
少年アヤさんのことは、Instagramで知った。
いつも、可愛いレトロな雑貨やおもちゃの写真をUPしている、文章を書く人。という認識で、一年くらい前からフォローしていたけれど、著作を読んだのはこれが…初めてだ。
読み始めたら、通勤電車内でも(7分くらいしか乗らないから自転車で行く日が多いのに、これが読みたいから敢えて地下鉄に乗った)、乗り換えで歩く間も、隙を見ては一行でも読みたくて、三日ほどで読み終えた。(丸一日休みがあれば多分一日で読んでしまっていたと思う)。
そういう本は、スティーブン・ミルハウザーの「エドウィン・マルハウス」以来。つまり、めちゃくちゃ面白かったのだ。
日記のような、サラサラと読める優しい文章を読んで行くと、たまにグッと胸ぐらを掴まれるような瞬間があり、たまに爆笑したり、憤ったり。
本の中のアヤさんはよくポロポロと涙を流すのだけれど、読んでいる方も何度か泣いた。
「まゆちんは最高だ。そしてかけがえのない、ぼくの親友のひとりだ。しかし、こんなにも最高なまゆちんと、なぜ10年も連絡をとっていなかったというと、それはぼくがぼくであるからだ。そしてゲイだからだ。」
読み始めて13ページ、そこからアヤさんが、
(よい人生、ぼくをくるむ!)
と感じられるまでの物語。
ただ誰かを好きになっていくだけなのに、その道をまっすぐに進むことが難しい世界にいるアヤさん。
「くそマジョリティ」の中に居る、自分も含めた人々。
ただ、ただ、しあわせに生きるということが、こんなにも困難であるという現実のなかにあって、たくさん泣いて傷付いて、ときに自暴自棄にもなりながらも、大好きなひと(パートナーはもちろん、親友や家族。アヤさんも書いていたが、アヤさんの家族、友人はすごくかわいい)に囲まれている。その中でアヤさんは気付いていく。
「恵まれている、という痛みに近い感情」に。
終盤、このあたり読んでいて地下鉄でポロポロ泣いた。
「こうはいかない、おそらく大多数の人生を思わずにいられなかった。」
そう、この視点が端々にあって、そこが胸を痛く打つ。
強くじゃなく、痛く。
子育て中のママ、ひなことみずみのこと。
会社でヒールを履いて脚がぼろぼろになったまゆちんのこと。
自分ごとのように思い、泣くアヤさん。
強さは優しさあってこそなんだよなと、改めて思うけど、そもそも弱いままで良いと、そのままで良いよという世界に生きたいし、そうなるようにしていきたいと思った。続きを読む投稿日:2023.01.11
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