鋳物屋なんでもつくれます
上野歩(著)
/小学館文庫
作品情報
女性鋳物師の奮闘を描く痛快モノづくり小説。
祖父・勇三が起こした下町の町工場「清澄鋳造」で働くルカ(清澄流花)は、営業担当ながら時には自ら流し入れなどの現場作業も行う“鋳物オタク”だ。丁寧なモノづくりを信条に長年培ってきた会社の強味が時代遅れとされ、単価の引き下げや納期の短縮を求められた末に、相次いで発注を打ち切られてしまい、大ピンチに! 瀕死の会社を立て直すため、ルカは大胆な改革を考える。
今までのやり方へのこだわりや、“経験とカン”を誇るベテラン職人たちの反発。困難に立ち向かう中で、亡き祖父だったら・・・・・・と思い巡らすルカ。特攻隊の生き残りにして、会社を起こし、高度成長期の中で発展させていったその足跡を辿っていくと、これまで知らなかった勇三の人生が浮かび上がってくるのだった。さらに、時代を超えて輝きを放つ、二つの“東京オリンピック”。
変わっていかないと。そう、変わり続けないと。
ルカは、新しい工法や鋳物の概念を超えた新素材の商品や、物語のモノづくりなどに挑戦していく。東京の下町を舞台に、女性鋳物師の奮闘を描き、
鋳物の新しい可能性を見せてくれる痛快モノづくり小説。
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商品情報
- シリーズ
- 鋳物屋なんでもつくれます
- 著者
- 上野歩
- 出版社
- 小学館
- 掲載誌・レーベル
- 小学館文庫
- 書籍発売日
- 2020.11.01
- Reader Store発売日
- 2020.11.06
- ファイルサイズ
- 1.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (3件のレビュー)
-
主人公のルカさんの生き様は
私の三十代の生活そのものでした。
川口で育った私には鋳物屋さんは身近な存在でした。
と言っても、バブル以前から鋳物屋さんはどんどん消えていくのを目の当たりにしたのも事実です…。
そんな状況で奮闘する主人公の気持ち、行動が手に取るようにわかって最初から最後まで楽しめました。
前回の東京オリンピックの聖火台は川口の鋳物で作られましたが、今のオリンピックの体制に疑問を持つ私としては、そこにはあまり気持ちがのれず。
ただものづくりの現場がリアルに感じられる、躍動感あふれる作品です♪続きを読む投稿日:2021.03.23
家の中にもたくさんある鋳物。
なのに、どれが鋳物かなんて、考えたこともない。
ということもあって、どんな世界かと思い、読んでみた。
作家さんも今回が初めましての人だ。
お仕事小説を得意とする人のよう…だ。
主人公は女性の鋳物師、清澄流花(ルカ)。
墨田区の吾嬬町にある実家の鋳造所を継いだ「三世」だ。
営業をするだけでなく、自身で流し入れもする。
成熟産業で、もはや新しい展開がしにくいと思われている中で、新しい工法を開発したり、作業の仕方を改革したりと、とにかく前向き、ひたむきに努力する。
そんな彼女の成長がまぶしい物語。
が、この話は、そのメインストーリーと絡み合うようにサブストーリーが展開する。
それはルカの祖父母の物語。
勇三は家族に捨てられ、ルカの曽祖父である仙吉の木型製作所に流れ着く。
戦争がはじまり、勇三は仙吉や娘の志乃のとどめるのを振り切り、特攻に志願する。
訓練中の怪我で生還するものの、自分の居所をなくし、復員後は放浪生活を送る。
焼け跡の上野駅で出会った男が太宰治だった―というのは、ちょうど『中野のお父さんは謎を解くか』を読んでいたので、妙な符合にびっくりする。
最終的に清澄木型製作所に戻ってきて、鋳造所に商売替えしていくことになる。
そこから高度成長期を迎え、懸命に働き、東京オリンピックの聖火台のコンペに参加するほどになる。
自分だってこの時代を知らないけれど、なんと勢いのある時代なんだろう。
翻って、孫のルカも、2020年の東京オリンピックで今度は聖火のトーチのコンペに挑むわけだが。
どちらかというと、こちらのサイドストーリーの方がかなり印象的。
鋳物といえば、関東なら埼玉の川口市。
「キューポラのある町」とかいう映画もあった(見たことないけど)。
そこではなく、東京の町中にこんな鋳物工場があったというところが面白い。
小さな事業所が、「小さくても強い会社」となる。
夢のある話だ。続きを読む投稿日:2022.10.23
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