「戦争社会学研究」創刊号戦争や軍事は、人文社会科学にとって、私たち「人間」が群れを作り、他者と関わりながら自由と平等、秩序や安全を折りあわせる場である「社会」の存立そのものに関わる根本的な領域である。あまりに重要すぎて、すべてに透徹する真理、すべての人を納得させる原理・原則はないと考えた方がよい。それゆえ、ここで求められているのは、巨大な社会問題としての戦争と軍事を、市民が討議するための題材の提供や論点の整理であり、討議をより活発にし有意義にするための創発となることである。【目次】創刊の言葉〈特・・・
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近年、再び学術と軍事が接近しつつある。「学術の軍事化」への警鐘を鳴らす。
「軍事研究の抑止力であったはずの「学問の自由」「大学の自律性・自立性」は、二一世紀に入って、じわじわと浸蝕されてきた」(井野瀬久美惠)
「「戦時」と「平時」が溶け合うような状況で、軍事と民事を分けられるのか。何らかの歯止めとなるような理念や土台の共有が求められている」(山本昭宏)
多様化・複雑化する学術と軍事の結びつきに対して、大学・研究者はいかに学問の自由を守り、自立・自律するか。「学術の軍事化」への警鐘を鳴らす。
【著者】
戦争社会学研究会
戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。 -
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宗教は殺生を戒め、平和を好むのか。宗教は聖戦を主導する、戦う主体なのか。信仰と暴力の関係に迫る。
宗教と戦争は、人の生死に関わる。
戦争は人間にとって限界状況として立ち現れる事態である。多くの宗教では殺生に対する戒律を有し、相互に殺害し合う事態をもたらす戦争を「悪」と捉えて、平和を好むと考えられてきた。
しかし他方で、宗教や信仰者は戦う主体でもあった。宗教が戦争の道義性を担保して「正戦」として後押ししたり、さらには宗教的世界観、教義から戦いそのものを「聖戦」として積極的に推進することもある。
近代戦で宗教が担ってきた役割とは。信仰と暴力の関係に迫る。
【目次】
【第1部 宗教からみる日本の近代戦】
「宗教からみる戦争」特集企画について/西村 明
近代日本の戦争と天皇の神聖化/島薗 進
「皇道仏教」の形成/大谷栄一
”聖戦”と網状の実践系—金属品献納運動の宗教学/永岡 崇
ビルマの独立と仏舎利奉遷—桜井兵五郎が構想した大東亜寺/大澤広嗣
無教会キリスト者の「戦争」—矢内原事件と塚本虎二の逡巡/赤江達也
【第2部 旧ユーゴ戦と宗教】
戦後ボスニア・ヘルツェゴビナにおける宗教の役割/ディーノ・アバゾヴィッチ
ボスニア・ヘルツェゴヴィナのムスリムの集団的アイデンティティーについて—レイス・ウル・ウラマー、チャウシェヴィチを例に/長島大輔
ほか
【著者】
戦争社会学研究会
戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。 -
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二度映画化された『野火』を中心に『この世界の片隅に』『戦艦ヤマト』など戦争映画を論じる。
娯楽映画の抵抗と迎合—
大岡昇平による原作『野火』(一九五二年)。
市川崑による映画『野火』(一九五九年)、そして塚本晋也版『野火』(二〇一五年)。
同一作品は、表現形式によって、時代によっていかに変奏され、受容されるのか。
また、山本五十六の表現から『戦艦ヤマト』『この世界の片隅に』まで、娯楽作品において戦争はどのように表現され、消費されてきたのか。
社会学・歴史学・人類学のアプローチから、文学と映画に描かれた戦争を読み解く。
【目次】
特集1 「戦争映画の社会学」①『野火』の戦争社会学
『野火』の戦争社会学—特集企画について/ 山本昭宏
戦争映画の社会学のために—塚本版映画『野火』を題材として/野上 元
「野火」に映る戦後—「難死」と「嘲笑」の後景化/ 福間良明
『野火』の戦争社会学のために/成田龍一
『野火』にみる武蔵野の風景とフィリピンのゲリラ/青木 深
人肉食が起こりうる世界を物語るということ—ふたつの映画版『野火』における宗教的要素の扱いをめぐって/松下優一
特集1 「戦争映画の社会学」②戦争娯楽映画の系譜
「戦争映画」の拡大領域/山本昭宏
戦争娯楽映画を読み解く—山本五十六作品を比較する/好井裕明
『宇宙戦艦ヤマト』から『君の名は。』へ—美少女が象徴する戦うアニメの系譜とその論理/足立加勇
戦争遺産へのまなざし—アニメーション映画『この世界の片隅に』を事例に/濱田武士
ほか
【著者】
戦争社会学研究会
戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。 -
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「戦争社会学研究」創刊号
戦争や軍事は、人文社会科学にとって、私たち「人間」が群れを作り、他者と関わりながら自由と平等、秩序や安全を折りあわせる場である「社会」の存立そのものに関わる根本的な領域である。あまりに重要すぎて、すべてに透徹する真理、すべての人を納得させる原理・原則はないと考えた方がよい。それゆえ、ここで求められているのは、巨大な社会問題としての戦争と軍事を、市民が討議するための題材の提供や論点の整理であり、討議をより活発にし有意義にするための創発となることである。
【目次】
創刊の言葉
〈特集1 ポスト「戦後70年」と戦争社会学の新展開〉
特集企画にあたって?ポスト「戦後70年」と戦争社会学の新展開
「戦争社会学」が開く扉
感謝の発露と美化批判?ポスト戦後七〇年の対立軸
「特攻による活入れ」という衝撃?「記憶の継承から遺志の継承へ」モデルの批判的検
シズメとフルイのアップデート
〈特集2 「空襲の記憶」の境界?時間・空間・学問を越境して〉
企画の趣旨、そしてそれをさらに「越える」ために
「防空」という視座?「防空」と「空襲」/「空爆」のあいだ
ダーウィン空襲の記憶?「オーストラリア国防の最前線」を語り継ぐ
軍事化に抗する「戦争の記憶」?ドレスデン「〈一九四五年二月一三日〉協会」の歩み
社会学はいかに空襲を記述できるのか?
空襲の記憶とポスト戦後
一九五〇年代末?七〇年代初頭のSF ショート・ショート作品における核エネルギー表象
編集後記
執筆者一覧
【著者】
戦争社会学研究会
戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。 -
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