戦争取材と自己責任
安田純平(著)
,藤原亮司(著)
/ボイジャー
作品情報
紛争地ジャーナリスト2人の共同作業で向き合う拘束事件、戦争、私たちの社会
著者の安田と藤原はともに紛争地を専門とするジャーナリストであり、友人関係にある。
3年4か月にわたってシリアの武装組織に拘束されていた安田は、「身代金が支払われた」というデマや自己責任論によって容赦ないバッシングを受け、
現在も「出国禁止」状態が続いている。
一方の藤原は、安田の安否を気遣い、トルコにも足を運び、情報収集に奔走した。
本書のための語り下ろし(対談)と書き下ろしで構成。
【目次】
はじめに 不寛容な社会で
第一章 解放までの三年四か月
第二章 紛争地のリアル
第三章 現在につながったできごと
第四章 生業としての紛争地ジャーナリスト
第五章 「自己責任論」と向き合う
第六章 デマ拡散時代の戦争取材
おわりに 「身代金」報道にこだわる理由
【著者】
安田純平
ジャーナリスト。1974年、埼玉県に生まれる。一橋大学社会学部を卒業後、信濃毎日新聞に入社し新聞記者となる。2003年よりフリーランスのジャーナリストに。記者時代の2002年から、アフガニスタンやイラク、シリアなどの紛争地を中心に取材を続けている。2015年6月、取材のためにトルコからシリアへの国境を越えたところで武装組織に拘束され、3年4か月のあいだ監禁される(2018年10月解放)。著書に『囚われのイラク』(現代人文社)、共著に『自己検証・危険地報道』(集英社新書)などがある。
藤原亮司
ジャーナリスト(ジャパンプレス所属)。1967年、大阪府に生まれる。1998年からパレスチナ問題を追っている。ほかに、シリア、イラク、ウクライナ、アフガニスタンなどの紛争地や、国内では在日コリアン、東日本大震災、原発問題などの取材を続けている。
著書に『ガザの空の下』(dZERO)、『戦争取材と自己責任』(安田純平との共著、dZERO)がある。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
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本書は、2018年11月に、3年4ヶ月に亘りシリアの武装勢力に拘束された末に解放された、フリージャーナリスト安田純平(1974年~)氏と、安田氏の拘束中に周囲で起きていたことを最も詳しく取材していた、…ジャパンプレスに所属するフリージャーナリスト藤原亮司(1967年~)氏の対談である。
対談の内容は、拘束から解放までの間に現地及び日本は何が起きていたのか、戦地シリアでは一体何が起こっているのか、安田氏と藤原氏はなぜジャーナリストを志したのか、紛争地の取材はなぜ必要なのか、「自己責任」とはどういうことか、SNSの普及は何をもたらしたのか、である。
私は(一般の会社員であるが)、従前より、世界の各地を取材する(フォト)ジャーナリストの活動に関心が高く、戦地・紛争地を取材した多数の書籍(長倉洋海、佐藤和孝、山本美香、高橋真樹、橋本昇、川畑嘉文、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会、危険地報道を考えるジャーナリストの会などの編著書)を読んできた。また、数年前には、世界の縮図ともいえるエルサレムに一人で1週間滞在し、公共交通機関を使ってパレスチナ地域を訪れたこともある。
そして、安田氏については、いつ殺されてもおかしくない状況を3年4ヶ月も耐え続け、帰国後ほどなく、心身ともしっかりした状態(少なくとも表面上は)で長時間の記者会見を行った人として、強い関心を持っており、今般行きつけの書店で本書が平積みになっているのを目にし、早速手に取った。
私の戦争取材に対する基本的なスタンスは、「必要」というものである。それも、欧米人とは異なる視点・価値観をもつ日本人が行うことに賛同する。それは、この世界・国際社会で起こっていることは、濃淡こそあれ、何らかの形で繋がっているものであり、我々は、それを一部の権力・勢力などのバイアスを排除して知る必要があるからである。対談では、欧州においては、君主制から共和制に移行する過程で、国民がものごとを判断するためには国家からではない情報が不可欠であるという、ジャーナリズムの必要性が完全に共有されていることが語られている。
また、「自己責任」論については、常々違和感を持っていたのだが、対談の「本人の選択によって行動した結果本人に起きたことについては、本人が責任を負うのは当然の話です。・・・結局、「自己責任論」は「責任が発生するような行動はするな」ということなので、行動できる内容は、自分で選択可能なものではなくて、政府や世間など本人以外が設定した範囲でしかなくなってしまう。「自己責任」という言葉を使いながら、実際は「自己責任なんか取れないのだから、政府や世間が認めた範囲で行動しろ」と言っているのが「自己責任論」です。実態としては「自己責任は取らせない論」ですね。」とのコメントを読んで、違和感がすっと晴れた。
更に、身代金支払いの是非については(本ケースでは、安田氏の説明を読む限り、支払った可能性は低いと思うものの、真偽は結局のところ政府・外務省の関係者にしかわからない)、藤原氏の「ほかのどの仕事でも労働災害は起きます。捕まったり死んでしまったりというのは、我々の仕事においての労働災害だと思っています。だからこそ、労働災害が起きたときに、必要以上に否定されたり、持ち上げられたりするのはどっちもうんざりなんです。」というコメントにはっとさせられた。前述の通り、欧州ではジャーナリズムの社会的価値が確立しており、身代金を払ってでも解放させることは、社会的にコンセンサスがとれているが、日本にはそうした価値観は醸成されていない。そうした中で、日本のジャーナリストはどのような心構えでその仕事を全うするのか。。。
まさに「戦争取材と自己責任」について、深く考えさせてくれる一冊である。
(2019年12月了)続きを読む投稿日:2019.12.30
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