死んだレモン
フィン・ベル(著)
,安達眞弓(訳)
/創元推理文庫
作品情報
酒を飲んで運転し、自損事故で下半身の自由を失ったフィンは、心機一転、ニュージーランド最南端の町へ引っ越す。住居は人里離れたコテージで、26年前にその家に住んでいた少女が失踪していた。彼女が消えてから6週間後、不気味な三兄弟が住む隣のゾイル家の土地から、骨の一部が発見された。住人は逮捕されたが結局未解決となっていた。ゾイル家の関わりは明らかなのに証拠がない場合、どうすれば? 事件を詳しく調べ始めるフィン。だが5か月後、彼は三兄弟に命を狙われ……。最後の最後まで読者を翻弄するナイオ・マーシュ賞新人賞受賞作。/解説=吉野仁
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商品情報
- シリーズ
- 死んだレモン
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元推理文庫
- 書籍発売日
- 2020.07.31
- Reader Store発売日
- 2020.07.30
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 423ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (33件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
珍しきかな、ニュージーランド発ミステリ。
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ナイオ・マーシュ賞新人賞受賞作とのこと。
幼い頃を南アフリカで過ごし、若くして成功した主人公のフィン・ベル。
35歳を過ぎた頃から、午前3時になると目覚めてしまう不眠に悩まされ、酒に溺れる。
妻との別れを迎えた矢先、交通事故に遭い下半身麻痺の障がいを負ってしまう。
事故後のリハビリ、セラピーを経て、まだ明確な意志は形作られないものの、酒を断ち、事業を売却し、”南の南、ニュージーランドの果ての果て”リヴァトンのコテージを購入し人生のリスタートを切ろうと移り住んできた。
そんなベルが冒頭、車椅子と共に崖で宙吊りになり、目前に迫った死を嘆くシーンに始まる。
車椅子ラグビー(マーダーボール)にも出会い、人生に希望を感じ始めていたのに。
なぜこんなことになってしまったのか。
全ては隣人のゾイル家に関わってしまったせいだ。。。
ベルがこの地に身を置くことになった6ヵ月前のパートと現在のパート。
次第に過去が現在に追いついてくる形式の物語。
原題「Dead Lemons(死んだレモン)」とは人生の落伍者の意とのこと。
ベルはリヴァトンの地で出会ったセラピストのベティから「あなたは人生の落伍者かしら?(障がいに甘んじ、人の助けに頼りながら苦しみに耐え抜く人生を歩むのか)」と些かキツい投げかけをされ、今一度自立を図るべく自己に向き合っていく。
序盤の掴みこそ良かったものの、ミステリ的な側面としては、隣人がかつての凄惨な事件の関わっていたのではと疑い、過去をほじくり返す内に自分の身にも様々な脅しや危険が迫るが、それにも屈せず真相に突き進む、というよくある話。
車椅子利用の主人公が特徴と言えば特徴だが、解説でも言及されていたリンカーン・ライムという絶大なる先例があり、二番煎じ感が。
また、著者はかつて法心理学の専門職に就いていたようで、時折プロファイリングめいた深層心理の分析と、濃い洞察、示唆が語られる場面がある。
これが肌に合う人はまた違う味わいがあったとは思うが、これもまた自分的には内的な難しい感情をこむずかしい理屈で説明されるのはあまり好きではなく、なんかちょっと違うかもとマイナス要素。
解説の受け売りだが、世界的に有名なニュージーランドのミステリ作家と言えば本書が受賞した賞の冠ともなっているナイオ・マーシュくらいしかいなかった(不勉強ながら存じ上げませんでした)が、このフィン・ベルが俄然注目株とのこと。
そうかそうか、国内外産問わず良質なミステリが色々と楽しめる環境にある日本にいて自分は幸せだなと思ったが、はて、そう言われてみると海外でも人気のある世界的な現役日本ミステリ作家って?と。
そもそも、翻訳されて読まれることってあるのだろうか?
海外ミステリに傾倒しぎみの自分が言うのもなんだが、もったいないなぁ。
けっこう面白い作品沢山あるけどなぁ、と全然違う方向に思考が飛んで行ってしまった。投稿日:2023.09.03
初フィン。タイトルに惹かれ、手に取った本作。ミステリィよりサスペンス要素強め…かな。もう考えてもゾイル兄弟としか思えないのに、なかなか尻尾を掴ませない。読んでいてとてももどかしい——。が、頑固もののフ…ィンとリヴァトンに住む周りのキャラクタたち(厳しいセラピストのベティ、強引だが友達想いのタイ、そのいとこのパトリシア…など)がそれを補って余りあるくらい魅力的だ。作者が心理カウンセラーだからか、人生に示唆を与えてくれる言葉がいくつもあったように感じる。期待値は上回らなかったが、決してつまらなくはない。星三つ半。続きを読む
投稿日:2024.04.22
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