ディア・ペイシェント 絆のカルテ
南杏子(著)
/幻冬舎文庫
作品情報
病院を「サービス業」と捉える佐々木記念病院で内科医を務める千晶は、日々、押し寄せる患者の診察に追われていた。そんな千晶の前に、嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れた。座間はじめ、様々な患者たちのクレームに疲弊していく千晶の心の拠り所は先輩医師の陽子。しかし彼女は、大きな医療訴訟を抱えていて。現役医師による感動長編。
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商品情報
- シリーズ
- ディア・ペイシェント 絆のカルテ
- 著者
- 南杏子
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎文庫
- 書籍発売日
- 2020.01.23
- Reader Store発売日
- 2020.01.23
- ファイルサイズ
- 0.8MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (45件のレビュー)
-
2024.2.26 読了 ☆9.2/10.0
「病院という閉塞的で悲痛な医療現場からの心の叫び」
「綺麗事では済まされない医療のリアル」
「小説というフィクションに乗せた医療従事者からの切実なメ…ッセージ」
読み終えて、自分なりに受け取った本書からの“伝言”です。
南杏子さんの本は『いのちの停車場』、そして最近読んだ『サイレントブレス』に引き続き3作目です。
本作は、民間病院の医師である主人公の真野千晶が、自身の務める病院が掲げる患者様プライオリティな経営方針と、理不尽な要求や悪態をつく患者の狭間で疲弊しながらも理不尽に立ち向かい、もがき、時に反発しながらも受け入れて邁進していく、医者としての成長譚と、その舞台であるリアルな医療現場が描かれた物語です。
以前読んだ『サイレント・ブレス』は、患者の緩和ケアがテーマで、とても穏やかな気持ちで読めましたが、本作は一味違います。
モンスターペイシェント、医療訴訟、コンビニ受診問題など、医療現場の限界が目を疑うほどリアルに、そして辛いほど描かれていて、読み進めるほどに怒りや絶望、哀しみ、そして最後には勇気と励まし……さまざまな感情が湧き出して、とても疲れを伴う重厚感のある作品でした。
出てくる数々の事例を脚色が濃いフィクションと願いたい一方で、南さんがが現職医師であり、解説の中山裕次郎さん(泣くな研修医シリーズで有名。彼の作品も読んでます)も描写はリアルであると述べられていたことからも、本作を医療従事者からのSOSメッセージと受け取りました。
私も定期的に通院している患者の身です。
医療に救われ、お医者さんに励まされ、医療現場に支えられている側だからこそ、患者としてのモラルの大切さを、登場するさまざまな患者・患者家族を反面教師として実感しました。
確かに、診察の待ち時間にイライラしたり、短過ぎる診療時間に不誠実さを感じたこともあります。
ただ、本作を読み終えた時はそんな自分を一蹴してくれた本作に感謝するとともに、自戒の念が芽生えました。
それこそがこの本の価値であり、読書というものの産物なんんだと痛感しました。
〜〜〜〜〜印象に残った言葉・フレーズ〜〜〜〜〜
“「病院がデパート化したからね・・・昔は、『治療さえ受けられればいい』というのが世間の空気だった。けれどデパートみたいに綺麗なインテリアに囲まれて、『病院はサービス業』というイメージが強くなったからクレームが増えたって聞いたわ」
「サービス業だから、サービスに不満があれば苦情を言うのは当然、ということですか」
「簡単に言えば、そうね。黒者さんに悪気がある訳じゃない。医者が歩み寄らなければ」”
“スタックも知らぬ間に乳井患者が院外へ出てしまう「離院」は、病院が最も嫌う事態だ。
それは、医療事故に近い状況と言ってもいい。
もし患者が外に出て事故にあったりすれば、病院の責任になる。かといって、安易に患者の部屋に鍵をかけるのは「拘束」であり人道的に許されない。鎮静薬を使うのも同様だ。
物理的か精神的かの違いがあるだけで、どちらも患者に対する「拘束」になる。急増している認知症患者の安全管理は、病院にとって難しい問題のひとつだった。”
入院中の患者自身の安全に配慮し、周囲への迷惑行為を抑制しつつ、家族の納得がいく治療をするのは、本当に難しいと感じざるを得ませんでした…
“患者の説明要求に付き合ってたら、診察時間が無くなる。
主張はもっともだ。どんなに的外れなクレームであっても、患者が納得するまで説明しなければならないとしたら、いったいどのくらい時間が必要になるだろう。
その間、他の患者の治療は放置してもよいのか。優先すべきは、より多くの患者を救うことではないのか。けれど、クレーマーを放置したために問題がこじれ、それが原因で通常の医療が脅かされるなら・・・・。
何が正しくて、何が正しくないのか。ときにその境界があいまいになる。クレームには、いったいどこまで対応すればいいのだろう”
まさに医療現場からの悲痛な声です……
“待たされる患者のつらさを考えれば、誰もが何とかしてあげたいと思うものだ。けれど現実は手一杯でどうしようもない。
よく「三分診療」と悪口を言われる。しかし、患者をひとりとして拒まず、全員を受け入れる方針である限り、待ち時間は長く、ひとり当たりの診療時間は短くなってしまう。待ち時間を抑え、かつ長く診察するためには、患者の数を制限するか、医師の数を増やすしかない。個人の力で解決できる問題ではなかった”
“「病院や医師を悪く言うのは、患者の憂さ晴らしなのよ。世間的なイメージに乗っかって言っているだけ」
「『憂さ晴らし』・・・ですか。感情のはけ口が医療従事者に向かうっていうのは寂しいですね」
「寂しいし、ギスギスして嫌よねえ。ホントの話、私たちが一生懸命やるのはお金のためじゃない、使命感よ。深夜まで、それこそ命をかけてやっている。それでも患者は、金儲けだから当然だという顔をして、サービスが悪ければ容赦なく文句を言ってくる。ああ、本当に嫌よねえ。病院が赤字なら患者は満足するのかしら。おかしいわよねえ」
「日本みたいに安く医療を提供している国はない。クレーマー患者の過剰な要求は、ファミレスの値段で三ツ星レストランのフルコースを要求するようなものだ。そんなんでシステムが成り立つ訳がない」”
“「ここでたくさんの人々を看取ってきた。それで分かったのは、人はいつか必ず死ぬということだ。だから、治すための医療だけじゃなくて、幸せに生きるための医療を考えてきた。
たとえ病気があっても、その病と共存して、最後まで心地よく生きられるような治療を誠実にやってきた。その先に死があっても、それは受け入れる」
「死を納得するのは時間がかかるから、無理はしないでいい。でも、その死が運命だったんだって気づくと、自分が少し楽になれる」
「誠実に患者を癒し続ける人でありなさい。その医療が、いかにささやかであろうが、愚純に見えようが、誤解を生もうが、力不足であろうが、それでいいんだ」
「ささやかな医療であっても、誠実ならばその気持ちは必ず患者に伝わる。愚鈍に見えても、いつかそれが王道だと知ってもらえる。誤解を生んでも、時を超えて理解されるときがくる。力不足だったという経験を糧に、精進すればいい。最初から完璧な医師なんていないんだから」
「どんなふうに思われようが、何があろうが、それでも患者に誠実な医師でいなさい」”
この言葉には胸打たれました。
人としての誠実さ、誠意ある行動、まごころ、やさしさ
仕事をする上で、いやそれ以上に生きる上でとても大切な要素に感じます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
感動で涙が止まらない医療ものではありませんが、医療現場を理解することの大切さ、将来抱えるであろう介護の現実、自らの患者としてのモラル、支える側の覚悟などなど、たくさんの気づきと学びがあります。おすすめです!続きを読む投稿日:2024.02.26
内容云々より、医療現場のリアルを当事者が世間に伝えるために書いたという点ですごく価値のある作品だと思いました。私自身も病院で「待ち時間長いなー」など思ったことは1度や2度ではありません。この作品を読ん…で医療現場の闇や医療従事者が命を削って命を救っていることを知り、いたく反省いたしました。この作品を通して、1人でも多くの人の病院に対する見方が変わればいいなと思います。続きを読む
投稿日:2024.04.21
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