ライトノベル
姫神さまに願いを
シリーズ内の平均評価:
(87)
完結
比叡山を出て諸国を放浪する行脚僧カイは、童顔が悩みの二十二歳。安房国の海辺で不思議な少女テンと出会った。追われているというテンは、初対面のカイから昼御飯を強奪したあげくに「助けてくれなければ、祟ってやる」と脅迫する。追っ手の侍たちを振り切った二人は、テンが世話になっているという稲村城に向かった。そこでは、若き城主・里見義豊をめぐってお家騒動が起きていたが・・・!?
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テンとカイ――武田信玄が『天海』と呼び、消息を追っている二人は、常人と異なる時間を生き、旅を続ける。その行程は本州を越え九州に及んでいた。宇佐八幡宮の北辰殿に籠もり清め祓いをするテンを置き、カイが訪れた先は若狭国名田庄、土御門家。そこでカイは深い縁に結ばれたハル、そして宗主・有脩と再会を果たす。カイには、どうしても有脩に在り処を占ってほしい「モノ」があった。
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春、睦月。晴明は先年の秋より、天文道を修める学生となり、慌ただしい陰陽寮に日々詰めている。その理由はただ一つ――平安京呪詛対策である。だが晴明は、京を呪うその元凶が御霊天神・菅原道真ではなく、雷神を操る死霊の気を身に絡ませた「少女」であることを知っている。しかしその行方が知れない。そんなある日、二道博士――晴明の師・賀茂保憲が一月ぶりに出仕してきたのだった。
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熊野の神より晴明の妻と定められた陵王の体調がこのところ優れない。晴明は陰陽寮の学生として師走の宮中を走り回っている。安倍の邸では父保名がそんな二人に苛立っていた。そんな折、保憲の北の方文姫から陵王に文が届いた。産前産後の穢れから護る役を頼まれたのだ。自らの身を顧みず勘解由小路(かでのこうじ)の邸に入った陵王だったが、或る夜二人を乗せた車が突如炎上するという事件が起こった。
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戦国乱世、春。カイとテンの二人は北伊勢の隠れ里を訪ねた。目的は、自分たちを追う武田の透波の動向を探るため。しかし逆に雲恵から妻幸を尾張国まで同行させてほしいと頼まれた。尾張に入るなり九年ぶりに知己カグヤと出会った一行は再会の喜びに浸る間もなく人買いに攫われた。「囚われの姫君」となったテンたちは、そこで織田信長の妹於市と妻生駒御前と出会うことになるのだった・・・。
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近頃、梛子の機嫌が悪い。隠国の神から妻にと望まれた狐精が荒れる原因は、陵王と通称で呼ばれる少女が、賀茂邸に行ったきり安倍邸に戻ってくる気配がないこと。しかも、自分が戻れば「災禍の兆しあり」と追い返される始末。さすがの晴明も少々手をやいていた。そんな折、安倍保名の異母兄から晴明に頼み事があった。聞けば、彼の長女に取り憑いた物の怪を祓ってほしいとのことだった・・・・・・。【目次】Farewell Shine/とらのおんがえし/あとがき
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雪の夜、訣別の言葉を告げ、テンは消えた。常人の身に戻ったカイは長尾景虎の下で想いを馳せる。平将門、安倍保名と星神摩多羅との奇し縁。そして自らにまつわる血筋の謎。一方、テンは甲斐国の楼閣に、新皇将門の地気と史跡を穢す男によって幽閉されていた。姫神を己が伴侶に迎えるため、摩多羅さえ呪詛する、その男の名は武田信玄。すべては戦国乱世を治めんとする彼の野望であった。
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時は戦国、永禄三年。カイの身の内で奇怪な現象が起こっていた。まず一睡のうちに初夏から秋に季節が変わっていた。躯の節々がミシミシと軋む。心当たりが一つあった。眠る前、カイは神の前で未来を誓ったテンと夫婦の契りを無理矢理交わした。勇気を振り絞ってその顛末を確かめると、テンはカイが九十九日の間眠っていたこと、そして摩多羅と自分にまつわる『血の謎』について語り始めた。
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「実は、梛子の元に通う者がおるのだ」柱の陰に潜んでいた我が父・保名からその言葉を聞いた時、さすがの安倍晴明も声調が狂った。近所からモノノケ屋敷と常日頃呼ばれている安倍邸。しかしその日常はいたって長閑なものであった。居候の狐精の相手を探ることで父を落ち着かせた晴明だったが、彼の前に現れたのは、霊眼を保ち、不可思議な身形をした十四、五の少年――陵王であった。
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名もなき戦死者たちを弔うべく、カイとテンは三河と尾張の国境に留まっていた。ある日、間者と間違われたカイは囚われの身となった。連れていかれた先は、駿河の巨星・今川義元の陣。だがそれが、青年兵・松平元康との思わぬ再会を果たすこととなった。時は戦国、元康が少年期を共に過ごした信長の首根っこを押さえつけようとする義元との間で、戦の火蓋がいま切って落とされようとしていた。
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宇宙と森羅万象の揺らめきの中に佇む道をめざす陰陽得業生・安倍晴明。その素質は既に認められているものの、父・保名と狐精・梛子との奇天烈にも呑気な生活は続いていた。皐月のある日、伏見鳥辺野で、頭に髑髏を載せたキツネに化かされた保名が這々の体で帰宅した。いや、老狐を連れ帰った。涙ながら狐が語るには、一族の姫が一目惚れした恋の悩み、それを晴明に聞いてほしいという。
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暦は陰暦八月、葉月。テンとカイは大和国吉野の山中にいた。精進潔斎のため滝行をするカイは目を丸くした。上から何かが滝壺に落ちたのだ。落ちてきたのは青年山伏。よくよく顔を見ると、長尾平三景虎――今は帝より官位を授かった長尾弾正小弼景虎であった。思いがけない再会に喜ぶ平三は言う。「高野山へと詣でて世俗も捨て得度し、高僧となることを目指そうと思っているのです」
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私の聖母(マリア)はたった一人だけ。二人も要らない――晴明の転生である耀夜は冷たく言い放つ。前世母であったはずの八幡の巫女から命を狙われた耀夜の心には、もはや「復讐」を叶えることしかない。一方、カイは、時の陰陽頭・土御門有脩の邸を訪れていた。転生することはない存在・安倍晴明。それが何故ありえたのか? その謎を解きたかった。有脩は小鬼を従えながら、穏やかに話し始めた。
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