移り香
可南さらさ(著者)
,陵クミコ(イラスト)
/プラチナ文庫
作品情報
八島グループ副社長の八島要は、音信不通だったカメラマンの弟・清司を2年ぶりに訪ねた。迷惑顔の清司に、社内の派閥争いを鎮めるため持ち株の譲渡を求めた要は、ヌードを撮らせろと要求される。不遜な態度を見せつつも、追い詰められた自分をぶっきらぼうに慰める弟の真意もわからぬまま、要求を呑んだ要。清司の強い視線に晒されるたび、なぜか胸が奇妙にざわめいて・・・・・・。
商品情報
- シリーズ
- 移り香
- 出版社
- プランタン出版
- 掲載誌・レーベル
- プラチナ文庫
- 書籍発売日
- 2011.05.10
- Reader Store発売日
- 2018.04.13
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 304ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.9 (7件のレビュー)
-
実兄弟、弟×兄。
長年好きで好きで堪らなくて、諦めつつも幸せに目を細めているような弟が堪らなかった。途中も本当に男前です。格好良い!
続編があるようなので期待しています。投稿日:2013.10.29
このレビューはネタバレを含みます
思ってたよりずっとよかったというのが正直な感想です。(失礼)細かいことを言えば、色々とツッコミどころはあったのですが、お互いを思う兄弟愛に胸がキュッとなりました。
レビューの続きを読む
弟がすごくすごくよかった。
ガチで兄…弟なのだけど、そのあたりの禁忌を犯すドロリとした背徳感みたいのはあまりなかった。
幼い頃事故で両親をなくし、資産家だった父の実家に引き取られた兄弟。
跡取りとしての重圧。自分がいい子でいなければ自分達の居場所がなくなってしまう。唯一の拠り所である幼い弟と離ればなれになってしまう。常に兄としての責任感を感じていた要。
幼い頃から兄が大好きで大好きで、いつしかそれが恋愛感情だと自覚して絶望した清司。それは望んではいけないもの。決して手に入らないもの。
兄のそばにいることに耐えられず、家を飛び出したことを身勝手だとなじられても本当の理由は告げられない。
心のよすがだった弟に裏切られたと思い傷ついても、一族の中で孤軍奮闘する要。しかし周囲の目は冷たく、祖父の死で後ろ盾を失った要は窮地に立たされる。
起死回生を狙って、不本意ながらもカメラマンをしている清司を久方ぶりに訪ねた。祖父が遺言で弟に遺した株式を譲り受けるために。
二年ぶりの再会にもかかわらず、取りつく島もない清司。なぜそんなにも自分を嫌うのかと、売り言葉に買い言葉で、要は株の譲渡を条件に『ヌード写真の練習台になる』約束を交わしてしまう。
『アンタには色気がない』とあざ笑うように、戯れのように体に触れてくる清司。一方的に昂らされてしまう羞恥に混乱しながらも、要は不思議と頑なに凝り固まった心が溶けだしていくような感覚にとらわれる。
清司の前でだけは弱味をさらけ出していいのだと。
認められたいと必死に頑張ってきた努力が報われず、涙を流す要に労るように清司の唇が触れてくる。額に、頬に、まるで小さな子供をあやすみたいに。けれども唇だけには決して触れない。
まどろむ要の髪をやさしく梳く清司の指先。そっとなぞるように唇に触れては名残惜しそうに去っていく。まるで指先でキスされてるみたいだと要は思う。
そしてみつけた白い木箱にしまわれていた写真。
すべては日常の何げない瞬間。怒っている要。ご飯を食べている要。清司の部屋で安心しきった顔で眠っている要。撮る側の愛情が溢れ出すような、やさしい色合いのスナップ。一体どんな気持ちでファインダーを覗いていたのだろうと思うと、何だか泣きたくなる。
『あれがお前の東京タワー?』のくだりが胸に残った。
清司の気持ちを受け入れた要だけれど、やっぱり“ほだされた感”は否めない。
ようやく欲しいものを手に入れたのに、いつか兄が我に返るのではないと、どこかで終わりを予感しながら心を揺らしている清司がいじましくて、積年の想いを遂げた圧倒的な幸せ感よりも切なさの方がまさった。
ちょっとおまけして4☆続きを読む投稿日:2013.01.18
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