この作品のレビュー
平均 3.2 (9件のレビュー)
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実は甘く見ていた。軽いエッセイだと思っていた。しかし、そんなものをわざわざ35年ぶりに復刊、初文庫化しないだろう。もちろん第一章の「外国人から見た日本人」のいろいろは、幾つかは現代でも当てはまり、幾つ…かは国際化した日本では当てはまらない等々の「感想」を喚起する「読み物」になっていて、現代的だろう。
しかし、第ニ章の、特に「日本古典文学の特質」は、久しぶりに接した充実した日本文学論、日本文化論になっていて、唸った。「名著」である。私は既にこれと同じ議論を加藤周一「日本文学史序説」で読んでいて、有る程度それによって、この40年間を過ごして来た。キーン氏の指摘は重なる所もあるが、重ならない、いや他の言い方で言えば、同じ部分をつついていて重点がずれている部分が多かった。それはもしかしたら、あくまでも日本人として世界の文学を見てきた加藤周一か、外国人として日本の文学を見てきたキーン氏か、という違いなのかもしれない。以下、その論文から刺激を受けた部分をメモして、最後に私の感想を書く。
「日本古典文学の特質」(1978.11)
(1)日本の詩歌は韻を踏まないので、七五調を基本にするが、内容が「何か電流みたいなものが流れていないなければ」すぐに散文になる。外国文学(西欧も中国も)は、韻によってまたは、ストレスアクセント(平仄など)によって詩歌と散文が分かれる。
(2)日本人は偶数を嫌い奇数を好む。幾何学模様を嫌う。
(3)本歌取りは剽窃ではない。「未踏の地」には興味はない。
(4)余剰の文学。始まりと終わりが大切で、真ん中の箇所には沈黙を守る。
(5)連歌や連句のような座の文学が多く、全体の構造は問題にならない。歌舞伎や浄瑠璃も合作が多い。浄瑠璃『忠臣蔵』の3人の作者を誰もあげることはできないだろう。能は、始まり前から主人公は死んでいる。始まりも真ん中もない終わった話。西洋にそういう芝居はない。また、パラグラフの概念がない。どんな発言も、一つの長い文句(センテンス)になる傾向がある。
(6)散文の特徴は、主観的である、ということ。日本の小説は日記から生まれた。日記が自伝になり、物語になった。西洋・中国は、伝記から小説になった。「源氏物語」に政治や軍事はない。「平家物語」でさえ、勝利ではなく、負け戦を、1番聞き所は「敦盛の最期」等々の最期の話。
(7)西洋ではラテン語では小説を書かなかった。浄瑠璃は、舞台用語で書かれた。また、文学論が早く発達した(源氏物語、無名草子、歌論、評論も文学と思われている)。
(8)世界の文学と大いに違うが、日本文学は難解ではない。なぜならば、そこに「あらゆる人間に共通なテーマや表現がある」から。
加藤周一は(3)(4)(7)については、ほとんど書かなかった。そういう意味で新鮮だった。ここに書いていることは、おそらく「日本文学の歴史」で、全面的に展開されているのだろう。池澤夏樹の日本文学全集読破の暁には紐解きたいと思う。日本文学史を語ることは、即ち日本思想史を語ることである。それは日本の未来を語ることと直結するだろう。私が興味を覚える所以である。
2018年3月読了続きを読む投稿日:2018.03.12
1970年代から80年代にかけて、日本人がキーンさんにする質問ときたら。。。当時外国の人をひっくるめて『外人』と呼んでいて、しかも『外人』 と言えばいわゆる欧米人、もっと言えば白人だったように思う。今…思えば私も似た様な印象からくる疑問や質問を持っていた事は否めず、さぞかし不愉快な思いもされてきた事でしょう、と恥ずかしい気持ちにもなりました。
後半はキーン先生が研究されてきた様々な日本感が綴られておりとても勉強になります。
谷崎潤一郎氏との思い出も語られていて、谷崎源氏を読んでみたくなる。とても分かりやすい現代語訳から入った方がいいかしら?なんて考えるきっかけも与えてくれる良き一冊でした。続きを読む投稿日:2023.07.02
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