小指が燃える
青来有一(著)
/文春e-Books
作品情報
「沈黙のなかの沈黙」
長崎に住む作家の「私」は20代の頃、同僚の義父の葬儀に参列して、「夜、もうひとつのお葬式がある」と聞かされた。さては隠れキリシタンの秘義か? と色めきたつ「私」に同僚は困惑を隠さない。そのときから「私」の脳裡に一組の男女が棲みはじめた。
「私」はやがて、弾圧の時代にもキリシタン信仰を守り抜いた一族の末裔を主人公とする小説を書いてデビューする。しかし、それは底の浅い、通俗的な物語ではなかったか?「私」はやがて書きあぐね、行きづまる。
自分は、遠藤周作『沈黙』などの物語をこの土地の歴史に編みこんでいたのではないか? 虚構の記憶をも土地に重ね、本来の土地の姿を見失っていたのではないか?
幕末の潜伏キリシタンのプチジャン神父による発見という「物語」を批判的に乗り越える試み。作家としての出発点へ立ち返り、新たな地平へと飛翔を遂げる問題作。「小指が燃える」
長崎で戦争や敗残兵の物語を紡ぐ「私」の元へ、小説は面白くなければ、売れて読まれねばと言い切る元政治家の先輩作家(石原慎太郎)と、原爆体験を書き継ぐ女性作家(林京子)のまぼろしが交互に訪れる。
体験していない戦場や爆心地を書くのは、そこに美を感じ魅了されるからではないか。それは堕落、倒錯ではないか・・・。
己に問い直しながら「私」は、以前、文芸誌に発表した敗残兵の物語を書き直しはじめる。力作中篇240枚。
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商品情報
- シリーズ
- 小指が燃える
- 著者
- 青来有一
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-Books
- 書籍発売日
- 2017.08.07
- Reader Store発売日
- 2017.08.07
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 232ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (4件のレビュー)
-
小さな岬の寺でのお葬式、ここから隠れキリシタン・潜伏キリシタンの関係や習俗、信仰の継承の話へと。
私が常々不思議に思っていた、言葉の壁がある宣教師の教え。タタリを恐れて?
主人公の十数年後~三十年後へ…と、外から自分を見ている姿がリアルに感じられてゾクッ。
「小指が燃える」は、敗残兵士の物語。続きを読む投稿日:2017.09.07
『私たちは探し求めているものしか見えないのだ』―『沈黙のなかの沈黙』
私小説風の、と言いかけて言い淀む。私を語っているようで、それは虚構の世界の中に巣食う私でしかない。その嘘の私が、実の私の書いた物…に言及し、書きつつある物を説明する。その虚構の世界の私もまた、自身が書いた物の中に迷い込み悶々と己の内に秘めた狂気と対峙する。営々と続くのは神に対する不信と、不信を咎める信仰心の対立。信仰の根には何があるのか、現実の世界における神の不在をどのように捉えるのか、そんなことを鬱々と内省し続ける。
この寡作の作家の作品を細ぼそと読み継いでいたつもりではあったが、どうやら単行本を一冊読み飛ばしたらしい。この文体は既にその作品で取り入れられたもののようだが、想像していた文章との違いに少したじろぐ。こちらも読んでいない文芸誌に発表された作品「小指が重くて」への重度の言及にも戸惑う。それでもこれを、この余りにも作家の内面をあからさまに描写する文章を小説と呼ぶのなら、そこに作家自身を読み解くのではなくメタファーとしての存在を通した先にあるもの、言い掛けているものを読み解かなければならないのだろう。
それはこの作家の作品に現れる不変な問い。人間はどこまでも残酷になれるのか、それとも残酷な人間は神の恩寵とは無縁の存在なのか。残酷な人間に生まれついてしまったものは真の信仰を持ち得ないのか。苦しみを受ける側に対する慰めとなる神の不在についての説明は幾つもあるが、加害者側に対する神の救済は赦しということ以外に見当たらない。では赦しとは告解するだけで与えられて当然なのか、犠牲は常に神に対する信仰心を試すものと捉えなければならないのか。『私たちは、苦しみ、死、災厄、不幸、悲劇などと呼ぶものを、ほんとうは自由の代償と呼ばなければならない』。ジョン・ファウルズの警句がじわじわとナイーヴな哲学を腐食する。続きを読む投稿日:2018.12.14
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