トレント最後の事件
E・C・ベントリー(著)
,大久保康雄(訳)
/東京創元社
作品情報
アメリカ実業界の巨人マンダースンが、イギリスにある別邸で頭を撃たれ殺害された。突然の死を受け、ウォール街はじめ世界の投機市場は大混乱に陥る。画家にして名探偵のトレントは懇意の新聞社主に依頼され、この事件を解決して記事にするべく、特派員として現地に赴いた。そこで彼は最重要容疑者である、被害者の美しき妻メイベルと出会うのだった。盟友チェスタトンに捧げられた本書は、独創的な大トリックを有し、恋愛の要素をミステリに持ちこみ成功している。推理小説を旧来の型より大きく前進させ、黄金時代の黎明を告げた記念碑的名作。/解説=杉江松恋
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商品情報
- シリーズ
- トレント最後の事件
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2017.02.24
- Reader Store発売日
- 2017.05.29
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 326ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (3件のレビュー)
-
この作品はタイトルが「トレント最後の事件」である。
最後というからには少なくとも最初の事件があったはずで、探偵トレントシリーズかと思いきや、本作はベントリーのデビュー作らしい。
シリーズだと最初から順…を追ってきちんと読みたいわたしとしては、自分の作った決まりから外れるところだけれど、デビュー作らしいので十分愉しめる。
トレントは画家で、探偵としての才能も備えている。今までも数々の事件解決に貢献してきた。金田一耕助のように風采は余り良くないが、ひとの心に入り込む好印象を与える人物だ。
そのトレントが、アメリカ実業界の大物マンダースンが片目を撃ち抜かれた射殺体となって発見された事件を解決する。
こういういかにも切れ物ではなく、ちょっと頼りないくらいの人物が活躍する設定が好きなので、ここまでは面白い。
作品で扱われるのはマンダースン事件のみで、その後は全く事件は起こらない。
事件自体はなくても、どうなるのかと気がかりな展開をする作品は多いが、それも特にない。
マンダースン夫人が美しく知的で、誰からも好かれる人物であるため、この人物を巡って色々ありそうだと思うが、特に何もない。
比較的早い段階から、これって何なんだと思い始めた。
一応推理もののようだが、怪しい人物はだいたい絞られ、トレントが予想した事実も概ね想像出来た。
そして、想像通りだった。
作品中盤辺りから、物語が推理ものから別方向へ進み始める。そして、謎解きが始まり、やけに早く解決するなと思う。
どこに向かっていくつもりなんだと戸惑い、若干興味が薄れながら読む。
ラストでちょっとしたどんでん返しがある。
しかしそれも、そうなるんじゃないかと思っていた。そのため特に衝撃も受けない。
このどんでん返し部分が、この作品の中では盛り上がる場面だろうと思う。
更に、最後の最後で「トレント最後の事件」というタイトルの意味がわかる。
だから、最後なのかと。
そこも、そんな大袈裟なと感じてしまう。
金田一耕助もよくする事件の真実を隠しておくという、人情味溢れた大団円。
わたしはこういう、ひとりの判断で真実に勝手に蓋をするというのが嫌いだ。
そこが金田一耕助のやさしさで魅力だというひとも多いことはわかるが、やはり誰かに肩入れして真実を捻じ曲げるのはおかしいと感じてしまう。真実を明かしたときに、それに伴い哀しい事実が浮かび上がる悲劇と、誰かの命が失われた事実の解明は別の問題だと思う。それをごっちゃにして、無かったことにしましょうは乱暴すぎるし傲慢だ。
この金田一耕助式大団円が本作でも起きる。
起きると断言してはいけないだろうが、そうだろうことが文章から明らかだ。
ということでラストも好みでない。
帯に、“乱歩が惚れた大傑作”とある。
これに惹かれて読みたくなったのだが、乱歩はどこに惚れたのだろう。
美しい夫人が出てくるところだろうか。
美しい夫人に心乱された人物の行う奇行だろうか。
乱歩作品から感じる倒錯した醜い美というもの程でもなく、至って中庸に感じたのだけれど。
余り好みではなかったけれど、こういう出会いもまた献本の良さなのだと思う読書だった。続きを読む投稿日:2017.03.17
第一章から衝撃の展開で幕があがる本書。探偵が事件を解決し、それで終わりと思いきや、そうはならない本書。江戸川乱歩が絶賛した物語。ミステリファン必読の一冊。
投稿日:2024.04.25
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