七日目は夏への扉
にかいどう青(著)
/講談社タイガ
作品情報
学生時代の恋人・森野の訃報。初めて聞くはずのそれをわたしは知っていた。残された証拠から推測すると、森野は自殺したのかもしれない。それも殺人を隠蔽するために。死の真相をさぐるうち、わたしの一週間が崩れだす。火曜日の次の日は月曜日。次は水曜日で……。意味がわからない。けどこれだけは言える。あいつが死ぬのは七日目だ。なら、やるべきことは決まってる――。
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商品情報
- シリーズ
- 七日目は夏への扉
- 著者
- にかいどう青
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社タイガ
- 書籍発売日
- 2016.08.17
- Reader Store発売日
- 2016.08.18
- ファイルサイズ
- 11MB
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この作品のレビュー
平均 3.1 (10件のレビュー)
-
主人公朱音の、竹を割ったような性格が、読んでいて楽しかった。ストーリーもよくて、特に後半一気読みだった
投稿日:2021.05.30
タイトルにある通り、ハインラインの『夏への扉』のような過去と未来を行ったり来たり。
でもその移動はそんなに長い時間ではなくて、たったの一週間。
しかもただ一週間をやり直すのではなくて、学生時代の元恋人…森野が死ぬ火曜日の次は月曜日に戻り、次は水曜日……とバラバラになっている。
森野の死の真相を探り、それを食い止めるためにタイムリープ&やり直しを始める。
この設定、そしてタイトルと表紙イラストの清々しさ。
表紙の帯には「今日が死ぬのに最高の日だとしても。」
もうこれは面白いに決まっているだろう!
と思ったら間違っていた。
表紙のような海は出てこないし、女子高生が主人公の訳でもない。
主人公朱音の高校時代なのだろうが、当時の彼女の髪は黒ではなくパンクなピンク。
ちなみに拡声器も。
夏らしさなんてちょろっと出て来る青空と枯れた紫陽花くらいにしか感じない。
ハインラインの『夏への扉』のような壮大さはないし、「扉」が関係しそうな話でもない。
SFをテーマに「夏への扉」なんてタイトルをつけたことが間違い。
序盤はとてもいいのだ。
森野の車がガードレールを破壊して崖下に落ちたところから始まる。
そこに遭遇した朱音には、晴れた夏の空や日差しを浴びた木々が作り物めいて見える。
枯れた紫陽花。
朱音の焦り。
場違いに頭の中に流れ出すマキシマムザホルモン。
意識が飛んで月曜日に戻ってからは、姪のひびきとの軽快なやり取りがおもしろい。
朱音は事故のことは夢だと思い込んで、森野のことを思い出す。
「森野の笑顔はいつも少し泣き顔に似ていた。」
影がある感じの男なのか。
と思いつつ、ここでちょっと私には気にかかる。
メンヘラっぽい人が男女ともに苦手だ。
男は特に。
高野苺の漫画『orange』の翔とか、超気持ち悪い。
暗い面は誰にでもあると思うが、それを自分だけと勘違いして周りに不幸を振りまかないでほしい。
助けてほしいならそう言えばいいのに。
それが難しい気持ちもわからないではないけれど。
この作品、そういう登場人物が多い。
まぁそれでも、登場人物たちが立ち直って、前に向いていく話ならいいのだ。
しかし、事件は一応の解決を見せるものの、根本的な解決を見せていない。
同じことまた起きるぞ。
途中は盛り上がりに欠けて単調に見えるし、そもそも1週間をシャッフルする設定の必要性が見られない。
単純に一週間のやり直しでいい。
いや、極端なこと言えば、タイムリープ設定もいらないかもしれない。
シャッフルした曜日の記述の仕方もわかりづらい。
各章のタイトルに曜日が書かれているのだが、土曜日と書いていて、冒頭だけ木曜日の話とかしだすもんだから、誤植かと思った。
肝心の謎も、疑わしい人がもうそいつしかいないくらい限られていて、そのキャラクター像からシチュエーションも限られてくるので、意外性がない。
「不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」に従った場合、消去して残るものが全然奇妙ではない。
朱音は朱音で、サバサバして人情に厚いのかと思いきや、平気で周りの人を片っ端から疑い始めるし。
ラストは、スピード感ある文章で読ませてきたのはいい。
でも、あの状況であのシーンは長すぎだ。
緊迫しているのに、表現も冗長にすぎる。
そして何より許せないのが、表紙帯の「今日が死ぬのに最高の日だとしても。」というセリフが出てこないのだ!
きっと、ただのキャッチコピーのつもりだったのだろう。
でも私は、これがどんな心境で語られるセリフなのか、それを知りたかったのに。
たしかに、似たようなセリフは出て来る。
でも、作中で「詩とは翻訳されることで失われるなにかである」という言葉を紹介しているが、まさにその通り。
言葉がちょっと変わるだけで印象は全く異なる。
永遠に続く一週間から抜け出すには、これまでの繰り返しにはなかった大きなイベントがあるべきだと思うのだが、それも単純であっさりしている。
そして、改変した後のパラドックスにもお構いなし。
パラドックスはいろんな解釈があってもいいとは思うが、多少触れては欲しかった。
全体的にまとまってはいるが、もっとやれることあるだろう。続きを読む投稿日:2020.10.07
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