この作品のレビュー
平均 4.0 (6件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
明治時代の思想家、幸徳秋水が1901年にまとめた本。1894~1895年に日清戦争、1905年に日露戦争という時代。この時期は今後の日本の方向性が決まったといえる、この重要な時期に書かれた、この本の内容は非常に興味深い
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章は「前書き」「愛国主義」「軍国主義」「帝国主義」「結論」と分かれている。
愛国心の内容は現在にもつながる、いや国とは何かという大きなテーマで、今後も答えがでるか分からないテーマだ。ここで幸徳は自国中心の考えの元凶ともいえる愛国心を悲しむどころか「愛国心がのさばり蔓延することを許さず、必ず、これを刈り取らねばならない」と断言する。極端ともいえる意見に思える。だが、その40年後に「鬼畜米兵」「一億玉砕」「お国のために云々」というスローガンが生み出されていくことを考えると、軍国主義、帝国主義や戦争というテーマよりも先に愛国心の危険性を述べているのは、非常に興味深い
次章の軍国主義では軍事拡張のロジックが成り立っていない点と政治家批判(特に山縣有朋。幸徳は日清戦争での日本軍横領をスクープ、真鍋斌を休職に追い込んでいる)を繰り広げる。正直、現代で言う政治家批判の論調を盛大にしている、というのが正直な感想だが、「軍人が政治を行うことへの危険性」を警告している
さて、帝国主義であるが、ここで述べられているのは、やや散漫な印象を受ける。読み解くのが、当時の空気(歴史であり庶民の生活、思考等)がないと、しっくりとこないように思える。ここで述べられているのは帝国主義の目標が領土拡張という点。その目的が矛盾しているという点を論じている。だが、しっくりこない。なぜだろうか
仮に日本が領土拡張は考えなかったとする。その場合にどうするのか、どうすればよいかが全くみえてこないのだ。当時は植民地戦争真っ盛り。白人以外は全てモノ扱いとして、アジアは単なる侵略先でしかなかった。それに対しての対抗策をどうするのかという点だ。
日本が自国を守るには、朝鮮半島はおさえなければならない重要な拠点だ。朝鮮からすれば迷惑な話だが、日露戦争では、この拠点をおさえることで制海権を握ることができたのは事実だ。かといって、当時日本がそうせずにどうすればよかったのか。全く見えない
この本を読んで、現代の問題を解決する何か新しい知識を得るというのは当然無理な話だ。だが、当時を考え、今現在同じような選択肢をとる失敗は避けられるだろう。そして、レーニンらに先駆けてこのような著書を世に送り出した人物が日本にいたということを知るのは誇らしく感じる(これって愛国心なのかしら?)
なお、、この10年後に幸徳秋水は大逆事件の首謀者として処刑される。この本では「死刑の前」という未完の絶筆も掲載されているが、これも必見だ。死を前にした人間が書く文章とは如何に。
そして、幸徳の思いとは別に日本は軍国主義をつき進んで行く。投稿日:2017.08.16
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日清戦争後に書かれた著。
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帝国主義とは愛国心を縦糸とし、軍国主義を横糸として織りなされた政策である。帝国主義の隆盛により、軍費は天井知らず。金持ちは戦えば益々富が増え、一方貧民は何も得るところなく、…ただ国家のために戦い奴隷(のような)境遇に見を鎮めるだけである、にもかかわらず敵を討伐したという過去のむなしい栄光にすがって甘い自己満足に浸る。
これは現代日本とまったく同じ状況なのではないか?続きを読む投稿日:2015.09.23
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