日本列島は、台風の通り道だ。空模様が暗くなり、雨が、風が激しくなり、やがて猛烈な勢いを周囲に振りまいて、ある時ふっと抜けてく。その奇妙な高揚感を夜通し自動車の中で体感し、台風一過の朝を海辺で迎え、そのあと、ホテルでたっぷり眠る、というのはこの島に生きる生活者にとっては最高の過ごし方かもしれない。その時間を共に過ごした男女には、明日からまた別々の日々が始まる。【著者】片岡義男1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブ・・・
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この、ごく短い短篇小説の中で起きていることは何だろう?
彼女は男に何度も電話をする。
男は仕事で拘束され、自由の身になれない。
女は待つ。長い時間、待っている。
しかしそれは辛抱強さやけなげさ、逆に意地になった感情などとは無縁の、彼女なりの待ち方だ。
ことによると他人は、それを「待っている」とは認めないかもしれない。
そもそも彼女は、待ってなどいないのかもしれない。
ここで起きていることはいったい何か。
「ホテルルーム1」との併読をオススメします。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。 -
日本列島は、台風の通り道だ。
空模様が暗くなり、雨が、風が激しくなり、
やがて猛烈な勢いを周囲に振りまいて、ある時ふっと抜けてく。
その奇妙な高揚感を夜通し自動車の中で体感し、台風一過の朝を海辺で迎え、
そのあと、ホテルでたっぷり眠る、というのは
この島に生きる生活者にとっては最高の過ごし方かもしれない。
その時間を共に過ごした男女には、明日からまた別々の日々が始まる。
【著者】
片岡義男
1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
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