赤と青のガウン
彬子女王(著)
/PHP研究所
作品情報
ドアを閉めた瞬間に涙がこぼれた。思えば、あれが留学生活最初で最後の「帰りたい」と思った瞬間だった。本書は2004年から5年間、英国のオックスフォード大学に留学し、女性皇族として初めて海外で博士号を取得して帰国された彬子女王殿下の留学記。女王殿下は2012年に薨去された「ヒゲの殿下」寛仁親王の第一女子、大正天皇曾孫。初めて側衛(そくえい)なしで街を歩いたときの感想、大学のオリエンテーリングで飛び交う英語がまったく聴き取れず部屋に逃げ帰った話、指導教授になってくれたコレッジ学長先生の猛烈なしごきに耐える毎日、そして親しくなった学友たちとの心温まる交流や、調査旅行で列車を乗り間違えた話などなど、「涙と笑い」の学究生活を正直につづられた珠玉の25編。最後は、これが私の留学生活を温かく見守ってくださったすべての方たちへの、私の心からの「最終報告書」である、と締めくくられる。
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商品情報
- シリーズ
- 赤と青のガウン
- 著者
- 彬子女王
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2015.01.16
- Reader Store発売日
- 2015.04.10
- ファイルサイズ
- 28.2MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (27件のレビュー)
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見守る目、後でわかった一人旅
当初は「オックスフォードへ留学する」体験だけで済むはずが、ひとたび現地を訪れた後は、異国に眠る宝の山に夢中になって再留学。夢のキャンパスライフは、やがて地獄の論文執筆生活に。
思い切り良く日本を飛び…出したお姫様が、一人前の研究者に成長するまでには、どんな出会いや事件があったのか。学位取得後、初めて見えた自分の姿とは。
盛りだくさんのエピソードが楽しく、最後に大きく力付けられる留学記です。
(1)さりげなく輝く「伝える力」
本書ではまず、四文字で揃えた各章のタイトルが目を引きます。
「大信不約」(ほんとうの信義は約束などしなくても守られる)という成語は初めて知りました。常に身辺に寄り添い、ときには家族よりも長い時間を一緒に過ごす方々を紹介する章の扉にふさわしい言葉ですね。
本文の語り口も魅力的です。
丁寧で上品ですが、もったいぶるところがありません。理知的で歯切れがよく、言葉に鎧を着せていない感じがします。読んでいて気持ちの良い文章です。
「ただでさえ冷え性の私の体温を、優しく、しかし確実に奪ってゆくのである」などという言い回しは、いかにも頭のいい人らしく、思わずニヤリとさせられます。
なんでも、世の中には、頭の良い女性を嫌う人がいるそうですね。私は大好きです。もちろん、文章の話ですよ。
(2)念入りにドッキリ仕掛ける英国流
留学先である、「英国らしさ」を感じさせるエピソードも読みどころです。
たとえば、英国紳士は謹厳を売り物にする一方で、やけに手の込んだイタズラを仕掛けるのも大好き。
本書でも、たっぷり手間暇をかけた、おバカなイタズラが炸裂します。原宿駅前で声をかけるところから仕込みが始まるとは、お釈迦様でもわかりませんよ。著者が、縁のあった人々と、とても良い関係を築いていたことがうかがえますね。
どうやら、親しみやすく、誰とでも仲良くなれる方である様子。若冲のコレクションで有名なプライス氏が、パンケーキで器用にあの有名なキャラクターを作ってくれるなんて特ダネもあります。
一般人ではまず体験できない、皇族ならではの出来事も。
女王陛下のお茶に招かれるエピソードでは、エレベーターを降りるとまず大量のコーギーたちに囲まれるという、川端「雪国」ばりの展開に、一気に夢の国へと連れていかれます。
(3)学位授与式での発見
一人暮らしの自由を味わい、優しい友人たちと出会い、貴重な資料や超一流の教授陣に囲まれ、大発見に目を輝かせる留学の日々(あらこんなところに法隆寺♪)。しかし、博士課程は楽しい探検だけでは済みません。
登山が、自分の足で山を下りなければ終わらないように、論文執筆も、自分の手で書き上げなければ終わりません。苦心惨憺の末に審査を通過し、ようやく学位が与えられます。
その授与式に出席して、著者は改めて、自分がいかに多くの人々に支えられていたかを悟るのです。
「ただ学位記を郵便で受け取るだけだったら、私はこのことに気づかずに留学生活を終えていた」と語る著者。
たしかに、儀式というものは、ただ正式な権威があるという以上の、何か特別な意味を感じさせてくれるものです。
また、「いままで私は留学中の苦労話を日本にいる人たちにしたことがあっただろうか」という気づきにも、たいへん考えさせられます。
本人が話してくれなければ、周りも共感を示しにくいのです。わかっていても、言えないことがあるでしょう。見えない苦労を「見える化」するのも、勇気ある行いなのかもしれません。
本書の最も素晴らしい点は、珍しい外国の紹介や、誇らしげな成功談で終わらず、著者の苦しくみっともない姿を正直に伝え、それが支えてくれた人々への感謝の念につながっているところです。
どこか遠くで、孤独に頑張っているあなたへ。あなたが実は、人前で見せる姿ほど強くないことは知っています。でも、くじけないで。たとえ声が直接届かなくても、決して一人ではありません。私はいつも、一緒にいますよ。そんな、心の中の言葉を伝えてくれる一冊です。
(※お断わり)著者は皇族でいらっしゃいますが、正式な呼称や、「ご研究」といった類の丁寧な言い回しは、本レビュー欄にはうまく合わないように感じられますので、平易な表現をさせていただきました。なにとぞご容赦ください。続きを読む投稿日:2018.05.03
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皇族で寛仁親王殿下の第一女子である彬子女王が、二度にわたりオックスフォード大学に留学されたときの体験を綴られたもの。
厳しい指導教官のもとで日本美術についての博士論文を書き上げるまでの過酷な生活と、ご…友人たちとの穏やかな生活や少しドタバタして笑いのある生活のコントラストが鮮やかで、読んでいて楽しい。
金銭感覚やふるまいなどが庶民的で皇族であることを一瞬忘れそうになるが、エリザベス女王に対面する場面を読むとさすがに違うなと思う。最後の方で宮内庁に怒りをぶつけている場面も印象に残った。続きを読む投稿日:2024.05.11
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