碧のかたみ
尾上与一(著)
,牧(イラスト)
/キャラ文庫
作品情報
初期代表作「1945シリーズ」待望の新装版第3弾!! 航空隊の華と謳われた南の要衝・ラバウル基地──。偵察員の厚谷(あつたに)六郎(ろくろう)は着任早々、航空隊員が喧嘩する現場に遭遇!! 多対一の無謀な勝負に挑んでいたのは琴平(ことひら)恒(わたる)。≪ラバウルの五連星≫の渾名で内地まで名を轟かせる有名搭乗員だ。仲裁に入った六郎にも噛みついてくる恒だが、上官命令で新しく配備された夜間戦闘機「月光」に、ペアを組んで乗り込むことになり!? 戦って戦って、明日空に散るとしても最後までお前と一緒にいる。戦時BLの金字塔≪1945シリーズ≫第3弾!! ※口絵・イラスト収録あり
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この作品のレビュー
平均 5.0 (3件のレビュー)
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尾上与一1945シリーズ 復刻再販第三弾
とても素敵な、碧のカバーなのにシマシマ本なのが、悲しい
昭和十八年、南の要塞・ラバウル航空隊
主人公は「ラバウルの五連星」と呼ばれる琴平恒と
元は搭乗員であ…りながら、たまたまの盲腸で偵察専修も修めた六郎
出会った時は、ラバウル基地が航空隊の華とさてていた
二人は、上司命令で日本海軍の夜間戦闘機“月光”
コードネームは、Irving でペアとなる
昭和十八年月光が制式採用された年
そして、座席を二つ持つ複座と呼ばれる“月光”のラバウル配備
「蒼穹のローレライ」のあとがきで
1945シリーズについて
その世界であると示しつつ、どうやっても時間軸の整合性がとれない、という時間軸上に物語を載せることで、強く架空であるとことを打ち出したつもりと書かれている
そして、シリーズを読まれている方はご存知ですが、同じステージ上に複数の物語を展開して そこにさらに歪みを生みます
1945年第二次世界大戦下という戦時BL
実際に多くの若者が戦地で亡くなった時代
執筆出版には、かなり勇気が必要だったかと思います
ひずみとゆがみで架空性を表現しながらも
文献、体験談等かなりの資料を修文され、戦時を意識しながら、それは戦争の小説ではなく 命を預けあった青年達の心象風景
何書いてるんだかわからなくなっってきた
つまり、シマシマだから
図書館にないけど 再販で普通の文庫価格になったから 騙されて読んでみてくださいよってことですよ
敗戦色が濃くなってくると 航空機が足りなくなる、配給食が乏しくなる
それでも戦地の彼らは飛び立っていく
極限の生活の中信頼し合うペアの存在
親友は増やせるけどペアはひとり
ペアは守るものではなく、一緒に生きる
恋人のためなら死ぬが、ペアは一緒に死ぬ
対等でありながら恋し合う気持ちは同等
BLの様式美も完備されております
天球儀のユキちゃん、お兄ちゃん頑張ったよ!
続きを読む投稿日:2024.07.16
沼落ちシリーズの筆頭、1945シリーズの復刻第3弾です。
舞台は再びラバウル基地。前作『天球儀の海』の主人公、希の兄である恒が主人公です。今回は複座で2人乗りの夜間偵察機、月光にペアとして搭乗する2人…のお話。
みんみんさん情報によると本作がシリーズ中最も売れたとの事ですが、なるほど納得!
恒とペアである六郎の明るくて可愛いキャラクターのお陰か、常に一緒に飛んでいるからなのか、他の2作品よりは少し安心して読む事が出来ました。
みんみんさんにペアで飛ぶとお聞きした時に、まさかあのいつ壊れてもおかしくない、ボッロボロの無理やり2人乗りにした零戦に乗るの?!と驚いたのですが、月光を忘れてました。しかしこれが実は当たらずとも遠からずで1番冷や冷やした終盤のシーンに少し出てくるのですが、これも上手く物語に取り入れていて尾上さんの熱意を感じました。
とは言え、基本はずっと安心の(でもないけど、零戦よりは)月光で唯一無二の夫婦以上の絆で飛ぶ2人です。
天球儀の海でも言われていましたが、恒はまだ19歳なのに天才的な零戦乗りで『ラバウルの五連星』と渾名が付くほどの戦果を挙げていました。お陰で他の搭乗員から妬まれて嫌がらせを受ける日々。
一方、六郎は操縦も、操縦士の後ろで計器を読んだりする偵察も出来る有能な青年。本来は花火師を目指していたのですが、花火などに火薬を使うなという事で実家の花火屋は休業、六郎の花火師修行も頓挫してしまっています。
恒の乗っていた零戦が破壊され、代わりの零戦も中々投入されない為、代わりに新たに投入された月光のパイロットとして任命された恒ですがペアになる偵察員が決まらない。そこでラバウルに着任したばかりの六郎に恒とペアになるよう命令が下り2人は共に飛ぶ事となります。
恒は気が強いので売られた喧嘩は全て買ってしまい、懲罰もものともせず殴り合いを始め、それを必死に止めたり、諦めて傍観したりする六郎。そんな2人の姿が可愛くて戦時中なのを忘れる位にほっこりしてしまいます。
ですが、ほっこりばかりでは無いのがこのシリーズ。
弟の希は当時まだ海軍の予科練で訓練中。その弟が戦場に出る前に少しでも多くの敵機を撃墜して戦争を終わらせたい恒。家族のいる内地を守りたいと六郎の前で思わず吐露する姿に切なくなる…。
希はもうすぐ資紀の為に特攻隊に志願するのか…とそちらにも思いを馳せてしまい更に切なさ増し増し…。
しかしこんなに恒が希ちゃんラブだとは思っていなかったので、写真を見てデレデレしている姿には笑ってしまいました。今回は明るい2人なのでブロマンスとしても楽しめるのですが、ちゃんとね、本作にもあるんですよロマンティックが止まらない案件!
尾上さんは驚く程に自然に、さらりと友情から愛情に変化させるのがお上手すぎて、毎回「恋はするものじゃなくて落ちるもの」というどこかで聞いたフレーズを思い出しては、この事か、と納得してしまう。
やっぱり星空が好きな恒が、六郎にラバウルの美しい星空を見せる為に月光で雲の上に上昇。
それはもう見た事のない銀河が広がっているのに、六郎にとってはそれすら叶わない美しいものを見つけてしまっている。
六郎の方は花火を恒に見せる為にこっそり火薬を盗んで即席の線香花火を作り、帰国したら恒の為に花火を打ち上げると心に決める。
3作品全てキャラ設定が違うのに、ちゃんとそれぞれの特性を生かした美しいシーンが用意されてあるのですが、本作のロマンティックが止まらないはやはり他と比べてどこか希望のある安心感もありました。今までは美しさと切なさが同時に押し寄せて、説明し難い気持ちになったのですが、純粋に2人の幸せだけを願える良いシーンでした!
でも…
悲しいけど、これ戦争なのよね…(私のレビューで何度も出てくるロウ中尉の名言)
ラバウルの終戦間際の悲惨さは有名な話ですが、希が予科練の間に終わらせたかった戦争は泥沼化。間に合いませんでした。
敵国の圧倒的物量と科学力で日本は劣勢の一途を辿ります。一生を番として生きる決意をしている2人は、共にラバウルの空に散る覚悟を決めて勝つ見込みのない戦場へ…。
やっぱりこうなるんだよ、簡単に幸せにはしてくれないのが1945シリーズ!!
終盤に六郎が命を懸けてとった行動に、ただただ感動…。
それで良い、それで良いんだよ六郎!
日本軍人の当時の規範から言えば完全に非国民かも知れないけれど、愛する者を守る1人の男として立派だよ六郎!!
今回もラバウルの美しさと戦場の対比が見事で、大いに切なくさせてくれました。
途中、恒に因縁を付けていた斎藤のくだりは本当に切なかったな…。
そして書下ろしは安定の幸せ満載で、ご褒美感があります。
恒のお父さんがかなり可愛い。
全く予想していなかった希の話も載っており、相変わらずの資紀ぼっちゃんのイケメンさに痺れる。
かっこよすぎるて、貴方…。
攻めの中ではシリーズ中1番好きかな。
実は3作品の中で飛び抜けて好きなのが『蒼穹のローレライ』でして、また読みたくなりざっと読み返したのですが、恒と六郎ペアも登場してたのを何故かまるっと忘れてました。
本作を読み終えてこのシーンを読むと、塁はこの時も単独で撃墜数を挙げていたんだなあ、と感慨深いものがありました。塁よ…涙
まだシリーズが残っているらしいのですが、今後再販の予定はあるのかな。
出してくれないと、うっかり中古を探して買っちゃうよ!!早く!!
そういえば本作はコミカライズも進行中らしく、1箇所だけ突然コミックの数ページが挿絵代わりに挟まれていました。突然でびっくりしましたが、それほど本作は人気だったんですね。続きを読む投稿日:2024.07.09
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