読者に憐れみを
カート・ヴォネガット(著)
,スザンヌ・マッコーネル(著)
,金原瑞人(訳)
,石田文子(訳)
/フィルムアート社
作品情報
『スローターハウス5』『タイタンの妖女』などで知られる戦後アメリカを代表する作家、カート・ヴォネガットの「書くこと」と「人生について」
辛辣で、機知に富み、心優しきニヒリスト、ヒューマニストで、教師としては熱血漢、「書くことは魂を育むこと」を生涯の信条としたヴォネガットの教えを、彼自身の言葉と小説の引用、そして周囲の人々の談話からまとめた、「ヴォネガット流・創作指南+回顧録的文章読本」が生誕100年を記念し、待望の邦訳!
「本書の各所に引用されるヴォネガットの助言を読むうちに、自分にも小説が書けるという気持ちになってくる。それはとても苦しいものであることをヴォネガットが強調してもだ。何度も書き直し、声に出して読み、読者の負担を最低限にするべきことを繰り返し言う。でもしかし、その人にしか語りえないことというものがあるのだ。」
――円城塔(作家)
本書では、彼の教え子であったマッコーネルによるヴォネガット自身の言葉と実際の作品の引用から、作家としての苦闘や、戦争体験や母親の死など、彼の人生に生涯つきまとった「影」、戦後の時代精神を体現するベストセラー作家となった成功の秘訣のほか、「つねに学び、つねに教えていた」という教師としての素顔が丁寧に分析され、余すところなく説明される。
さらに、文章や物語を書く際に必要な原動力、才能、想像力の飛躍、勤勉さ、反省、ブラックジョークについて、生計を立てること、心身のケア、はたまたコミュニティの重要さにいたるまで、さまざまな角度からユーモアを交えながら真摯に語られる。加えて、物語はどこから生まれるのか、冒頭部の書き方、プロット、登場人物の書き方、耳で聞く文章と目で見る文章の違い、見直しと校閲などのコツとテクニックについても惜しげもなく披露される。その驚くほど実践的なアドバイスは、作家志望者のみならず、文章を書く時に悩んだことのある人、何かの課題と格闘して自分は無能だと感じているすべての人の心に突き刺さるだろう。ヴォネガットの手稿や実際の原稿、メモ書きや、出版社からの手紙なども多数収録した、ヴォネガットファン必見の一冊となっている。
ちょっと風変わりで、だけど読むと書き続ける勇気が湧いてくる、カート・ヴォネガットの教えを一冊にまとめた、創作指南+回顧録の決定版。
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商品情報
- シリーズ
- 読者に憐れみを
- 著者
- カート・ヴォネガット, スザンヌ・マッコーネル, 金原瑞人, 石田文子
- 出版社
- フィルムアート社
- 書籍発売日
- 2022.06.30
- Reader Store発売日
- 2024.06.21
- ファイルサイズ
- 10.7MB
- ページ数
- 616ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (4件のレビュー)
-
現代アメリカを代表する作家ヴォネガットの作文講座を、元教え子であり作家のスザンヌ・マッコーネル氏が編集。
計37章(!)から成るものの、氏の”レジュメ”はこちらの警戒をいとも簡単に解いた。作家志望者や…人を惹きつける文章を書けるようになりたい方向けに成り立つ反面、単純に読み物としても楽しい。
自分もレビューなどの文章力を伸ばしたかったので参考になりそうな箇所はメモに取り、あとは気軽な読み物として楽しんでいた。
ヴォネガットや彼の作品に関しては、恥ずかしながら無知であった。
自分のような初心者にも配慮してくださったのか今回マッコーネル氏は、(名前すら初耳である)彼の著書を引用しながら上手く話を繋げている。しかもほんの一部抜粋なのに、それらの著書がどんなストーリーなのか気になってしまい何度も図書館の蔵書検索をかけていた。
第1章「何かを書こうとしているすべての人へのアドバイス」で公開された手紙から、奥深い人生を歩まれた方なのだと思い知らされた。
手紙というのは、第二次世界大戦時彼がドレスデンにて捕虜になり、奇跡的に生還した末、家族に無事を知らせたものである。
「小説を書くために死や破壊や苦悩を経験する必要はない。ただ、何かに関心をもつ必要があるだけだ」とマッコーネル氏は解説の中で仰っていたが、手紙の中の凄まじい経験が自ずと彼の関心をそれらに向けさせたのはまず間違いない。
計37章の内1つを選びレポートを書くよう言われたら、自分は第18章「落とし穴」にするだろう。
ここでは「第3のプレイヤー」がキーワードになっている。これは自分の作品に対して添削或いは茶々を入れてくる人物のことを指し、自分対作品の”対話”の重要性が章を通して身に沁みた。また(優れた作品を見分ける)目が肥えてしまうと、自分の作品を嫌悪するようになる傾向も何だか身に覚えがある話であった。
実は青少年向けの職業案内本『13歳のハローワーク』の「作家」の項について読書中思い出していた。
著者の村上龍氏は作家について、「作家は人に残された最後の職業だから今は他のことに目を向けよ」とその本で述べている。作家本人の言葉だから事実なのだろうけど、物書きに興味があった自分はどれだけ絶望したことか…
ヴォネガットの場合「たまたま人より書くことが少し得意だった」のがきっかけで作家を志した。彼にとって作家は「残された最後の職業」ではなく、村上氏もびっくりの天職だった。
物を書くことを愛するが故にこれだけの講座を組み、(商売道具とも言うべき)執筆の技法を多くの人に公開・指導までした。作家業においても屑かごが満杯になるまで修正を繰り返すほどプロット(構成)にこだわり尽くした。時には「第3のプレイヤー」の力も借りて。
そして彼はこうも話している。「少しでもなれないと思うなら作家にはなるな」と。やはり、作家本人の言葉だから…(以下略)続きを読む投稿日:2022.11.30
カート・ヴォネガットの元教え子で作家のスザンヌ・マッコーネルさんがまとめた、ヴォネガットが考える作家論、創作論。
とても良くまとめてられていて、あらゆる角度からヴォネガットの発言を読み解いている。
…時代に合わない部分や、マッコーネルさんの考えに合わないところは、はっきりと著者の考えを述べているし、カートのダメな部分も敬意を持って正直に書かれていると感じた。
また、カートに近い人なだけに偏りがないよう少し離れた目線でまとめられている。方法論についても教科書的な部分も多いので、カート・ヴォネガットのあの語り口を期待してしまうと、少し物足りないかもしれない。
しかしカートはジョークが上手いので、本人の真意はいつも煙に巻かれてしまうところがあるが、本書の淡々とした文章で読むと、カートが一人の苦悩を抱えた人間として見えてくる。
本書を読んでからカートの小説を読み返すと、作品世界がよりクリアに見えて良いと思います。
個人的には、戦争とジョーク(笑い)が人にもたらすものについては非常に興味深かった。続きを読む投稿日:2024.04.17
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