兎は薄氷に駆ける
貴志祐介(著)
/毎日新聞出版
作品情報
ある嵐の晩、資産家男性が自宅で命を落とす。死因は愛車のエンジンの不完全燃焼による一酸化炭素中毒。
容疑者として浮かんだ被害者の甥、日高英之の自白で事件は解決に向かうと思われたが、それは15年前の殺人事件に端を発する壮大な復讐劇の始まりだった。
警察・検察、15 年前の事件の弁護も担当した本郷、事件調査を請け負う垂水、恋人の千春......。それぞれの思惑が絡み合い、事件は意外な方向に二転三転していく。稀代のストーリーテラーが満を持して放つ、これぞ現代日本の"リアルホラー"!
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商品情報
- シリーズ
- 兎は薄氷に駆ける
- 著者
- 貴志祐介
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 毎日新聞出版
- 書籍発売日
- 2024.03.04
- Reader Store発売日
- 2024.04.19
- ファイルサイズ
- 1.2MB
- ページ数
- 480ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (31件のレビュー)
-
冤罪事件はどのように生まれるのか… 組織の怠慢と個人の覚悟を描いた法廷ミステリ #兎は薄氷に駆ける
■あらすじ
英之は叔父を殺害したとして逮捕された。犯行を否定する彼だったが、父親も殺人罪で逮捕され…ていたこともあり、警察では威圧的な尋問が行われる。ついに彼は自白書面に捺印をしてしまうのだが、検察でも裁判でも無罪を主張してゆく。
一方、弁護士のアルバイトをしていた謙介は、英之と彼の恋人である千春とともに、事件の調査を進めてゆく。英之の裁判が始まると彼は罪状を否認し、冤罪を主張することになるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
おもろい! 検察官と弁護士の激しい舌戦が繰り広げられる法廷ミステリーで、冤罪事件がどのように生まれてしまうかを描いた社会派小説です。
ベテラン貴志祐介先生が法廷ミステリーを書くとこうなりますよって感じで、まぁ物語に引き込むのが上手い。本来難しいはずの法律や裁判を扱った物語ですが、抜群なエンタメに仕上がっています。
本作のテーマは冤罪。逮捕された英之がどんな扱いを受けてしまうか、他人事ではなくマジで恐ろしい。対比するように、もともと自堕落な生活をしていた謙介が、少しずつ真相を解き明かすべく覚醒していく。世間一般目線から見た彼の価値観や正義感の変化にも読みごたえがあるんです。
イチ推しなのは裁判所での論争シーン。自白や動機などの様々な有罪証拠があり、当初は勝ち目のなかった裁判なんですが、なんとも痛快に展開していくんですよ。なるほどなるほど、そうやって証明していくのかーって納得感がエグイし、検察側の狼狽ぶりが面白くって、もう目が離せないんですよね。ぜひ映画化してほしい!
またプロットもよく練られてるんですよ。英之のだけ事件ではなく、これが過去の冤罪事件とどう関連しているのかが謎解きのポイント。ここで謙介の立ち位置が素晴らしく、読んでてゾワゾワが止まりませんでした。
そして終盤に明かされる真相が好き! 登場人物ひとりひとりの熱い想い、狂気めいた意思の強さが潔よくって愛せる。もちろん本作はフィクションなんですが、過去には本当に冤罪事件や論争もあって、何とも胸が締め付けられますね…
本作ほぼ★5の出来です。ただテーマが冤罪なので、個人的にはもう少しどっしりとした重厚感が欲しかった。その分エンタメ度は百点満点でして、ここは好みだと思います。いろんなジャンルの小説を提供してくれる貴志先生、これからも楽しい作品を期待しています!
■ぜっさん推しポイント
ひとりの人間 VS 組織で戦わなければいけないような状況になった時、人は立ち上がることができるのでしょうか。そして我々がみているテレビやSNSなどのメディアで流される情報は、いかに頼りないものなのか。
本作では誰かの都合に取り込まれてしまっていませんか?という警鐘をあげつつ、立ち向かっていく、ひとりの青年の勇気と覚悟を描いた物語です。
日々なんとなく過ごしていると、自分自身の人生すら現実味がなくなってくることがある。いつの間にか居心地がいい場所に居座り、周りの判断や価値観に流される。たとえ辛いことや悔しいことがあっても、自分自身に嘘をつき、ごまかしながら生きてゆく。自分にも身に覚えがあり、反省されられましたね…
一分一秒、紛うことなく本物の人生、これを忘れてはいけません。自分の生き様を見つめなおす機会ができる作品でした。続きを読む投稿日:2024.05.18
このレビューはネタバレを含みます
冤罪の問題、不条理など今も解決されないこと、社会に投げかけることは大きい。
レビューの続きを読む
ただ最後まで、英之の復讐という落としどころが、すっきりしなかった。タイトルの意味は深いのだろうが・・・投稿日:2024.05.25
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