畏れ入谷の彼女の柘榴
舞城王太郎(著)
/講談社文庫
作品情報
そうだ。
不思議が起こるべきなのだ。
光る息子の指。人語を話す猿。人の形をした心残り。
不条理な世界で「俺」は、優しさを発揮しなければならない。
唯一無二の“奇譚”語り。舞城ワールド最新作!
「ママの体に光入った」幼い息子がそう告げたあと、半年以上触れていなかった妻の妊娠が発覚。一体何が!?
表題作「畏れ入谷の彼女の柘榴」に加え、人語を話す猿に導かれ行方不明者を捜す「裏山の凄い猿」、特別な家で育ったきょ
うだいの気付きを描く「うちの玄関に座るため息」の全三篇を収めた奇譚小説集。
『私はあなたの瞳の林檎』『されど私の可愛い檸檬』に連なる、シリーズ最新短篇集がついに文庫化!
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商品情報
- シリーズ
- 畏れ入谷の彼女の柘榴
- 著者
- 舞城王太郎
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2023.10.13
- Reader Store発売日
- 2023.10.13
- ファイルサイズ
- 2.2MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 4.7 (3件のレビュー)
-
読みながら感動した。
短編集だけど、同じテーマが散りばめられている。
正しさを押し付けること。
1作目柘榴の登場人物は、全員自分にも他人にも正しさを押し付けるだけ。
2作目で、他人に対して正しさを…押し付けることの問題提起をする。優しさより正しさを先行する必要があるのか。
「結婚て、奥さんと二人で話し合ったりしながらやってくもんやろ?そのとき奥さんに対してじゃなくても、誰かに対する優しさより在り方としての正しさを求められたら辛くなってくんでないかな」
だから、「俺は優しさを発揮しなくてはならない」
勇気を出して歩き続けるところが好き。舞城だー!って感じ。
3作目で、正しさを自分に押し付けることを考える。先のことを予測して正しいことしかしない、なんて無理。だから、「俺は力を尽くさなくてはならない」
映画では先を予測する人が、現実では正しくないとわかっていても力を尽くしたいと言う、一方で映画では話を追うだけの人が、現実では先の予測ばかりしている、という対比も面白いし。
ナオって名前2回目!どういう意味?
それから不思議に対すること。
柘榴では不思議のない世界で不思議に対して拒絶をし、猿で不思議を受け入れる過程を、ため息ははじめから不思議のある世界を描く。
グラデーションになってる。
あとは3作目で気づいたのは、後悔しないこともすべてのテーマだったこと。
ため息で後悔しないって無理だから、切り捨てるのも思考停止もよくない。という話を出して。
遡れば、柘榴の人たちは思考停止で切り捨てるだけで、
猿の主人公は後悔するかもしれないけれどそれも含めて受け入れる、ができている。
愛されてなかったらしいんだよ。ふん、じゃあまあいいか。のとこも好き。
裏山の凄い猿が1番好き。
ため息はうーん、途中で何言ってるのかわかんなくなっちゃったけど、100点満点の好きじゃなくても価値があるのになと思うけれど、途中良かったので良いです。
柘榴は子育てを、妻という役割を押し付けていたことがちらちら見えて、なんか腹をたてながら読みました。
スタンダールは、はじめに恋心があり、それから相手がやってくると言っていた。
はじめに優しさを持っておきたいですね。
この作者は相変わらず天才。最高。大好き。純文学書いたら最強。
グロくもキモくもなかったから読めたけど、でも、次は失敗するかもしれなくても、他の作品も探しにいく!続きを読む投稿日:2024.01.11
このレビューはネタバレを含みます
正しさと優しさは両立しないことの方が多いと、つくづく思った。不思議の中に優しい物語を入れ込むのが舞城王太郎の凄さ。
レビューの続きを読む
「畏れ入谷の彼女の柘榴」
タイトルの語呂が良くていい。でも、モヤモヤする話だった。…千鶴が不倫して出来た子供を「おめでたい出来事」と言い、そこから夫婦の関係が悪くなっても「雨降って地固まる」とか言っちゃうのも、イライラしてしまったが、「どのようなバカにも存在意義があって、この世の中の幸福につながるチャンスがそれなりにあるんだという俺の祈りが叶いますように」という優しさはなくてはならないような気がした。
「裏山の凄い猿」
「困っている人を助けようって気持ちがなくなったら社会は終わり」っていうのは、誰に対してもそうで、「柘榴」でもあるようにたとえ相手がバカだとしても人の助けがないと社会は終わってしまうと思う。「全てのお話は寓話であって、教訓や警句に満ちているのかもしれない。でもそれを打ち破るのも物語のあり方で、寓意なんかに気持ちをこなされないように、気を張って生きるしかないのだ。」というのは、舞城作品の全てに言えることのような気がする。
好きな人を求めて「絶対に、どこかにいる。」というラストは清々しくていい。
「うちの玄関に座るため息」
鷲田清一の「支え合うことの意味」の寓話のようなお話で、個人的に一番好きだった。人は持ちつ持たれつで、どんなに気をつけていても他人の負担になることはあるし、それを自覚すべきだと思う。これは前々から思っていたことだけれど、さらに「後悔を引き受ける」という考え方がいいなって思った。「後悔しないように生きる」という言葉は聞こえはいいけれど、「後悔しないこと」が目的化されてしまうと、後悔したくないがために考えを辞めてしまったり、行動しなかったりする場合も確かにあるなと思った。自分の後悔も相手の後悔も全部引っくるめて受け入れることが本当の優しさなんだろうな。続きを読む投稿日:2024.02.03
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