老いてはネコに従え
養老孟司(著)
,下重暁子(著)
/宝島社新書
作品情報
人生は一切なりゆき、行きがかり――
ネコの虜、85歳と86歳が「自分勝手」の極意を語る
下重 私たちはどうして、これほどまでにネコに惹かれるんでしょうね。
養老 人間と違って、ものをいわないからじゃないですか。ものをいったら憎たらしくなることもあるかもしれない(笑)。
現在80代半ば。
敗戦によって、「世の中の正義」が一夜にしてひっくり返る理不尽・不条理を目の当たりにし、
社会が押しつけてくる「ものさし」を根底から疑うようになった、養老孟司さんと下重暁子さん。
「社会性などまるでないネコのほうが、よほど信頼できる」と養老さんは語ります。
本書は、「90歳の壁」を目の前にしたお二人が、それぞれのネコ愛を基軸に、
老いや病、日本社会が抱える歪(ひず)みなどについて縦横無尽に語る対談企画。
しなやかに生き、素直に死んでいくネコたちの後ろ姿から、
「生き物として、ラクなあり方」のヒントを素描する一冊です。
【目次】
まえがきにかえて 養老孟司
第一章 ネコと暮らせば
養老さん、危機一髪
「独立した人格」をもっていた、まる
気がつけばそこにまるがいた
「鳥」になった最愛の猫・ロミ
ものいわぬ猫たち、それゆえの魅力
媚び猫なんてみたくない
「血統書つき」には信用を置かない
モグラが部屋を走り回っていた朝
猫は体の声を聞く
生き物としてお粗末な人間
八五歳を過ぎて、まるの気持ちがよくわかるように
無駄な抵抗はしない
第二章 ヒトという病
「ともあろうものが」という呪縛
小言や説教を聞き流す力
北朝鮮のマスゲームをみると今でもゾッとする
飲兵衛は本音で喋るからいい
邪魔にならない相手と一緒にいるだけ
放っておけば子は育つ
死に集中すると生を見失う
「産めよ殖やせよ」なんて余計なお世話
原理研の学生が抱えていた心の闇
日本型の秩序は必ず「暴力支配」になる
オレオレ詐欺、恐るるに足らず
日本は自然災害でしか変われない
「意味を求める病」とは
まるみたいに、成り行き任せが一番いい
第三章 90歳の壁
「まだ生きていたんですね!」
予定調和で死を迎えたくない
ICUのベッドで「お地蔵さんのお迎え」
散り際には、きれいな眼をした猫を抱いて
亡くなった人たちの背後霊が乗っている
故人への「思い」を出すから「思い出」
目下の心配は「標本の壁」を越えられるかどうか
死への歩みも「インシャ・アッラー」
一夜にして世界のみえ方が一変した
縛られていたほうが楽である
社会を無視して生きていくことはできない
敗戦時、母に渡された白い薬包
社会は「と思ってる、と思ってる」の連鎖で出来ている
養老先生、大学を去る
象牙の塔、その終わりの始まり
ポリコレ合戦に堕した学生運動
ネットフリックスで「ニュー・トリックス」を楽しむ
英国式ユーモアを培った、陰鬱な自然環境
一生懸命遊ぶために仕事をしている
第四章 まるに始まり、まるに終わる
教育が子どもの「好き」を削ぐ
唯一の友達は蜘蛛だった
養老さんが嫌いな虫
ヨーロッパの連中はろくなことを考えない
一番のSDGsは人を減らすこと
「地震待ち」の理由とは
腐臭漂う、日本の「残りかすの残りかす」
「アメリカ世」から「中国世」へ
時代が悪くなることで人が輝く
日本人の感性の根っこにあるのは「自然の強さ」
「日本人は清潔病です」
自然の側が虚を突かれた
一夜にして消えたタケノコ
犬をつないでおくという不自然
子どもは一日にして慣れる
生きる力を取り戻せ
まるのようになれたら
あとがきにかえて 下重暁子
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商品情報
- シリーズ
- 老いてはネコに従え
- 出版社
- 宝島社
- 掲載誌・レーベル
- 宝島社新書
- 書籍発売日
- 2023.04.26
- Reader Store発売日
- 2023.04.26
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (10件のレビュー)
-
85歳の「養老孟司」さんと、86歳の「下重暁子」さんによる対談は、猫をテーマにしたものだけに留まらず、途中から様々なテーマへと発展していったが、気になるどころか、却って、面白くなってきて、全てに共感…することはできなくとも、興味深い時間を過ごす事が出来ました。
まずは猫について、養老さんの「まる」にしても、下重さんの「ロミ」にしても、猫には、それぞれの物語が生まれ出すような感覚を覚えたのが印象的で、特に「私のまるは『日向』になった」という、養老さんの表現には、猫の生き方そのものである、気付いたらそこにいるような自然体の媚びない存在感を、思い出させるものがあると共に、いないんだけど、いるような気がして見てしまうというのも、肯けるものがあり、猫へ抱くセンチメンタルさと言うと、養老さんは否定するかもしれませんが、私は分かる気がする。
そして、お二人の共通点について、それぞれ東大とNHKから独立されたことに加えて、戦争体験者ということで、やはり、それらの貴重な体験から繰り出されるお話は、さぞ襟を正して聞かねばならぬだろうなと思っていたら、これが、ざっくばらんに痛快である上に、一切の容赦が無いから、実は日本って大変なところまで来てるんじゃないの? と思いつつも、まあ、なるようになるしかないか、といった気持ちにもさせる、そのアッサリ感に、読者はどう感じて考えて行動するのかが、問われているような気もしてくる。
例えば、今の日本の状況を述べた言葉として、
「10代、20代、30代の死因のトップが『自殺』の社会の異常さ」
「首相の『異次元の少子化対策』は、戦時中の『産めよ殖やせよ』と何一つ変わらない」
「この国では暴力集団が実質的なトップになるというのが、鎌倉幕府以来の伝統」
「人口をどんどん増やしながらの『自然を守ろう』」
特に最後は、「人間が自然をコントロールしようなんていうのは、すごくおこがましい考え方」と仰られる下重さんの言葉に考えさせるものがあったし、養老さんの、「いろいろなものを守っているようでいて、実は動物や子どもたちの生きる力みたいなものをどんどん奪っている」という言葉には、何か矛盾した現代社会の闇が知らぬ間に世界を取り込んでいるような感覚に、思わず鳥肌が立ち、終いには、このような社会は天変地異でも起こらぬ限り、変わらないだろうといった、大胆な発言もあり(歴史を見る限り、天変地異と政変はワンセットで起きているらしい)、そこには、まるで何か差し迫ったことが起こらないと、人間の本能は目覚めないとでもいった感や、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』を何度も繰り返す愚かさが窺えて、本当にこのままでいいのだろうかと思ってしまう。
また、そうしたテーマとは異なる、素の部分に於ける、下重さんのざっくばらんな痛快さも印象深く、当時のNHK時代の『聞き流す力』や、二日酔いで頭が痛くても平然とした顔をしてテレビに出ていたことや、夫婦関係での『自分は好きなことをやるし、相手も勝手にやればいい』こと、そして、「『群れからはみ出たやつ』のほうにずっと興味がある」の言葉には、彼女の著書『家族という病』でそうしたお話をしているとのことで、それらに感じられた彼女の在り方には、「『右へ倣え』がまかり通るような状況に身を置きたくない。あくまでも私のままでいたい」という、それは『90歳の壁』といった年齢的なものは全く関係ない、いくつになっても私は私だといった、彼女自身の変わらぬ生きることへの姿勢なのではないかと感じさせられた。
そして、養老さんの、「長い歴史をもった人間の社会では、文字通りなんてことはあるわけないんだよ」の言葉には、決まり事だけに囚われず、物事を見ることの大切さを教えてくれて、それが、もっと子どもたちを信頼することにも繋がっていることが、私にはとても腑に落ちるものがあり、更には「猫について話すくらいなら、実際に猫をかまっているほうがいい」という言葉も、まさに正論というか、本当にそうですよね。続きを読む投稿日:2023.10.12
養老孟司さんの本だと思っていたら、下重暁子との対談本だった。
下重さんはちょっと個性が強く我の強い人というイメージが強い。
本人も言っているように協調性はない。
世間でも自己中で、毒のある癖の強い人…と言う印象かなあ。
70ページ迄は読めたけど、
71ページからの下重ワールドにはついて行けないので、
読書放棄なり。
養老孟司さんが、まえがきにかえて に書いている。
猫についての対談だといわれて、喜んで引き受けた。
でも、猫の話だけで一冊分、話がもつかなあと危惧していたら案の定だった。
だから余分な話をする結果になったのは、本文に見る通りである。
それが読者の皆さんのお気に召せばいいが、と少し心配している。
ほんと‼️
養老孟司さんは気のいい人だから、コアな読者を気遣ったのだと思う。
まるの話を期待してたんだもんね。
対談相手の話なんざあ、いらねぇよ。
Amazonの提灯レビュアーを除くと、
下重本のレビューはかなり低いのも納得できる。
別の養老孟司さんの書籍で口直し、目直し、頭直しをしなければならないね。
対談相手を間違った?かな。
続きを読む投稿日:2024.04.04
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