団塊の後 三度目の日本
堺屋太一(著)
/毎日新聞出版
作品情報
エコノミスト連載の「三度目の日本2027」の電子書籍化。
ベストセラー「団塊の世代」の堺屋太一氏が、団塊がリタイアした後の日本の姿を描く予測小説。
物語は、東京五輪の5年後の2026年1月から始まる。2020年の東京オリンピックを待たずして、日本経済は深い停滞期に入る。この状態に2025年に首相に就任した若き首相の徳永好伸は、「経済成長を気負わず、数値を気にせず、外国と競わず」の「身の丈の国・日本」を掲げる。一方、それに大反対する大阪を基盤とする国政政党を率いる大阪都知事の杉下晋三久は、日本は断固「世界の主要なプレーヤー」にとどまるべきと主張し、「日本の倫理と仕組みと仕方の全面改革」を提唱し、「三度目の日本」を作ることを目指す。これが、この小説のタイトルでもある「三度目の日本」である。
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この作品のレビュー
平均 3.6 (8件のレビュー)
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舞台は2026年。
あらゆる状況が悪化した日本でどのように対処していくか?というフィクション。がところどころ現実味があり空恐ろしい。
日本は「3ない社会。よくなし、ゆめなし、やるきなし。ゼロ金利にし…ても需要が増えない。金利をさげれば投資がふえると想定されていたがそれでも増えない。
むしろものをもつことの心理コストのことをみんなかんがえはじめた。無料でもいらないものはいらないという世代」
と定義。
ようするに天国のような国をつくってしまった。
「日本は天国をつくってしまった。理想の国。でも天国の仕組みを守るのは大変だし天国にはさらにうえにいく階段がない。地獄は1丁目から8丁目まであってうえがある。天国にはうえがない。」
つまりがんばりすぎて進退きわまった状態と定義。
でまず人口減署については生産性の低い仕事を日本人がしないようにする。だからとくに流通業を人でやらない流通の無言化を推進。
また移民についても「日本の歴史は移民受け入れの歴史。日本が質のよい移民をいれるには日本の良さをちゃんとアピールしないといけない。」。でそれも単純労働ではなく高度技術移民の歴史だった。この流れを踏襲する。
地方分権に関しては
「日本の自治体はいろいろ変わってきた。明治には1万以上あった市町村が今では1600。それなのに都道府県の範囲は明治以来かわっていない。徒歩と川船だけの交通輸送を前提とした都道府県は全く時代にあっていない。」
世の中を変えるのは戦争をするとかそういう暴力的なことは必要ない。えんじゃないか踊りでかつてかわった。
宝永2年(1705年)では公式記録では360万人が伊勢まで10日で旅行して騒いだ。これは60年に一度あったけど倫理の変更のイベントであった。
道州制の実施と州都建設。それを現代のええじゃないか踊りに。
第一に日本、明治の日本は先進諸国に負けない強い国を目指した。二度目の日本、戦後日本は豊かな国を目指した。これからはじまる三度目の日本は楽しい国にしたい。
道州制は都道府県の廃止、すなわち廃藩置県はやらない。当面は知事会で運営し、各府県会合同の合同会議で会議を。廃藩置県ではなく融県生州。都道府県議員を失職させない作戦。
二つ目の仕事の公務員の解禁。そして推奨で所得がふえて活性化していく。
敵のいない敗戦。
3つの政策
1.議員を増やす
日本は西欧諸国に比べて人口のわりに国会議員が少ない。それが政治の力を弱めて官僚主導の原因になる。
東京などの人口の伸びそうな地域の議員は大幅に増やす。議員がふえることで新人がたくさんうまれ議会が活性化する
2,税財政改正
いまは敗戦状態。敵のいない敗戦。黒船もないし連合軍もない。手本とする先進国も指導を受ける戦勝国もない。日本は何かに失敗したわけではなくより高みに進んできわまり行き詰まった。
日本は世界のどの国よりも安全だ。時間も正確。天国のような国。天国にはうえがない。
天国脱出宣言。
税収の増加に責任をもつものがその税源をもつべき。景気や外交など国政によって左右されやすい法人税や書ごく勢、関税などは国の財源が不泡しく、地域の振興施策でかわる消費税や燃料税、購買者が買う場所によって納税地を選べる酒/タバコ税は地方自治体の財源にする。
消費税は納税地で納税。これまでは全国チェーンの場合は本社でまとめて納税だったがその所在地で納税してもらう。店舗や工場毎に算定して納税を。ネット販売企業は消費者住所を納税先とする。消費税とは本来、消費者が負担する税。
ガソリン税や酒も現在は蔵出しや工場出荷課税だがこれを消費地課税に。
現在の都道府県をにわかに改変はしない。が財源は増える。でやる仕事も増える。その仕事をどう吸収するか?当面は知事会をやって連合議会で。
この国を立ち直らせるんは地域間の公平性を取り戻し、各都道府州の知恵と気迫を競わせることが必要だ。
第一次産業革命で18世紀のイリギスではじまる。蒸気機関を手にいれる。熱エネルギを運動エネルギーん変換。日本は明治維新とともにこれを取り入れ日清日露戦争にかち先進国の仲間入りをはたした。第二次産業革命はドイツやアメリカで19世紀後半にはじまる。電気と内燃機関による技術革新。これによって照明が誕生し昼の時間が延長。通信は発達して地理的距離がせばまり、エネルギー源は小型化されて交通機関い利用。電灯、電信、電車、自動車、航空機が誕生。日本はこれにものれた。
大三次産業革命は規格大量生産の出現と普及。ベルトコンベアやフォードではじまる。日本はここには戦前はいけなかった。よって戦争では規格型兵器を生み出せずに物量の前に惨敗する。大阪万博あたりでようやくそこにのって飛躍した。
がその頃に第4次産業革命がはじまっていた。カー、カラーテレビ、クーラーの3Cブームでリード。
第4次産業革命は規格大量生産にあきた消費者にどれだけ個性的で多様なものを迅速にとどけるかが勝負。そのためにビッグデータでありドローンでありAI.
日本を二都二道八洲に分けてそれぞれが独自の発想と手法で理想を追求できる体制を作る。多種多様なサービスを短時間で提供できるには、一致団結の価値観ではなく多様な価値観が大事。だから地域を分権化する。
官僚主導は恐ろしい、決断できないことが怖い。で、技術論からはいって全体を否定するのが常套手段。
小売店と飲食店は地域の起業の源泉。アメリカでも地方都市でもあたらしい店がたくさんできる。その気分があたらしい業態をうむ。その頂点にシリコンバレーがある。
医者は地方に分散した。が、法文系の士族、弁護士税理士会計士は東京集中。これを分散化させると日本の地域の起業がふえてかわる
戦前の九州は台湾よりも豊かだった。いまや一人当たりGDPで台湾の半分になった。全部東京にすいとられている。
明治維新の際にはどんな新政府をつくるかかんがえあぐねた。それがきまったのは明治4年から。岩倉や大久保が欧米に旅をして構想をねった。国の大枠を考えるのに3年、人員と職員の訓練に3年、手直しに3年。合計9年かかる。
東京はいまや不況都市。東京オリパラで全てをだしきった。わたしは日本の東京、わたしの東京といってきたが、いまや日本の東京に偏ってわたしの東京が抜け落ちた。日本の東京は首都東京のこと、わたしの東京はふるさと東京。地域コミュニティがあり航路のふれあいがあり愛郷精神のある東京。待機児童も減らしたし、残業も減ったし空き家もふえて家賃もさがった。それでも出生率と男性結婚率は下がり続ける。いまや東京こそ日本の衰退の象徴。
これは東京が暮らす街として、ふるさととしてたのしくないからです。国有財産を都が都債をだして買い取る。オリンピック設備やプールやホール。そして民営化していく。近所の街区公園も開放。地元の人が花壇をつくったり遊具をつくれるようにする。そしてふるさと意識をつくっていく。いままでは首都東京の役割が過剰すぎてふるさと東京がなくなっていた。だからすんで楽しくない。子供を産む気になれない。
現在の日本には英雄が生まれる熱狂とそれに従う単純さがない。世に言う英雄待望論は資質のある個人の出現とそれを受け入れる社会の単純さが必要。続きを読む投稿日:2019.04.06
少し先の未来について、かなり幅広く物語形式で書かれている。
ただ、官僚なだけあって政治面が強く、一般市民がどのような生活になるのかふんわりと終わった印象。
三度目の日本という切り口。(一度目は明治の日…本、二度目は戦後日本)続きを読む投稿日:2019.12.29
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