タワー
ペ・ミョンフン(著)
,斎藤真理子(訳)
/河出書房新社
この作品のレビュー
平均 3.3 (6件のレビュー)
-
変な物語だけでは終わらない6話の連作短編集+付録。正直、読んでいる間は理解というか消化し切れていない話もあったが、読み終えてちょっと経ってからのほうが想像が膨らむ。
舞台は674階建ての巨大タワーで…あり、人口50万人の独立国家ビーンスターク。対外的に主権は承認されており、21階までは外国人も自由に出入りできる庭園や商業施設がある非武装地帯、22階から25階までは軍隊が駐屯する警備室と6つの国境検問所、そこから上は上層にいくほど富裕層が入居する居住区になっている。移動は有料エレベーターで、20~30階ほどの路線以外に100階以上の長距離路線があり、1階から最上階までの直通はなく複数のターミナル経由で乗り継ぎをしなければならない。クリスマスシーズンはエレベーター待ちの行列ができ、年末は料金が割増になる。いわゆるマンションみたいに1階ごとに積み重なっているのでなく、テトリスブロックのように空間が674階分積み重なっているため、場所により階数が違い1フロアが4階分の高さもあるところなど様々。まさに国が地表に対して水平に拡がっているように、ビーンスタークは垂直に拡がっている。調べてみると、人口50万人は宇都宮市や松山市と同等くらい。高さは様々とあるが、仮に天井高3メートルとしても2000メートルを超える(上記のように高さは違うからもっと高いのだろう)。大雪山のような山が該当するようだ。驚愕。現実同様、海外に行かない人はずっと国内にいるわけだから、ビーンスターク内で一生を過ごす人も多いだろう。元々は2009年に刊行されたものの復刊らしく、タワマンに住んで後悔してるのとは別の世界だが、エレベーター待ちや階層格差などはどっちも同じか?現実とリンクした非現実的なタワー世界が興味深い。
以下は一部紹介。
「東方の三博士─犬入りバージョン」
ビーンスターク内の権力構造を高級洋酒の流通経路から解き明かすことを試みる。貨幣価値を持つ洋酒は、贈答として一定レベル以上の価値を持つ。そして、その権力の中心にいたのは1匹の犬であり、悲痛な事件が起きる。1話目から可笑しいのだが恐ろしいのだか分からない話から始まるが、韓国文学の傾向や社会を反映しているらしい。個人的に韓国の社会に対する知識が乏しいので、充分に理解し切れていないのが残念。
「タクラマカン配達事故」
ビーンスタークでは郵便が無料で配達される。それはエレベーターの利用者が自分の行く階宛ての郵便物があれば、善意で運ぶ青いポストがあるから。ビョンスは出張中に自分のカバンにしまい込み忘れていた手紙の束を発見する。その中にはミンソという男性がウンスという女性に宛てたラブレターがあった。過去に恋人同士であったが、現在ウンスは別の人と婚約中である。そんな折、ミンソが爆撃任務の帰還中に対空ミサイルで迎撃され、タクラマカン砂漠で行方不明になったことを知る。気になって仕方がないウンスは人工衛星の写真を手配して自分で探そうとする。ウンスが知人に協力を仰いだ手紙と共に国外でもネット上で話題となり、数十万人規模のアクセスとなり大捜索が行われる。ネットがこういう善意で満ちていると素敵だと思わされる物語。
「自然礼賛」では韓国の2008年~2009年の世相を反映された内容になっており、「エレベーター機動演出」では建物の垂直に対する垂直運送組合と、水平に対する水平運送労組の分断が、現実の右派と左派を反映している模様。この辺りも実社会の知識が乏しく、韓国に詳しい方は楽しめるのかもしれない。最後の「シャリーアにかなうもの」はビーンスタークの終末を感じさせながら、中で暮らす居住者の変化にホッコリした。
ちなみに付録も充実していて、犬の俳優Pのインタビューが面白くて秀逸だった。続きを読む投稿日:2023.07.13
これは面白かった。
どの短編も粒ぞろいな印象深くユーモア溢れる作品が揃っていた。
しかも、短編で描かれている世界が共通して”ビーンスターク”という674階建ての巨大なタワーというのも面白い。そこに50…万人もの人々が生活しているという舞台がまずとんでもない。
このとんでもない世界の中で、何だそれって思うヘンテコな世界もあれば、心温まる良い話もあってかなり面白い。
この世界観をもっと見たい! って思えるような上質な短編集だった。
いや、本当ずっとやってほしいまである笑続きを読む投稿日:2024.01.10
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。