死にがいを求めて生きているの
朝井リョウ(著)
/中公文庫
作品情報
誰とも比べなくていい。
そう囁かれたはずの世界は
こんなにも苦しい――
毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年TVディレクター。交わるはずのない彼らの痛みが、植物状態の青年・智也と、彼を見守る友人・雄介に重なるとき、歪な真実が露わになる。自滅へひた走る若者たちが抱えた、見えない傷と祈りに触れる物語。
文庫版特典:特別付録/本作と螺旋プロジェクトに寄せて
解説/清田隆之
【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みを読むことができます】
※〈螺旋プロジェクト〉とは――
「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画
〈螺旋〉作品一覧
朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(本作)
天野純希『もののふの国』
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
乾ルカ『コイコワレ』
大森兄弟『ウナノハテノガタ』
澤田瞳子『月人壮士』
薬丸岳『蒼色の大地』
吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』
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商品情報
- シリーズ
- 死にがいを求めて生きているの
- 著者
- 朝井リョウ
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公文庫
- 書籍発売日
- 2022.10.25
- Reader Store発売日
- 2022.10.21
- ファイルサイズ
- 17.7MB
- ページ数
- 552ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (216件のレビュー)
-
これは『螺旋プロジェクト』という競作企画の作品の平成バージョンだということを抜きにしては語れないと思います。
朝井さんの著者インタビューによると、平成では『螺旋プロジェクトで課された「対立」が個人…間でも、国を挙げての「対立」も時代を象徴するものが、どちらもなかなか思い浮かばなかった。あるとき、平成はもしかしたら「対立」を排除してきた時代なのかと思ったそうです。
国が豊かになり、ナンバーワンより、オンリーワンという空気のもと、わかりやすい「対立」はなくなった。でも不思議と生きやすくなったわけではない。このあたりのアンバランス感が気になってきたそうです。
そして、インフラが整っていない国の人たちからすると「何が生きづらいの?」ということになると思うんです。だけどなぜか、人は「生きている」というだけでは満足できない…云々と続きます。
それでタイトルに『死にがいを求めて生きているの』という言葉がでてきますが、この物語の青年たちが求めているのは「生きがい」です。
『螺旋プロジェクト』で対立している海族と山族ですが、山族と思われる堀北雄介は海族と思われる植物状態にある南水智也の看病に通っています。
どうしてそういうことになったのかが、この作品の内容ですが、私がこういう作品を読み慣れていないせいか、読んでいて面白いというより非常につらかったです。
彼らは北海道大学の学生でしたが、しきりに「生きがい」を探していました。
雄介が「生きがい」について語るシーンが443Pにあるのですが(長いので端折りますが)、
一つ目は生きがいがあって、それが社会貢献につながる人。
二つ目は生きがいがあるけれどそれが社会に向いてない人。
三つ目は生きがいがない人。
に分けています。
私は自分が二つ目に属すると思います。
でも「生きがい」がまるでなかったら生きるのはつらいと想像しますが、一つ目の社会貢献につながるほどの「生きがい」がなくても程ほどで生きていけるんじゃないかな。そんな風に「生きがい」「生きがい」って毎日探すより、毎日の方が「生きがい」の中のどこかに存在していると考えられないかなと思いました。続きを読む投稿日:2022.11.14
とても面白いと思った。
読んでいる最中度々ないはずのトラウマが思い出されるような感覚になった。
自分は特別だと信じたいし、人にはない何かがあって、価値のある人間なのだと思いたい。だけど、ただ生きてい…るだけなのに、そんなことはないのだと思い知らされる。特別な人間になるために、自分が人より価値ある存在でいられそうなものを見つけよう、人並み以上の努力をして結果を出そう。そう何度も決意して、思い返せば何も成し遂げていない。自分は人より劣っているのだと薄々気づいてはいるが、なんとかしてそこから心を遠ざけ、他人にもバレないようにする。
そこそこ優秀で、かつ気づいていない人間だけが伸び伸び生きられるのか。
いや、きっと誰でもに価値あるバックグラウンドがある。他人は尊い。
まだきっと誰にもバレていないけど、自分だけが、何もない。続きを読む投稿日:2024.04.12
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