あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集
ジーン・リース(著)
,西崎憲(編)
,安藤しを(訳)
,磯田沙円子(訳)
,樫尾千穂(訳)
,加藤靖(訳)
,小平慧(訳)
,笹原桃子(訳)
,沢山英理子(訳)
,獅子麻衣子(訳)
/亜紀書房
作品情報
――わたしはどこにも属していないし、属すためのやりかたを買うお金もない。
カリブ海生まれのジーン・リースは、ヨーロッパでは居場所を見出せない、疎外された人であった。しかも女性である。
自身の波乱に富んだ人生を下敷きにした、モデル、老女、放浪者などの主人公たちは、困窮、飲酒、刑務所暮らし、戦争と数々の困難を生きる。
だが彼女らはけっして下を向かない。
慣習と怠惰と固定観念をあざ笑うように、したたかに生きる。
《いま新たな光を浴びる、反逆者リースの本邦初、珠玉の作品集》
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【目次】
■あの人たちが本を焼いた日……The Day They Burned the Books
■あいつらにはジャズって呼ばせておけ……Let Them Call It Jazz
■心霊信奉者……A Spiritualist
■マヌカン……Mannequin
■フランスの刑務所にて……From a French Prison
■母であることを学ぶ……Learning to Be a Mother
■シディ……The Sidi
■飢え……Hunger
■金色荘にて……At the Villa d'Or
■ロータス……The Lotus
■ではまた九月に、ペトロネラ……Till September Petronella
■よそ者を探る……I Spy a Stranger
■堅固な家……A Soild House
■機械の外側で……Outside the Machine
■「ジーン・リース」へのピクニック……西崎憲
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商品情報
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この作品のレビュー
平均 3.7 (8件のレビュー)
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レーベル名の「ブックスならんですわる」が珍しくて目についた。帯に書いてあるのは「20世紀の初頭、繊細にしてオリジナルな小品をコツコツと書きためた作家たちがいます。前の時代に生まれた人たちですが、ふっと…気づくと、私たちの隣に腰掛け、いっしょに前を見ています。やさしくて気高い横顔を眺めていると、自分も先にいくことができる、そんな気がします。いつも傍に置いて、1篇1篇を味わってみてください。」ということ。本書がレーベル三冊目らしい。
著者のジーン・リースは、1890年にイギリス領ドミニカ島に生まれた。
クレオール、いわゆる「植民地生まれの白人」とになるらしい。
リースが生きている間には、第二次ボーア戦争、第一次世界大戦、スペイン戦争、第二次世界大戦と、まさに戦争の時代。あとがきで書かれる著者の小伝が色々複雑だ。イングランドの女子校に入ったけれどうまく行かなかったようだ。同じイギリス人でも、植民地と本国とでは言語、発音、習慣などのすれ違いがあるんだろう。
短編は…うーん、よく分からなかった…(=_=;)
今いる場所が居場所ではない違和感、植民地生まれの人間や特に女性への差別、女性の嫌な面(混血白人関係なく)が現れている。
『あの人たちが本を焼いた日』
カリブの小島(著者出身のドミニカかな?)に住む少女が、幼馴染みエディーの家族のことを語る。父親は駐在したイギリス人の変人、母親は昔は美人だったであろう現地人。妻は夫の暴力暴言に黙ったまま笑顔で流していたが、夫が急死するとその憎悪を夫の遺した本にぶつける。
エディーと語り手は燃やされる本から1冊ずつ助け出して逃げ出した。エディーの涙が伝わって思う「たぶんいまわたしたちは結婚したんだ」。でも持ち出した本にはがっかりした!
『あいつらにはジャズって呼ばせておけ』
下宿を追い出された女性主人公は、植民地で混血の母親から生まれた。イングランドの学校に行くために移住したけれど、色々とうまく行かない。
下宿を追い出されて済ませてくれたアパートでは、近所の人達から好奇の目と差別の言葉に晒される。うるさいから歌を歌ったら警察がやってきて監獄に入れられた。
数日で出てきてから、新しい部屋を借りて歌を歌っていたらミュージシャンに気に入られた。彼はその歌をアレンジして売り出したらしい。
もう違う音楽になった。歌は私から離れていった。
でもそうではないかもしれない。彼らが間違ったまま演奏したって、私の歌は傷つかない。
『心霊信奉者』
昔好きな女性がいたんですよ、でも亡くなってしまって。だから部屋を片付けていたらいきなり大音響が!見に行ったらさっきまでは無かった大理石の塊が居間に落っこちているではありませんか!
なんで笑うんですか?彼女が狙いを外したって?なんて失礼な!
『マヌカン』
パリの街でのモデル女性たちの一幕。
『フランスの刑務所にて』
刑務所の面会時間にやってきた老人と幼い男の子。
目も衰えフランス語もよくわからない老人の不安さが書かれる。
『母であることを学ぶ』
出産したけれど全く子供が可愛くない。
夫は共産党員だと白い目で見られるし、自分もフランスには馴染めない。
しかし一人になって思った。自分は幸せだし、かわいいおちびちゃんにはキスせずにいられない。そして母親としての初めてのキスをした。
『シディ』
刑務所の独房の隣にアラブ人が入ってきて、宗教や習慣の違いだとか言語のこととか。
『飢え』
五日間何も食べずにもうダメだ、って話なんだけど…宗教的断食なの??
『金色荘にて』
休暇で訪れたホテルでの一夜。人生なんて薄っぺらいなあと思いつつ、でもいい部屋なのでくつろいだり。
『ロータス』
同じアパートのロータスおばあさんが、若い夫婦ロニーとクリスティーンの家に招待された。クリスティーンとロータスおばあさんは最初から気が合わない。その夜ロータスおばあさんが酔っ払って奇行に走るけど、アパートのみんなは面倒くさがってシカトしたよ。
『ではまた九月に、ペトロネラ』
夏の休暇で別荘招待してもらったけれど、嫌な人たちばっかり。ペトロネラはさっさとロンドンに帰ろうとしたけれど荷物を別荘に置いてきちゃった。
家に帰るまでに二人の男性に送ってもらった。ふたりともまた会いたいって「ではまた九月に、ペトロネラ」と言ってお別れした。
『よそ者を探る』
ハドソン夫人は親戚のローラを家に泊めていた。ローラは、戦争中にヨーロッパを離れ、その後フランスに行き、そしてイギリスに戻ってきていた。田舎町ではローラはスパイで魔女だと言われ、陰口を叩かれ、匿名手紙や張り紙を出され、精神病だと言われて追い出されようとしている。
…いわゆる誹謗中傷で追い詰められる様子なんだけど、ローラもちょっと変な行動があったりして…どういうふうに読めばいいんだ…
『堅固な家』
ドイツ軍がロンドンを空襲する日々、持ち主が離れた家に住み着く人たちのお話。降霊会を行うんだとか、睡眠薬大量に飲むんだとか、家を取り仕切っている女性との親交やらいざこざやら。
『機械の外側で』
病院の大部屋に入院している女性患者達のお喋り。主人公は話し方や話す内容が他の人達とタイミングが合わなくて避けられがちでいる。手術も終わって家に帰らなければいけないけれど、自分には帰る家も無いし。続きを読む投稿日:2022.08.26
図書館で表題だけで借りた本。CDならジャケ買い的な。
1890年生まれ、ドミニカ出身、欧州在住。
植民地生まれの女性である作者が、自身の「どこにも身の置き場がない、どこにも属さない、利用され搾取され、…人一倍義務を負わされることはあっても権利は全く認められない、異国の地で差別や不当な扱いを受ける」経験を基に様々な困難に見舞われる人々を綴った14の短編集。
最後の解説にある彼女の半生を読むと、14全ての話に彼女の実体験がしっかりと挿入されている。
裏表紙には「したたかに生きる」とあったが読んでみてしたたかさは感じない。これをしたたかだの強いだの形容してしまうのは「まぁいろいろあるけど人間は強いからさっ」と問題をそのまんま地中に埋めてしまうような気がする。登場する女性達は確かに生き延びてはいるけれど(「シディ」の男性囚人は殺されている)それでも息苦しさからは今も昔もこれからも一度も解放されてはいない。でも時代は戦前でしょ?遠い異国だし。でもそこで話される人生は今も同じようにあらゆる場所で展開されている。キリスト教徒が女性のために、異邦人のために、異教徒のために周到に用意した地獄に生きる人々の物語。
真ん中までは「あー表題作が1番かー。まぁ悪くはないけど、うん。。」と読み進める。金色荘にてから急に文章が強い。あれ?次もいいなとロータスを読む。でまた次もいい。よそ者を探るではちょっと泣いてしまった。翻訳なので原文は分からないが、金色荘にてからの言葉選びが鋭利かつ時代がかってていい。
正気なんて保ってたら損じゃない?みんなみたいに心底意地悪に生きていけたらいいのに。ガラスの粉をまぶした空気の中で深呼吸。痛い。死んじゃう。でも呼吸は止められない。みたいな。
「あの人たちが本を焼いた日」★★
「あいつらにはジャズって呼ばせておけ」★
「心霊信奉者」
「マヌカン」
「フランスの刑務所にて」
「母であることを学ぶ」★
「シディ」★
「飢え」
「金色荘にて」★★
パリに対する巨大な反動。ここにいると人生は薄っぺらい、でも安全だ。
「ロータス」★★★
上品でかわいらしいのだけれど、皮肉な性格
「ではまた九月に、ペトロネラ」★★★
じゃあこの子は?と蛇の目
「よそ者を探る」★★★
花はどれも自分にとって代わろうとしている蕾を従えていた
「堅固な家」★★
きれいな人は死ぬべきではないわ。この世に少ししかいないんだから
「機械の外側で」★★★
とにかく親切で、かわいくて、気の毒な子続きを読む投稿日:2023.11.30
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