ペイント
イ・ヒヨン(著)
,小山内園子(訳)
/イースト・プレス
作品情報
「君たちは、親を選べる子どもなんだよ」
「アーモンド」に続く「チャンビ青少年文学賞」受賞作。
韓国で30万部。ブレイディみかこ氏推薦。
「子どもに親を選ぶことができたら。人類の究極の「IF」に挑んだティーン小説。
大人こそ読んでこころの準備をしておいたほうがいい」
事情により子どもを育てられなくなった親が、子どもを預ける「NCセンター」が設立された近未来。そこでは子どもが親を選ぶ面接「ペイント(ペアレントインタビュー)」が行われている。そんなNCセンターに在籍する17歳の少年ジェヌが、この物語の主人公。
20歳のセンター退所期限までに親をみつけなれば、センター出身という経歴がIDカードに刻まれる。過去にNCセンター出身者による犯罪が行われたことで、社会にはNCセンター出身者への偏見が存在し、その経歴が刻まれないよう、子どもたちは必死にペイントを続けている。
しかし、ペイントにやってくる親候補の多くは、養子縁組することで受け取れる福利厚生が目的。親候補たちのとりつくろった笑顔と、透けて見える本音を、ジェヌは瞬時に見抜いてしまう。
NCセンターの退所期限を3年後に控えたジェヌは、ペイントをしながら、親や家族という存在について思索し、自分の進む道をつかもうとする。
■韓国作家の推薦文
『ペイント』は、11歳の娘が先にひったくるようにして持っていった本だ。ものすごく面白い、と本から手を離せなくなっている娘の姿に、正直心がチクリとした。 娘が学校にいっている隙にこっそり読みはじめた。読んでいるあいだじゅう、いい母親になりたいのにどうしていいかわからない私のそばへ、かつての自分がやってきて座っていた。親の関心や理解を求めていた幼い頃の私、そして、絶対に親元を離れると誓っていた20代の私が。いつのまにか母親になった私は、娘とともに『ペイント』のなかの「親を選ぶ子供たち」「親になろうとする大人たち」そして「かれらを手助けするセンターの大人たち」がそれぞれどんな想いだったか、ひとしきり語り合った。その語り合いが遠い未来まで続くであろうことを、私は知っている。
――小説家 チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』
【目次】
ジェヌ、301です
父母面接を始めます
いったいどんなヤツ紹介されたんだよ?
IDカードの番号
大人だからって、みんなが大人っぽい必要ありますか
お前は、自分の思い通りに生きると思ってんだろうな
自分のためだ、自分のため
あの噂、聞いた?
待ってるからね、友達
Parents' Children
最後に聞いてもいいですか?
日本の読者のみなさんへ
訳者あとがき
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この作品のレビュー
平均 3.2 (15件のレビュー)
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舞台は近未来の韓国。少子化問題の深刻化の行き着いた先、ここでは何らかの事情で生みの親に育てられなかった子どもたちを国家が育てる、NC(ナショナル・チルドレン)センターという施設が全国的に機能している…。センターの子どもたちは、十三歳になると、父母面接を重ねて親を選ぶ権利を持つ。家族になることが決まれば施設を出ることができ、そのときNC出身であるという記録は抹消される。二十歳までに親が決まらない場合、保護者の無いNC出身者として社会に出ていくことになるが、NC出身者への差別は根深い。
タイトルになっている「ペイント」とは、父母面接=ペアレンツ・インタビューを縮めた非公式の呼称。「ペイントする」とは父母面接をしにいくことを指すが、過去を塗り潰すことや、未来を希望の色で描くことをも表しているのかもしれない…。主人公は、ひとりそんな思索をすることもある、冷静で大人びた雰囲気の十七歳の少年。
ちょっと粗削りと感じるところもあったが、問題提起はたくさんあった。実は、韓国の小説を読むのはこれが初めて。訳者の小山内園子さんによる、ラジオ番組での紹介がきっかけで読んだ。続きを読む投稿日:2023.05.02
親に望まれない子どもを国家で引き取り育て、ある一定の年齢になったら、子どもを望む夫婦と子どもを引き合わせる、という国家プロジェクトの存在する時代。親とのマッチングがうまくいかなくても、20歳になったら…施設をでなくてはならない。マッチングできなかった施設出身の子どもは、偏見の目で見られるという。そんな社会が舞台。
親になるとはどういうことか、親子とは何なのかを考えさせる。とはいえ、良かったと思えないのはなぜか?
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」のような感動を期待していたからか?ちょっと(はるかに?)およばないかな。続きを読む投稿日:2024.02.18
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