言葉を離れる
横尾忠則(著)
/講談社文庫
作品情報
ワールドワイドに活躍する美術家が80歳を超えてなお創作する心の軌跡を、想定外の半生を振り返り綴ったエッセイ集。講談社エッセイ賞受賞作。
【目次】
1 宿命に気づく時
2 肉体が感得するもの
3 鍵の在処
4 観察の技法
5 波乱の始まり
6 想定外の連続
7 買書の心得
8 三島由紀夫の冷静
9 地獄と天国のジェットコースター
10 インドからの呼び声
11 小説と画家宣言
12 「ディオニソス」の饗宴
13 ラウシェンバーグの軽やかな芸術
14 滝のひらめき
15 運命を手なずける
16 映画の手がかり
17 少年文学の生と死
18 言葉を離れる
19 自分の中の革命
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商品情報
- シリーズ
- 言葉を離れる
- 著者
- 横尾忠則
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2020.12.15
- Reader Store発売日
- 2020.12.15
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (10件のレビュー)
-
横尾忠則(1936年~)氏は、著名なグラフィックデザイナー、版画家、画家、作家。ニューヨーク近代美術館(MoMA)で現存のデザイナーで初めての個展開催、パリはじめ世界各地のビエンナーレでの受賞、ベルギ…ー国立20世紀バレエ団のミラノスカラ座公演での舞台美術担当など海外でも活躍し、毎日芸術賞、紫綬褒章、紺綬褒章、旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞等を受賞・受章。また、初の小説集『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞(2008年)、本エッセイ集で講談社エッセイ賞を受賞(2016年)。
本書は、月刊誌「ユリイカ」に「夢遊する読書」と題して2011~14年に連載(途中2年ほど連載休止)されたエッセイ18篇と、語り下ろしの1篇をまとめて2015年に出版され、2020年に文庫化されたもの。
内容は、連載のタイトルの通り、横尾氏の読書との関わりが通底するテーマとはなっているが、むしろ、横尾氏の半生を振り返った自伝的エッセイ集として読めるものである。
私は、ノンフィクションやエッセイが好きで、各種のノンフィクション賞、エッセイ賞を受賞した作品を多数読んできており、本書も、その流れで手に取ったもので、横尾氏のグラフィックデザイナー・画家としての実績等については、不覚にもほとんど知らなかったし、普通の会社員である私にとって、芸術家の世界・生活というのは最も想像し難いものの一つであったが、本書を読んで、ある意味驚きの連続であった。
特に、(若い頃の)「来るもの拒まず」という著者の姿勢がもたらした、幅広い分野での活躍と、様々な著名人との交流(登場するのは、三島由紀夫、ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、寺山修司、モーリス・ペジャール、ジャンニ・ヴェルサーチ、黒澤明ら限りがない)、そして、それらから派生した数々のエピソードは凄まじい。
また、美術(芸術)に興味のある、或いはその道を志す人にとっては、横尾氏のキャリアや考え方は一つの参考になるものなのであろう。横尾氏のいう芸術とは、ひと言で言うなら「極めて肉体的なものであり、言葉で表せないもの」ということになろうか。
更に、もう一つの読みどころは、自己肯定感の強い横尾氏が、70代後半になって、話したり聞いたりすることに不自由を感じるようになり(連載の17篇までと18篇の間が2年空いたのはそのため)、自らの老化・死を否応なく意識するようになって綴った、最後段の生死観の部分であろう。結論的な見解が述べられているわけではないが、波乱万丈の人生を送ってきた芸術家が、どのような思考プロセスを辿るのかは興味深い。
世界的なグラフィックデザイナー・画家が半生を振り返った、興味深い自伝的エッセイ集である。
(2022年9月了)続きを読む投稿日:2022.09.06
このレビューはネタバレを含みます
Riverside Reading Clubが「SOME RAPs, SOME BOOKs ラッパーと本に関するいくつかの話」というテーマで代官山蔦屋書店でブックフェアを開催しており先日行ってきた。…そこでISSUGIがレコメンドする1冊として紹介されていたので読んだ。彼がこんなふうに具体的なインプットを提示する場面をほとんど見たことないので楽しみにしていたのだけど、現場主義のBボーイマインド溢れるさすがの選書だと読んで感じた。
レビューの続きを読む
著者である横尾忠則は日本のアート界の第一人者であり、そんな彼がどのようなキャリアを歩んできたか、読書と本について交えながら語る内容となっている。タイトルどおりひたすら「本を読んでいない」「本を読むのが苦手だ」という話が繰り返され、その代わりに大切にしているのは自分のアウトプットだったり、行動した結果手に入れたものであると繰り返し主張している。彼の周辺人物である寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」と主張としては近い。確かに読書でわかった気になっても実際には見てみないと分からないところも多いと思う。またコロナも明けようとしている今、現場の重要性や価値は以前よりも高まっていると読んでいて感じた。そしてこれはBボーイイズムでもあると思う。
偉大な芸術家として順風満帆かと思っていたが、実際には多くの葛藤を経ていることを知れた。特にデザイナーから画家へのキャリアチェンジに関して相当苦労していた模様。周囲は彼のスタイルを絵画になっても評価していた。しかし、デザインと絵画の違いが彼自身には重くのしかかり深みにハマる中、彼にとっては「描く」ことしか解決する方法はなかった。つまり本の中に答えはないjust do it的な考え方。これには同意するが、そのjust do itに至る補助線としての本や読書を否定する必要はないと思う。実際本著はクリエイティビティに関する金言がたくさん収録されており、何か作っている人にとって悩んだりするときに支えになると思う。刺さったラインを引用しておく。アート系の本は読むとクリエイティビティが刺激されるので積極的に読んでいきたい。
時代が未来を展望する時、ぼくは本能的に過去に遡りたくなるのです。というのはぼくにとっての未来は過去に存在するからです。
何を描いているかじゃなくて、いかに描くか。何を描くかは昔で、いかに描くかは今日的で、でもでそれもダメで、いかに生きるかだと思うんですよ。
役に立つことを一生懸命、これをやることで社会に還元するとかいうことは人生じゃなくて、実に役に立たないことを一生懸命やるということが人生なのかなということです。続きを読む投稿日:2023.02.14
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