改訂完全版 火刑都市
島田荘司(著)
/講談社文庫
作品情報
東京、四谷の雑居ビルの放火事件で若いガードマンが焼死する。不審な死に警察の捜査が始まった。若者の日常生活に、かすかに存在した女の影……。女の行方を追ううちに次は赤坂で放火が。そして現場に“東京”と謎の文字が書かれた張り紙が! 索漠たる都市の内奥と現代人の心を見据えて本格推理の天才が描く、印象深い長編ミステリー。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 改訂完全版 火刑都市
- 著者
- 島田荘司
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2020.03.13
- Reader Store発売日
- 2020.03.13
- ファイルサイズ
- 2.2MB
- ページ数
- 464ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.4 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
久しぶりに、いいミステリー小説だったなぁ…、って感じ。
レビューの続きを読む
でも、それが島田荘司なのが面白い。
島田荘司というと、ピタゴラスイッチみたいな殺人事件wを書く人というイメージだったけど、こんなシブいミステリーも書くんだなーと。
江戸っ子じゃないけど、おっそれ入谷の鬼子母神!とか言いたくなる。←意味不明(^^ゞ
以下、内容に触れています。
そういえば、『暗闇坂の人喰いの木』の感想で、“この人はドラマは書けても、メロドラマは書けないんだろうな”なんて書いてしまったが、それ、全面訂正!
なんだよー! こんないいメロドラマ書けるんじゃん。
なんで、『暗闇坂の人喰いの木』の後半でそれを書かずに、ピタゴラスイッチで遊んじゃうんだよー!
と言いたい(^^ゞ
とはいえ、そうか。これって、1986年に出た本なんだね。
定かじゃないけど、1986年っていったら、たぶんトラベルミステリーが全盛だったと思うのだ。
売れたんだかどうかは知らなけど、例の「占星術」でお札切り刻んだところで、当時はピタゴラスイッチが放送されてなかったこともあって(?)、「ミステリー小説といったら旅情どすぇ~」なあの頃では、著者も食い扶持としてこういうのを書かなきゃならなかったということなんだろうな。
でも、そのせいでこんな大傑作(と評価しない人が今は多いみたいだけどw)が生まれたかと思うと、人間なんてもんは逆風下でいかに試行錯誤するかなんだなーと、勇気をもらえる気がするかな(^^♪
そんな『火刑都市』だけど、今は本格にあらずばミステリーにあらずの傾向があるから、人気ないのはしょうがないんだろう。
というか、島田荘司といえば本格の大御所だから。そのイメージで読んじゃって。全然そうじゃない内容にガッカリしちゃうっていう面もあるんだろうな。
変な話、この小説の著者名が島田荘司ではなく松本清張だったら、「名作」になっていた可能性はあるんじゃないだろうか?
いやいや。島田荘司と松本清張、どっちが上とかそういう話ではなくて。読者というのは、どうしたって先入観で読んじゃって。先入観からくるイメージと合わなければつまらなく感じてしまう、そういうもんなんじゃないのかな?って話w
逆に言えば、自分がこの小説を良いと思うのは、“島田荘司=ピタゴラスイッチみたいな殺人事件を書く人”というネガティブな先入観が覆された、そういうことなんだと思う。
そう書いていて、思い出したけど、そういえばこの小説って、自分は読んでいる間、ずっと「いいじゃん、これ…」と思いながらも、「でも最後はピタゴラスイッチみたいなおバカトリックでシラケるんだろうな」と決めつけていた(^^ゞ
でも、ま、密室にする必要あるの?とか。確かにそれで火は点くだろうけど、でも、消えちゃうことも多いよね?みたいなのはあったとはいえw、「私はあの人以外、誰も愛したことがありません」にはガツーンときたし。
最後の、“中村は、いつか喫茶店で由紀子が泣いたのは、どういう理由だったかなと思い出そうとした。しかし疲れ切った彼の頭では、結局思い出せなかった”は、しんみりとした優しさがある。
そういえば、解説で川本三郎という人が、“私見では「秀れたミステリ」とは、読者にこの人は捕まってほしくないと思わせる主人公を登場させることにある”と書いているけど、それには思わず「それ、それ。まさにそれ!」とうなずいてしまった。
この由紀子って、『火車』のあの女の人とイメージがダブるんだよね。
『火車』は、その女の人の哀しさをどんどん遡っていく話だったが、この『火刑都市』もそういうところがある。
中盤で描かれる新潟の海沿いの集落の凍えるような風景と、ラストで語られる“母がこっちに出てきた時、店で売っていた品物をいっぱい、おみやげだと言って持ってきて……」という言葉。
でも、1986年なのだ。この小説が出版されたのは。
(物語の設定は1982年の暮れから83年の晩秋)
1986年といったら、まだバブルの前夜だが、それでもその兆候はそこかしこにあった。
それなのに、日本って、こんなにも貧乏だったんだなぁ…って。
なんだか、ため息が出てしまう。
最後の、“中村は、いつか喫茶店で由紀子が泣いたのは、どういう理由だったかなと思い出そうとした”というところ。
その喫茶店の場面に戻ってみると、“疲れているんだな、と中村は思った。この娘は疲れている。たった一人で連日を闘い、疲れ切っているのだ”とある。
その由紀子に限らず、日本人は戦後からこのかた、疲れ切るまでして、やっと今の豊かな暮らしを得たのになぁ……って。
ため息が出てしまうのは、たぶんそういうことなんだろう。
というか、ため息に浸っていてはダメなんだろうけどさ(^^ゞ
それはそれとして、著者にとってこの小説の主題は何だったんだろう?
そこにすごく興味がある。
この時期、著者は、本来であれば本格ミステリー、つまり御手洗モノのような小説が書きたかったんだと思うのだ。
でも、時代はトラベルミステリー全盛で、本格モノは売れなかった(か、どうかは知らないが、たぶん)。
つまり、中盤で出てくる新潟の寒村なんかは、小説を売るためにトラベルミステリーにある旅情趣味として出したように思うのだ。
でも、著者にとっての主題は、やっぱりその時代(バブル前夜)で変わっていく東京の風景と情緒への憧憬にあるんじゃないかって思うからだ。
だからこそ、東京ではなくて、「東亰」なんだろうし。また、それに沿っての放火なんだろう。
いや、それに沿うなら「東亰」より「江戸」なんじゃない?って気がするしw
なんで放火?という気がしないでもないんだけど、でも、まー、頭のおかしな犯罪者がやることを理解出来ないのは普通にあることだから、むしろリアルなのかもしれないけどね(^^ゞ
でも、著者は、時代(バブル前夜)で変わっていく東京の風景と情緒への憧憬というテーマをストレートにはミステリー小説にしなかったわけだ。
それは、たぶんそれを前面にミステリー小説に落とし込んでも読者にウケないと考えたからで。
読者にウケるようにするには何が必要か?という部分が、由紀子と、由紀子に代表される人たちが抱える背景なんだと思うのだ。
でも、この小説の主人公は、ほぼ由紀子だ。
そう考えると、由紀子や新潟の寒村って、著者はこの小説を書くにあたって、どの時点で出てきたんだろう?と、そこが不思議な気がするのだ。
たぶん、変わっていく東京の風景と情緒への憧憬をミステリーとして書こうと構想する中で、由紀子という登場人物が出てきたような気がするんだけど、そうではなくて。最初から東京の風景と情緒への憧憬と、由紀子のような人という2つのテーマがあって。
それを一つにしたような気もする。
ただ、どっちだとしても、それって、まるでスティーブ・ジョブズじゃん!って。←意味不明w
いやー、マジそれ、島田荘司に聞いてみたい(^^ゞ投稿日:2021.11.13
2021/9/18読了
1986年発表の作品だが、購入した本は’21年発売の『改訂完全版』。35年前からヒートアイランド現象や地震防災の脆弱性の指摘はあった訳だが、気候変動や震災後の都市防災のあり方が…問われる現在、日本人が、深刻な災害とか「何もなかった」のを良いことに、無為無策のまま時を重ねてきたのかが、コレを読んで判ってしまった。続きを読む投稿日:2023.09.24
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。