近代という教養 ――文学が背負った課題
石原千秋(著)
/筑摩選書
作品情報
「近代」とはいったい何だったのか? ラディカルに近代化を果たさねばならなかった日本では、その文化的側面の多くを「文学」が背負うことになった。役割を担わされた文学は「新しさ」を表出するために進出し続けた。その進化論的パラダイムにとりつかれた時代との格闘が「教養」の源泉となり、現在まで私たちの底流で生き続けている。テクスト分析を駆使し、日本近・現代の文化的慣習の形成過程をくっきりとあぶり出す斬新な論考。
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商品情報
- シリーズ
- 近代という教養 ――文学が背負った課題
- 著者
- 石原千秋
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- 筑摩選書
- 書籍発売日
- 2013.01.15
- Reader Store発売日
- 2019.06.07
- ファイルサイズ
- 2.6MB
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
-
大学時代に著者の授業を受けていたが「講義中はわからないように寝ろ」と怒られた思い出しかない。そんな石原先生の著書は、「文学が背負った課題」と過大に思える副題が付く。なぜ「近代」の課題を文学が背負うの…か。ちなみに今、私たちが生きている「現代」は近代の途上。その途上でなぜ近代を今、語るのか。これは具体的には言及されていないところから、この本のわかりにくさは始まる。
近代論というより、小説論として読んだ方が、まだわかる気がする。言文一致の小説が誕生して発展した明治期の近代文学の構造や着目点の例示のされ方はわかりよい。「主人公」の誕生や、1人称や3人称の視点の模索、写実主義の誕生などなど。
続きを読む投稿日:2013.03.18
p.48「グローバリゼーションとは、進化論的パラダイムが世界を駆けめぐり、世界を覆いつくすことだ」
p.54「因果関係とはそもそも恣意的なものでしかない。・・・すなわち『「原因」として何を挙げるかは、…客観的に決まっている訳ではない、という事を物語っている。「原因」として何を挙げるかは、基本的には、それに関わる人間の問題意識に依存するのである』(『ウィトゲンシュタインから道元へ』哲学書房、二〇〇三・三)。
p.62「進化論的歴史観は『歴史を、一元的なもの、つまり、一律な構成原理や変容原理の反映」(ギデンス)と認識していたわけだ。
しかし、『野生の思考』は「野生の思考」は遅れているのではなく、欧米の思考と異なっているのだと主張した。」
p.71「主人公の形式上の資格とは、他の登場人物を観察し、他の登場人物について考えることだと言っていい。これを構造的に行うためには、小説は主人公の視点から書かなければならないことになる。」
p.77「私たちが読むことができる第三篇までの『浮雲』を「未完」と読むか「完結」と読むかはね読者の読みの枠組みしだいとなる。」
P.78「近代小説の語り手はふつうの数学上の「点」のように、小説中には位置は持つが面積は持たないと考えられている。つまり、姿は見えない。」
P.82「『こそあど言葉』という指示語は語り手の位置を示す重要な指標である。
p.232
「三四郎」はなにも知らない三四郎が自分の欲しているものを他人から教わるのである。
p240自己が自分にとっても完全に理解できない他者でもあるp.245
フロイト派のエリクソンによれば、アイデンティティーは〈自分が自分であるという確信〉と〈そのことを他者が認識してくれているという確信〉という二通りの確信からなる。
p.264
パラダイムとは「自然」になったときに最も強力に機能しているのである。続きを読む投稿日:2014.12.18
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