この作品のレビュー
平均 3.7 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
パリ在住のライターによるエッセイ集。やわらかであたたかな風が吹いている、と表現したくなるような文章。それに、風通しだっていいというような内容です。
レビューの続きを読む
食文化、フランス人の気質やパリの文化、パリジェンヌたちについて、パリっ子たちのコミュニケーションの有りよう、etc……。どの項も4ページほどの分量なのですが、紹介されているあれやこれや、そこに挟まっているディテールがとても魅力的なのでした。ディテールってものは具体的かつマテリアルでなきゃだな! と感じ得たくらいです。
たとえば、自慢のクロワッサンを買いたいと思っているそのパン屋で、持ち帰った後、自宅での味わい方を知りたくて店員と話をしていると、うしろから自分と同じお客さんであるマダムが声をかけてくる。「食べる前に、オーブンで3~4分温めたら、それはそれは素晴らしいの。私は、毎朝そうしてるわ」「ああ、それはとてもおいしそう。早速、明日の朝試してみます!」「くれぐれもレンジは使わないようにね。オーブンで、ですよ。そして、そうね、温度は150度から160度くらいかしら」というやりとり。そこでの時間の一回性の記録が、なんともオンリーワンで素敵なのです。読者への口当たりがいいように加工してあるものだったとしても、国際都市・パリのもつ個性が日本の文化とはかなり異なっているために、具体性がより際立って感じられるところもあるのかもしれません。
また、次のような箇所も印象的でした。「彼女にとって、そして、多くのフランス人にとって、仕事と美徳は結びつかない。大事なことは、家族や友人と良い時間を過ごすこと。そして、健康で平和な毎日。」。この文章にしても、おそらく読者の読みやすさために「まあるく編集したフランス」といったものなのかもと思いつつも、でも日本とは違うそんなフランス的世界観や人間観がしっかりあるって好いよなぁと思いました。
アメリカの都市などもそうなのだろうけど、パリに住むことってどんどん自分を主張して行かないと簡単に抜かれていったり取り残されたりするみたいです。それでいて時間感覚はルーズ。家族や友人が大事でみんなでバカ騒ぎをたびたびする。……こういう本を通してでも、日本とは別の軸でうごいている世界があることをもっとちゃんとわかっていたいものです。
さらりと書かれている部分ですが、フランスではこども手当をきちんとやり女性の権利も大切にしていて少子化は起こっていない。そういった福祉の充実はさすがでした。19世紀から20世紀に活躍したデュルケムら社会的連帯の研究からの発展なのでしょうか。歴史が積み重なっています。ヨーロッパは石の文化で構築性の文化でしたね(日本は木や紙の文化などと言われたりします)。日本でも最近こども手当てがありますが、これはフランスを見習ったのかな?
まあ、こういう本を読んでしまうと、パリって素晴らしいな! という感化された感覚だけで終わってしまいそうですが、「えっ、それはどうなの?」ということも書かれています。三角関係などで感情的になって殺人が起こった場合、裁判で情状酌量が起こりやすい、というのがそう。自制心を評価しないのか、とびっくりしてしまいます。そこは芸術を愛する国であることが関係しているのかもしれません。人間の、泥臭く、美的でもなくてぐずぐずした部分は、それが善きものだったとしても、衝動的な感情の爆発の美にはかなわないととられるのかもしれない。そんな感想を持ったところでした。
あとは、ハーブティー。パリでは、ハーブティーに使うヴェルヴェンヌや菩提樹、カモミールやペパーミントなどを扱う薬草店が何店舗かあるそう。好んで飲む人も多いみたいです。僕にはなんだか魔法だとか魔女だとか、そういった存在とのつながりが想起されてしまいました。中世ヨーロッパが舞台のRPGにありそうじゃないですか、薬草店なんて。この薬草店では「咳が止まらないので、なにか好いハーブを」とリクエストすると、専門医に相談することと言われつつ飲み方までちゃんと指南してくれるようです。民間療法ですよね。視点を変えれば、東洋医学の親戚が西洋にもいた、みたいに見えます。
というところですが、読む楽しみというものを再確認できた、なんというか豊かさのある読みものでした。暮らしぶりのなかって、しっかり見つめているとおもしろいことがいろいろあるものです。今回のエッセイ集は、それも見知らないパリでの暮らしぶりのなかでのことですから、思いのほか楽しめたのだと思います。好きな文体で書かれていたことも大きいです。多くの人にとってもやさしい文体でもあると思いました。投稿日:2021.09.26
パリに行きたい!と手に取った。
憧れる部分あり、え!?と躊躇する部分あり、
それでもやっぱり「素敵!」が少し勝つ。投稿日:2018.09.14
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。