最後の御前会議/戦後欧米見聞録 近衛文麿手記集成
近衛文麿(著)
/中公文庫
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ソ連にとって、日本を蒋介石との戦争に引きずり込むことができれば、自国への日本の脅威を逸らすことができる。さらに、手下である中国共産党は消滅の危機を脱すことができ、対日戦で国民党を疲弊させることで対日戦…後に共産党の政権奪取が望める。
通州(つうしゅう)事件。1937年7月、親日的な地方政権で、日本の駐屯軍不在の間に、中国人保安舞台が反乱を起こし、子どもや女性を含む日本居留民225名を虐殺した。首謀者である張慶余(ちょう・けいよ)は、中国共産党の工作員である黎巨峰(れい・きょほう)と王自悟(おう・じご)から指示を受けていた(張慶余「冀東保安隊通県反正始末記」)。目的は日本人を怒らせ、戦争に引きずり込むことだった。
中国と戦争をしたくない日本。1937年8月、元外交官である船津振一郎を通じて、蒋介石に和平を提案した。塘沽停戦協定など日本に有利な軍事協定を破棄、非武装地帯をつくる、親日政権を解消し南京政府下におくなど、満州事変以後の日本の利権をほとんど放棄する内容だった。しかし上海で日本海軍の軍人が惨殺される事件が起こり、和平案が立ち消えになってしまう。
(支那)事変の目的はどこにあるかということすらまだ普く国民の問には徹底しておらないようである。聞くところによれば、いつぞやある有名な老政治家か、演説会場において聴衆に向って今度の戦争の目的は分らない、何のために戦争をしているのであるか自分には分らない、諸君は分っているか、分っているならば聴かしてくれと言うたところが、満場の聴衆一人として答える者がなかったというのである。斎藤隆夫(衆議院議員)の演説 1940
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風見章あきら(1886-1961)。共産主義者。朝日新聞記者。近衛内閣の内閣書記官長(官房長官)(1937-1939)。戦後、日本社会党。
後藤隆之助(ごとう・りゅうのすけ)。近衛文麿に助言するための私的な団体(昭和研究会)を主催。のちに大政翼賛会の組織局長。
尾崎秀実ほつみ(1901-1944)。共産主義者。朝日新聞記者。ソ連のスパイ。ソ連(リヒャルト・ゾルゲ)から「日本を中国との戦争に向かわせろ」と指令を受ける。右翼や愛国主義者の仮面をかぶり、軍部に接近して対中強硬論を煽り、近衛文麿の秘書(内閣嘱託)として中枢部に潜り込む。支那事変(1937)を起こすことに成功。ソ連の思惑通り、日中戦争が泥沼化すると、今度は英米との対立へと日本を誘導。「日中戦争が泥沼化しているのは蒋介石を英米が背後で援助しているからだ。中国との戦争を終わらせるためには英米と戦うしかない」。日米戦争を起すことに成功。スパイ行為が発覚し、逮捕・死刑。
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近衛、マッカーサーへの発言。以下。軍閥と極端な国家主義者が日本を破局に陥れた。しかし、皇室を中心とする封建的勢力と財閥は、アメリカが誤解しているように軍閥と結託してきたのではなく、むしろ軍閥に対するブレーキの役割を荷ってきた。封建的勢力の何人もが暗殺の対象になったことからも明らかである。満州事変以来、軍閥・国家主義者が急進的な国内革新を叫ぶようになったが、彼らの背後には左翼分子がいた。左翼分子は軍閥を利用して、日本を戦争に駆り立て、日本を破局に陥れた。今もし、封建的勢力や財閥などの既成勢力を一挙に除去するならば、日本はきわめて容易に赤化(共産化)するだろう。それを防ぎ、日本を民主国家にするためには、軍閥勢力を除去する一方で、封建的勢力・財閥を残し、漸次的な方法で民主主義を育成しなければならない。これは私が封建的勢力の出身だから、その弁護のために言っているのではない。
戦争に伴う昂奮と激情と勝てる者の行き過ぎた増長と敗れた者の過度の卑屈と故意の中傷と誤解に本づく流言(りゅうげん)蜚語(ひご、根拠のない話)と是等一切の所謂(いわゆる)輿論なるものも、いつかは冷静を取り戻し、正常に復する時も来よう。是時はじめて神の法廷に於て正義の判決が下されよう。
戦争前には軟弱だと侮られ、戦争中は和平運動者だとののしられ、戦争が終われば戦争犯罪人だと指弾される。近衛文麿
※近衛家累代の墓所、京都、紫野むらさきの、大徳寺。続きを読む投稿日:2024.05.28
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