東京ひとり散歩
池内紀(著)
/中公新書
作品情報
関西の城下町に生まれ育った著者が武蔵野の一角に住み着いて早数十年-東京はふらりと歩くのに格好の町だ。角を一つ曲がれば江戸や明治と対面し、地方都市が失ってしまった年中行事が今なお生きている。足の向くまま歩けば、祭りの熱気に行き会い、懐かしい商店街に誘われ、荷風が排徊した路地裏に迷い込む。しめくくりは、居酒屋であれやこれやともの思う贅沢な時間-ひとり散歩の愉しみ、ここにあり。
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商品情報
- シリーズ
- 東京ひとり散歩
- 著者
- 池内紀
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2009.09.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 222ページ
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この作品のレビュー
平均 2.9 (11件のレビュー)
-
18歳の時に上京し、大学を卒業した後、東京に本社を持つ会社に就職をした。サラリーマン時代は、25年以上が東京勤務、大学時代の4年間を加えると、何やかやで30年間、自分の活動の中心地は東京ということにな…る(東京に「居住」したのは、大学時代の4年間だけだけれども)。
私の妻はタイ人だ。タイ勤務時代に結婚し、10年近く前に私の東京転勤と同時に一緒に日本にやってきた。初めての日本であり、東京にも行きたいところが多くあり、外国人が観光するような場所に、一通り、一緒に行った。妻の親せき・友人が日本に遊びに来る時にも、東京案内を多くした。また、2-3年前から私自身が東京中心部を散歩するようになった。毎日ではないが、都心の勤務先への行き帰りに、都内の色々な駅から、駅いくつか分、1回あたり数kmを散歩することが、習慣と言うか趣味と言うか、そんなことになっている。
観光案内にせよ、散歩にせよ、ほとんどが山手線の内側+東側(東側は銀座・日本橋界隈から浅草あたり)だ。であるが、これが意外と広い。山手線は円周が縦長になっている。縦、すなわち南北で一番長そうに見える、大塚駅から大崎駅まで歩くと、距離は14kmで、3時間かかる。東西はどうかと言えば、新宿駅から浅草寺まで歩くと、距離は10kmで、2時間以上かかる。妻や妻の知人との東京観光、あるいは、私自身の東京散歩で、かなりの場所に行ったつもりなのであるが、これだけ(意外と)広く、また、東京は見どころの多い場所なので、まだまだ歩いてみたい場所は沢山ある。
本書は、筆者の池内紀の東京散歩記とでも言うべきもの。「中央公論」に2年間に渡り連絡されていたものに、「東京人」に書いた2編を加えたものである。筆者の自宅からの日帰りの散歩であるが、これは立派な旅行記であると思う。ここに取り上げられている多くの場所は行ったことはあるが、筆者が書いているような歴史的な背景などについては知らないことばかりであった。歴史を知らなければ散歩が面白くない、というわけではないが、こういう、いわゆる「蘊蓄」を知っていると、散歩も別の楽しさがあるようだ。続きを読む投稿日:2022.01.03
このレビューはネタバレを含みます
1940年生まれのドイツ文学者、エッセイストの池内紀氏との出会いも初めて。著者との初めての出会いから、またその著者の著書にも興味が湧いてくる。著者は、カフカの翻訳で著名な方のようだ。
レビューの続きを読む
ブックオフで1…00円の新書を数冊買ったうちの一冊で、2009年9月発行と少々古い。ぶらり散歩をしながら街並みの紹介などもされており、当時と随分変わってしまっている部分もあるだろう。例えば、築地本願寺あたりを散歩された後、築地市場でグルメを楽しまれる様子が書かれているが、こういう辺りは古さを感じざるを得ない。
それでも、東京の主だったスポットを様々なウンチクを語られながら、歴史を振り返りながら散策されるので、ガイドを伴った紙上ツアーを楽しむことができる。
その地にまつわる歴史の回想があったり、地名の由来の話が出てきたり、その地に関わる書籍の紹介があったり、また街並みの分析をしてみたりと、最近のすぐにグルメ話に直結するものとは異なり、深みのある散歩である。
例えば、紀尾井町。江戸の頃は大名屋敷が占めていて、紀伊和歌山、尾張名古屋の両徳川氏、また近江彦根藩井伊氏の中屋敷が並び立っていたことから、明治の初めにその頭文字をとって命名されたと紹介。
さらにお隣の平河町は、二代将軍徳川秀忠が名付けた由来などが紹介されている。後半に出てきた「汐留」の地名に関する話も面白かった。
こんなくだりを読むと、地名の由来本も読んでみたいなと新たな興味を広げてくれる本でもある。
法務省のある辺りは、米沢藩上杉家の江戸藩邸があったとか、文京区西方は、少し前まで「阿部様の町」とよばれていたという話から、旧福山藩の阿部家の歴史につながっていく。
向島では、永井荷風の「墨東奇譚」や滝田ゆうの漫画「寺島町奇譚」などに触れられたり、護国寺の共同墓地には、漱石や荷風、鏡花、八雲が眠ると、ご自身がリアルに馴染んでこられた作家に思いを飛ばしたりされている。
こうして、また荷風の時代のその土地の見え方はどうだったのかなとか、新たな関心に結びついていく。
愛宕山にある青松寺前にあったという戦中下の名残「肉弾三勇士」のブロンズ像の話や、築地川銀座公園にある「名犬チロリ」の像などは、その存在すら初めて知ったが、その背景にある話をちょこっとネット検索してみると、さらに深みのある話を知ることができる。もちろん著者は、そのことを十分知って、本書を著されているから、そういう話が登場するのであるが・・・。
本書でもっとも楽しかったのは、「マイ・アンダーグランド・シティ 八重洲地下街」のグルメ話と、「一日古書めぐり 早稲田・本郷・神田」だった。著者が優雅にひとりきままな散歩を満喫されている様子がとくに感じられ、読んでいるこちら側もとても楽しい気分になれた。続きを読む投稿日:2020.10.29
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