会社員とは何者か? 会社員小説をめぐって
伊井直行(著)
/講談社
作品情報
果たして会社員は小説の主要な登場人物になりえるのか? 著者はこんな命題を抱え、会社員が主人公の古今の小説に切り込んでいきます。取り上げられるのは、源氏鶏太、山口瞳、庄野潤三、黒井千次、坂上弘、絲山秋子、長嶋有、津村記久子、カフカ、メルヴィル……。そこから見えてくるのは、自明なものとして受けとめられている「会社員」という言葉・存在に潜む謎だった。いったい、会社員とは何者なのか?
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商品情報
- シリーズ
- 会社員とは何者か? 会社員小説をめぐって
- 著者
- 伊井直行
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2012.04.23
- Reader Store発売日
- 2012.06.22
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 338ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (9件のレビュー)
-
「どうして平凡な勤め人のことを書いた小説は数が少ないのだろう」
これは自身けっこう思っていたことである。平凡な勤め人は世の中に相当数いる気がするのに。小説に書かれるのは「恋愛」とか「死」が多く(これ…は高橋源一郎さんの『ニッポンの小説』の受け売り)それはなぜなのだろうか、と。そのことが「平凡な人」をなんとなく軽視しているような「文学さん」の居丈高な態度を思わせて、たまに「小説ばっかり読んでていいのかなぁ」という気持ちに囚われることがある。そんなことまあ気にしなければいいんですけどね。でも、たまにこういう感情が湧いてきて、全然小説を読まなくても平気な時期というのもあったりする。揺り返しで結局また戻ってくるんですけどね。
「会社員小説」というものを定義して、「会社員とは何なのか」という問いかけを探る伊井さんの試み。
庄野潤三『プールサイド小景』
長嶋有『泣かない女はいない』
絲山秋子『沖で待つ』
津村記久子『アレグリアとは仕事はできない』
上記のような小説を解剖して「会社員」を探る。いずれも好きだったり、読んでみたいとおもう小説ばかりなので楽しく読めた。
会社にいる時間と私生活の時間。そこが微妙に入り乱れるようなこともあれば、すっぱりと分かれることもある。また、会社での仕事っぷりがどのように描かれるか、といった視点もある。読んでいてわかるのは「何かを書くと別の何かが書かれなくなる」ということ。挙がっている小説について自身振り返ると、「会社」もしくは「お勤め」について何か書こうとすると、そこに特殊な雰囲気が醸成されるような気は確かにする。こういう類の本には珍しい図による説明なんかもあるのだが、それらは直接何かの結論を導こう、という風には使われてはいない。そこがさすがに小説家。軽やかに結論を先送りしながら「会社員小説」を巡る冒険に連れて行かれる。
「会社員小説」というのは一体どういう層の人が共感するのだろう。『泣かない女はいない』なんて、好きすぎて何度も何度も読んでいる小説だけれども、恋愛小説の要素も強いので、一般には「恋愛小説」として読まれているのかもしれない。「会社員」という要素について深く掘り下げたものを、実際に会社員として日々お勤めをしている人は手に取りにくいのかもしれない。働き盛りの人は忙しいし、小説以外のところに関心が向かう人も多いだろうから。しかし、ここにも出てくる黒井千次さんや坂上弘さんなどは、本格的な「会社員小説」を書いているような気がする。そして、その小説はその「最中」にいる人にはあまり手に取られないのかもしれない、という不思議な関係。本を一番読む(読める)のは学生時代とか若い時ではないか、という気がするが、その時には「会社員小説」で書かれていることが実感として湧かないのではないかとも思う。そういう意味で、こういう小説は時代の証言として貴重なんではないか、という風に思った。なんだかとりとめのないことを書いてしまった。
光があたりにくいところにはやはり何がしか架け橋が必要で、この本はまさにそんな本ではないかと思う。著者の言葉の裏側にあるものを汲み取ることのできる力に対して敬服の念を抱く。続きを読む投稿日:2012.05.12
非常に興味深い「会社員小説」をめぐる文芸評論であり、良い作品紹介となっていると思う。ここで紹介され分析が加えられた作品群を読んでみたい。とりあえず著者の『岩崎彌太郎—「会社」の創造』(講談社現代新書)…は注文してみた。続きを読む
投稿日:2016.05.11
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