この作品のレビュー
平均 3.0 (2件のレビュー)
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これは片岡義男が書く官能小説だ
そもそも片岡義男の小説には「美しい人」しか登場しないにもかかわらず、そのタイトルは『美しいひと』を付けられている。他の作品と比べて、特に美しさの違いはない。しかし、6つの物語からなるこの短編集はどの作…品にも「写真」というものが含まれ、そしてキーファクターとして存在していることを考えると『(被写体として)美しいひと』なのかも知れない。
もう一つは片岡義男の視点で書かれたエロスも一環したテーマと言えよう。
直接的な描写によるエロスではなく、文章を脳内で再構成した時に感じる内なるエロスとでも表現しようか、と。
最初の作品「写真展のテーマです」はホテルの一部屋での会話から始まる。恋人に「見せたいものがある」と言いながら、男は躊躇してなかなかそれを見せようとしない。一方で、二人は既に大人の関係である事実も描写から読み取れる。それ以上に「見せたい」という気持ちと躊躇が交錯するものが何なのか、読み進めながら一緒に気持ちが高まる自分がそこに生まれる。
僕が一番気に入ったのは3作目に収められている「完璧な恋人の作りかた」だ。恋人を撮った写真でプロフィールブックを作り、自分以外の視点で恋人を写真に捉えて欲しいと友人のカメラマンにお願いする。自分の知らない時間や空間に存在する恋人の姿を見たいがためだ。ある意味ではストーカーと変わらない心理だろうが、誰でも少なからずこの気持ちは存在するだろう。だからこそ、他の作品以上にこの作品は読みながら自分自身の気持ちとシンクロしながら物語が進んでいく。さらに後半にはその上をいく仕掛けが待っている。この作品だけでもこの本を読む価値が十分にあるだろう。
写真という自分と相手とは別の第三の目を通して恋人を描くことで只の恋愛小説を官能小説に昇華させている。だからこそ、決して朝の通勤電車の中では読まない方がいい。できれば静かな場所で読んで、その後に恋人にも読んでもらう。感想はBarでウイスキーを傾けながら話ができれば、最高の夜になるはずだ。続きを読む投稿日:2013.10.07
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写真展のテーマです
記念写真
完璧な恋人の作りかた
本当の自分を見たくて
夢の終わるべきかたち
戦う写真家との友情
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これもまたすべての短編に写真が共通する。それぞれの短編のテーマは、見…様によってはかなりアブナイ男性または女性が主人公になっている(この短編集が最初に出版された91年にストーカーという言葉があったら、まちがいなくそのように評されていただろう)。しかし、そのようなテーマを描きながら、決してポルノにならないところがこの作者の文章の特徴である。ただ、短編集の中にこのような話がひとつ入っているのならまた別だが、一冊丸々これだといささか疲れる。続きを読む投稿日:2018.10.15
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