フジテレビ系列で放送された「わたしたちの教科書」のノベライズ。新任教師、加地耕平は、自分のクラスの明日香が授業に出ないことに気づき、コミュニケーションをとろうとする。頑なだった明日香が、「先生に会えてよかった」といって耕平に鍵を渡した翌日、校舎から転落死する。有能な女弁護士、積木珠子は、隠してきた過去につながるこの出来事を新聞記事で知る。事故か、自殺か、他殺か。生徒の死に隠された真実をめぐって、担任教師、女性弁護士、学校、それぞれの闘いがはじまった…。
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同じころ、証言台に立った朋美は、小学校2年生のときに転校生としてやってきた明日香とは出会ったその日から親しくなったことや、学校の帰りにふたりだけの秘密の場所で過ごしたことなどを話し始める。明日香と朋美は、その場所で、喜びも悲しみも半分ずつ分け合いながらずっとふたりで生きていこう、と誓い合っていた。しかし、ある出来事がきっかけで、その関係にも変化が生まれたのだという。物語はいよいよクライマックスへ!
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珠子は、自ら法廷で証言することを望んでやってきた朋美を、原告側証人として申請する。一方、喜里丘中学校の職員室では、音也が兼良陸の背にナイフを突きつけていた。音也は、雨木の言葉にも耳を貸さず、いまから自分がこの学校のいじめを解決する、と皆に宣言する。陸を助けたいなら身代わりになって死ねるか、と音也に問われた教師たちは、動揺を隠せなかった。すると、雨木が、自分が身代わりになる、と進み出る。しかし音也は、そんな雨木をまったく相手にせず、八幡たちが抱えているそれぞれの問題を指摘すると、全員教師失格だ、と言い放つ。
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反対尋問に臨んだ珠子は、落書きされた教科書の件や、兼良が明日香をいじめている、という三澤亜紀子の証言などについて雨木に尋問する。しかし雨木は、すべては明日香の狂言だと証言する。その上で雨木は、純粋さと残酷さを併せ持ち、ときに嘘をつくこともある子どもたちの善悪双方を全身全霊で受け入れるのが教師だと答えた。そのとき、傍聴席から静かに出て行く男の姿があった。それは、雨木の息子・音也だった。その手には「カネヨシリク」と書かれたメモが握られており…。
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珠子は、法廷の場で、遂に喜里丘中学校の副校長・雨木と対峙する。被告代理人である直之から、明日香との思い出について尋ねられた雨木は、彼女とはたわいのない会話をしながらよく一緒に下校した、と答えた。さらに、そういった交流の中で、明日香から将来の夢を聞いた、と語り、涙をこらえる雨木。珠子は、そんな雨木の姿に、不審を抱く。同じころ、耕平は、早紀とともに、希美や戸板、八幡、熊沢に声をかけた。兼良陸が、自分の父親を児童買春で告発したこと、そして明日香たちへのいじめを認めていることを皆に打ち明け、協力を求めようと考えたのだ。
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法廷を後にしようとしていた珠子の前に現れたのは、兼良陸の母・由香里だった。由香里は、裁判のせいで陸が傷つけられたと激しく珠子を非難すると、法廷の場で本人の口から無実を証言させる、と言い出す。訴訟は学校側の管理責任を問うものであり、生徒を巻き込むつもりはない、という珠子の説得にも耳を貸さなかった由香里は、陸を法廷に立たせてしまう。同じころ、朋美は、学校近くの道で不審な男を目撃する。それは、雨木の息子・音也だった。
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珠子は、喜里丘中学校の熊沢に、学校内でいじめがあることを認めさせる。あらかじめこうした事態も予測していた直之は、戦略を変えようと副校長の雨木に提案した。それは、学校内でいじめがあったことは認めながらも、明日香の死はあくまでも事故であると主張するというものだった。しかし雨木は、いじめはなかったという主張は変えない、と譲らなかった。重要なのは裁判に勝つことではなく、学校と、残った生徒を守ることだというのだ。それでも、耕平や早紀ら教師たちは動揺を隠せなかった。生徒たちから明日香のことを質問されても、もはや耕平たちには、どう答えればいいのかわからなくなっていたのだ。
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一方、直之も、雨木とともにその人物の特定を急いでいた。珠子に説得されて学校側に不利な証言をする前に、手を打たなければならないのだ。直之たちは、教師たちの中で不審な行動を取る者がいないか、さっそく調査を開始する。そんな中、珠子は、コースターに描かれていたロゴマークを元に、『FLYING ELEPHANT』というクラブを訪れる。同じころ、耕平は、熊沢に誘われて繁華街で飲んでいた。その際、熊沢は、友人らしき女の子たちと一緒にいる娘・桜の姿を見かける。実は桜は、友人の家を泊まり歩き、ひと月以上も家に帰ってこないのだという。耕平は、そんな熊沢のために、桜探しに協力するが…。
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裁判で苦戦を強いられている珠子に追い討ちをかけるかのように、週刊誌には彼女に関する中傷記事が出始めていた。珠子は、自分が捨てた子どもの事故死をネタに、中学校を脅迫する悪徳弁護士だというのだ。そんな折、戸板は、耕平と早紀の会話を偶然耳にし、明日香の教科書が隠してあった保管庫の暗証番号をコースターに書いて耕平に教えた人物がいることを知る。戸板からコースターのコピーを手渡された珠子は、その人物は明日香がいじめられていたことも知っていた可能性があると推測する。
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1回目の証人尋問の日、珠子は、証言台に立った耕平に、明日香から受け取ったコインロッカーの鍵とその中にあったカバンのことなどを尋ねる。さらに珠子は、耕平がいじめの存在と自らの非を認めた音声を証拠として提出。それに対して直之は、明日香の不安定な言動の原因は彼女の複雑な家庭環境にある、と主張し、珠子と明日香の関係について耕平に質問。耕平は、事前に直之と打ち合わせしていたとおり、珠子が自ら明日香を児童養護施設に入れたことや、事故前夜にも彼女に対して冷たい態度を見せていたことなどを証言する。
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西多摩市立喜里丘中学校で起きた転落死事故から1年が過ぎた。珠子は、死亡した明日香はいじめを苦に自殺したものであり、副校長の雨木や明日香の担任だった耕平ら教員たちはいじめの予見ができたにもかかわらずその対策を怠ったとして、西多摩市を相手取って民事裁判を起こしていた。一方、被告の弁護を担当する直之は、口頭弁論でいじめの事実は存在しないと主張し、真っ向から対立。裁判の争点は、いじめがあったのかどうか、明日香の死は自殺か事故死か、そして学校側に注意義務違反があったかどうかの3点だった。
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一方、明日香が暮らしていた児童養護施設を訪れた珠子は、職員の西原に亜紀子のことを尋ねるが、有益な情報を得ることはできなかった。だが、その際、珠子は、明日香の持ち物のひとつだといって質札を手渡される。明日香は、質店からお金を借りていたらしい。そんな中、珠子は、戸板とともに亜紀子の家を訪ねる。しかし亜紀子は、明日香の事件にまるで関心を示さなかった。
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珠子は、戸板から、明日香の元担任だという三澤亜紀子に関する情報を得る。戸板によれば、亜紀子は病気を理由に休職したことになっているが、副校長の雨木との間にはトラブルもあったらしい。同じころ、直之は、宇田をともなって喜里丘中学校を訪れていた。珠子が訴訟を起こしてくると確信していた直之は、それに備えるために耕平や早紀、八幡らと個別に面談して、事件が起きた当日のようすを調査する。耕平は、いじめの存在と自らの落ち度を認めたことを、珠子がボイスレコーダーで録音していることを直之に伝える。直之は、珠子がそれを証拠として裁判所に提出し、耕平も証人として出廷するよう請求してくるだろうと指摘する。
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