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YABUNONAKAーヤブノナカー
YABUNONAKAーヤブノナカー
金原ひとみ/文藝春秋
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総合評価

174件)
4.3
72
59
22
5
0
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    一哉には根幹をなす信念がなく、あるのは傾向や一般常識である。そして「友梨奈と一緒にいたい」という信仰に近いものが、彼の行動原理となっている。友梨奈の傍にいられるか、という基準を除いては、偏見や思想傾向に縛られない軽やかな主体ともいえる。 伽耶は「べき」を持たず、持つ場合にも自分のみに当てはめる「べき」でありたいと考えている。彼女の語りから、一人一人が自分の物差しで物事を決定できる環境を望んでいることが分かる。伽耶には信念があるが、友梨奈には認識されない強度のものである。 友梨奈は強い解離性を持つ人物であり、一哉は彼女に別人格のようなズレを感じる。これにより、「本当の友梨奈」が誰なのか、なぜ彼女がそのように振る舞うのか分からないことが不安を増幅させる。一哉の不安は、友梨奈の内面や行動の「分からなさ」と、両者の世界観の根本的な相違から生じている。 友梨奈は自分自身の怒りや悲しみを一般化し、自分から切り離して分析することで痛みを軽減している。また、スパークした感情やスパークを引き起こす構造、その分析に面白さを見出して冷静さを保っている。彼女の行動は前時代への強い怒りと知的好奇心に突き動かされている。この怒りは、現代の「正しさ」の枠組みを通じて正当化され、爆発的に表現されている。

    14
    投稿日: 2025.07.21
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    ヤブノナカ―「藪の中」なのかな〜と 各自ですれ違う意味、とか自分にとっての正解の多視点での問題提起的な話なのかと思っていたけれど ずっと重くて掴みどころも見えず、 正しいこと、生きる意味って?と 次々と襲いかかる命題にクラクラし、 いづれも強烈な個性を持つ登場人物たちに苛ついたり、毒づきたくなったり 何だかとても消耗しながら最後まで一気に読んでしまった。 元気でキラキラしている現代の若い女子たちの未来には「搾取された」と感じるような黒歴史はもう訪れないのか、あるいはまたどこかのフェーズで何らかの「転換」が起こり何者かを呪うようになってしまうのか。 ただ穏やかに平和に幸せに生きることだけをを求める一哉は数十年後どうなっているのかも気になるし、(彼は何だか生命力が弱そう) 若くて怖いものなしで万能感MAXの恵斗は、やはり数十年後、今の彼が忌み嫌う父親そっくりになっていてその事実に気づいて激しく動揺する…というようなことになるのだろう。 社会の在り方や価値観は時代とともに変わってもそこに生きる人間の中身は実はあまり変わっていないのだと思う。

    2
    投稿日: 2025.07.18
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    ものすごい質量のある本だった。どの視点からもなるほど、と思える考え方が出てきた。これ感想難しいな〜!長岡さんと娘のかやちゃんが対立するところすごかった。自分に感覚近いのは一哉さん、かやちゃんあたりかな。越山くんがお友達のカズマについて、「友達って男?女?みたいに聞いてこないからフラットに付き合えていい」的な一節を読んで、わかる〜!となった。読み終わって改めて題名めっちゃいいなって思った。

    1
    投稿日: 2025.07.17
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     金原ひとみさんは初読み!にしてこのボリューム!!というか、もうホント長くて…読むのよそうかと何度も思いながらも、時間もかかりながらも何とか読了できたのでレビューあげることができました。  年代も性別も様々でそれぞれ事情を抱えた人物が登場しますが、誰にも共感することができなかったな…。ある意味、私とは別の世界の住人なんですよね!その最たる人物は小説家の長岡友梨奈…彼女は夫からレイプされたことを訴え、年下の彼と同棲中でもあります。そのせいか、女性の被る性的被害に敏感で…いや、過剰なほどに反応しちゃうんですよね…。それが痛々しいけど、その反面何もそこまで??とか思っちゃう私もいました。他にもやっぱり、えっ??なんで??って思うことが多くって…だいぶ、しんどい読書になりました。  金原ひとみさん、こういう作風の作家さんなんだぁ…って思うと、もうしばらくいいかなって!あぁ…選書間違えちゃったかなぁ(^-^;

    77
    投稿日: 2025.07.16
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    タイトルから勝手に、セクハラにあった被害者と加害者の言い分が違ってて、真相は藪の中ということを著者の世界観で描いてる小説だと思ったら、全然違かった。 物事はそう単純なことではなく、読み終えたらとても疲弊してた。 長岡友梨奈に徹底的に論破されてもうくたくた。 私ももし長岡友梨奈の娘だったら加那みたいにひきこもりになっていただろう。 彼女は軽症で連絡を絶つことで立ち直っていったけど。 でも、なんであんな死に方で終わらせたんだろ。 間接的な自殺? ここに出ている出版業界の男たちは木戸悠介にしても五松武夫にしても最低の最低。(特に五松) あと長岡友梨奈の元夫も。ひどい。 もちろんセクハラやモラハラマイノリティの人たちの問題に鈍感ではいたくないけど、長岡友梨奈のやり方は軌道を逸してる。 長岡友梨奈は死んだことで神格化されたけど、果たしてそれは真実なのかYABUNONAKAってことかな。

    0
    投稿日: 2025.07.15
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    なんだろう、とんでもなくエネルギーを消費した読後感。体力のいる小説だった。語り手が変わる度心がざわざわするし、性描写もなかなかエグい。搾取する側と搾取される側、男と女、アップデートできない人間は容赦なく断罪される今の世界。それぞれの世代が混じり合いすぎて、便利になりすぎて、多様性になりすぎておかしくなったんだと思う。苦しみを抱えたまま、タイトルの通り、みんな藪の中。

    17
    投稿日: 2025.07.15
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    それぞれの人物の短編集のような話を見事に繋いで、それぞれの違う視点から見る人物像、本人の思っている人物像、世間から見た人物像など、さまざまな人物像が描かれていた。 登場人物達は、正論だけでもダメ、大手企業でのらりくらりと仕事をこなすだけでもダメ、マチアプで好き勝手もできない、なにかやると告発されるかも…一冊の中にホントいろいろと考えさせられることが多く、長編大作ということだけでなく、いろんなものが心にズッシリと重くのしかかってきた。 また、現在は短い間に社会の常識や価値観が大きく変わる時代であり、考え方が偏ってしまったり、「これが正しい」と決めつけてしまいやすくなる。 そうなると、知らず知らず危険な考えに染まってしまう恐れもあると思われる。 だからといって考え方のアップデートに囚われ、自分の考え方がブレブレで、それが今の多様性の時代だと意固地になってもいけない。 多様性と変革の時代だからこそ、もっと自分の感情などに素直にならないといけないのかもしれない。 個人的には、正しいことは正しいのだから間違っていないのだから、それを主張することは大事だと思うが、相手を追い詰め、論破することで、正しさという武器で相手を傷つけてしまうその行為は正しいとは言えないと思うが、正しさを伝えることはどうしたらいいのかわからなくなった。 そもそも自分が正しいと思っといることは正しいのかとも不安になる。 「普通」という言葉があるが、そもそも「普通」って何?って感じである。 でも、自分の正しいと思うことがあっても、口を閉ざして、見てみぬフリをすることは正しいとも思えず、ストレスも溜まって自分には非常に悪いことのようにも感じられる。 金原さんの思いを汲み取れていないと思うし、私の理解力の問題かもしれないが、今回読んだ私の感想としては、いろいろなことが折り重なって複雑に絡み合って、みんなが向かうべき方向を見失ったよつに思えた。まさにタイトルの「ヤブノナカ」なのではないかと思った。

    19
    投稿日: 2025.07.15
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    登場人物全身の視点の解像度が高く、どの人にも共感でき、同時に不快な気持ちを持ったりする。木戸さんの中高年の視点については、異性なのに深く共感してしまった。老いから来る仕事への諦め、わかるわ…。大学生や高校生の視点、あの厭世観もおそらくそんなにずれてないんだろう。金原ひとみさんの描写力が半端ない。 性的搾取は絶対に嫌だし、性的なこと以外でも女性を搾取することは不愉快でしかない。でも、男性の気持ちもわからなくもないし、女性もやりすぎと感じることもある。一哉の気持ちがよくわかる。 読んでいて必ずしも楽しいわけでもないし不快なシーンも多い。それでも先を読みたい気持ちが止まらなかった。すごい本を読んでしまった。

    4
    投稿日: 2025.07.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ここまでの長編小説且つ金原ひとみ作品初めて読んだけど読み進める手が止まらず うわ、すげーーーー!これが金原節というやつか という感じ 年齢性別の違う人 自分と違う そういうふうに捉えてるんだという発見 理解の一助となった 時代によってなんでもなかったことが突然悪になったりする 性被害は勿論許さないけど、女性視点だけで男性を糾弾して終わりなのではなくて男性側が抱える苦しみもまた描かれている

    3
    投稿日: 2025.07.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    あえて気持ちがまとまらないまま感想をば。 金原さんの作品は「腹を空かせた勇者ども」しか読んでいなく、それが大変面白かったのでこちらも読ませてもらったのですが、あちらは女子高生の学校生活が主でほぼ会話劇、地の文も女子高生の一人称だったのでリズム感が良くスルスル読めたのに対し、今作は多様な立場の人物がそれぞれの目線の心の移ろいを深い所まで掘りながら語る作りなので、ちょっとしんどいなと思いながら読みました。 でもしんどくはありましたが登場人物の気持ちや思想、物語自体の面白さはその辛さを遥かに上回り休憩を何度も入れながらページを捲る事は止められなかったです。 自分が読書をする理由の一つに読む前と読んだ後では同じ景色が違って見える事にあったりするのですが、この作品はまさしくそれで、虐げられている、抑圧されている人達に心の中に実物の武器は渡せないからせめて虐げられたり抑圧されている事を声に出させる勇気やその場で抗う選択肢があると伝えようとしているのかな、なんて思いました。 接触がほんの僅かな時間でも気持ちが伝わる、理解してもらえる事への祈りや、逆の伝わらない悲しさ苦しさなどがマーブル状に混ぜ合わされた最終章は結局救いは次世代に任せるしか無いのか、なんて感傷的になったりしました。 やはり何が言いたいかわからないですね。いつか再読します。 追記 こちら読むなら芥川龍之介の藪の中も読まなきゃな、と思って読んだのですが、どちらも男に抑圧される女の情念や無念を込めた反撃の様を描いた物語だったのだなと。 相手を舐めていたら手痛い反撃を喰らい、までは同様ですが反撃を喰らったあとどう思ったか、その様を見た人達がどのように思いその思いを拡げるかまで現代的に描かれているのが金原さんの作品だったなぁと思いました。 冷笑的な反応するのは簡単ですけど、それは一時凌ぎのもので自分の身にもならないし誰の為にもならない。そこで立ち止まらずいかに被害を無くすよう振る舞うか問われた気がしました。

    3
    投稿日: 2025.07.12
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    ※痛々しい描写やスラング、拍子抜けするラストはいつも通り  その奥の 何も解決されていない 今の世界にリアリティがある   50代男性の心理も妙によく表現しており 最高作といっていい。 木戸悠介 文芸誌「叢雲」 元編集長 バツ2 休職中 50代 自殺未遂  文学は人の心に歪や暗闇を作る  それによって苦しみの中を生き抜くことができる 死に至ることも  長岡友梨奈 小説家/大学講師 娘 伽耶 夫 克己 別居 離婚協議中 恋人 一哉  害悪の排除 自分ごととして 自分の思い通りになるフィクションとしての小説?  共闘したい 連帯したい  始まりと終わり 「小説とはリモートである」  無敵 現実が恐ろしいものになり相対的に死の価値が上がった   ある程度で満足する中途半端な生き方 死より価値があるのか?  乖離 が淘汰され 正面から乗り越えないと生きていけない   排除作業で事故死 橋山美津 木戸の勧めで小説家を目指すが落選 五松武夫 35歳 独身 長岡の担当  マチアプで人生終わりそうに 横山一哉 友梨奈のパートナー 料理上手 20代  安住伽耶 引きこもり休学 原因は代田美優莉の自殺 SNSで生き資本主義に抗う  ノンセク 「べき」 2年ぶりに復学 諦めてるのが/世の中おかしいのが普通  越山恵斗 木戸の息子 伽耶とインスタ相互 高2  友人カズマ リコ

    1
    投稿日: 2025.07.11
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    感覚が若い作者がすごい。引きこもりになった20歳の大学生ではあるものの今時の若者言葉や感覚がすごい。

    1
    投稿日: 2025.07.09
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    んー、ここまで登場人物を好きになれず、かつぎっちぎちに綴られた500頁を超える本を読むのはかなり体力を使う。しかしながら思い当たるところが頁をくるたびに描かれていて、何としても読み切ってやるという気にさせる力量には脱帽。

    2
    投稿日: 2025.07.08
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    作品の持つエネルギーが巨大で読む方にもかなりのパワーを求めてくる。 苦しくて辛くて顔を顰めながら少しずつ読み進めた。とにかく誰もが自分の中の正しさと社会が求める正しさの中でもがき苦しみながら生きていくしかないのだろう。 芥川の藪の中のように同じものを見てもどう見えるかは信じられないほどに自分と他人は違う。 善は本当に絶対的に善なのか? 悪は本当に絶対的に悪なのか? 「絶対」「真実」そんなものはそもそもないのか? 芥川よりは最後のリコの「うち、無敵だからまかしときな」的な終わり方は一筋の光が差すだけマシかな。

    7
    投稿日: 2025.07.07
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    「金原ひとみって、めちゃくちゃ小説巧いんやなぁ」というのが、率直な感想。 『蛇にピアス』から20年以上、どうやら、現在の文壇のど真ん中に鎮座する存在になっているらしい。 それも納得の、圧倒的な小説家としての実力。 現代社会と、そこに生きる人間の心の奥底を、切開して覗き見ようとする、観察眼と技巧の鋭さ。 卓越した「すれ違いコント」として楽しく笑える。ブラックコメディであり、その仕掛け(くすぐり)が大量に仕込んである。 登場人物の誰もが愚か者で、具体名のない社会もまた、愚か者の集まりだ。 それはもちろん現実世界の写し絵であり、登場人物全員に対してイジワルな著者による、皮肉な戯画として描かれている。 それぞれの登場人物の内省で綴られる文章もまた、自分自身の言動が、何に起因しているのか?という心の奥底を、本当に探り当てているとは、到底言い切れない。 最後まで読んでみて、登場人物の誰ひとり好きになれない。 というか、全員キモいし、アホだ。 もちろん、そう感じるように描かれているからなのだが、なぜ、そう感じるのか?と根本の理由を考えると、全員が「言語思考中毒者」だからだろう。 最終章で、次世代の微かな希望のように登場するギャルの女子高生・リコでさえ、将来の夢を「言葉で、全人類をエンパワーするラッパー」に定めるのだ。 ソーシャル・ジャスティス・ウォリアーとして憤死した長岡友梨奈は小説家であり、そのバトンを、ラッパーという、もう少し軽妙な戦い方で継ぐことが示唆される。 どちらにせよ、言葉の使い手であり、言語による闘争なのだ。 もし自分が、この小説の登場人物のひとりだったとしたら、「性愛や肉欲は、言語に縛られた人間社会から、逸脱し解放される、最も簡便なツールである」という論を講じるだろう。 その論点が欠落しているのは、なぜなのか? 著者自身が、小説家という言語中毒者だからなのか? …いや、デビュー作で「肉体の破壊による解放」を題材にした著者が、自覚していないわけがない。 では、「言語中毒からの解放がない」という状態こそが、現代社会の風刺画であり、「自己家畜化社会」の実相だからなのか? 長岡友梨奈が、ムエタイでの闘争に切り替えたのは、「言語からの解放」の萌芽なのか? ただ、それが死に結び付くのは、「破壊の享楽」を著者が認めるわけにはいかない世代になったからなのか? …などと、考えをめぐらせる。 逆に、自分の拙い創作においては、「言語中毒によって、自己家畜化されていく人間社会から、セックスや暴力によって、逸脱し解放されること」が、テーマの根幹になるのだ、と自覚する。 と、ここまで書いて、この作品の「大前提を見誤りがち」なことに気付く。 「性暴力」は、ただの舞台立てであり、著者のモチベーションは「小説は、どこまで闘えるのか?」という、著者の自己言及的な思索、つまり「自分の悩み」を書いた、私小説なのだ。 それが、小説家・長岡友梨奈や、編集者・木戸悠介に仮託されているのは言わずもがな、登場人物全員が、言語中毒者なのは、必然なのだ。 そして、最も著者自身を重ねているであろう長岡友梨奈が、思索の末に発狂し死に行く、という展開になるのも必然なのだ。

    0
    投稿日: 2025.07.07
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    複雑、人間関係、現代社会のリアル、病巣。なんて言ったらいいか分かりませんが、重い作品です。久しぶりに読むのに時間がかかりました。途中諦めかけました。でも、最近離婚されお子さんとフランスに行かれたと話題の金原さん、いろいろ気になって読みました。

    0
    投稿日: 2025.07.06
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    最近の性加害に関する社会のうねりや、時代の流れの加速のようなものに、何とも言えない違和感を感じていたところに、「きっと女性の作家だし、男性を糾弾するような内容だろう」と警戒しつつも、「性被害を武器に男性を糾弾する女性に、同じ女性の立場から物申す」みたいな内容だったらいいなと変に期待しながら手に取った一冊。 序盤は性描写の多さに少し面食らったが、年代や性別様々なキャラの視点から描く性加害について、単純な語り口の違いのみならず、その解像度の高さに、別の作家が書いているのではと思うほど、作者の技量や幅の広さを感じた。 特にも男性キャラのうち、年代の近い五松、横山には、自分との違い、シンパシーを感じて感情移入できるところはあったし、木戸には同情と、いつ自分が同じ立場に立たされるかわからないという恐怖を感じた。 長岡友梨奈のキレのある長台詞には、吸い込まれそうな魅力と爽快感があったし、価値観をアップデートし続けなければいけないという使命感には、この時代を生きていく中年層の必死さを感じた。 長岡が過去の性加害に対して語っていた「あのときはあれが普通だったんだよ。常識と言ってもいいかもしれない。そして今は常識が変わっただけ。ただただ時代にはそれぞれ正解がある。」という考えが自分の中に一番ストンときたのが印象的であり、しばらくはこの考えが自分が性加害について考えるときの1つの指針になりそうと感じた。 ここまで一つの作品の感想を書いたときがなかったが、自分の現代社会について感じていたモヤモヤと、のめり込んでしまう文章のレベルの高さが組み合わさって、自分にピッタリはまった結果だと思われる。 今の時代を生きる多くの人にオススメしたい一冊だった。

    4
    投稿日: 2025.07.06
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    30年前の村上龍の小説を彷彿とさせるような性描写のオンパレード。でも村上龍の小説は救いがあったけれど、これは苦手だった〜!

    6
    投稿日: 2025.07.06
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    『ナチュラルボーンチキン』読了の興奮も冷めやらぬ状況で、いつもの日経新聞土曜日版、読書欄で、本書の発刊を知った。『ナチュラル…』とは主人公たちの背景、人となり、が大きく異なり、私がこれまでに読んだ金原さん作品の中では、『fishy』に印象が近かっただろうか? ただ、今作品は他の方も評価されている様に、「金原さんの最高傑作」かもしれない…(たぶん)細やかな取材、緻密な計算、に基づく、そして舞台俳優の語り口上、の様な台詞回し、で、読む者をぐいぐいとその世界に引き摺り込んでいく… 私は特に、(金原さん自身を投影したかの様な)「長岡友梨奈」、の一挙手一投足、から目が離せなかった。 フィクション大作として、読む価値は充分にある作品だと思う。もちろん、(読む者)それぞれの置かれた状況と照らし合わせて、同意する事、不愉快に思う事、も多いかと思う。 [(2025/07/04加筆from)また、決して「(小説という)エンターテイメントとして」楽しむべき題材では無いのかもしれない。が、しかし、登場人物ひとりひとりの細やかな感情描写、情景描写、を成し遂げて私たちの心を揺さぶりこの世界に没頭させようとする作者の努力と才能は賞賛に値すると私は思う。(2025/07/04加筆to)] とにかく読んで損は無い。ぜひ多くの方に読んで欲しい。

    11
    投稿日: 2025.07.03
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    金原ひとみさんの小説を初めて読む。きっついわ〜。苦しいのに読むのを止められない。孤独と言葉について書いてあると思ったけど、繰り広げられているのは「個毒」と「言罵」の果たし合い。金原さんの他の小説も、きつそうだけど気になる。

    1
    投稿日: 2025.07.02
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    それぞれの登場人物の視点から時系列に進んでいく物語。 心情や定義がものすごく細かく描かれており、いつの間にかワケわからん世界に誘われているという、著者のスタイルに見事に嵌まってしまいます。 本著は、「文学的な表現を現代の言葉で砕いて見やすく表現している」と感じました。 登場人物のパーソナリティーがしっかり作られており、架空の人物とは思えませんでした。

    0
    投稿日: 2025.07.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    途轍もなく面白かった。 読むのに精神的なカロリーが必要で、強いお酒をチビチビ飲むように時間をかけて味わった。 数ページおきに、自分だったら……と考え込んでしまう。 なかなかどの人物も感情移入することが難しかった反面、五松、友梨奈、木戸にはところどころ共感するところもあって、私って老害だなぁと。。。(実際は同年代である著者の若者像がボヤけてて共感出来ない可能性もあると思ってる) 木戸が搾取した前提で話が進んでいるが、実際、美津の告発は搾取とは思えなかった。 斡旋していたのかもグレーで、10年経ってから性的嗜好が合っていなかったと思い返して告発するって異常じゃない?と思ったんだけど、どうやら著者や三宅香帆さん、本を読んでインタビューをしているインタビュアーの方、みんな一律で搾取だとほぼ黒を出したような言調でモヤモヤ。 感覚のアップデートって、搾取のボーダーを下げることではなく、搾取について積極的に考え行動する姿勢を高めることを言うべきだと思うんだけど、インタビュアーが画一的であるのって感覚がアップデートされてると言えるのかな? なんでもかんでも言ったもん勝ちになると、男女の分断はますます加速してすべての女が腫物になる。 本の内容自体ではなく、インタビューにモヤモヤさせられるんだよなぁ。 いつもXなんかを見てて思うんだけど、女側も男の容姿を当たり前に揶揄うのに、その加虐性は忘れて男だけが性加害者だと思って生きてる女多くて気持ち悪いよね。もちろん男も加虐的な投稿あるけど、男だから多いとか女だから多いとかではない。男女差による加害の質の違いはあれど、加害をする人間がキモいのに女ばかりが被害者面するのは違うなっていつも思ってる。 いくらでも話せるけど、家族以外に話しにくい話題だな。

    1
    投稿日: 2025.07.01
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    読んでいて辛い。 痛くないけど辛い。 こんなに辛い金原さんの小説はたぶん初めてだ。 心がぐちゃぐちゃになりながら、つっかえつっかえ1月かけてなんとか読み終わる。 性的搾取は悪いことというのは大前提。 橋山美津から過去に性的搾取をされていたと告発された木戸悠介の方に感情移入してしまい、とてもまっすぐなよい子だけど悠介を忌み嫌う息子の恵斗がぶん殴りたくなってしまう僕は、もうすぐ社会的に抹消されてしまうのかもしれない。

    43
    投稿日: 2025.06.30
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    インタビューで金原さんが”闇堕ちだけじゃなくて、正義堕ちもあると思う”と発言されていて、すごくしっくりきた。正義堕ちして神聖化される女性の物語だった。 正義堕ちする主人公の言動は徐々に理解の範疇を超えていくのだが、過去に体験したことについて、時を経て怒りが湧いてくる感覚はよくわかる。それは時代の変化もあるし、自分自身が経験を積んで知識を付けた結果でもある。若い頃はなんかおかしいと思っても言い返せなかった場面で、30代になった頃から言い返せるようになった。言い返してもいいんだと気付いた、という方が正しいかもしれない。 年の差の大きい関係が搾取に繋がりやすいことは事実で、主人公のパートナーが自分たちの関係性を自問自答するシーンでは、読んでいるこちらもぐらりときた。

    1
    投稿日: 2025.06.30
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    キョーレツ。この令和という時代に埋められた恐ろしい地雷の物語。読めば読むほど爆発力は増大。「もうこんな世の中に生きるのがしんどい」と思ってしまうくらい自分のなかで何かが削られた。誰もが性加害にあうかもしれない。そして全く自覚のないうちに加害者になってしまうかもしれない。そんな危うさをヤバいくらいの熱量とリアルさで執筆されている作者の凄みを改めて思い知る。登場人物もキてる人たちのカオス。読んでいて苦痛を伴う読書で、今日の楽しい気分は吹っ飛ぶこと間違いなしだが現代を生きる老若男女は読んで損はないのでは。

    2
    投稿日: 2025.06.30
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    感想1 よく(私もたまに)「自分に正直でなければ心が死んでいる」とか、「生きてないのと同じ」なんて言うけれど、本当に、自分の正義と真っ当に向き合って、乖離なく誠実に生きようとすれば、生物学的命を長らえるのは不可能である。時間の問題。何故ならこの世から悪や理不尽はなくならないから。矛盾するようで真理。当たり前だけど着地点がない。だからみんなどこかに折り合いをつけて生きる。妥協ではなく選択だと思ったり、あるいは何も思わずに。長岡友梨奈氏は自分の悪のような正義とその果てを認識しつつそちらを選んだ。読み進めるには憂鬱で退屈できついこともあったが、おそらく多少の近親憎悪であることもわかっていた。 他の人物の章も少しの共感と違和感たくさん、拒否感、嫌悪等々。 なかなか読み進められなかったのに読後はぐるぐるずっと考える。良くも悪くも何度も思い出す作品になりそう

    8
    投稿日: 2025.06.23
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    同じことを体験しても、記憶に残っていることは違い、それぞれの見え方もまた180度違う。特に性やジェンダーに関しては。 価値観が急激に変わっていくこの社会で、私たちは過去の出来事にどう向き合い責任を取ればいいのか、あるいは現在の理不尽や差別とどう闘えばいいのか。どう心を整えればいいのか。 最後の章の若者が60歳を迎える時には、どんな社会になっているのだろう。同じことの繰り返しなのか、それとも少しはまともの社会になっているのか。

    3
    投稿日: 2025.06.19
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    金原ひとみの代表作になるだろうし、とてつもない力作。 木戸悠介と長岡友梨奈の成熟と諦念の変遷と始末の付け方がとてもいい。 ただ、一哉、伽耶、恵斗といった若者の描き方が、中途半端で、どうしてこの人たちが、その人生の選択をしたのか、今ひとつ伝わらない。 金原ひとみもすでにこの子たちから年が離れているからなのかも。 若者カルチャーに精通しているのは、(前作によると)娘さんから得る情報なのだろうなとは思うのだけど、無理に若者文化を私、知ってます!という描き方になってしまって、痛々しく感じてしまう。 若者カルチャーからデビューした人だから、その界隈はよくわかってるというスタンスを崩したくないのかもしれないが、この小説には若者文化の描写は必要ないと、私は感じた。 文学と老いと正義にさらわれた中年の男女の葛藤だけで十分だったと思う。

    25
    投稿日: 2025.06.16
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    金原ひとみさんの作品は何冊か読んだが最も推したい作品である。500ページ超ある長編小説で読み応えがありながらもすぐに読み終わることができた。各章の主人公の主張があるものの、半分以上はこの社会に訴えかけているものではないかと思った。私が個人的に面白いと思ったのは、各章の主人公となっているときはその人物の通りが正しいと思うものの、他の章で出てくると不思議なことにおかしいと思ってしまうのだ。今回金原さんが取り扱った社会問題はどれも今後も解決することがないことでありそれが正しい正しくないを判断することもできないのだろう。だから「ヤブノナカ」というタイトルに繋がるのかなと思った。今の現実世界で起こっていそうなリアリティのある一冊だった。

    5
    投稿日: 2025.06.16
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    読了。 図書館本ですが、多分買います、この本。 自分の本棚に所有したい。 装丁も好き。 金原ひとみさん、短編集を一冊しか読んだことがなかったけど、長編の破壊力がすごいんだね。 頭が吹っ飛びそう。 元々自分が長編が好きってのもあるけど、金原ひとみさんの長編が、こんなにもインパクト強いとは!!!!! 10代〜50代の男女というかなり幅が広い登場人物がいる中で、章ごとにそれぞれの視点から話が進んでいくっていう構成がまずすごくて、そしてどの視点から読んでも、その人に共感してしまう部分と、嫌悪感を抱いてしまう部分があって…でもそれも高校生の2人のパートになると、ほぼ共感しかなくて嫌悪感とか抱かなくて…それも意図的に作られている気がして、「すごい」が止まらないの。 私の感情や脳がどんどん、どんどん文章によって誘導されるように引っ張られてく感じが、たまらなくて、ゾクゾクしてしまう。 長岡友梨奈が金原ひとみさんと一番近いところがあるのか?分からないけど。 そして芥川龍之介の「藪の中」から来ているタイトルなのか、性と暴力の問題を文学と絡めながら描いて、答えは永久に分からないという「藪の中」に戻るのが、またまたもうすごくて。 すごいしか言えない自分のボキャブラリーの少なさが恥ずかしいんだけど… 芥川龍之介の「藪の中」、読みます!! 勝手な解釈かもしれないけど!!! 最後に、 小さい子供を持つ親として一番心に書き留めておきたいのは、以下のところだった。 「もちろん破綻した人格なんて求めてないよ。でも友達とか作家は選べるけど親は選べないし、子供には親に気に入られたいって本能が備わってる。だから親は子供が思想を形成していく過程で、自分の思想を押し付けすぎないよう、できる限り気をつける必要があると思う」

    3
    投稿日: 2025.06.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    登場人物の年齢層も性別もバラバラで、それぞれの人物ごとの視点が切り替わることで物語が進むスタイルだったから500ページ以上あったのにすんなり読めた感じがする。内容は鬼すぎてすんなり噛み砕けるものではもちろんなかった。 読んで思ったのは金原さんがほんとに1人で書いたとは(良い意味で)思えないってことで、中年男性と30代?男性のホモソに毒された心境とか暴力性がそのまま性欲に直結する感じとかの描き方がリアルすぎて、あれ今実在する男性の心境にダイブして見てるのかなってくらい現実味マシマシで怖かった。なんというかXとか2ちゃんとかそういう粘度の高いネットホモソ社会の空気感というかそういう再現がうますぎる。 長岡友梨奈の「悪のような正義感」に突き動かされてこの世界に存在するどう考えても要らん悪(性暴力だったり戦争だったり)のすべてを排除しようとする心の動きは凄く共感してしまうところがあったんだけど、でも長岡友梨奈がものすごく極限的に尖ってしまった描写を見ると彼女も一種の暴力性をふるっているよなと思って怖かった。正義の権現はまた新たなモンスターなんだと思う。でも私は彼女の行動を尊敬してしまう側の人間なんだとも思った。同じことはできないけど。 色々気になる終わり方だったけど、個人的には特に伽耶ちゃんが気がかりだった。伽耶ちゃんと長岡友梨奈の会話シーンでは、伽耶ちゃんの発言は全て受け止められることがなくて、理詰めでこてんぱんに潰されるだけだったから見ていて凄い辛かった。子供ってどうしても親が自分を受け入れてくれるって期待してしまうもので、伽耶ちゃんは引きこもったりした後それでも長岡友梨奈に向き合っていたのに彼女の発言を一切汲み取ろうとしなかった友梨奈に凄く悲しくなって絶望した。 最後友梨奈が亡くなることでもしかしたら伽耶ちゃんは長岡友梨奈という母親の毒とも言える呪縛が解かれるかもしれないのは不謹慎だけど一種の救いなのかもしれない。でも死んだ後ですら遠慮なく人権なくSNSで情報が拡散される社会だからそんな救いすらないのかも。 あと横山一哉も気掛かりだな。大学生の時に長岡友梨奈にアプローチして交際って流れだけど、この設定は普通に私としては気持ち悪くてダメだった。そんで思ったのは、金原ひとみさんがちゃんと年の差カップルの男女の非対称性を炙り出そうとしてるんだろうなってことで、これはうまいなと思った。体感的に、この社会で「男が年上、女が年下」のカップルはグルーミングなんじゃないかっていうような疑惑の目が向けられることが多いけど、男女逆だった場合はそこまで批判の対象になってない気がしてて。だからそれが対照に描かれているのが良かった。

    2
    投稿日: 2025.06.14
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    この物語の沢山の登場人物の、誰が自分に近いのかな 誰もいない気がするし、多くの人と共通点を持っている気もするし。

    1
    投稿日: 2025.06.14
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    重たかった。500ページ越えの大作だったし、読むのにエネルギーをすごく使う小説だった。 自分はそんなつもりじゃなかったのに、相手にしたら一生忘れられない傷になる。 それは時代と共に変化していくものであり、たとえ親子やどんなに愛した人でも人と人とは絶対に分かり合えないということをつきつけられた感じがした。 救いを見つけられず登場人物全員が苦しんでいる感じがヤブノナカというタイトルとリンクして、読んでる間はずっと暗闇の中を彷徨っている感覚だった。 伽耶ちゃんがこの先どう生きていくのか読んでみたいと思った。

    1
    投稿日: 2025.06.11
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    金原ひとみさんの最高傑作とブクログの紹介文を見て図書館予約しました。 最初は何か今までに読んだことのないジャンルの本かなと思い、タイトルも『YABUNONAKA』で芥川龍之介をもじっているし、何が書いてあるのだろうと思いワクワクして読んでいました。 そしたら私の苦手とする、これでもかというほどの性描写がありましたが「読み出したんだから最後まで読もう」と思い読みました。 弱い立場にいる女性たちが強者から性的搾取をされているという話でした。 そしてその女性たちを守ろうとした長岡友梨奈という作家。 彼女自身も結婚していた夫からレイプされ、そこから救ってくれた当時大学生だった横山一哉と暮らしています。 性的搾取は怖いです。 小説家志望の女性が出版社の編集長からとか、中学生の女の子が父親からとか。 小説家志望だった橋山美津は告発文を書きますが、週刊誌のネタにされるくらいで、社会は何も動きません。 反対に橋山美津にアドバイスをしていた友梨奈は相思相愛のつきあいである一哉がかなり年下であることから年下と不倫をしているとバッシングされ、友梨奈自身が性的搾取をしているといわれたりします。 男女差別も甚だしいと思いました。 それで、この作品は一体どう終わるのかなと思ったら最後に凄い事件が起こりました。 きっとこういうことは今もどこかで起こっていることなのだろうなと思いました。 恐ろしいことです。

    133
    投稿日: 2025.06.06
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    久しぶりの500ページ越えの一冊。 物語は過去にある編集者から性被害を受けたと告発することから始まる。性被害=悪だけど、加害者がそうだと思っていないことも多々あるんだなと思わされた。そう考えると罪、悪って一体何なんだろう?この物語の冒頭で出てきた性被害は被害者と加害者は当時付き合っていたのだし、性被害…?と思う部分もある。考え方や物の見方は人それぞれで、全く同じなんてありえない。 加害者はそんなつもりはなかった、と言う。被害者は嫌だと加害者に伝えるべきだったとも思う。本当の悪は何なのだろうか考えさせられる一冊で、すごいじっくり読んでしまった。 各章ごとに主人公(視点)が変わるので、この人の立場から見るとこう思うんだなというのがわかって、面白いけど、やっぱり人が完璧に理解し合うのって、無理だなとも思った。 個人的にマッチングアプリで女の子と出会いまくってる五松さんは嫌だなー。 小説家の長岡友梨奈は最初は理屈っぽくて苦手だなーと思っていたけど最後の方はなんか部分的に気持ちがわかるところがあって怖い。

    15
    投稿日: 2025.06.05
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    金原ひとみの書く強い女は読んでいて楽しい! ずっと読んでたかった。 物事を一面から見るのではなく、一回俯瞰して、この小説の中の言葉だと"乖離'して、立体的に考えることの大切さと主観的になることの危うさ 時代は常に動き続けていて、急に今までを否定したり裏切ったりするっていう、現代を生きる人にはタイムリーな、そんな本でしたー

    1
    投稿日: 2025.06.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    出てくる全ての人に共感と畏れを感じる、それは自分自身が今ある「時代の流れ」にどのポジションで対峙するのか決めかねている態度そのものだ 事象に対するどの感情もどの意見も、自分の好き嫌い、快不快に左右されているようで足元がおぼつかない、文学が与える影響とかプライドとか虚栄とかとどう向き合っていけばいいのかわからず意図的に目を瞑っている現状 とにかく初めから最後まで自分の悩みと現状に刺さって読むのが苦しいほどだったでもだから意味のある本だと思う

    1
    投稿日: 2025.06.04
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    編集者と作家、夫婦や親子、セフレその関係をそれぞれの立場から描いた藪の中。同じ事象が関わり方やそれぞれの個人によってまったく違った見解になる。また新たに作られていく記憶の中で真実はどこにあるのだろうと感じた。 主人公とも言える長岡友梨奈の離婚を拒む夫の卑怯さが腹立たしいし、彼の立場での視点からの言及を読みたかった。

    0
    投稿日: 2025.05.31
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    金原ひとみさんの書く言葉、文章の力の強さに圧倒されました。 人に向ける悪意への不快さに精神がすり減っていくような感覚。暴力的なのに繊細だったり、正義感が強かったり、たくさんの矛盾と価値観の違いに人間の歪みを突きつけられたような、何か漠然とした不安を感じながら読みました。

    7
    投稿日: 2025.05.30
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    芥川の短篇「藪の中」をタイトルに本歌取りして描かれるのは、人間同士の分かり合えなさとそれに起因する関係の断絶や疲弊、そしてハラスメントという現代社会の生々しい病巣だ。登場人物たちはそれぞれの視点で嘘なく語っているにも関わらず、それらが交わって現れるはずの真相は最後までハッキリとせず掴みどころがないのが恐ろしい。作中のセクハラやパワハラに対して、引いた線の外側で「酷い!」と嫌悪を抱きながら観察する読み手である私やあなたの疑うことすら過ぎらない正しさが誰かの身を削り滅ぼす刀身の別の角度から見た美しさではないとどうして言えるだろう。誰も彼も当事者であることから逃れられない。けれど、どうしたってこの苦しい世界で生きていくしか他になく、だから最後のリコの言葉に私は強く励まされる。

    0
    投稿日: 2025.05.30
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    決して面白いという感想は出てこない、登場人物ことごとく私は好きじゃなかった。 昔、編集者にいいように搾取されたと名乗り出る作家志望の女性や正論ばかりまくし立てる作家、女性を買って変態的性欲をぶつける男…等など。 世の中の嫌な部分全部を晒しあげたかのような話で、読んでいて楽しくなかった。なのに、つい最後まで読んでしまったのはさすが筆者の力と言えよう。 しかし、ボリュームのある小説だったのに、読後あまり感想が浮かばないのは何故なのか。 恐らく登場人物たちのこの先に興味が湧かないからだ。悪意のやり取りを延々と読んだ気分。 人は悪口が基本、好きなのだと今まで思っていたが、そんなことないかもしれない。

    1
    投稿日: 2025.05.29
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    訳分からんけど何故か泣けてしまった。おじの内心にポロポロ涙が溢れた。そしてリコがヒーローみたいでキラキラしてた。ドス黒い血の色の物語だったけど、リコのピンク色に救われたいし、暖かさにホッとして終わった。最後のリコの章があって成り立つこの構成がものすごく好き。 どのキャラクターも少しずつ、わかると共感できる感情があり、分からないと拒絶したい部分があった。それになんとも言えない感情の比喩表現がなんて的確なんだと何度も思った。ストーリーとしても文章としても、スピード感のある箇所を目で追う感覚がめちゃくちゃスリリングで楽しい。 みんなこうして誰かに影響を受け、与え、仕方なく生きてしまっている。どれだけ憎んでも嫌っても拒絶しても頭の中で生き続けてしまう。思い出すたび本当はそいつに救われているのかもしれない、縁があるのかもしれない、本当は好きなのかもしれない。この複雑な感情を『ああ、わかる』『これ知ってる』って何度も感じるし、思い出す。ここから伝わる感情の鮮明さが、読み手にとって決して他人事にはできない。なんかな、面白い。 近頃よくある『今はもうそんな時代じゃないよ』って言葉で終わらせるのが好きじゃなかった私は、じゃあなんて言えばよかったんだ?具体的に『そんな時代じゃない』って何?と思っていたけど、その答えの参考としてこの本を提示したい。私が死んでいくってなんだろう。最近10歳下の子に話が通じないって感じ始めたのは少しずつ私が死んでるってことなのかな?今を生きるからこそ、じゃあ今生きている此処は果たして、どんな形をしてるのか?いくらでも考えていけるし、いろんな答えが探せると思う。ストーリーはものすごくエキサイティングで4DXの映画並みに迫力があった。けどそれに留まらず、私にとっての哲学書的な一冊になったと思う。読んでよかった。そしてブルドック顔にならないよう、アンチエイジングは欠かせない。

    2
    投稿日: 2025.05.29
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    疲れた…し、すごい不快な一冊。精神的にも肉体的にも1文ずつすり減っていくような感覚。正直読むのやめようかなと何度も思ったほどには不快で、読み終わった今も吐き気する。出てくる人たちクセ強すぎるし、屈折しまくってる。それなのに、あ、この人の言い分すごく分かる。そうそう、私もこんなふうに思ってた。って思うことが多々あり、下品な言い回しが多く、ものすごく疲れはするんだけど得られるものもあって、何だか不思議な感覚。金原ひとみさんの作品はやっぱり中毒性高いな、危険だけども

    5
    投稿日: 2025.05.28
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    疲れた〜 読んでる時どこで息継ぎしていいかわからなかった。特に43歳 小説家の友梨奈の章。 ✎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ あの時は「あれが普通だった」んだよ。常識と言ってもいいかもしれないね。そして今は常識が変わっただけ。そして、今の常識だって、あと数十年すればきっと「間違ってた」と言われるようになる。でも間違ってたわけじゃない。時代によって常識が変化してるだけ。正しさを執行するためにと言ったけど、それは便宜的な言い方であって、本来はそこに正しいも間違いもない。ただただ時代にはそれぞれの正解がある。移り変わる正解の波の中で、今の環境における正解を正確に捉えることだけが、今を真っ当に生きる術だよ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ セクハラ ジェンダー SNSで性被害拡散して加害者を社会的に抹殺 更年期に鬱にパニック障害 おなかいっぱい (*´3`)-з 女性の私でもずっとパンチ打たれ続けてるような読書だったから 男性が読んだらどんな感想持つんでしょうか 打撃力強めの金原ひとみさん 「蛇にピアス」を映画で観たことあるだけで ほぼ初めまして もしかして独身の頃に出会ってたら大好きだったかもしれんです 職場の前のチーフ(60歳 男性)がよく 「こんなこと言ったらセクハラになっちゃうか〜(ニヤニヤ)」ってセリフを免罪符のように使って しょっちゅうセクハラめいた冗談言ってたけど、絶対友梨奈にギッタギタのけちょんけちょんにされるぞ!!!覚悟しとけ!!

    40
    投稿日: 2025.05.26
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    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88717160W5A510C2MY5000/

    0
    投稿日: 2025.05.24
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    現時点での著者の最高傑作。彼女の文章からはいつもひりつくような痛みが伝わってきてそれが苦しい時もあるけれども、この小説ではいい意味で昇華されていた。文学界の性搾取とネット社会の闇を組み合わせてそれを十人の人間のモノローグとして語らせている。生きていることは狂気すれすれのところに存在することであり十人の人間全員がそれを内包している。小説家の長岡友梨奈の狂気が一番分かりやすいが他の九人も多かれ少なかれ持っている。それはこの社会が内在しているからであり、性について深く考えようと問題提起しているように思えた。

    9
    投稿日: 2025.05.23
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    リタイヤしかけた。フェミとか厨二病とか意識高い系とか、Xの嫌なところギューっとした小説だったから。 で、最後パラパラと先に目を通したら、なんでこんなことに!?ってなって結局完走。 イライラするし、みんなムカつくし、思考が誰とも合わないんだけど。なんか読んじゃうのよー。 あえて嫌悪感を抱かせる事で考えさせようとしているのか?それともあぁいう人達を批判してるのか? 不思議な小説だったなぁ。 登場人物に共感できなくても物語って読めちゃうんだね。 共感させない事がポイントなのか? でも、そうそう!って思う人もいるんだよね。 性的搾取されたとかさ。 あんな話題になって、みんなが声をあげたところで何も変わらないんだろうなって思っちゃう。

    0
    投稿日: 2025.05.21
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    2025.5.19 読了 やっっと読み終わったぁーー!つっかれたー! 激重激ヤバ劇薬のまさに今読むのにピッタリ(?)の小説だった。 10代〜50代の男女8人が出てくるがこの人物像が非常に緻密でリアル、そして1人1人の目線で語られ腹黒い部分が沢山見れるのでそれがまた面白い。 改めて、金原ひとみさんの凄さを思い知った。

    5
    投稿日: 2025.05.19
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    友梨奈、木戸、五松、恵斗…8人の視点で描き出す《ヤブノナカ》。下は高校生から上は50代まで、各々が放つセリフがリアル過ぎて唸る。人間活写も秀逸。終始主軸がブレず、ラストを飾るリコの言葉にも共感。怒りに満ち溢れた現代社会を、容赦なく抉りだした作品である。《炭鉱のカナリア》ともいえる著者の抜きん出た慧眼に脱帽。

    4
    投稿日: 2025.05.19
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    人間を人間たらしめる闇の部分に光を当て 痛々しいほどにさらけ出させながら 今という時代を生きる老若男女たちの 絶望や孤独、そして未来を 小説として正面から描き切っていて その凄まじさに圧倒されてしまった。 最後のページを閉じてから ふーっと気が抜けてしばらく動けなかった。 社会が大きくうねっている「今」にのまれず 生き抜くためにはどうしたらいいのだろう…

    7
    投稿日: 2025.05.18
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    SNSに氾濫するテレビ局も芸能人も暴露系YouTuberも元アナウンサーもザ・業界も全部がミックステープになったような傑作 マッチョで権威主義思想を振りかざすことでしか自身を保てない思考停止おじさんや、ちょっと仲良くなった女性に「ワンチャンあんじゃねー?」と勘違いする欲望に忠実すぎるエロオヤジを徹底的に敵視し社会のゴミだと吠え、告発し、暴露する女たち 時代を読み切れず過去の栄光を鏡に盛ってる死ねないゴミでしかないルサンチマンや、いつまでがアリでいつからがナシって「ハナからナシなんだよ!」ってことが分からず凸られ自爆するホモソな男たち そんな昔話に全く共感出来ず、押し付けられる親世代の価値観を心から軽蔑し、戦い、多様性に富んだニューワールドを本気で造ろうともがく若者たち このトライアングル知っとかないと、SNSを遊び道具ぐらいにしか思っていない我々世代のオスはマジで抹消されますね 時代と自己の乖離 主観と俯瞰の乖離 自分と他人の乖離 社会と家族の乖離 怒りと諦めの乖離 いくつもの乖離地獄とバランスをどう取るかが今をサバイブする術なんだなと勝手に納得しちゃいました

    1
    投稿日: 2025.05.18
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     同じものをみているはずなのに、人によって、こうも捉え方が違うことに衝撃を受けた。昨今話題の性加害の問題が後をたたず、思うように進展しないことも頷ける。性別や年齢による違いもさることながら、被害者と加害者側の温度差に驚く。また本書には、様々な性加害の事例が出てくるが、事例に違いがあるとは言え、それぞれの被害者、加害者、一様ではないところも、非常に興味深い。  このように人によって捉え方の異なる問題に、どう向き合えば良いのか、考えるきっかけになった。

    15
    投稿日: 2025.05.17
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    ひとつの出来事でも、当事者によって受け取り方が異なり、「そんなつもりじゃなかったこと」が、相手にとっては搾取や性虐待と受け取られる場合もあるのだと痛感しました。感想を書くのも難しいほど、読むこと自体にエネルギーが必要な小説でした。まさに、現代社会の複雑さを映し出しているように感じます。想定外のラストを迎えましたが、リコの未来には希望が感じられ、少し救われる思いがしました。

    12
    投稿日: 2025.05.12
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    芥川賞作家である金原さんが、芥川の短篇『藪の中』をモチーフに、出版界に潜む闇を暴いた長篇小説。 14章の構成で、章毎に語り手が変わり、その人の名前が章題となっている。中程で折り返すため、実質の語り手は8人だ。年齢や性別、職業も異なるそれぞれに対応する一人称で書き分ける離れ業を堪能した。 具体的な内容は伏せるが、複数の重いテーマを扱っている。ほとんど改行もなく続く地の文章に加え、会話も議論(口論?)になることが多く、読み進めるのに気力が必要だった。 これまで読んだ金原さんの作品の中で一番よかった。

    11
    投稿日: 2025.05.10
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    はぁ〜凄まじかった〜 金原さんの小説は、気合い入れて構えて読むのだけど、それでもどっと疲弊する もうパンチ力ありすぎて、、 だけど、なぜか一語たりとも落とさずに丁寧に読んでしまう。 結論、なんだかんだ好きなんだろうな。 ⁡ 今作は性加害の告発、MeToo運動、マッチングアプリ、SNSなど、まさに今話題の、、って内容だった。 7人の登場人物、誰1人好きになれなかった。 だけど、嫌だな〜と思うのにそれぞれに気持ち分かるとこあったり、自分にもこういうとこあるかなってとこあったり、、 ⁡ ここ数年で時代が大きく変わってきてるんだろうな。 いつまでも昭和気質なおじさん達にも困るけど、何でもかんでもSNSな現代も大いに難ありだなと思う。 どちらも無遠慮に人を傷つけたりする。 正義は本当に正義なのか? 今の時代、どうするのが正しいのか、もうなんだかよく分からない。 ⁡ ただあまりいろんな物に振り回されず、私も目の前にいる人達ときちんと向き合っていける様にしたいよな〜。

    91
    投稿日: 2025.05.10
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    見開きに文字がぎっちり、528ページに及ぶ大作。 性的搾取や家庭内レイプを取り扱う内容のため読んで消化するのにずいぶんエネルギーを使った。 金原ひとみ作品としては、個人的にめずらしく登場人物の誰にもほぼ共感できなかったし、好感をもてなかったけど、怒濤のフリースタイルバトルに途中振り落とされそうになりながらも最後まで意地になってしがみつくようにして読み切った。それぞれが、生きていくなかで生じた怒りの置き場をずっと探しているような小説だった。 読み終えたいま冷静になって思うのは、思想が強めな作家・長岡友梨奈は(「思想が強い」という表現は現代においては対象者を高みから見下ろすことができるような、冷笑を含んだ便利な揶揄の言葉としてよく用いられるようになったけど、でも、思想が強いことの何が悪いのだろう?)、自分のため以上に、私たちのために怒ってくれていたのだということ。 娘の伽耶ちゃんと訣別したシーン以降は、過激さと攻撃性をますます滾らせる友梨奈に狂気めいたものしか感じられなかったのだけれど、性暴力が許せないという点だけは徹頭徹尾揺るがない。 だから私は、「連帯を表明」という言葉にうすら寒さを抱いている場合ではなかった。これは尊厳をかけた戦いなのだから。彼女のように強くありたい。

    9
    投稿日: 2025.05.09
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    ところどころ共感できるところもあるのだが、全体的に自分には難しいと感じた。 登場人物誰もが分かり合えないという思いを抱えているもどかしさを感じた。

    5
    投稿日: 2025.05.08
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    年々凄みを増している金原ひとみさん。 集大成と言っていい圧巻の527頁。 エッジの効いた言葉の応酬と行間から溢れ出す絶望と怒り。 出版界を舞台に、その中で繰り広げられる性的搾取と暴力。 権力を手にした男達の傲慢さに呆れ、社会悪に立ち向かう女性の正義の暴走に戸惑う。 長岡友梨奈の章では自分の怠慢を責められているような気持ちにさえなった。 読了まで時間を要し心身を削られたが間違いなく読んで良かった作品。 昨今、頻繁にメディアに取り上げられる性加害問題に鉄槌を下す破壊力が半端ない一冊。 生半可な気持ちで手にすると痛い目に遭う。

    9
    投稿日: 2025.05.08
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    金原ひとみの真骨頂。こんなふうに怒りを文章に落とし込めたらとため息が出るほど、私も彼女らに連帯している。 他人への怒りと他人への愛は共存するけど、乖離をもって自己を保っていた人がそれをなくすと、怒り一色になってしまう様子は辛かった。しかしそうなってしまう感情の流れはよくわかる。結末もなんとなく察しながら読んでいた。実際に正義のために生きるのは難しい。でもできることはなにかないかと探したいよね、と。

    3
    投稿日: 2025.05.06
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    評価を書くことが非常に怖い。自分の言動が時代を跨いで罪となる。品行方正に生きていたって、少しのきっかけで人生は転落していく。 10年前に交際していた女子大生からの告発。きっと男性からしたら普通であっても、女性目線だとトラウマなのだろう。それを想像できる男性が幾人居るのか。欲望より理性が働く男性がどれだけ居るのか ただ同じ性犯罪や暴力でも男性がするのと、女性がするのでは世の中の捉え方が違う。もちろん当事者が悪いのは変わらないが、世間からの視線は本当に異なる。悪が裁かれるものが正義だとは限らないんだと実感。 時代に合わせた常識、モラルを本質的なところで理解しない限り自分も加害者側に立つかもしれないと 読んでいくうちに思った。 ここに感想を残すことでさえ、思想が強いと糾弾されるのではと怖くなる。

    6
    投稿日: 2025.05.05
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    Amazonの紹介より 性加害の告発が開けたパンドラの箱―― MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。 文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ――。 様々なとんでもないモノを目撃したなと思いました。昨今では、こういったことが報じられていることもあり、どんな内容なのか気になるばかりでした。 加害者や被害者、その関係者といった様々な人物の視点で展開する群像劇になっています。 色んな視点があることで、人の印象がだいぶ違ってくるのですが、発する言葉の数々はエグく、「愛」の幅広さに疲弊してしまいました。性描写も描かれているので、もしかしたら気分を害するかもしれないので、注意が必要です。 正直、特定の人に着目し、感想を述べるのが難しいところです。 「もしかして嘘なんじゃないか?」 「何でそんなにケロッとしているんだ?」 といった具合に視点が違うことで、読者にとっては真実が本当なのかわからなくなってしまいます。 例えば、被害者の視点になると、性被害の模様は、読んでいると、そういった癖を好む人以外は苦手意識をもつくくらい、気持ち悪さ・歪さ・陰湿さがあるくらい事細かになっています。 その一方で、加害者側の視点を読むと、雰囲気は大人しめで、本当にそんなことをするの⁉と思うくらい、被害者から読み取った印象とはがらりと変わります。 その他にも、他の関係者の視点を読むと、また違った印象を持つので、なかなか登場人物の内部を知るのが難しいなと思ってしまいました。 一つの告発によって、始まった騒動。嘘か本当かに限らず、こうして拡散されていくことの凄まじさは恐怖でもありました。その解釈は様々であり、snsでの投稿に色々複雑な気持ちになりました。専門の所に相談するより、世間や週刊誌の方が、影響力は凄まじく、地に落ちるのも時間の問題です。 しかし、それは加害者だけでなく、加害者、その関係者にも影響を及ぼすということで、告発は諸刃の剣でもあるなと思いました。 昔もこういった性被害はあったかと思いますが、ネットの普及により、今や全世界でも伝わる時代であります。 本当ならまだしも、これが嘘だった場合、どうすればよいのか。 いずれにせよ、第3者から安易にバッシングしないことが大切であり、事実がどうあれ、まずは当事者を含むそれにかかわる人たちだけで、解決していってほしいなと思いました。 面白おかしく、関係のない人達が拡散するのではなく、冷静に静観することが大切かと思いました。 関係者達の心情も読みましたが、色んな生き方がある分、色んな思いがあり、もしも自分がその渦中にいたらと思うと、他人事でもないなと思いました。 最悪な癖を持つ男性とそれに巻き込まれる女性。これが立場が逆転すると、また違った考えがあるかもしれません。同性から、異性から、はたまた若い方から、お年を召した人から、様々な人が読むと、十人十色の考え方が生まれるかと思います。 結局は、警察よりもSNSが一番影響力が強く、破滅するのが目に見えて、良いのでしょうか。 そう思うと、複雑なのですが、こういったことが起きないためにも、心や行動を制限しなければいけないと日々意識しなければいけないなと思いました。

    4
    投稿日: 2025.05.03
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    メディアの記事で離婚した中年男性が登場人物にいると書かれていて、近い将来の自分かと感じ、読むことにした。 自分とは関係ない世界、フィクションだしと遠ざけたくなるほど、ハードなシーンもあったが、心を揺すぶられたことは確か。 今の職場に移ってから、DEIについて考える事があるが、自分と全く価値観等が違う人と共生するのは難しい、分断された世界に生きられたら、そっちのほうが楽だと思ってしまう。 この小説を読んで思ったのは、身近な人とも分かり合えないことを実感する中で、どう生きていけば良いのかということ。子どもが巣立つまでは、親としての責任はあり、自殺する訳にも行かず、生きて行く苦しみは続く…

    1
    投稿日: 2025.05.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    金原ひとみ氏の今回の新作、ページ数も今までで一番多くて骨太だった 色んな登場人物の視点から描かれる群像劇。 性加害の告発が主なテーマなので、かなり現実世界の延長線上にある話しに思えた。 文学界に従事する人達に対して、高尚な考えの人が多くて俗世からかけ離れてるイメージを持ってたが、やはり権力勾配のあるところに性欲・支配欲が絡んでしまう古い体質な業界なのだろか 露悪的に描かれる旧来の男性像を体現したような登場人物もいるが、50代編集者おじの木戸は、糾弾されつつ、一応娘妻の養育費を払うなど、自身の有害な男性性への自認があったり、複雑で救いのないキャラクターで面白いと感じた とくに思想のない一哉と、悪は叩き潰すと誓う麻里奈という、一見相反しそうな2人とその周りの関係性が、果たして上手くいくのか、どうなっていくのだろうか?というのがかなり読み進めていく推進力になってた気がする 終盤の薄暗さを取っ払うような、未来のラッパーのバイブスすごくナイスです

    1
    投稿日: 2025.05.02
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    登場人物の行動は過激に描かれていたものの、まさに今の時代を反映した小説だなぁと思った。 多様性とは、正しさとは、ということを考えさせられた。私も一哉のように、自分の周囲の日常が平穏ならそれでいいと思うタイプだから、世界のあらゆる悪に対して抗議する友梨奈のように行動を起こすのが正ではないとは思いつつも、問題に対して無関心になってはいけないと思った。 最後の章でのリコと恵斗の関係性が、世代の移り変わりを感じた。今の高校生は、男だから彼女をリードしなきゃとか、女だから支えなきゃとかないんだろうな。そんな彼らが大人になった時は、どんな倫理観が根付く社会になっているんだろう。 木戸や五松の性加害者が、自分たちの行動が悪いとは分かっていても、それほどまでに社会的に断罪されるほど悪いのかが分かっていないところがリアルだった。 ページ数も多いし、内容的にもうっ...となるところも多くて読むのに体力が要ったけど、よかった。 「考えざるを得ないシチュエーションと、多様な意見が取り入れられている小説には大きな存在意義があると私は思っています。意義の一つが、このように現実よりも深い思考や対話を持てることだと思っています。」 「恋愛の定義がそもそも違うんだよ。克己との関係は私にとってはもはや搾取と搾取の関係でしかない。彼との関係は与え合う関係で、それを恋愛と私は一括りにはしてない。」 「現在の物差しが一過的なものに過ぎないという前提、つまり十年後には今の正しさは間違いになっていて、十年後の正しさもその十年後には間違いになっているという前提と下に、少なくとも先進国を生きる人々は現代の物差しを過不足なく身につける必要があり、その必然性を無視した人々、ついていけなくなった人々はこの世から追放されるべき存在と認識される、という事実を各々が胸に刻む必要があります。」 「人間にはたくさんの側面があり、その全てが整合性のとれているものとは限らない。」 「正しいか間違っているかが問題ではない。この世には正しい真理や間違っている真理、適切な真理や不適切な真理、色々な真理があって、その中でどれだけ多くの真理に触れ、把握できるかが重要なんだ。」 「でもそれは、今の時代は、でしかない。時代は唐突に人を裏切り、蹴落としていくのだ。」

    2
    投稿日: 2025.05.02
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    時代についていけないが自分の加害性には気づいてしまった「おじさん」の行く末の話として、自分の将来を想像し恐ろしくなりながら読んだ。 白黒つけられるはっきりした物言いができるのは自分が時代についていけていると思い込んでいる無邪気なバカか、ほんとに時代を作っている人だけなんだなと思う。

    2
    投稿日: 2025.04.29
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    うーん、いまいち分かりにくかったなって感想です。 文章量も1ページあたりが多すぎて情報量が多すぎる印象でした。

    1
    投稿日: 2025.04.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    何が加害で同意なのかを考えるきっかけを与えてくれた。金原ひとみの文体に惹かれ本書も一気読みした。ただ、話の内容が後半にかけ失速していき作者の怒りが昇華しきれていない印象を受けた。あと500ページ書いてほしい。彼女の作品でよく見かける、登場人物の死でかたをつけようとするところは評価できない。友梨奈のみっともないところをもっと描写してほしかった。 木戸さんが息子への本心のメッセージを打ったところ、それが届かなかったところに心を動かされた。

    1
    投稿日: 2025.04.29
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    現代社会における“性犯罪"について、目を逸らすことを許されない、圧倒的なリアルが描かれていました。 今作は30代の女性が、20代の頃に交際していた年上の男性から、性的な搾取を受けていたと告発することで、当事者やその周囲の人それぞれの“性犯罪"に対する考え方が描かれています。 10年前や20年前では黙認されていた罪が、現在の価値観や常識では許されず、SNS等で同じような被害に遭った人たちの告発を見て、心の奥底に押し込めていた暗い過去が疼き出してしまう。 加害者を社会から抹殺したい、今後このような被害者が出ないよう抑止力になってほしい、わだかまっていた自分の感情と折り合いをつけたい…色々な思いがあって告発に至ると思いますが、告発したことで冷やかしや批判を受けることもあり、結局何が正解なのかわからないと感じました。 そして、この作品を読んでとても感じたのは、この世界は急速に変化しているということ。常に価値観や常識をアップデートしないと、取り残されてしまう恐怖を感じました。 金原さんの現代に対する解像度の高さが凄すぎる。今まさに読むべき作品です。

    17
    投稿日: 2025.04.28
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    金原さん最新刊。ずっしり重く、金原さんの問題意識が全部込められた大作。様々な世代の、色んな価値観を持った登場人物の怒りや葛藤、モヤモヤや生きづらさがまぁ克明に描かれていて、その解像度の高さに驚愕しました。

    1
    投稿日: 2025.04.26
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    --------------------------------------------------- 「どうしてもゆるせないことがあります」 SNS…… Me Too運動、マッチングアプリ、 世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。 「わかりあえないこと」のその先を描く日本文学の最高到達点。 --------------------------------------------------- これはすごかったです。 いやいや、もうやめて、見たくない、 と言いながら 指の隙間から見るのをやめられない、 そんな一冊でした。 しかも、 これでもか!これでもか!これでもか!! ってきます。笑 良かれと思ってたことや、 自分では無意識の言動でも、 他人というフィルターを通すと、 全く違う見え方をしている。 そんなつもりなかったんだ、 と言っても、 情報は他人の数だけの感情と共に広がっていく。 「ナチュルボーンチキン」が良くて癒されて、 その調子で読んだ本作で、 平手打ちをもらったように圧倒されました。苦笑 本書購入後の翌週に本屋に行くと、サイン版が。 2冊買うのは…と思ったし、 本当に金欠で辛いのですが、 思わず買ってしまいました。苦笑

    13
    投稿日: 2025.04.26
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    主張の激しさに読みながらくらくらした。 友梨奈の主張は正しくて言いたい事もすごくわかるんだけど、周りにいる一哉や娘はきついだろうな。 正義の暴力というかとにかく読んでいて疲れた。 でも読めてよかった。 複雑な気分。

    12
    投稿日: 2025.04.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    圧倒される。社会と向き合うことを意識させられる、強い力を持つ作品だと思いました。 パワハラ、セクハラ、マタハラなどいろいろなハラスメントがある。そんな現代社会を生きていくため知るべきことは?YABUNONAKAを読むと、そのすべを知ることができるかもしれない。 ものすごく個人的な感想として、 わたしは登場人物の中でいうと、一哉に近いと思う。友梨奈のような強い意見をもつ人を否定することはないけれど、なぜそんなに頑張れるのかという気持ちがある。なにか被害を受けた人に寄り添うことはできても、その人のために戦おうとはならないのだ。 そして読み終えて、伽耶の母に対する気持ちもわかった気がする。圧倒的な強さに飲み込まれそうで怖い。 自分の意思を主張する、自分を守ることは必要なことであるがそれが自分にとって重荷になることもある。 だから何かをされていいということではない。 けれど行動を起こすことが辛い。じゃあ何かをされた時、自分はどうしたらいいのかと考えさせられる作品でした。

    2
    投稿日: 2025.04.20
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    自分の中のマッチョイズム、フェミズム、かけがえのない温かなる瞬間。それぞれ頭と身体が乖離しているものが人間だとすると、それでも何とか一つの肉体として社会的動物として生きなくちゃいけなくてその時間というタイムラインは不可逆、思想や肉体は変化する時代とともに死ぬしかない。そのうち乖離した私のうちの1人がきっと早めに遺書を書いておくことだろう。まあ、それは多分寿命とか、あっても事故とかで少し先の話ですが。

    2
    投稿日: 2025.04.17
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    【文芸業界の性、権力、暴力、愛。戦慄の長篇】作家志望の女性が編集者からの性加害を告発!変わりつつある文芸業界を様々な人物の視点からダイナミックに描く著者の集大成的傑作。

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    投稿日: 2025.03.13