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逃亡者は北へ向かう
逃亡者は北へ向かう
柚月裕子/新潮社
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総合評価

157件)
3.9
38
61
37
5
1
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    柚月裕子さんの作品は幾つか読んでるけど、どちらかというと映画というより2時間サスペンスのイメージ(虎狼の血シリーズは別ですが)です。この作品も、 設定が重いし、犯人の境遇も重い。「運が悪い」で片付けられてしまうが、最初のチンピラといい、巻き込まれた感じで不幸さを感じる。こういう境遇の人は少なからずいるんだろうなと思ってしまう。犯人の気持ち、東日本大震災、まだ春ではない、粉雪の降る季節、全てが重い話でした。 日本人は基本的に仕事人間なのはわかるが、職務を優先した主人公の陣内には、どうにも共感できない。

    12
    投稿日: 2025.11.24
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    真柴の運の悪さは最後までどうしようもなく、、本当に「救い」のないストーリーに、何とも言えない感情になった。 直人がなぜあれだけ真柴に懐くようになったのも意味がわからず、、、唯一の救いは、陣内が真柴を理解しようとした点くらい。。。 震災でご家族を亡くされた柚月さんとしては、震災の残酷さ、非常さを伝えたかったんだと理解するものの、、、少し消化不良のストーリーでした。

    23
    投稿日: 2025.11.23
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    良かった。個人的には、救いのない所に、救いが見いだせました。不運な人間だからこその最後の悟りに行けるのかと。ただ、ラストはもう少し盛り上げてほしかった。 柚月裕子の本を読んだの初めてでしたが、悪くない。でも、人物描写がぬるいというか、もう少し輪郭を出してくれると、もっと没入できるかと思いました。他の作品はどうなんですかね。。。

    1
    投稿日: 2025.11.19
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    震災を扱ったクライムサスペンス 人質を取って立てこもった犯人を建物の外から見張るSATの描写から物語は始まる 震災の混乱に乗じて犯罪を犯した凶悪犯と思わされるが、順を追って見せられると犯人の真柴はたまたま犯罪を犯してしまっただけの被害者にすら思えてくる 真柴自身も、あのときああしていれば、こうしていなければ、自分は殺人などしなかったと振り返る とにかく「ついてない」人だったのかなと思うとやりきれない 読み終わったとき、犯罪を犯した犯人、その被害者、震災の犠牲者、いろんなものに思いを馳せた

    1
    投稿日: 2025.11.19
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    読後が良いとは言えないが素晴らしい本であった。 改めて著者の筆力に脱帽する。 東北大震災をテーマとした本として女たちの避難所(垣谷美雨さん)の本と何となく似ているような感じがした。 但しストーリーは全く異なる。 人間、皆、平等だ、、、、などという綺麗事とは全くの真逆。 ちょっとしたきっかけから人生が予想外に展開してしまう。 最後の自分の人生を振り返る部分が心にしみた。 どうしてこんなことになってしまったのか、考えた。いったい誰を恨めばいい。娘を失った悲しみのあまり、自分に間違った父親像を植え付けた祖父か。車に轢かれた高齢者か。酒を飲んでいながら、車を運転した父親か。 甲野が店で半グレと揉めなければ、眉なしに恨まれることはなかった。眉なしが死ななければ、警察官を殺さずに済んだ。そして、震災が起きなければ自分は殺人犯にならなかった。 ここまで考えて、いや、として心でつぶやいた。誰のせいでもない。その時々で道を選んだのはっ自分だ。これは、なるべくしてなった結果だ。 18歳のときに父親を探すのを諦めず巡り着いていたら、祖父の言葉が違っていたともっと早くにわかったはずだ。父親が起こした事故や両親の離婚も、被害者も父親も母親も、それぞれにそのような行動を起こす理由があった。 店で甲野が半グレと揉めたときに逃げなければ、彼を死なせることはなかった。日常の些細な決断が、いまの状況に繋がっているのだ。震災があってもなくても、いずれ自分は同じような道を辿ったのだと思う。

    3
    投稿日: 2025.11.18
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    「どこまでいっても不幸から抜け出せない」主人公の背負わされている理不尽や不条理といったものは東日本大震災での被災の全てを象徴しているかのようだ。 冒頭で、一般男性と警察官の計2名を殺害して逃亡する主人公にSATの出動からこんな感涙の物語が展開されるとは思わなかった。 自身も津波で両親を失った作者が描こうとしたのは「理不尽な目に遭いながらも必死に生きようとしている人」であり「他人を思いやれる心」だろうと思う。 社会派サスペンスとして、水上勉の「飢餓海峡」(タイトルからわかるように戦後の貧困という社会的背景があり、実際の沈没事件や大火をモチーフにしている)や後半の立てこもりの緊迫した場面では、映画アル・パチーノ主演の「狼たちの午後」を思い出した。 ラスト近くで主人公を追い詰める(救おうとする)刑事への妻の言葉、主人公が北に向かった理由、果たしてこの物語に救いは…

    33
    投稿日: 2025.11.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    【あらすじ】 震災さえなければ、この人生は違ったのだろうか?大震災直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらもある人物を探すため姿を消した青年。自らの家族も被災した一人の刑事が、執念の捜査で容疑者に迫る。壊れた道、選べなかった人生――混沌とした被災地で繰り広げられる逃亡劇! ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆ 一気読みでした。 父親に捨てられ、母親と祖父には先立たれ、天涯孤独で生きてきた青年・亮があまりに不憫すぎる。そして東北を襲ったあの震災。私にとってはテレビの向こうの話だったけど、あのとき、沢山の人が絶望の淵に立たされていたはず。 刑事・陣内のセリフ「俺たちだけじゃない。誰もなにもできない。自分で泣き止むしかないんだ。」がずっしりときた。一生の中では、どうしようもないときが必ずある。支え合える相手がそのときいないかもしれない。覚悟をしておかなければいけない。 ただ、亮はこの絶望の最中で初めて、支え合えると思える相手を見つけたのでは?その一筋の光が救いにならんことを。あの震災で被害にあった皆さんが、どんなに小さな光でも、救われる思いをしたことを願いたい。

    25
    投稿日: 2025.11.13
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    あの該当者なしだった直木賞の候補作だったうちのひとつ。 やっと予約が回ってきました(^^) なんだか急に本がバタバタと届いていて、 読まずに返すことになりそうかなと思いましたが どうにか読めました(・_・; 読めてよかったです(^^) これは1人の逃亡者の物語であり 東日本大震災の物語でもありました 生まれながらにして不運を背負っているような主人公真柴。 先輩の喧嘩に巻き込まれ、会社をクビになり、警察に捕まってしまいます。 そこから、次から次へと不運に不運が重なります、、、。 真柴に悪意があるわけではないのです。 ただ不運に巻き込まれているのです ほんのちょっと違えば、別の未来があったのです。 真柴は思います あの時ああしていれば、、、 いや、もっと前のあの時からやり直せれば、、 、、、いったいどこまで遡っていけばいいのか。 東日本大震災直後に起きた事件であり、真柴は震災の混乱の中逃亡を続けます。 それを追う警察官の陣内、息子を探す村木、真柴と出会った人、どの人も辛い思いを抱えています。 いきなりのことに混乱し、失ったものの大きさに嘆き悲しみ、明日以降どうしたらいいのか途方に暮れています そういった人々の思いや、変わり果てた街の様子などが生々しく描かれていました。 柚月さんもご両親を震災で亡くしているそうです。自身とも向き合い、被災された方々とも向き合わなければ書ける作品ではないなと感じました。 逃亡を続ける真柴がたどり着いた答えを読んで欲しいです。そしてその逃亡の結末も。 賛否分かれると聞いてましたが、、 なるほど。 私はすいません、星4で。

    101
    投稿日: 2025.11.13
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    大地震に襲われた東北。トラブルに巻き込まれて傷害事件で拘留、震災後処分保留で釈放されるが図らずも人を殺めてしまい逃亡する真柴亮。震災で娘が行方不明となるが、事件捜査のために娘の捜索に加勢出来ず親族に非難される陣内刑事。震災で妻と親を亡くし、幼い一人息子の生存を信じて探し続ける漁師・村木圭祐。彼らの運命はいかに…? もしも震災の最中で殺人が起こったら?しかも故意ではなく不可抗力による殺人で…という設定。 フィクションだが東日本大震災を真正面から扱っている。最愛の人の行方を探すことよりも職務を優先せざるを得ない警察官の葛藤や、心身ともに疲弊して感情のコントロールができない被災者の様子がエモーショナルに描かれている。もしも自分が同じ立場だったら…と考えると胸が痛くなる場面も多々。 逃走劇という点では、先日読んだ『正体』と似ているが、逃走犯の魅力においては、あちらに軍配が上がる。あまりにも踏んだり蹴ったりで不運過ぎる人生の真柴亮。理不尽過ぎる。はたして“救い”はあったのだろうか? 以下2点がマイナスして評点を下げた。 •登場人物(特に警察)が多すぎて煩雑 •幼児がなぜ見ず知らずの彼になついたのか?釈然としない

    47
    投稿日: 2025.11.09
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    図書館で借りた本。 立てこもり犯が射殺される場面から始まる。やるせない話。会社の先輩に無理矢理連れて行かれた飲み屋でタチの悪い連中に絡まれ、逃げられずに警察のお世話になってしまう。そのまま震災にあい、混乱のまま一樹的に釈放されたが、ナイフで逆恨みで襲ってきた相手を逆に刺し殺してしまう。逃亡中に警官も揉み合ってて射殺してしまうが、震災の混乱で逃げている時に小さな少年と出会う。

    0
    投稿日: 2025.11.07
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    作者の柚月さんは先の震災でご両親を亡くされました。それを踏まえてこの作品のインタビュー記事がありますので、ぜひ参考になさってください。 ···································································· 『東日本大震災のあの日で止まったままの時があり、一方で、またそこから流れ始めた時もある。そんな〈ふたつの時間とふたりの自分〉を生きてきた気がします。震災の体験をもとに、作家として今の自分に何が書き残せるのだろうかとの思いが常にありました』  自身も震災による津波で、実家の両親を喪った柚月裕子さん。あの日の痛みと真摯に向き合いながら執筆を続けた今回の候補作は、大震災発生直後の東北を舞台に、殺人を犯したある青年の逃亡劇だ。  主人公の真柴亮は、町工場の工員として働く二十二歳。彼は、同僚と行ったクラブで、半グレとの喧嘩に巻き込まれ勾留されてしまう。だが、直後発生した震災により処分保留で釈放されることに。 『作品の構想は十年以上前からありましたが、自分が思っていた以上にメンタル的につらい部分があり、物語を冷静に俯瞰することが難しかったですね。そんな中、震災から八年後に訪れた岩手県の釜石市で、成人式を迎える若者たちの笑顔に触れたんです。私も前を向いて歩き出さなければと、執筆する背中を押してもらえました』  真柴は、ある一通の手紙を手に、北へ向かおうとするが、ひょんなことから半グレの仲間や巡回中の警官を殺してしまい、追われる身となってしまう。その途中、家族とはぐれたらしき直人という子供と出会って――。 『私がこれまで一貫して取り上げてきた小説のテーマには、世の中の不条理や理不尽があります。震災のなかにそれが現れていると痛感しました。震災を通して自分が何を考え、感じたかを描きたかった。自分が表現したいものを主人公の真柴に託しました』  作中には、津波や遺体安置所の生々しい描写がある一方で、真柴を追う刑事・陣内康介にも、柚月さんの思いが詰まっている。陣内は、震災で一人娘が行方不明となっていた。妻とともに娘の捜索に向かいたいものの、真柴を追うという職務との間で懊悩することに……。 『人にはそれぞれの役割があります。今ここで自分は何をすべきかを考えなければいけないことを震災から学びました。けれども実行するのって難しいことなんですよね。そんな葛藤を陣内という人物を通して描きました』  幼い直人を連れて逃亡を続ける真柴は、一体どんな秘密を抱えているのか。陣内はそんな彼の不幸な生い立ちを調べあげ、事件の解決の糸口を探っていくことになる。  過酷な運命に翻弄された二人が、最後に導きだした答えとは――。

    1
    投稿日: 2025.11.07
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    亮、自らの人生をどこまで遡ったとしてもいずれ自分は同じような道を辿ったであろうとの思い、どうなんだろう。あの日あの時あの頃、あの道を歩まなければと、俺なんぞも後悔しっぱなし。でもって、いま現在でさえ惑い、道を違えていると感じつつも正せぬ自分がいる。困ったもんだ。後悔先にただすだの覆水盆に返らずだの、知れたことなんだけどなぁ。と、なんとも気の毒な亮に対して我が身を振り返り、同調しながら読了する。とはいえ、人を殺めたとしてもあの親子は共にあまりに大きく判断を怠った。君らの心情を許容できる世間であると信じたい。

    1
    投稿日: 2025.10.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    罪を犯してしまった。でもこの震災のドサクサでやり直せないだろうか。 だって殺意があったわけじゃない。結果こんな事態になった。 ツイテナインダ。 気持ちはよくわかった。だから悲しいね。

    0
    投稿日: 2025.10.24
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    時は東日本大震災……………… 微罪で拘留されてた男が釈放され……………… 自由の身になったんだが……………… 運無く?間も悪く?事件を起こしてしまう。。。 そして逃亡者となり目的があり北へ向かって! ラストまで一気読みしましたねぇ 切ない救いない話しながら自分に置き替えて読んだ。 俺も同じ過ち犯すかもなぁ。。。なんて考えた^^; 実際、その場その人でなければ分からない事。 改めて《神さま》はいてません(^^)

    16
    投稿日: 2025.10.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    亮がただただ可哀想でならなかった。生まれてから、苦労の連続。親に捨てられたという思いで、親しい人もいなくて、正社員になれそうな矢先に暴力事件に巻き込まれて、そして…と、物語が展開していく。 不幸な人生を呪い、いったい誰を恨めばいい、と自分に問いかける。最後亮は、「誰のせいでもない。その時々で道を選んだのは自分だ。これは、なるべくしてなった結果だ」と思い至る。気持ちを変えて償おうと思った矢先に発砲されて、射殺されてしまった。しかし、最後の最後に父親の思いがわかったことが救いだった。 震災時のリアルな状況、被災者達の心にもふれ、とても考えさせられる小説だった。ぐいぐいと読まずにはいられない柚月さんの筆力に圧倒された。

    2
    投稿日: 2025.10.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    バッドエンドすぎる 面白いのは面白かったけど、犯人があまりにも不憫すぎて悲しい。死なないでほしかった…

    1
    投稿日: 2025.10.19
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    主人公がひたすら不憫だった。 桃鉄で言ったらキングボンビーがずっと憑いているような。 なおとがいつか地震とそれからの数日間のことを思い出すことがあったときに、辛い記憶だけじゃなかったらいいなと思う。 東日本大震災と犯罪を絡めるの、ものすごくヘビーだった。でもこれを読んでまた、突然家族や生活、環境などを奪われてしまう恐ろしさを感じたし、相次ぐ災害に対して自分にできる支援をしようと改めて強く思った。

    1
    投稿日: 2025.10.18
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    泣きながら読んだ本は初めて。描写の細かさが、震災後、常磐道を北上していった時、無人の農村を抜けて行く時の悲しさと無力さを思い出した。 亮が心が穏やかであったと祈りたい。

    1
    投稿日: 2025.10.16
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    東日本大震災の渦中に起こった殺人、という題材。 警官の視点と犯人の視点が、交互に出つつ、さまざまな人間模様が描かれる。 面白くないことはないのだが、柚月裕子作品であれば、もっと面白いのあるよなあ、という思いを持ちました。

    1
    投稿日: 2025.10.15
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    運がいいとか、運が悪いとか、 人はその都度、喜んだり、悔しがったり・・・ まして、どんな家庭に産まれ育つかは、本人の選びようがない。 両親が離婚してどちらの親も頼れない子供も現実にいる。 亡くなってから顔も知らない実の親を知ることも。 家族も色々な形がある。 真柴亮の人生を知るほど、胸が痛くなる。 やること全て裏目に出てしまう、まさに運が悪い。 東日本大震災で、家族を亡くした人の辛さ、無事だった人の辛さ、津波での、定規を引いたようにくっきりと分かれた被災の区分。 読んでいて、当時のニュースや映像が浮かんできて、胸が締め付けられる。 真柴をなぜか慕う直人には、子供の清らかな目で真柴の心のうちが見透かせたのかもしれない。 警察関係、自衛隊の方々の、自分の家族より仕事を優先せざるを得ない立場、とてもありがたく、申し訳ない思いだ。 著者自身も東北で震災により家族を亡くされていると知った。 だからこそ、登場人物の一人一人がとてもリアルで、逃亡するルートも臨場感たっぷりだった。 今なお、避難中の方も、行方不明の方も、家族を亡くされ悲しみから立ち直れていない方が大勢いる。

    57
    投稿日: 2025.10.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    柚月裕さんの物語に出てくる刑事はいつもなかなか陰りのある人物ばかりで今回も東日本大震災の地震と津波による被害地で活躍する刑事として登場する。未曽有の災害で自身の娘が行方不明となり、そんな中で発生する殺人事件。娘も探したいが公務員として刑事として一個人の行動は許されない。憎むべき容疑者は震災で暴行事件で拘留中だった青年を釈放してしまったその彼である。しかしその彼にも過去があり事情があり、そして向かうべき場所がった。その一方で漁に出ている間に両親を、そして妻を、そして妻と同行していた一人息子を亡くした男がいた。いや一人息子だけが遺体が見つからない。もしかしてらどこかで生きているのでは? 三人三様の場面が切り替わりながら進められる物語はずっと緊迫したままで、また容疑者の過去はどこまでも救われない。負に次ぐ負のサイクルでどこまで行っても不幸しか巡り合えない人生の人がいる不条理が描かれており実にやるせない。そんな彼が北を目指して逃亡するには訳があった。というところからつけられたタイトルがまんま過ぎて、なんか逃亡者はみんな事情はどうあれ北へ向かうのが常套みたいになっちゃっててなんだかなーって思う。せっかく煮詰めた登場人物それぞれにいい味付けされているのにそんなオチを持ってくるの?って現実にありえな過ぎる結末でドン引きした。 いや、それはないwww まぁプロローグで分かっていたけど、そこはひねってそう来たかってやってくれよって思う。あまりに切ない。そして安直過ぎてこんなつまらない作品書く人だっけ?ってちょっと失望した。

    4
    投稿日: 2025.10.13
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    柚月裕子ファンとしては待ちに待った一冊。東北を舞台に描かれるスリリングなサスペンスはやはり期待を裏切らない。サスペンス好きな方には柚月さんの作品がおすすめです。

    0
    投稿日: 2025.10.10
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     冒頭でバッドエンドが予想されるシーンから始まり、運命が先細りしていくように結末に向かっていく中、物語がひっくり返るようなどんでん返しがあるわけでもなく、ストーリー自体は切なさを感じるだけであった。しかし舞台となる震災直後の現地の描写や社会の雰囲気、被災者の心理描写が生々しく、当時の雰囲気が伝わってきた。当時は自分も被災し、家族と連絡が取れない中で、任務を遂行しなければならない立場に置かれたため、この本を読んで色々と考えさせられた。結果家族の無事を確認でき、この登場人物と比べると自分の被災は足下にも及ばないが、近しい人ではないにしても仲間の家族が亡くなったり、本人が亡くなる中、公か私かを自問自答したことを思い出すリアルな描写であった。

    16
    投稿日: 2025.10.09
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    これはツラい…。つらすぎます。 東日本大震災が背景の物語なのですが、震災時の想像を絶する描写が読んでいてとても苦しくなりました。遺族の方々はとても読めないと思います。家族を失った悲しみだけでなく、家族が生き残ったとしても、なぜ自分たちが生き残ったのかと自問自答する被災者たち。 そういった非日常の中で起こる事件。先が気になり一気に読みました。あまりにも犯人が報われないのですが、ラストの優しさに読者はほんの少し報われるかな…。

    16
    投稿日: 2025.10.07
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    プロローグを読んだときから、切ないラストになるんだろうなという予感を携えたまま、本当に救いがあったと言えるのか、直人くん胸の内が明かされる日が待ち遠しくもなりました。震災の直後に、こんな事件が起きたら、怒りの感情が蔓延しそうだけれど、そういった描写はなかったので、それも1つの救いかもしれない。 2025/8/14読了

    1
    投稿日: 2025.10.07
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    救われない、ちょっとした選択ミスやズレから歯車が狂っていく感じ。あの時こっちを選んでいたら、あの時もう少し頑張って向き合ってたら、そんな場面が悉く悪い方向へと進んでいく。亮自身が悪い自業自得な部分と生まれた時からの運命、与えられた不利な人生。かわいそうな部分もあった。最期に父の真実を知れたのは幸か不幸か。もう少し早く、知ることができていたらここまで残念な結末にはならなかったのにな。

    2
    投稿日: 2025.09.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    主人公の真柴亮は22歳。そんなに不運が重なるものか、しかも事の発端である父が起こしたひき逃げ事件も、偶然が重なって起きたものだった。同情したくなるが、真柴自身が思いがよぎった、とあるように、とはいえ、偶然の上にも、自らの選択があったのでは、というモヤモヤも。逃走中に出会った幼い男の子が、何を感じて、何を思って真柴と行動をともにしたのか分からないが、真柴はどこかで男の子と暮らしたい、という思いを大きくしていく。極限状態とはいえ、このあたりもモヤモヤする原因かもしれない。それとも、揺れ動く気持ちを現していたのか。

    11
    投稿日: 2025.09.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    すごく評価が高かったが、意図せず2人も殺してしまう事ってあるのかなと思ってしまった。 こんなに思い通りに行かなすぎる人生ってあるのかな。もっとなんとかなるだろう…。

    1
    投稿日: 2025.09.25
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    こんな悲しい人生があるのだろうか。真柴 亮、真面目に生きてきたのに、偶然にも二人を殺し、逃亡者となってしまった人生。 哀しすぎる。

    1
    投稿日: 2025.09.23
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    揉み合った、はずみで、二人が亡くなってしまう。 なんて、不幸で不運な成り行きなんだろう。 親がいない、経済力がない、自分ではない、抗えない力に押しつぶされてしまう、やり場のない憤りをどこに向ければいいのか。 余韻の残る一気読みでした。

    0
    投稿日: 2025.09.20
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    思わぬ過ちから逃亡者となった青年と、震災という現実の中で彼を追う刑事。 それぞれの立場から描かれる「生きること」への必死さに、読後もしばらく思いが離れなかった。 後に著者自身が震災でご両親を亡くされ、「正面から向き合った作品」と語られていることを知り、物語の一つひとつの描写がより重く、深く響いてきた。

    2
    投稿日: 2025.09.20
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    読書記録25-44 『逃亡者は北へ向かう』 第173回直木三十五賞ノミネート作として読んだ一冊 東日本大震災の混乱の中に起きた事件 逃亡者と追う刑事 災害という過酷な運命と それぞれの家族への想い そこに生きる意味を見いだせるのか? 読みながら津波の描写に 心臓が強く早く打つのがわかる 画面の向こうでしか見たことがないけれど あの津波の恐ろしさを 文字でフラッシュバックさせるほどの 作者の筆力に感服 #本好き #読了 #부엌독서실 #本のある暮らし

    4
    投稿日: 2025.09.20
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    切なかったぁ〜 父は、ひどい男だったと祖父に言われ続けて育った青年。 もらわれ事件の直後に震災が起きる。 そこから巻き起こるさらなる事件。 母親が早くに死ななければ、こんなことにはならなかったのでは… 父ともっと早くに会えていれば…とか色々考えてしまっても、選択してきたのは自分だと最後には考えていたけれど、やはり、そんな状況の中、他の選択がそうそうできただろうか… 運が悪いとしか、言いようがない。 そんな状況でも、小さい子のことを気づかえる優しい心を持った青年だったのに… なんとかならなかったのかと思わずにはいられない。

    1
    投稿日: 2025.09.18
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    https://carinweb.isu.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&KCODE=UTF8&OAL=BD10807019&i=1758079440239

    0
    投稿日: 2025.09.17
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    震災直後の被災地を舞台に、逃亡者・刑事・被災者、それぞれの視点が重層的に描かれ、冒頭から一気に引き込まれる。混乱や人々の苦しみ、緊迫感が生々しく伝わってくる。 自らも被災者でありながら市民を守らねばならない刑事、望まずして逃亡者となった青年。状況は違えど、望まぬ境遇に打ちのめされそうになりながらも前を向き、進もうとする姿に胸を打たれた。 もし、どこかで違う選択をしていたら違う結末になっていたのか。考えても仕方がないと分かりながら、どうしても考えずにはいられない――その感覚に強く共感した。 どの登場人物にも感情移入でき、物語に深く入り込めるのは、やはり柚月裕子さんの作品ならではだと思う。読後も深い余韻が残る。

    17
    投稿日: 2025.09.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    柚月裕子さんの作品は切なくて涙が出るミステリーも多いけど、これもその一つ。 後半は苦しさから解放されたくて急ぎめで読む。 直人のことを思うとつらくて涙が出た。 最後にあの手紙を読んで、そして何より直人という大事にしたい存在に出会えてよかった。 それが救いなんじゃないかな。 どんな時も味方がいる。俺もその一人だ。 直人は絶対に忘れないと思う。

    0
    投稿日: 2025.09.11
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    東日本震災の直後に殺人を犯してしまった真柴。 彼にはどうしても会いたい人がいた… 逃亡する中で、さらに警察官も誤って殺害してしまい、追われる身に。それでも、真柴は北へ向かう。 一方、刑事の陣内は津波で娘を失いながらも、ひたらすら真柴を追う。 序盤、何人かのパートで展開し、登場人物も多いので、物語にのめり込みづらかった。 中盤で人の繋がりが見えて来た辺りから、一気読み。 津波で流された病院にいる父親に会いたい一心の真柴に心を揺さぶられる時も。 あの震災時、誰もが不安で、誰もが愛する何かを失い、絶望でしかなかった時に、子供の時に別れたきりの父親に会えるかもしれないというのは、真柴にとって、人生でたった一つの光だったのかもしれないと感じた。 直木賞候補作だったが、残念ながら受賞ならず。 強いて言えば、心にズンと響くものが足りなかった。 このテーマならば、もっと重厚な作品になった気がする。

    34
    投稿日: 2025.09.11
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    逃亡者は北へ向かう 柚木裕子さん 東日本大地震のとき、 誤って人を殺してしまった青年のお話。 運が悪い。 生まれた時から不幸。 なんとも、悲しい。 あの時、飲みに行かなければ、、、 地震がおきなければ、、、

    0
    投稿日: 2025.09.08
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    ノンフィクションでありながら、東日本大震災当時の状況や被災者の心情がリアルに描かれている。被災者一人一人の当事者目線での描写に、読み進めるのが苦しくなりながらも、これは読まなければならない物語だと感じて一気読みしてしまった。三者の視点からの物語の進め方や、多くの人を巻き込んだ壮大な展開には驚かされた。 自分を大切に思ってくれる人の存在を自覚することが、生きる力になる。

    1
    投稿日: 2025.09.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最初から悲しい結末しかないとわかっていて読み進めるのは辛かったですが、どこかで救われてほしいというかすかな期待も。 警察に捕まったほうが楽だと思ってしまいますが、亮を北へと駆り立てたのは 「いやだ、こんな人生のまま死ぬのはいやだ。なにもわからないまま、この世を去るのはいやだ。 俺は誰かに愛されたか。誰かに求められ、必要とされたか。俺はこの世に生まれてよかった人間なのか。それがわからないまま死ぬのはいやだ。」 という気持ちなのでしょう。 父親からの手紙が読めたことが、せめてもの救い。 「自分が人として愛しまれたと感じたとき、いままで出会った人たちも誰かに愛しまれている人間だと思える。」 今日1日を大切に生きよう、そんな気持ちを新たにしました。

    5
    投稿日: 2025.09.06
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    運命とはいかに残酷なのだろう 1人の男の家族を思う決断が その後の大きな悲劇となってしまった 亮の結末としては、これが1番よかった と思う。直人君に沢山の幸あれと思う 優しい人間が、思わぬ出来事で犯罪者にならないといけなくなる様な物語を読む度に心が痛む事がある、決して犯罪者を擁護する事は出来ないが、犯罪者を生み出さない為に何か出来る事が誰しも生活している中にあると思う。自分の行動が誰かを傷つけていないか?誰かを救える事ないか? それぞれが自分の立場に置き換えてゆっくり考えれば社会は変わるのだろうな。 非常に心の痛むヒューマンミステリーでした。柚月裕子作品いつも泣かされちゃう

    4
    投稿日: 2025.09.05
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    人生、運もあり不運もある この作品を読みながら、嫌な気分になったのは私だけだろうか いつかはこの気分から解放されるかと思って読み進んだが 冒頭、主人公を酒を飲みに無理矢理連れて行った甲野の行く末は?

    1
    投稿日: 2025.09.04
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    さすが柚月さん、ぐいぐいとストーリーが進み、止まらない。 でも、読めば読むほど、主人公の置かれた過酷な運命に悲しくなる… 早く終わってほしい、なんとか救いを… と思いながら読破。 心はちゃんと相手に言葉で伝えないと伝わらないんだなぁ。こんなに愛されてたのに。切なすぎる。

    8
    投稿日: 2025.08.31
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    読んでいてあまりの運の無さに切なくなった 誰でも誰かには愛されているから、悲観的にならないでほしいと思える本 タイトルはなんだかちょっと違う感ありましたね

    1
    投稿日: 2025.08.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    生まれた時から不運が続いていた。だが亮は最後どれもがその時の自分の判断の結果と悟った。どんなに不条理でも決断したのは自分、それが辛かった。震災や父、など不運に遭いながらも希望を見つけたがそれも手にできるか、、、最後の結末も悲しかった。

    49
    投稿日: 2025.08.28
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    柚月先生の新刊 4時間で一気に読んだ 悲しくて 最後は祈るような気持ちで でも シリンダーが引かれて 亮は人生を終える 父の本当の気持ちを知り 直人との心のつながりを感じてよかった! 震災の現場の描写が生々しかった 忘れてはいけないと思う

    3
    投稿日: 2025.08.25
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    図らずも殺人を犯した真柴、それを追う刑事陣内、真柴と行動を共にする子供の父親の視点から物語が進む。震災を背景に、読者は「神の視点」で状況を把握でき、もどかしかったりハラハラしながら一気に読んだ

    3
    投稿日: 2025.08.25
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    序章を書き過ぎたのでは?それが残念に思えた。 それぞれ、少しずつタイミングがずれていたら、好転のチャンスもあっただろうに。 直人の人生に、どんな影響を及ぼすのだろうか。

    19
    投稿日: 2025.08.24
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    主人公の真柴亮(22)は、誕生してからというもの、常に幸せとは無縁の人生を送ってきた。 生まれたと同時に父親は失踪し、母親も2歳の時に亡くなり、亮は児童養護施設に送られることになる。 亮が18歳の時から働いている工場では、4年経っても寡黙で孤独な亮に親しい友人はいなかった。 ただ一人声を掛けてくるのが甲野だったが、彼は酒癖の悪いこともあり、周りの人たちは極力避けていた。 そんな甲野から、話があるから一杯付き合えと声を掛けられ、飲めない亮はイヤイヤ付き合うことになる。 訪れたキャバクラで半グレ2人組を相手に河野がトラブルを起こし、1人に怪我をさせてしまう。 後日、半グレの片割れから理不尽ともいえる逆恨みで暴力を振るわれた亮は、不可抗力で彼を刺し殺してしまう。 殺人容疑で逮捕された亮は警察に勾留されていたのだが、東北大震災が起こったために検察の指示で留置場から一時保釈となる。 自宅のアパートに戻った亮は、ポストに投函されていた1通の手紙を手にする。 その手紙を読んだ亮は、何としてでも北へ向かうことを決意する。 ここから亮の必死な逃亡が始まり、途中で警官をも殺して拳銃を奪う。 山中を彷徨っていると、廃屋に潜んでいた幼い少年と出会う。 亮は無視して立ち去ろうとするのだが、少年は必死に亮にしがみ付いてくる。 仕方なく亮は、殆ど言葉を発しない少年を共にしての逃亡となる。

    17
    投稿日: 2025.08.19
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    お父さん、死期を悟り息子に手紙 なぜ、もっと早く息子への想いを伝えてくれなかったのか なぜお母さんは幼い亮を遺して亡くなったのか、なぜ祖父は孫に愛情たっぷりで育てなかったのか なぜ喧嘩に巻き込まれたのか なぜ人を殺そうと思わなず殺めてしまったのか あまりに残酷

    2
    投稿日: 2025.08.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

     乳児院で、ミルクだけを与えても 乳児は育たなかった。赤ちゃんが育つには、食事だけではなく、周りからの呼びかけなどの関りが必須であった……というようなドキュメンタリーを見た覚えがある。  亮のように周りからの愛情を受けることなく育ったら……、周りから必要とされることもなく日々を暮らしたら……、自己肯定感の低い、幸福感の低い人間になるんだろうな。直人になつかれて、初めて前向きになったような亮の姿にそんなことを感じた。

    1
    投稿日: 2025.08.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    すごく印象に残る一冊だった。 3.11の直後に殺人事件を犯し、出会った子供を連れて逃亡する真柴。 未曾有の災害で自らも被災者となりながら、職務を全うする警察官達。 彼らが行く先々で出会う被災者達。 特に震災に関する描写は生々しく、読んでいて苦しかった。 刑事の視点と逃走する真柴の視点が入れ替わりながら話が進み、ひたすら緊迫した状況が続くので、先が気になってどんどん読んでしまった。 真柴がこうなってしまったのは、彼の不幸な生い立ちももちろん関係しているだろう。 でも、運が悪かったで済ますのではなく、今こうしているのは彼自身の一つひとつの選択の結果だったということに真柴も気付く。 幸せになるのも、不幸になるのも、どんな人生を歩もうとそれは自分が選んだ結果なのだから。 自分に恥じない生き方をしないといけないなと感じた。 何より、刑事の陣内の様子に心打たれた。 震災直後、彼のように逃げずに立ち向かっていた人がたくさんいたんだろう。 頭が下がる思いだった。

    2
    投稿日: 2025.08.15
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    読み始めは、あの大津波の時のことか‥‥とちょっと・・・ あの時のテレビの報道で心身ともに具合が悪くなったことを思い出したのでした。 でも読み進めていくと、どんどん引き込まれました。 どうして北へ向かうのか…最後の方は思わず涙でした。 この作家さんは作品を何作も読みたくなります…

    42
    投稿日: 2025.08.14
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    東日本大震災の描写、その後の被災者の苦しみ。柚木さんは岩手出身、だからこそ書けることがあるのかもしれない。身近な人を失うこと、ずっと会えなかった息子、殺した犯人、殺された人。どうにもできない運命なのか、自分で選んだ運命なのか。

    4
    投稿日: 2025.08.12
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    真柴の父親の最後の手紙は涙なくして読めなかった。 無駄のない文章が良く読み易かった。 虎狼の血とその続編は映画で見て気に入っていた。この本を読んで、虎狼の血三部作を読もうと思った。作者が女性というのに驚く。

    1
    投稿日: 2025.08.11
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    直木賞候補作と言うことで読んでみたが、出来はあまり良くなかった、最近のこの著者の作品はもう一つのものが多いが、デビュー当時の勢いはなく書くテーマに困っているように感じる、震災をテーマにした作品を数々の作者が発表していているが、これまでで最低の出来の小説だと思う、選考委員も数度の受賞対象者である著者にあげたかったのだろうたけれど、デビュー当時の作品と比べると数段劣る作品には与えられないだろう、このまま無冠の帝王になってしまうのか。

    2
    投稿日: 2025.08.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    エピローグで、なんとなくの真柴の運命を感じさせた上で、陣内とともに真柴の過去から現在を追って行く。救いがなく、読んでいて苦しくなった。 運命とは何なのだろう。陣内がラストで言っていたように、救いのあるものであってほしいと思う。 真柴と直人、陣内と藤島。菓子パンと握り飯を食べるシーンが重なって印象的だった。

    1
    投稿日: 2025.08.11
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    真面目に生きてきたのに、ちょっとしたわずかな綻びが、震災の影響もあり一気に取り返しのつかないところまできてしまう。それからも全てが悪い方に転がり、とうとう大事件を引き起こしてしまう。追う刑事も震災で我が子を失い、葛藤の中で職務を全うしようと歯を食いしばる。被疑者と刑事の心迫るやりとりも虚しく、最後は只々切ない。柚月裕子の本は、盤上の向日葵とか教誨を読んだが、登場人物の心に迫る描写が素晴らしい。

    8
    投稿日: 2025.08.10
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    主人公が意図せずに巻き込まれる偶発的な出来事によって悪いほうにどんどん転がっていく。柚月さんの筆力で読ませるが、極端すぎる設定に無理を感じる。

    10
    投稿日: 2025.08.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    不運の連鎖の末に連続殺人犯として追われることになった男の末路を東日本大震災の被災後の現地の姿と併せて描く作品。なんともやりきれない。

    1
    投稿日: 2025.08.10
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    星4.5 救いがないとのレビューをたくさん見ていたが、真面目に生きている主人公に、これでもかと起こる理不尽につらくなりながら読んだ。 主人公の父親の人生もまたしかり。 著者の柚月裕子さんは、実際に震災で身内を亡くされているので、身を切るように執筆されたのだと思う。 直木賞候補になっていたが、事前の下馬評では有力とも言われていたのだが、選評をぜひ読んでみたいものだ。

    25
    投稿日: 2025.08.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    正直言って、星を5にするか、4にするか迷った。 4にするのも、読み応えがなかったとか、期待外れだったとかではない。 そうではなく、結末が悲しすぎるから。最後まで読んで、何とか自分なりに納得と言うか消化できるかな、と思ったけど、最後まで納得いかなかった。 そもそも、釈放してしまっているなど、警察側の事情は警察側の事情であって、真柴は指名手配されるほどの罪?と。それがなかったら、警官との不幸な事件は起きなかったかもしれないのに。 最後、陣内の頑張りもあって、最悪の事態は免れるのではないかと淡い期待を抱いて読み進めたけど、、、

    2
    投稿日: 2025.08.07
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    初めて柚月裕子さんの本を読んでみました。犯人の置かれた境遇はなんとも辛く、ハイライトとなる体育館のシーンではハラハラして、読み応え、読みやすさ、エンタメ感のバランスはさすがの人気作家だなと思いました。

    1
    投稿日: 2025.08.06
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    これは柚月ワールドです 理不尽すぎる運命 抗うほどに違うところへ 救いがあったのだろうか 主人公の運命が切なすぎた

    1
    投稿日: 2025.08.05
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    良かった。… と言って良いのか… どこから歯車が狂ったのか、この現実で「救い」はあるのか? 震災のリアルを経験された作者にしか描けない物語だと思う。

    2
    投稿日: 2025.08.04
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    最初から最後まで誰も救われず、ただただ読み進めていくのが辛かった。境遇や運命という言葉を考えさせられる作品だった。

    0
    投稿日: 2025.08.02
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     この作品は、直木賞にノミネートされましたが、今年は「該当作品なし」でした。 秀作であるのは確かで読者の心を震わす作品だと思う。 読者の中には、「途中で泣けてきた」と感想を漏らす方もいる。 主人公の境遇で「努力が報われない」とか「なぜ罪を被らなければならないのか」ということだと思う。  主人公・真柴亮二十二歳 両親は離婚、父はいない。母親は二歳の時に死亡。  働き始めた頃は、作業場での陰気な空気が息苦しかった。しかし、四年の間に楽になった。誰にも気をつかう必要がなく、単調な作業を繰り返すだけの仕事が、自分には合っている。その真柴が、半グレに言いがかりをつけられ罪を犯してしまった。そして次は…。 一部抜粋すると、『人間は平等だなんて嘘だ。うまれつきしあわせを約束されているやつがいる。どこまでいっても不幸から抜け出せないやつがいる』  彼の境遇を運命だと決めつけるにはあまりにも悲しい。どうしても現状に満足できないとしたら、私達は幸せではないのか? 敢えて改題するなら「なぜ逃亡者は北へ向かうのか」だと思う。  読書は楽しい。

    36
    投稿日: 2025.08.01
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    ・p152まで。真柴が意図せず二人を殺してしまったが、病床の父の所に行く。その途中、村木の息子の直人を拾う。 真柴亮 逃亡者 陣内康介 東署刑事 理代子 妻 麻利 娘 目黒 課長 佐々木 藤島 村木圭祐 漁師 朋子 妻 直人 息子 勇三 父 朝子 母 新井 SAT狙撃手 郷田剛 県警一課長 高尾正道 警察庁長官 甲野明 工員

    0
    投稿日: 2025.08.01
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    図書館にて借りる、第758弾。 (京都市図書館にて借りる、第222弾。) 安定の柚月裕子作品。 震災の東北を舞台にした物語。 内容はタイトルのとおりであり、気をてらった展開は無いものの、逃げる側の逃亡者と追う側の警察を交互に描き、どちらにも感情移入させるのは、流石。 誰も死なないで欲しい、その一念で最後まで読んだ。 ラストに繋がる冒頭の導入部は無い方が良かったようにも思うが、いずれにしても最後まで読ませる。 ただ、東日本大震災で少なからず被災した身としては、未だ震災を扱う作品には手を出すのに躊躇いがある。 星は3つ。3.6としたい。

    2
    投稿日: 2025.07.31
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    ジワジワと心が苦しくなってくる辛い話し。 運命というか、巡り合わせというか、 あの時、あそこに行かなければ・・・ あの時、・・・で無ければ、 あの時、銃口が・・・・・

    37
    投稿日: 2025.07.29
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    東北大震災から日が浅い時に福島で殺人事件が発生する。  容疑者として逃亡する真柴亮を家族が震災で行方不明でも公務を優先する警察の陣内が追う。  なぜ、真柴は北へ逃亡するのか?真柴を追っている時に湧いてきた陣内の感情とは?  東北大震災中の逃亡事件を描いたサスペンスです。  本作品の感想を書くことに読後は正直躊躇ってました。  理由は、東北大震災の被災者の方を前に私が思ったことを公開しても良いものだろうか?もしかすると大分失礼な内容を意図せずに書いてしまうのではないか?と思ってしまったからです。  そういう意味では、迂闊なことは書けないなと思うほどに本作品の内容はド直球過ぎる内容だなと思います。  もちろん読んでよかったか?というと、私は読んで良かったーと思う作品です。  私が今まで読んだ作品でもここまである意味体当たり過ぎる東北大震災を描いた作品はないと思うし、読み手次第では、本作品をエンタメ扱いしてよいのか?エンタメとして扱ったとしても、エンタメとして楽しんで良いものか?ということもあり得そうなくらいに、賛否ありそうな作品だなと思いました。しかし、東北大震災の被災者ではない私、当時は地震直後にNHKで流れてきた津波の映像を見ているしかできなかった私は、フィクションでも当時の状況は映像でみるよりも遥かに悲惨だと本作品を読んでいて思ったし、家族や大切な人が行方不明になる、毎日避難所には身元不明の遺体が運ばれてくるなど、東北大震災で被災された方々にどう表現をしてよいのかはわかりませんが、月並な表現ですが読者として貴重な体験ができたなと思いました。  そして、読み進めるとドンドン物語に引き込まれていく本作品。  一瞬の何ともないだろうという油断で行った選択がとんでもないことになる場合がある。  それをただの運の巡り合せと言って良いのかは難しいなと感じたり、その運の巡り合せと東北大震災は同じとして扱っても良いのか?等は私は思うところはいろいろありますが、読んで本当に良かったと思いました。

    7
    投稿日: 2025.07.27
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    幼い頃からツキに見放され、ついに人を殺めてしまう男。震災に巻き込まれ家族を亡くした刑事。絶望的な悲しみを抱えた両者。逃げる男と追う刑事がどこかで悲しみをリンクさせてしまう点が、本作の良さだと思う。 最後の数ページ。悲しみの中にも明日への希望が託されている。これを著者は伝えたかったんだろうな。

    14
    投稿日: 2025.07.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    震災とある逃亡時間を絡めた作品。 物語は冒頭、体育館に立て篭もる犯人(主人公)にライフルの照準を合わせるSWATの描写から始まる。 犯人が連れて逃亡する無口な少年、少年を探す父親、そして犯人を追う刑事。 展開としてはオーソドックスなもので、過去に見たことあるような。震災を絡ませてるから真新しくも見えるが、最後の展開も想像通りだった。(逃亡者あるある)

    0
    投稿日: 2025.07.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    続きが気になってサクサク読み進めていきましたがなんとも後味が悪い。 不運な人生といえばそれまでなんだろうけども何とも哀しき主人公の運命。 本当は心の優しい人間なのに人を殺めてしまうとなると周りにそこまでは理解してもらえない。 今の時代に結びつけると一部の事実だけをみて判断しては本当にいけないんだなと思う。 震災の辛い描写もあり心が痛かった。

    13
    投稿日: 2025.07.23
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    心が痛くなりました。 ほんとは誰も傷つけたくなく、殺人をしたかったわけでもなく、優しい人のはずなのに…。 不運という言葉で片付けたくないなぁ。 ちゃんと愛されてたということを知っていれば。 もう少し早くに会おうとしていれば。 人は後になって後悔ばかりして『たられば』を思う。 だからこそ、『今』を精一杯生きなければ、人と大事に関わらなければと考えさせられました。 直人くん、とってもいい子だったなぁ。 子どもは純粋だ。

    14
    投稿日: 2025.07.23
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    心が痛い内容。 ギュギュっといっぱい詰まった作品ではないけど 色々詳細に書かれているから本当にそこに浮遊しているよう な気持ちになれる作品だった 愛された記憶 大事に思われたことだけで 人間は頑張れるのかもしれない なにがある?なにがほしい?というところや 家族を失った全員無事 という格差も辛かった ほかの震災がかかれた小説でもそう思ったことを思い出した 本筋とは違うけど仙台周辺旅行前後に偶然に読んだ 現地の図書館で震災当時の新聞や関連書籍を読んだので 文字で書いていながらも瓦礫などが浮かんでくるようで心が痛かった 約15年で自分の記憶が薄れていたことにショック そして当時本当になにもできなかったことや 自身の辛い経験もフラッシュバックした 子どもだったな 知ろうとする想像することは少なくてもこれからもつづけたい

    1
    投稿日: 2025.07.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    運が悪いとしかいえなくて同情した。子どもの頃の経験は大人になっても引きずられていると思った。自分は父に捨てられたといじけてしまったせい。最初から父の事故の背景と父の気持ちを知っていればこんなことにはならなかった。子供や人質を傷つけるつもりがなかった優しい面からも、幸せな人生を送れるはずだったと思う。

    0
    投稿日: 2025.07.21
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    震災はある意味作家さんたちへ、いろいろな物語の背景として状況を提供していると思います。この作品も震災関連作品なのかもしれません。それともただ運のない男の転落物語?その背景では、関係者の肉親はもとより多くの人がなくなってしまった震災の事実が重くのしかかっており、最初から最後まで、重い作品に仕上げっています。

    0
    投稿日: 2025.07.21
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    何のために生まれてきたのか。犯人の生い立ちや重なる不運、けれど選び取って来たのは自分であるという紛れもない事実と後悔。何とか寄り添い救いをと願う刑事。震災の中で疲弊していく人々。苦しさだけが残った。

    0
    投稿日: 2025.07.20
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    前半で挫折。 あまりにも真柴亮が理不尽な殺人者として逃亡せねばならないのがなんていうのかな、先が読めてしまって。 東日本大震災のお陰?で釈放になってそもそもこの逮捕だって巻き添えだしあの先輩に誘われて気が乗らないままバーに行ってヤバい3人組にからまれて、そっからが始まり。 とにかく帰りたくても黒服に阻まれて帰れない。 そっからしてもうイライラしちゃう。 とにかく釈放されてすごい時間かかって自宅のアパートに帰ってきて避難袋を背負ってアパートを出たところにあの3人組のひとりが居て因縁つけてきて正当防衛で死んでって流れ。ここでもうアウトだった。 なんで?ここに住んでるのがわかった? 都合よすぎだとちょっと冷める。 他にも読みたい本がたくさんあるので。 プロローグ読んだ時、昔観たクリント・イーストウッド監督主演の「パーフェクト・ワールド」を思い出した。 心優しき逃亡犯で、人質の少年と心を通わせ最後は自分だけ死ぬっていう哀しい結末だった。 前半までしか読んでないから、きっと違うんだろうけど。

    2
    投稿日: 2025.07.18
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    救いがない、主人公に対してまずそう思った 天涯孤独で誰からも愛されず、必要とされたことがない主人公が、男の子と出会って初めて抱いた感情に、何かほんの少しの光をあてて欲しかった しかし大震災の非情さに、そんな感情は甘いのかもしれない ただ間違いなく言えることは、大切な人に伝えたい想いはすぐに伝えるべきだ 明日生きている保証は誰にもないのだから すぐ情景が浮かび読みやすい、さすがの文章力 星は4に近い3です

    13
    投稿日: 2025.07.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    真柴亮。指名手配。立てこもり。震災直後。SAT。直人。こども。村木。おーさん。陣内。まり。娘。生きた意味。生きる意味。

    0
    投稿日: 2025.07.15
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    2025.6.30 穏やかに暮らしていたのに同僚が起こした喧嘩をきっかけに2人も殺めてしまった間柴。 その殺人は東日本大震災後に起こり、混乱の中真柴は父に会うという目的を果たすために北へ逃げ、警察はそれを追う。 殺人はもちろんダメだけど、真柴を全面的に否定するのはできなくてかわいそうだった。 最後もこれでよかったのか? 7月に大災害が起こると言われている時にこの本を読んだので怖くなってしまった。

    0
    投稿日: 2025.07.13
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    3.11の震災直後に起きた殺人事件の犯人と、それを追う刑事を主人公に据えたサスペンス。 天涯孤独の犯人、家庭で問題を抱える刑事、言葉を発しない無垢な少年と、どの人物設定も既視感があるけど、本作に関しては震災と事件を合わせたときの化学反応を味わう趣向であると理解したので、これはこれでいいと思う。 特筆すべきは被災地の描写で、物凄いリアリティがあり、あの当時の混乱が思い浮かんで読んでいてかなり引き込まれた。 しかしいくらフィクションとはいえ、犯人が行きついた先で起こした事件を読者が当時と重ね合わせて想像するのは、現時点ではなかなか難しいのではないか。震災から今年で14年だけど、素直にこの物語を受け入れるにはまだしばらく時間が必要だと思った。

    1
    投稿日: 2025.07.13
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    直木賞候補になっていたので、読んだが、、、。 好みは分かれるところだろうけど、この架空の街の設定がいつも気になる。 実際の都市をわずかにもじった地名が違和感があり、話にのめり込めない。他の人の小説では、大丈夫なんだけど。

    18
    投稿日: 2025.07.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    避難所に立て篭もる初人犯をSAT隊員が排除する場面が冒頭で描かれ、それまでの経緯がそこから語られる。東北震災を実体験した人がどう感じるのかは分からないが、震災直後や其の後の描写は自分には凄くリアルに感じた。流石は柚月裕子、描写のリアルさだけでなく、息もつかせぬストーリーで全編を通して面白かった。主人公は常に昆虫のように条件反射で行動し、どんどん悪い状況に陥る。ラストで救って欲しかった。

    11
    投稿日: 2025.07.13
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    真柴の境遇が不憫で読み進めるのが辛かった。でも見届けないという思いで読み進めた。「2人を殺害その後立てこもり」とよくある新聞やネットニュースの見出しを読んだらどんな凶悪犯か、と思うけれど真柴の性格や境遇を知ると、なんて不運な、、と可哀想に思えてくる。思い込みがいかに恐ろしいか、も考えさせられる。

    1
    投稿日: 2025.07.12
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    啓光図書室の貸出状況が確認できます 図書館OPACへ⇒https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50387922 他校地の本の取り寄せも可能です

    0
    投稿日: 2025.07.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    プロローグで結末は明かされている。 その後始まる物語は、家族の縁が薄く1人で生きてきた青年が、間が悪く弾みで2人も殺してしまい、震災のさなか、迷子の男の子に懐かれて誘拐犯にもなってしまう。事件の前に受け取った生き別れた父親からの手紙を頼りに、父に会うために北に向かうというもの。 自らも家族を亡くしながら、事件に没入する警察官の陣内から、人質とともに体育館に立てこもる真柴は、父からの2通目の手紙を受け取る。最後にこれを読んで、きっと真柴は、物心ついて初めて幸せだったと思う。そして彼は、陣内の言うように投降する気になった。子どもを父親の元に返し罪を償い、そして父を探すつもりだった。人質に危害を加える気などさらさらなく、男の子の落としたミニカーを拾ってやろうとしただけだった。

    1
    投稿日: 2025.07.06
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    ままならない現実に翻弄され、ささやかな幸せを求める主人公が切ない。心に刺さる表現も多くあり、飽きさせないストーリーでした。

    1
    投稿日: 2025.07.05
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    第173回直木賞候補作品とのことで、読んでみました。 著者の作品はこれが初読みです。 何らかの賞にノミネートされると、ファン以外の人にも読むきっかけを与えてくれますね。 個人的に気になったのは、まずタイトルです。 「北=北朝鮮」を想像したので、海外の話かと思いきや、舞台はバリバリの国内でした。 「北=東北」だったんですね。 そして気になるストーリー。 プロローグ、エピローグを含めて全体で12章構成。 私は冒頭から一気に引き込まれるというより、最初はじんわり。 8章あたりから登場人物が一箇所に集まり、亮の生い立ちや逃亡の理由が明らかになるので、まさにクライマックスを迎える場面とも言える展開でした。 それにしても、東日本大震災の描写がすごい。 テレビやメディアでは報道されなかったような部分まで丁寧に描かれていて、水に流される場面などは、想像だけでは書けないリアルさがあります。 おそらく、実際に被害に遭われた方に取材したうえで物語に落とし込んでいるのではないかと思いました。 直人(子ども)を探しまわる父親の心境。 自らの子どもを失いながらも亮を追う刑事。 被災地で日々を生きる住人たち。 それぞれの言葉や行動に臨場感がありました。 そんな彼らと、逃亡犯である亮の心理が複雑に絡み合い、ひとつのストーリーが形作られていきます。 亮が被災地である東北を目指す理由。 それを知るには、彼の生い立ちを知る必要があります。 生まれたときから「人生詰んでる」と言ってもいいほどの境遇。 しかもそれは、彼自身の選択ではなく、他人の選択によってそうなってしまったのです。 彼が唯一、自分の意思で間違った選択をしたのは、不良の一人を殺害してしまったこと。 彼の人生は、いったいどの地点まで戻れば、やり直せたのか。 それを知ることは、「自分は生まれてきてよかった人間なのか?」という問いへの答えにもつながります。 その答えを求めて、彼はたった一人の、血のつながった父親を探しに、被災地へと向かいます。 私はこの小説を読み終えたとき、陣内のこんな言葉とまったく同じことを思いました。 「犯人は、みな同じじゃない。それぞれが事情を抱えているひとりの人間だ」 逃亡犯、と一括りにしてしまうのは、あまりに大雑把すぎる気がするのです。 その人自身の生い立ち、犯行に至るまでの経緯には、その人にしかわからない事情がある。 亮の一番の不幸は、彼に父親の存在を伝える人がいなかったことかもしれません。 もし、誰かが早い段階でその存在を知らせていれば、彼は別の人生を選ぶことができたかもしれないのに──。 そう思えてなりません。

    45
    投稿日: 2025.06.30
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    暴力事件に理不尽に巻き込まれてしまった真柴は、東日本大震災の発生により釈放された直後に殺人を犯してしまう。さらに罪を重ねながらも、とある目的のため北へ向かう真柴。そして震災で家族を失いながらも真柴を追う刑事たち。真柴の目的は何なのか、そして彼の行き着く先は。 やりきれないししんどい小説です。震災の辛さ苦しさはもちろん、真柴があまりに不憫。家族も親しい人もなく、何の望みもなく生きている彼に降りかかった事態は災難だとしか思えません。そして逃亡を続けるうちに、彼の生来の善良さが垣間見えるようになってきて堪りませんでした。ほんの少しでも彼の生きる環境が違えば、このような悲劇は起こらなかったのかも。彼を愛し彼の幸せを願った人の想いがもっと早くに届いていれば、と思うばかりです。 そして身内を亡くし、あるいは被害に遭った身内がいないことで苦しむ刑事たちの奮闘も切ないです。そして多くの死があったからこそ、これ以上誰にも死んでほしくないという彼らの思いに胸が締め付けられます。数多の苦しみや悲しみを描きながらも、しかし救いはあるのだと思いたい、そんな物語でした。

    2
    投稿日: 2025.06.29
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    直木賞候補作品の中で、 気になったので電子で読みました。 定期的に読まなくては、と思ってしまう 東日本大震災関連の本。 (綾瀬まる「やがて海へと届く」は 個人的にとても心に刺さりました) 生まれ持って不幸な人なんて、 いないと信じていたかったけど そんな彼が最後に見つけた答えと光。 バッドエンドだけどハッピーエンド。 それぞれが震災によって 抱えているものが丁寧に描かれていて どの登場人物にも感情移入できたし、 あの時の暗い影が漂う空気を 14年経った今でも思い出すことができました。

    8
    投稿日: 2025.06.27
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    いつしか亮に感情移入してしまい、このまま何とか逃げ延びてくれないかな、なんて思ってしまいました。追いかける刑事たちも人間味あふれて泣けました。

    34
    投稿日: 2025.06.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    久々の柚月さん作品。 震災の記憶がよみがえる描写が見事だと感じた。 真柴に救いがなさ過ぎて辛かった。でも救われない者はとことん救われないのもある意味ではリアルなのかもしれないと思った。

    1
    投稿日: 2025.06.26
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    ずっしりと心に響く作品。筋書きとしては、奇想天外のものでもなく、ありきたりのものだが、全体をブルーの空気が包みこむ。 生きている意味?どんなに頑張っても、間が悪い人?その中で、自分の人生に翻弄されてしまう。 東北の震災を絡めた作品だが、とてつもない傑作に仕上がった。

    9
    投稿日: 2025.06.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    不運と言えば不運の一言なのかもしれないけど、あまりにも不運で理不尽すぎて、なんかもう読んでてしんどくなった。本人は、「それを選んだのは自分」みたいにちょっと改心みたいになってたけど、いやそうか?そういうんじゃなくない?それ以前でしょ!?と腹が立ってきて、その仏みたいな人をこんな目にあわせて…と思わずにはいられない。しかしちっちゃい子がなついた理由は正直まったくわからなかったです。

    3
    投稿日: 2025.06.25
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    なんだかとても可哀想だった。親から愛されていないと思いながら生きていくのは、何よりも辛いはず。不運に不運が重なって、気の毒すぎる。刑事1人だけでも、彼の気持ちに気付いてあげることができたのは良かったが。この刑事も、またお気の毒なのだけれど、だからこそ余計に彼に寄り添えたのだと思う。

    74
    投稿日: 2025.06.24
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    震災を思い出して苦しくなる人もいるだろうな。 柚月さん自体も津波でご両親を亡くされているとのこと。 読み終えた後、エピローグに戻ってまた切なくなった。

    1
    投稿日: 2025.06.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    直木賞ノミネート。 映像化されそうな感じだなぁと思った。 大震災後の被災地が舞台。犯人は悪い先輩に唆されて行きたくもない飲み屋に行き、半グレと言い争いになる。ボコボコにされて逃げ帰って被災。その後、半グレの1人がナイフを持って襲いかかる。曰く、半グレ仲間がその抗争の治療で医者に行ってる時に被災して死んだらしい。言いがかりーと揉み合う中、半グレのナイフで半グレが死んじゃう。そして、生き別れの父から届いた手紙を胸に、その父に会うことを目指して北上する。 犯人は生まれた時に、父親が轢き逃げで逮捕されてる。犯人は祖父から飲んだくれで女たらしの親父だったと言われるが、真実は嫁と子供が命を落とすかもしれないと言われた出産に向かってる途中での轢き逃げで出頭している。子供と嫁に迷惑をかけないために離婚して関係を絶った。死の間際で、一目会いたいと手紙を書いた。 北上中に、老警官と会う。指名手配犯とバレて揉み合って、拳銃が暴発して警官は死ぬ。途中で子供を拾う。子供の母親は津波に流されて死ぬが、父親が必死にずっと探している。 犯人は北上し、追いかける警官は犯人の過去や目的地を調べる。やがて子供の知り合いに会って小学校の体育館で立て篭もる。警官は亡き父親の手紙を届けるなど心を揺さぶり、自首しようとしたところ、誤って銃口が人質の方を向き、射殺される。 もうこれ以上誰かが死ぬところを見たくない…という記述が震災の重さを感じた。また、自分の子供の死体を確認する無常感や、全員無事の人の疎外感など、えも言われぬ苦しさがある。

    2
    投稿日: 2025.06.20