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総合評価

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    装丁が写真から絵になってはいるが、話の組み立ては変わらずの乙川節とでもいうのかな。 得意の火灯し頃は一度きりだけだったけど、また十分にこの特異な文体で語られる男の物語に浸って時間が過ぎた…

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    投稿日: 2025.11.12
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    見事な文体。 そぎ落とされたというほどの厳しさは無く、ただ淡々と、しかし見事に推敲され抜いた事が判る文章。さらには時折「オッ」と思わせるような表現を交え、津々と物語が綴られて行く。読み応えがあります。 しかしね、どうも主人公が気に入らない。 資産家の一族に生まれ、愛人にポルシェをポンと買い与えるほどに不動産管理による所得がある。妻子ある作家でありながら、小説を書くという名目で塩尻の旅館にこもり、奈良井宿で木曽漆器の作家である若い愛人との逢瀬を楽しむ。どうもね、鼻持ちならない。 しかし、物語の最終盤に以下の様な文章がありました。 「小才の作家の業で、自身の経験をもとに物語を紡ぐと、豆腐一丁の値段も知らないくせにとのたまう人がいるが、豆腐はもとより特売のモヤシの値も彼は知っていた。それと夜の街で散財することや大事に思う人に車を買い与えることは別であるのに、卑屈な人はそこを読もうとしない。共感できることを期待して読み、共感できないことに失望する。そんな読書はなんの役にも立たないはずであるから、光岡は敢えてそういう人生もあるのだと書いてやるのだったが、金持ちの傲慢と読まれるのが落ちであった。」 見事なしっぺ返し。 先年旅行した塩尻や奈良井宿の風情を思い出しながらの読書でした。 (ちなみにポルシェはアウトバーンなどの高速ツアラーのイメージが強く、木曽路の様なワインディングロードを走る女性に買い与える車じゃない気がしますが)

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    投稿日: 2025.10.17
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    語彙が新鮮で勉強になる 主人公の中年男性、貸ビル業の実務を嫁さんにやってもらい、本人は片手間に執筆業でフラフラ生活。愛人にポルシェ買ってやるって良いご身分やなぁ。 でも不倫は駄目だよね

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    投稿日: 2025.01.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    資産家の男性が年下の漆工の女性と不倫して、それをお互いを高め合う関係?なのか分かりませんが、いいように捉えていて鼻持ちならぬストーリーでした。 二人展は本当に良い機会で、涼子は輪島の人とうまくいくなり、いかないにしても、帰国後は光岡と決別して職人の道を極めてほしいと思います。 生活のために漆工をしていた期間の援助を光岡にしてもらっていた恩はありますが、それは金持ちの道楽だと読者にはわかっているので万事OKです。 達也が海外出奔したのは、佳枝には少しかわいそうでしたが、正直グッジョブだと思いました。 とりあえず、事業でも出版ででもいいですが、舐めきっている光岡が汗をかく日が早く来ることを願います。 作風が変わったとは聞いていたものの「生きる」のような感動を少しでもあれば…と思って手に取り、思い切り裏切られた気持ちです。 途中で読むのをやめようと思いましたが、どこかで好転させてくれるのでは…と期待したまま終わりました。残念です。

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    投稿日: 2024.12.24
  • 遅れてきた飛翔と離愁の狭間で

    今作も期待を裏切らなかった。 何より会話がとてもいい。光岡と涼子だけでなく、"こしかけ"のママ寿美もそうだし、旅館の女中まで。口にする言葉の美しさもあるが、息のあったテンポが心地よい。 タイトルの「立秋」は暦の上では秋の始まりを意味するが、同時に極まった夏の暑さが徐々に弱まる残暑の始まりでもある。 いずれにしても豊穣の秋に向かう兆しとして、一方では異国の地での遅ればせの勇躍に胸はせる涼子の心模様と、急に近づいた離愁に戸惑いながら成りゆき任せの自らの人生帳簿を意識する光岡の覚悟を写した、見事なタイトルだと感じた。 輪島塗の工房を訪ねるシーンがあったり、テーマも奥深い漆工の世界だったので、時期も時期なのでてっきり能登半島地震も小説に出てくるのかと期待して読んだが、出てこなかった。 小説家といっても都内にいくつもマンションを所有し親の遺産で生活している光岡は、どこか『脊梁山脈』の主人公を連想させ、どうしてこの作家さんは高等遊民的人物を描くのが巧いんだろうとあらためて感心させられた。 「共感できることを期待して読み、共感できないことに失望する。そんな読書はなんの役にも立たない」という文中の言葉にひとりドキリとさせられた。

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    投稿日: 2024.11.16
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    乙川作品は海外文学のような佇まいと、洗練された文章が好きで欠かさず読んできたが、今回は私の心持ちがそうさせるのか、設定にも文体にも心を寄せられず冷めた思いで読む。 東京で不動産業を営み寡作の作家でもある男と、塩尻・奈良井の漆工の女の10年以上に及ぶ関係を描く作品。 男が女にポルシェを買い与えたり、諏訪の温泉宿に優雅に長逗留したりと、裕福な男の家庭をほっぽり出しての不倫関係に白ける。 小市民である読者のこんな感情は先刻承知で、そんな読者を断罪する言葉を男の言葉を借りて表現する。 作家のそんな有り様が気になり始めたら引き時かかもしれないなとしみじみ。

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    投稿日: 2024.10.24