
総合評価
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powered by ブクログ「文革を中国で乗り切った日本人の話」というだけで興味深い壮絶なドラマなのだが、それを挿話として、トヨタ社内の政治劇、中国の自動車産業の黎明期を描き切る本書は、筆力もテーマも圧巻だ。ページを捲る手が止まらない。一気に読み切った。しかし、どう表現して良いか迷い、中々レビューは書けなかった。 ー 服部が売ったエンジンを積んだ違法コピーの車は、売れに売れた。浙江省を中心に爆発的に売れたのだった。「そんなに売れたんですか?日本のパクリ自動車が」「セールスマンが良かったんだよ。なにせ今をときめく習近平だったんだから」 服部は笑った。李が吉利汽車を浙江省に起こしたのは1997年。その5年後、同省共産党委員会の書記となったのが、習近平だった。浙江省の実質的なトップになった習は、地元・浙江省発の自動車メーカーを手厚く保護し、育てた。 また、そこまで昔の話でもなく、手の届く範囲の話。その生々しさも臨場感を掻き立てる。 ー 服部は、生きることが当たり前ではなかった時代に、生き延びてきた人なのだ。初対面の時、服部は箸袋の裏側にこんな中国語を書いた。「好死不如懶活」。「児玉さん、これが中国人の本質だよ」 と言って、次のように解説してくれた。中国人はきれいに死ぬより、恥をかこうが辱めを受けようが、生きることを望む、と。服部はこの言葉に、自らの生き方を重ね合わせていたのかもしれない。温泉施設「ラクーア」にあるいつもの居酒屋だった。薄茶色の館内着からは、服部の両腕がのぞいていた。 好死不如懶活。ノンフィクションだが、小説としても、ビジネス書としても楽しめる。また、副作用として、久々にラクーアに行きたくなった。
70投稿日: 2025.08.01
powered by ブクログトヨトミの野望も面白かったですが、この本は実在の人物に話を聞いて書かれたノンフィクションなのでリアリティがあり、中国やトヨタの実状がわかり興味深かった。
6投稿日: 2025.06.25
powered by ブクログトヨタでの勤務よりも、中国での子供時代に体験した飢えと恐怖が惹かれる。 服部さんは、永遠に自分の部屋から望遠鏡を使って、トヨタの社長室を覗くのだ。
6投稿日: 2025.05.28
powered by ブクログ[図書館] 読了:2025/5/11 めちゃくちゃ面白かった。トヨタ歴代社長のルポも読んでみたい。 p.237 東北地方の雄である第一汽車の徐といい、中国経済の要である沿岸地域を牽引する広州汽車の張といい、服部はキーパーソンを抜け目なく押さえていった。こうした芸当ができたのは、服部の語学力はもちろんだが、中国社会を動かす原理を服部自身が皮膚感覚で知っていたこと、そしてそうした彼らと、ほぼ同時代的な体験を共有していたことが、大きかったのではないだろうか。 服部の人脈は、トヨタにとって途轍もなく貴重な財産だった。なぜなら、東京からやってくる駐在員が築こうとしても絶対に築けない人脈だったからだ。 →他社と比較しても、トヨタ内でも、代替不可能なとてつもない「優勢」な資源だったのだな…。しかしそれでも、当時のトヨタ本社からの評判は良くなかった(経歴が異端、会社に抵抗するため)というから、フィルタを外して資源を見抜くというのがいかに困難なことか、というのが分かる。 p. 243 豊田達郎社長以下、中国進出を任されていた副社長横井明、同じく副社長の高橋朗らの幹部が顔を揃えた。服部から、機械工業部幹部の発言、天津汽車の実情などについて、報告が行われた。服部は言葉の端々に、天津汽車はトヨタが組む相手にあらず、というニュアンスを込めた。それを聞いた社長豊田達郎の反応は意外なものだった。 「(天津の)事務所の費用は随分と高いな…」 出席者は顔を見合わせた。中国から来ていた服部ら中国事務所の面々も一様に怪訝そうな顔をした。それはそうだろう。悲願だった中国進出の是非を問う重大な会議にあたり、社長がまず問題にしたのが、新たに開設された事務所の費用なのだから。 中国事務所の面々の、困った様子に助け舟を出したのが高橋だった。 「社長、今の中国は何でも高いんですよ」 「そうなのか…」 達郎はつまらなそうに答えると、天津汽車との合弁の是非を問う資料に目を落としてペラペラと捲り、 「横井君、これよろしく頼むよ」 と言って、横井に資料をホイと手渡すのだった。中国に進出したいと言いながら、まるで他人任せのような態度に、服部は驚いた。 「豊田の家は、天皇家みたいだ」と。 →トヨタほどの規模と品質の会社でも、最上位の意思決定でこんなことがあるんだ…とやたら印象に残った場面。 p. 253 (プリウス開発の2年前倒しを決めた奥田に現場技術者から異論が出た時) 「君らはいつもそうじゃないか。排ガスでホンダに負けたときだって、そうじゃないか」 (1970年の排ガス規制法をクリアするエンジンをトヨタは開発できず、“バイク屋”と見下していたホンダが世界でただ1社成功した。トヨタはホンダに莫大な金を積んで技術供与の契約を結ぶしかなかった) 奥田の前に居並ぶ役員たちは皆、その当時それぞれの現場でその屈辱を味わった面々だった。奥田から“屈辱の歴史”を持ち出された技術陣は黙るしかなかった。 奥田は現場に発破をかけ、開発を急がせた。言葉で圧力をかけるだけではなく、現場に何度も足を運んだ。開発幹部の誕生日には花を贈り、現場の技術者と車座になって酒を飲むこともあった。そうしたときはウイスキーといわず、飛び切りの酒を用意した。こうして奥田は、今までのトヨタの社長が見せたこともない行動で現場の心を掴み、やる気を起こさせた。 p. 269 「服部さんにすべて任せる」 上司であるアジア本部長の章男は、父章一郎から言われていたように服部に信頼を置き、できうる限りの裁量を与えた。章男自身が差配するには、あまりに中国のことがわかっていなかった。 p. 271 また服部の提案は、徐の政治的思惑にも合致するものだった。WTO加盟によって、自動車業界も淘汰が必然と思われていた。そうした状況下にあって、天津汽車の2000億円もの負債処理には、国のメンツがかかっていた。そこで、倒産ではなく第一汽車との合併という体裁が取れれば、国の傷は最小になり、自動車産業を抱える“機械工業閥”も傷口を広げずに済む。 →相手の利になることが何かを読む。それまでに相手を知らなければできないこと。知るために服部氏は会食や会談を重ねていた。 p. 278 (2002年8月)第一汽車とトヨタの合弁に先立ち、同様に重要な合弁事業が実現していた。(中略)四川トヨタを第一汽車に身売りする、この構想も服部が描いたものだった。広州自動車の張が指摘した「トヨタは四川とも合弁をやっている」という危惧に対して、「大丈夫だ」と服部が太鼓判を押したのは、こうした背景があったからだ。 (中略)2004年には満を持して広州汽車との合弁を実現し「広汽トヨタエンジン」、「広州トヨタ」を相次いで誕生させる。これでトヨタは、南の大経済圏に大きな橋頭堡を築くことになった。これも、四川トヨタを第一汽車にいち早く身売りしていなければ、“2社ルール”に抵触し、実現できなかった計画だった。そこまで見通していた、服部の功績は計り知れない。 p. 281 服部が描いた秘策ーー第一汽車による天津汽車買収、四川トヨタの第一汽車への身売り、そして広州汽車との合弁設立、この3点セットが成功したからこそ、トヨタは反転攻勢に出ることができたのだ。服部というまれに見る戦略家なくして、トヨタの中国市場での成功はあり得ず、豊田家の血の継承もなかったかも知れない。 p. 289 (章男氏から突然のリタイア勧告「もう何もやらんでいいですよ。僕がいる限り役員待遇ですから」、人生の最後は中国で終えようと中国に帰化しようとしたが)結局、北京市からその認可は下りなかった。市民になる場合、所属する団体からの推薦などが必要だったが、トヨタの中国事務所は、頑として服部に協力しようとしなかった。筆者が当時の話を聞いたあるOBは、「絶対に協力したくなかった」と、吐き捨てるように言った。 →、「トヨタでは粛々と仕事をする人間がよいとされる。「俺がやった」と公言して憚らない服部氏への怨嗟の思いはトヨタの中国事務所に充満していた。服部に対する嫉妬も凄まじかった。」と、トヨタの謙譲の美徳と服部氏の中国的価値観の相容れなさが理由と書かれているが、推察だが、「人にかわいがってもらうことはできるが、人をかわいがることは出来ない」人だったんじゃないだろうか。それも厳し過ぎる生い立ちによるのだろうけれど…。 あと、トヨタの中国進出の立役者たち(第一汽車の董事長、広州トヨタの代表董事長)の「腐敗」による逮捕が相次ぎ、服部氏が連座して逮捕されるようなことがあればトヨタの歴史に汚点を残すことになり、服部氏が中国に残るという選択それ自体が、トヨタにとって大きなリスクに他ならなかったという理由もあるようだ。 p. 302 (中国トヨタOB会の挨拶にて)「第一汽車、広州汽車と、僕が合弁をやったけれど、果たしてそれで皆さんが幸福になったか、不幸になったかはわこりません。でもね」服部はここで言葉を切り、息を溜めた。 「だけどね、トヨタという会社は幸せになったこれだけは間違いない。僕らが苦しめられていた、天津汽車との関係を終わらせて、第一汽車、広州汽車と組んで、間違いなくトヨタは幸せになった」 そして悪戯っ子のような表情を浮かべ、こんな言葉を投げかけて挨拶を終えた。「皆さん、幸せになりましたか?僕はそうでもないです。こんなもんです」 →会社のために、人生をかけているであろう人たちの顔が何人か浮かんだ、印象的な場面だった。
1投稿日: 2025.05.11
powered by ブクログ題名が宜しくないと思います。トヨタ中国の設立と事業を軌道に乗せるのに多大な貢献をしたが役員にはなれなかったのはおそらく自己主張が過ぎたのかもしれません。生い立ちから大陸で育った人は日本の会社でやっていくのは難しいのかもしれません。内容的には終戦後にそのまま大陸に残った日本人一家がいた事と文化大革命中の生々しい部分が非常に興味深い記述でした。
1投稿日: 2025.04.01
powered by ブクログめちゃくちゃ面白くて一気に読破。 前半は中国での主人公(?)の過酷な生活、やはり毛沢東時代の中国は狂ってると思ってしまう。 直前に百田尚樹の中国史の本で共産党の蛮行に関する記載を読んで、これマジ?って思っていたけど、図らずも答え合わせができてしまった感。 ゲームの王国のポルポトの恐ろしさが記憶に残ってるけど、やはり行き過ぎた社会主義はとんでもない。 後半はそんな経験をした主人公が、出遅れた中国市場の中でトヨタを建て直していく話。 全体通してかなり生々しい記載があり、臨場感がすごい。歴史+ビジネスの勉強になるし、トヨタ系民は必読
1投稿日: 2025.03.28
powered by ブクログ優良会社トヨタでも、生きてくには、やはり組織を泳ぐ知恵が必要なんだと分かった。 中国の大躍進運動と文革の説明は少し長過ぎるのでは?
0投稿日: 2025.02.16中国共産党というシワ
経済雑誌の内幕レポートとしては面白いが、評伝ノンフィクションとしては物足りなさが残る。 インタビュー中に何度も繰り返される、「児玉さん」との呼びかけ。 穿った見方をすると本書は、服部が社内で陰口を叩かれ、トヨタ公式記録からも消されつつある自身の功績に、光を当てさせるために書かせた自伝本のようにも見えてくる。 人物像へのアプローチは不完全で、中国での辛苦を極めた生活の実態はくわしいが、日本での私生活はベールに包まれたまま。 相手が語りたいこと、気持ち良く喋ってくれることだけを聞きとって、穿れば血が流れ出すような箇所は慎重に避けている。 それに「低迷していたトヨタの中国市場を大転換させた立役者」とか、「豊田家の御曹司、豊田章男を社長にした男」という評価も、両手を挙げては首肯し難い点もある。 確かに起死回生の買収・合併劇の絵図を描いて実現させた戦略はたいしたものだと思えるが、中国のWTO加盟による自動車産業の危機という追い風がなければ、あり得ない功績でもあった。 どんなにネイティブの会話ができ、中国流の商談が巧みでも、この風が吹かなければ、袋小路の状況の打開もできなかったはずだ。 それより興味深いのは、トヨタが中国市場で出遅れた理由の方だろう。 改革開放政策前からあれだけコミットしていたのに、ドイツなど他社の外国企業に遅れをとってしまった。 市場に残っていたのは部品供給会社としての役割だけで、手を組んだ会社も2000億円の不良債権を抱える破綻企業。 80年代から90年代は、米国市場対策でリソースを割かれたためだとの言い訳も出てくるが、それだけではきっとないだろう。 「中国人には買えないだろ」というより、「トヨタ生産方式を中国に根付かせるのは無理だ」との諦めがあったのではないか。 中国人は綺麗に死ぬよりも、惨めに生きたほうがマシと考える。 日本人とは真逆。 心の底では共産主義を嫌っていても、生き残るためにはどんな酷い帝王でも従う。 這いつくばってでも生きようとするのが中国人だと語る服部。 毛沢東が大号令をかけ始まった大躍進運動とその後の文化大革命を当事者として生きた日本人。 人類史に残るほどの餓死者を出した狂気と茶番の時代を、「日本鬼子」と差別され続け、中国時代は思い出したくもないと唾棄するほど嫌い抜いているのに、自分が知らず知らず彼らのように行動してしまっていることに気づき愕然とする。 「洗脳教育は、脳みそに中国共産党というシワを刻み込むようなものだった」と語るほど、自分の行動様式に染み付いてしまっていた。 他と交わらず、自分のみを恃みとし、夜な夜な政府高官や幹部を接待するだけでなく、他メーカーとも平気で情報高官を交わした。 陰口を叩かれる服部のやり口は、起死回生の秘策を成就する力ともなったが、習近平による汚職撲滅政策により、終の住処としようとした中国からも追い出される遠因ともなった。
0投稿日: 2025.02.06
powered by ブクログ前半は山崎豊子の『大地の子』とか最近の『三体』を彷彿とさせるような大躍進政策とか文化革命の暗い記憶が語られて、後半は豊田章夫会長が中国駐在してた時代の中国事務所総代表として、出遅れていた中国の事業展開をウルトラCの奇策で推し進めていった経緯が詳細に語られる。 そんな奇策を成し遂げられる胆力はやっぱりくぐってきた修羅場が異次元だからなのだろう。やっぱりぬるい環境に身をおいてたらそれなりのレベルまでしか成長できないんだなと思った。 そんな今の中国におけるトヨタの地位を築いた立役者でも役員にはなれなかったのかと今でも悔やむ服部氏には同情の念が沸く。
0投稿日: 2024.10.22
powered by ブクログ毛沢東の実態 真の共産党とは? 大躍進政策 赤衛兵の実態を学ぶ事が出来た また服部さんの壮絶な人生 飢餓と戦う?我々には想像すら出来ない事象を生き抜いた人 豊田章男を社頭にした人物でも本社の役員にはなれない 感慨深いノンフィクション作品に触れられた 児玉博さんの「テヘラン〜」も勢いで買ってしまいました
0投稿日: 2024.08.30
powered by ブクログトヨタが苦戦していた当時の中国進出の状況と、そこでのキーマンである服部さんの活躍がよく分かる。奥田さんや章一郎さんの思惑、章男さんの置かれた立場なども興味深く、一気に読めた。 また、服部さんが体験した中国近代史が詳しく書かれているので、当時の厳しい状況が実感を伴って理解できる。隣国中国に興味があればおすすめです。
2投稿日: 2024.08.18
powered by ブクログトヨタの中国での苦労、何より共産党時代の中国の大変さを読んでいて深く感じた。このような人の仕事の迫力はすごいのだろうと思う一冊でした。中国の凄さを感じた一冊。
0投稿日: 2024.08.16
powered by ブクログp35 奥田の祖父と父は三重県最大の証券会社、奥田証券を経営 トヨトミの野望 p82 荊州では、唐代に科挙に合格するものは全く出ず、それ故不毛の地、すなわち天荒と呼ばれていた。ところがその天荒の地で劉ぜいというものが初めて科挙に合格。かくして天荒の地は破られた。この故事から生まれた言葉が、破天荒だ。 p113 好死不如赖活 好死は悪活に如かず 中国人はきれいに死ぬよりも、惨めに生きたほうがまし p172 帰国した服部を向かい合った次席事務官は、加藤紘一 p270 中国は国策として、外資は中国の自動車メーカ二社としか合弁事業を組むことができない トヨタの合弁会社のひとつが、粗悪な小型車しか生産できず、2000億もの赤字を抱えた天津汽車、もう1社は四川旅行車(商用車) p276 第一汽車に、天津汽車を買収させる それによりトヨタのフルラインナップでの乗用車生産への道がひらかれた by 服部悦男 当時の中国責任者 豊田章男 補佐 服部悦男
0投稿日: 2024.06.27
powered by ブクログトヨタ中国の怪物と言われた服部氏の壮絶な人生の物語と中国の共産党と自動車産業の歩み及びトヨタという巨大企業の闇が交錯しとても読み応えのある作品に仕上がっていました。
1投稿日: 2024.06.06
powered by ブクログ配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。 https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=10277432
0投稿日: 2024.06.05
powered by ブクログ面白い 世界の自動車メーカー トヨタ その世界戦略の中で重要な中国 低迷していた中国でのトヨタを トップに押し上げたのは 27年間中国で育ち 小鬼と蔑まれ 文革も経験し 厳寒の中労働し生き延びた男 服部 トヨタに中途採用から入社し 奥田という トヨタでは異才の上司に 見出され 才覚を現し中国でのてトヨタの礎を 造り そして創業家の章男を社長にした男と 言われる しかしその辣腕から 会社からは浮いた存在に 会長から感謝され伝えられた役員にも 遇されず 自家用ジェットも届かなかった しかしトヨタの中にも 社長のポストに実力で異義を唱える などした人物もいたんだ これからこのマンモス企業が どうなるのか面白い 久しぶりに読み応えのある本だった
0投稿日: 2024.05.24
powered by ブクログ章男会長が社長の頃からトヨタイムズを見たり、豊田章男の本を読んだりしていた。章男会長は親の七光りに見られがちだが、私は章男会長は意外と苦労人だと思っていて、そんなところに惹かれた。本書はそんな「豊田章男を社長にした男」というサブタイトルがついていたので読みたくなり買った。 ところが豊田章男が社長になっていく過程が描かれているわけではなく、そのタイトル通り豊田章男を社長にした「人」の話(そらそうか。。。) でも面白かった。あれだけトヨタイムズを観ているのに服部悦雄という方のことを知らなかった。なんと壮絶な生い立ちを経て来られた方なんでしょう。。。 本書の半分くらいは、戦中〜戦後にかけての中国共産党支配下での人々の暮らしの話。それが惨過ぎて途中読むのがつらかった。驚くことと言えば、殺戮された、傷つけられた、強制労働させられた、人達のその数の多さだ。全ての単位が◯千万人。あり得ない。しかも笑けてくるほどに信じられない中国共産党のとんでもない政策のオンパレード。よくもまあそんな子供騙しのような政策を掲げて人々を振り回すことができるなあ!と読んでて「怒り」さえ覚えてきた。 そんな惨い時代を27歳まで中国で過ごしてきて、トヨタの経営陣まで上り詰めた服部悦雄という人物のお話。面白くない訳がない。しかもドキュメントなのだが書かれているタッチが軽いタッチなのか重たくなく小説を読んでるみたいで読みやすかった。そしてなぜだか爽やかな読了感でした。
15投稿日: 2024.05.17
powered by ブクログこんな背景があったとは知らなかった。リアルだから、大変興味深く読めた。やっぱり血筋は守る民族なんですね。五兆円の利益を上げる企業はもう公でしょう。 馬鹿では勤まらないよね。 しかし服部さんはスゴイ人間だ。ここまでの生きる事&這い上がる野心があるのが素晴らしい。ひとは生きる環境で変化し、やり切るパワーが生みでるんですね。 中国
2投稿日: 2024.05.15
powered by ブクログこれは面白い! 途中、満州建国あたりからの中国の近代史に相当なページが割かれていて、なるほどと思わせる内容でした。 ググってみた限りでは主人公の「服部悦雄」なる人のwikiページがなさそうで、現在存命なのかどうかもわからず。。 いずれにしても、この本がすべて実名で登場のノンフィクションである以上、トヨタの中国進出の立役者であることは間違いなく、恐らくこの本を読むであろうトヨタ幹部/社員の人たちはどう感じるのだろうか。往々にしてこの手の暴露(?)本は関係者が世を去ってから出そうなものだが、この内容はここ30年ほどのかなり最近な話であることもあり。
1投稿日: 2024.05.01
powered by ブクログ中国で終戦を迎え大躍進政策や文化大革命を生き抜き、トヨタ中国の総責任者まで努めた服部氏のインタービューを基にしたドキュメンタリー。氏の生い立ちたどる中で、インタービューで引き出される凄惨な実体験の数々。中国の近代史のリアルで非情な実態が炙り出されている。中国建国の英雄とされている毛沢東は日本の歴史の教科書でもそのような紹介がされているが実態は大躍進政策や文化大革命といった失政によって1億人近い人民を死に追いやった虐殺者でもある。全土で雀を徹底的に駆除する事を推奨された結果、害虫が発生して作物が育たなくなり飢饉が発生し4〜7千万人もの餓死者を生んだといあれているが、同じ事を書いた体験談が、評論家の石平氏の半生記でも記述されていて、それが偽りのない話であるという事が改めて思い知らされた。 冒頭に「日本人は中国人を分かっていない、本質をみていない」と言って服部が割り箸の袋の裏に書き留めて著者に見せた文字。 「好 死 不 如 櫑 活」hao si bu ru lai buo 「きれいに死ぬよりも惨めに生きたほうがまし」 これが中国人の本質だという。桜が散るみたいに潔く死ぬなんて、中国人は考えないと。かつて高杉晋作が上海を訪れた際に、列強に食い物にされていた中国を見て驚きを受けたエピーソードは歴史に記されているが、期せずして先週読んだ寺島実郎氏の「二十世紀と格闘した先人たち」の中で、高杉が「なぜ、戦わないのだ?」と町中の中国人に聞いて回った話が書かれていたのを思い出した。国がどうなろうと、死ぬよりはマシだということなのだろう。この言葉を知れただけでも、本書を読んだ価値があったと思う。
0投稿日: 2024.04.28
powered by ブクログ好 死 不 如 懶 活 hao si bu ru lai huo きれいに死ぬよりも、惨めに生きたほうがまし
1投稿日: 2024.03.20
powered by ブクログ「トヨタ 最大の秘密を知る男の『告白』」という帯のついたトヨタの中国進出の立役者、服部悦雄氏についての1冊。本好きの先輩からお借りして、ほぼ一気読みで読了しました。 なかなかイカツい表紙で、豊田章男さんの表情もなんか怖い(笑 これはオススメされなかったら読まなかったなぁ。(しかし、豊田章男さんと奥田碩さんが並ぶ表紙というのも味わい深いし、この3人の位置関係もなかなかですね) 本著、4割くらいはトヨタとは関係のない、服部氏の戦後中国での生い立ちが語られるのですが、強烈な印象を残すのはむしろこっちだなぁと。 「あまり話したくないんだ」と服部氏が著者に言いながら、それでも著者が引き出した(と思われる)大躍進政策に文化大革命。後者は『三体』でもその異常さが描写されていましたが、本著の切り口でもやっぱり凄まじい。政治で人は死ぬんだなぁ。 しかも、服部氏はそこに「悪質分子」とされる日本人として生きてきたというドのつくアウェー。。 「日本人は中国人をわかってないんだよ」という服部氏のセリフ。本著を読むと腑に落ちます。 トヨタに入って奥田碩さんと出会ってからの服部氏は、中国を中心に活躍し、特に豊田章男さんの下では異世界転生小説バリの無双をしていくのですが、辛い若き日とのコントラストがより際立つようにも感じました。 しかしこれだけの大仕事を成し遂げながら、最終章で「中国人になりきれない中国人で、日本人になりきれない日本人」と自らを評する服部氏。切ないなぁ。。 本著、インタビューと回想、史実の記述を上手く組み合わせて飽きさせない、魅せる1冊でした。 著者の「主な著書」で紹介されているものだけでも興味ある人物が複数挙げられていて、この筆致で読めるならぜひ読んでみようと思いました。本著内でも、さりげなく著者の別作品の紹介がされているのが上手いなぁと(笑
12投稿日: 2024.03.13
powered by ブクログ「中国」について書かれたものは三国志以来。 それくらい無縁でしたが、身近なトヨタの話と相まって、とても面白く読めました。 文末の参考書籍についても機会があれば読んでみたいと思いました。
0投稿日: 2024.03.02
powered by ブクログこれは面白い。 トヨタ自動車の中国市場を取り巻く歴史とそこに関わる歴代の社長陣を、服部悦雄という中国育ちの日本人で中国トヨタの立役者となった人物への対話から描いている。 ストーリー展開が秀逸で、あっという間に読み終えてしまった。 服部さんの生い立ちにも関わる、かつ、中国市場を語る上で欠かせないポイントが多いため、本の前半は満洲国解散〜近代における激動の中国近代史が記載されている。 その中で、中国人はどんな思いでどんな生活をしていたのかを服部さんが見た世界も含め記載されている。 何度も中国史は読んで来たがこんなにわかりやすく、イメージしやすく理解できるものは初めてだった。 後半ではトヨタ自動車の中での出来事が記載されている。 以前中国で働いていた経験からも、中国でのビジネスや中国人らしさというものには思い当たることが多かったが、特に服部さんが中国人らしいとして周囲の日本人から敬遠されるシーンもありありとイメージがわいた。 本書の中でも紹介されていたが、トヨタ自動車をモデルにしたトヨトミシリーズと、本書の作者である児玉さんが書かれている テヘランから来た男 西田厚聰と東芝壊滅も読んでみようと思う
2投稿日: 2024.02.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
これは面白いです! 自動車版『大地の子』で、タイトルとしては「中国の近現代史と自動車産業」のほうが正確かと思います(これだと売れないと思いますが…)。 中国で生まれ育った服部悦雄という元・トヨタ中国事務所総代表のインタビュー録です。「服部悦雄」は、『トヨトミの野望』では「八田高雄」で登場しますが、その『トヨトミの野望』も織り交ぜながら展開します。但し、こちらの本では全て実名。氏の経歴に合わせて、満州国解散から習近平時代までが描かれ、これを読むだけで中国の近現代史がわかります。 氏は、中国人の本質は「好死不如懶活(きれいに死ぬより、惨めに生きたほうがまし)」と言い切ります。毛沢東の大躍進運動(「雀撲滅運動」は初めて知りました)や文革、天安門事件など、マクロ面のみならず、この「本質」を裏付ける庶民の生きざまも描かれ、自動車事業に関係なくとも読める内容です。 児玉博氏は、かつて故・西田厚聰氏とのインタビューによる『テヘランから来た男-西田厚聰と東芝崩壊』を上梓していていますが、どちらもストーリー展開が秀逸。今回も一気読みコースでした。 実は、以前、トヨタが天津に進出する際に、天津汽車(後に第一汽車に買収)と部品合弁会社設立の交渉を担当しました。この本にある通り本当に大変で(一冊の本が書けると思った)、かつての体験を思い出し、ドキドキしながらページをめくりました。それ故とも言えますが、面白さは太鼓判の一冊です。
1投稿日: 2024.02.12
powered by ブクログ【豊田章男と奥田碩。側近が明かすトヨタ世襲の暗闘】豊田章男に与えられた社長への試練。絶体絶命の中国ですがったのは、トヨタ社内で「バケモノ」と呼ばれる、中国育ちの日本人だった。
0投稿日: 2024.01.11
