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いい子のあくび
いい子のあくび
高瀬隼子/集英社
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総合評価

355件)
3.8
76
134
88
27
2
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    「スマホを見ながら歩いている人は存在しないっていうことにした──」 自分を取り巻くすべて、そして自分自身に辟易していた直子は、ある日、破滅願望とも言える行動に出る──。 これは、閉塞された社会、抑圧された日常を生きる女性が登場する3つの短編集。 彼女たちは現代社会を生きるわたし、あるいはあなたなのかもしれない。

    0
    投稿日: 2025.12.27
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    『いい子のあくび』相手が避けるだろうという考えのもと、スマホを見ながら歩いてくる相手に、「よけないでぶつかる」ことを、している主人公。なぜなら、自分がもし長身の男性だったら、相手は避けるに違いなく、自分は見くびられている、そのことに、非常な怒りを感じているから。子供のころから「いい子」に見られていた主人公は、恋人、大学時代からの友人、かつての同僚、親し気にしてくる上司と、それぞれに違った自分で接していて、そのことを内心でディスっている。たとえば上司桐谷さんに、取引先との飲み会に女性がいないからという理由で呼ばれ、愛想よく行きますと答えながら、「桐谷さんが不幸になりますように、と息をするように思う」。彼女が我慢ならないのは、「割に合わないこと」。自分だけ、避けたり、気を遣わせられたり、順番を抜かされることが、許せない。それが徹底しているからか、恋人がセックスを求めることについて、「自分も嫌いじゃない。あげられるものがあって良かった」なんて、思う。 『お供え』同僚がデスクに置いた創業者のフィギュアを嫌う後輩女子。そのフィギュアに菓子を供え、祈ると願いが叶うらしいという噂をするその後輩女子が、主人公は嫌い。 『末長い幸せ』年二回、帰省した時に必ず高校時代の友人二人と会い、そのことを楽しみにしている35歳女。うちの一人が結婚することになり、式への出席を求められるが、結婚式が嫌いだからと断る。が、彼女の幸せを願いたい主人公は、当日、そのホテルに宿泊して、遠くから眺めている。 この世はたしかに、アンフェアなことで満ちている。そして割を食っているのは、だいたい、弱く、声を上げられない、女。『いい子のあくび』はそれに対抗する女の話で、少々行き過ぎかもと思うこともあるが、気持ちはわからないでもない。主人公も痛い目に遭う。こんなに自分に気を遣わせるな、と思っているが、信念は曲げられない。

    0
    投稿日: 2025.12.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2025/12/18 一気読み 怖くなった あまり共感できず、読了感は良くなかった みんな実際には心の中でこんなふうに考えているの?!と怖くなった。が、これは日常でふと感じる違和感や嫌な言葉を集約したようなものだから、怖がりすぎなくて良いのかもしれない。 でも歩きスマホをして全く避ける気配のない人がいたら、(私が避けなかったらどうするの?)って思っているかもな〜笑 高瀬さんの言語化が的確すぎてそんな嫌なことを考えている自分に気が付きたくなかっただけなのかも。

    0
    投稿日: 2025.12.18
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    芥川賞作品『おいしい~』はかなり好きでした。著者作品を読んだのは、二回目。 今回はそれほどハマらず。 やはり『おいしい~』の方が、女がよくわからなくて怖かったのかな。 高瀬さんがインタビューで「違和感があることを書き留めている」と語っていた記憶が。 三つ目の短編『末永く幸せ』は、まさに普通は違和感感じないところを違和感感じてしまう話かもな。 でも高瀬さん、疲れないかな。 ルシア•ベルリンの小説に 「あなたはどこにいても、誰にでも、何にでも、醜さと悪を見出した。狂っていたのか、それとも見えすぎていたのか?」 という一節があるが、そんな感じ。 でも、自分も見えすぎる派な気がするから、わかるけど。 わかるけど。 ちなみに歩きスマホはやらないタイプです。

    16
    投稿日: 2025.12.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    歩きスマホ。 やっちゃうなぁ。私も。 だめだけど。 でもそれにこんな風に不快感を持つ価値観の人がいる。 こわい。 高瀬さんは人間が怖いと思わせる天才。 自分も歩きスマホをするのに自分が理不尽を押し付けられるのは許せないのが人間の性で。 私も歩きスマホしている人がぶつかってきたら。 道路に押したくなる気持ちがいつか芽生えるかも。。 自分のこの思考回路を植え付けられたような気持ちになる。 読むのが楽しかった。 嫌な気持ちになりたいときにもう一度再読しよう。

    1
    投稿日: 2025.12.10
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    主人公の頭の中に溢れる汚い言葉には共感できなかったけれど、「割に合わない」は私が幼少期から感じていた気持ちを代弁してくれる表現で、非常に共感できた。 私も気付かない側の人間になってみたいな。それかなんの罪悪感も感じず気付いていないふりができる人になれたら。

    1
    投稿日: 2025.12.06
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    自分の中にある本音の部分がよく表現されていて「わかる〜」と思いながら読みました。 「いい子のあくび」のぶつかったるっていう表現もぶつかると痛いけど、なんで自分が避けなくちゃいけないの?っていう自分のなかにあるちょっとした不満が共感できました。 ほかの2つの話も含めて、自分のなかのちょっとした悪の部分がよく表現されているなぁと思いました。

    11
    投稿日: 2025.12.06
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    自分の今の気分とマッチしなかっただけかもしれないけど、うんうんわかる〜がごく一部、あとは何それこわくない?なんで?の繰り返し。読む前より心が疲れてしまった。

    1
    投稿日: 2025.12.04
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    人によっては、捻くれて意地悪で冷たい主人公たちに思えたかもしれないけれど、私の中にも同じような、人には曝け出せない暗い感情が芽生えることがあるので、この感覚分かる、知ってる、思い当たる、でもそんな気持ち話せないと思ってたから、安心したというかそう思って良いんだとほっとした。悪態たっぷりで思わずふ、と笑ってしまう時もあった。終わり方も好きだった。特に二つ目、Aがあれを見たら腰抜かして震えるに違いないと思うとゾッとしたし秀逸な仕返しだと思った。生きづらさや閉塞感、人に言えない感情を抱えてる方におすすめです。いい子のあくび/お供え/末永い幸せ

    1
    投稿日: 2025.11.22
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    〇〇したいからしている、のか〇〇してる自分でいなければならないからしている なのか分からない自分への嫌悪感が呼び起こされて気分悪い笑でもこういう歪な部分を書き起こしている作品程刺さる、、、

    1
    投稿日: 2025.11.16
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    いろんな考え方をする人がいるんだな〜 主人公は考えすぎで、生きづらそうだと思った。 周りにいたらちょっとイヤかも 「いい子のあくび」の主人公が大地や圭さんや望海に見せる顔が違うように、私もその場に一緒にいる人の考えに寄せた事を言ってしまう癖があるから、とても共感できた。 どれも本心で、どれも嘘じゃない。

    1
    投稿日: 2025.11.13
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    読んでいて、「うんうん、分かる」と大共感するところがあった。言葉にしたら引かれそうなことが、容赦なく表現されていて気持ちがいい。

    2
    投稿日: 2025.11.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ◾️record memo 駅や街中で人にぶつかられることがあると話した時、大地は信じられないという顔をして、実際に疑っているような声色で「おれ、ぶつかられたことないよ」と言った。何言っているんだろうこの人、と思った。大地は中学から大学卒業までバレーボールをしていたという。百八十センチ以上ある身長、腕にも足にも筋肉がそれと見てわかるようについている体。そんなものに誰もぶつかりに行くわけがない。と、そこまで考えて、なんだわたしやっぱりこいつならいいやって選別されてぶつかられてたんだな、と今更のように気付いたのだった。分かっていたけど、分かっていないことにしていたような。それで、わたしもよけるのを止めにした。よけない人のぶんをよけないことにした。 そう決めた日、大地のマンションからの帰り道で、初めて人にぶつかった。それはやっぱり駅でのことだった。東京では、駅に近づけば近づくほど人が人に憎しみを持ち、怪我をさせても不快にさせてもいい、むしろそうしたい、と思うようになる不思議がある。同じ人混みでも、混雑した店の中や祭り会場とは違う。駅の人混みだけが、人の悪意を表出させる。強制させられているからかもしれない。みんな、どこにも行きたくないのに、どこかに行かされている。 「おれ、ぶつかられたことないよ」という大地のことばを思い出した。ここに立っているのが大地だったら、あの男の人は視線をあげて歩くだろうと思った。壁みたいに大きな体の男が前にいたら、すれ違うまでは前を見るんだろうと。 ぶつかったる。 頭に浮かんだことばに、意識も体も引っ張られるように前を向いたまま、ただまっすぐ歩いた。スマートフォンを見ながら歩いている人は、存在しないっていうことにした。わたしの前には誰も人がいない。道に自分しかいない時に歩くスピードと歩幅で、まっすぐ歩いた。そうしたらぶつかった。男は驚いたみたいだった。えっ、とも、ちっ、とも聞こえる小さな声をあげて、でも何も言わずそのまま進んでいった。立ち止まって振り返ってみたけど、男の方は振り返らなかった。階段を下りて行く。姿が見えなくなる。 ぶつかった時に当たった左の二の腕が痛かったけど、五分もすれば消える程度のほのかな痛みだった。痕も残らない。残るのは、ああこれだったんだ、っていう納得。間違わなかった、正しいことをした、社会がどうとかではなく、わたしがわたしのために正しいことをした、と思った。 よけてあげなかったから、結果としてぶつかった。よけてあげる。スマートフォンに顔面から吸い込まれていたあの中学生に、わたしが何かしてあげるのは、なんか、おかしい。だからよけなくて良かった。怪我をしてでも、あの子のためにわたしが何かしてあげたりしなくて良かった。 さっと振り返るとレジのそばに男の人が立って、おばさんに何かを注意していた。名札は見えないけど「次は気を付けてくださいね」の言い方に店長か何かかな、と思う。十歳は若いであろう男の人に、はい、すみません、と答えるおばさんの声が本当に申し訳なさそうな響きを持っていて、うわべだけじゃなく感情を滲ませた声の使い方に、この人の立場の弱さを感じた。 どうしてこんなことをするのか理解できないのに、結婚してもいいんだろうか。祖母にぶたれて赤くなった母の腕を忘れない。同時に、ここで思い出すべきは祖母の暴力ではなく、腕を振り上げた祖母を目の前にして微動だにしなかった父だろう、と思う。思ってから、ぱっと浮かんだ母の腕の映像の隅に、取って付けたように父を登場させる。無理やり浮かばせた父の形はぼやけている。結婚したいなと大地は言ったけど、実はそれだって理解できてない。よくわたしと結婚しようなんて考えるな、と冷めてしまう。 大地といると、損得勘定ばかりしてしまう自分が卑しく感じる時があるけど、一方でこの人はこんなに与え続けても涸れないくらい、持っているし、人から与えられもするんだな、と白けた気持ちにもなる。お金がないと生活していけないのと同じように、優しくしたくたって与えられるエネルギーを持っていないと施せない。優しさが、そんなにたくさんあるなら、すこしくらいもらってもいいよね。世の中の大変なことはお互いさま、と言うなら、わたしがつらい目にあったぶん、大地に優しくされてとんとんだ。割に合わせるにはそうするしかない。 マスクの中で自分の吐いた息を吸う。他人がこんなに近い空間に押し込められて、マスクもしないでいられる人がいるなんて信じられない。 何かが肩に当たり、そのまま置かれる。目だけで振り返る。後ろに立つ若い男のスマートフォンがこつんと肩に載せられている。肩をゆすると、一瞬離れて、また置かれる。咳払いをしても無駄。ねえそれ、そんなに重たい? 人と人とがすれ違う時に、前を向いて歩いていたらお互いにちょっとずつ左右によける。自分のぶんと相手のぶんのスペースが平等になるようにする。駅だけでなく街中にながら歩きをしている人はいる。みんな、自分のぶんを誰かが代わってくれるから大丈夫だと思っている。わたしも誰かのぶんを担ってきたなあと、さっきよけた二人の男のことを考える。おそらく二度と会うことのない人。その人たちのぶんをわたしが担ったこと。これは忘れてはいけないな、忘れてはいけない、と口の中でつぶやく。手帳を取り出したかったけど、職場に着いてからにしようと思う。息が苦しくなって、マスクを外す。 忘れない、と思う。わたしは絶対に忘れない。それがあったことも、その時に発生した怒りも不快も、時間が経ったからって許さない。 おもしろーい、みたいな感じで。人質でも取られているみたいにいい子にするよね、と自分で自分に言う。なんでそんななん、と生まれ育った土地のことばで突っ込む。しゃあないやんそうしてしまうんじゃけん。言い訳をする自分の声。桐谷さんが不幸になりますように、と息をするように思う。これは会社で話す東京のことばで。しばしば、思う。 直子ちゃんって、ほんとにいい子だよねー。そんなふうに。その声には、彼女たち自身がまだ捉え切れていなかった「なんかむかつく」が見え隠れしていた。 帰りの電車も、朝ほどでないにしても混んでいる。人と密着はしないけど、鞄が触れたり毛先が触れたりする距離に立っている。電車ががたごと揺れる度、すこし緊張する。全員が全員不快な気持ちで過ごす。誰かが何かにいら立ち舌打ちをする。それが次の舌打ちを呼ぶ。この中に優しい人間なんて一人だっていない。優しい人は、東京じゃ電車にだって乗れない。 結婚するんだろうか、と考える。考えるのと同時に、考えるって言ったってどうせするに決まっているのに、とも思う。大地に結婚したいなあと言われた時、うれしい気持ちを探した。心の中を検分して、これじゃないという気持ちやことばをよけて。そうしてようやく「うれしい」と口に出して言った。言いながら頭の中にはふつふつと、別のことばが浮かんできていた。見る目ないな、教師のくせに。とかそういうの。 「結婚式ってする意味分かんない。自分たち二人だけならともかく、親族とか友だちとか職場の人とかの、貴重な休日の時間とお金を奪ってまで、自分たちが主人公の時間を演出して、大切なみなさんに見守っていただきながら本日晴れて夫婦となりました!とか言うでしょ。いやいやもう意味わかんない。あんな、ドレスなんか着て、見てくださいわたし主人公です、ばーん!って。恥ずかしい」 大地の家族と会った日にかぶっていた猫は、着ぐるみどころじゃない。この世に存在するありとあらゆる愛らしい猫ちゃんの皮を全部はいできて継ぎ足して、それでも足りない部分はキティちゃんやおしゃれキャットマリーちゃんで補強して作った、最強猫ちゃんで、そこにはわたしの要素はひとつもなかった。ついでに言うと着ぐるみの方はいつもかぶってる。大地の前でもかぶってるし、会社でもかぶってるし、家族の前でもかぶってるし、なんなら一人の時でもかぶってる。元の顔なんて、着ぐるみの中で蒸れて擦れて潰れて変色もしちゃって、原形がない。 にこにこしようとか、興味を持ってるふりをしようとか、そんなことばかり考えて、わたし、本当に他人に興味を持って話を聞く方法が分からない。 三年目になって仕事を覚えて、仕事ができている実感を持ってくると、仕事をしてるのに愛想まで求められるのは割に合わないと、思い始めた。後から付いてきた感情だった。 通勤電車は相変わらずぎゅうぎゅうに人間が詰め込まれている。ねえ大地、わたしが電車に乗る時にマスクをするのは、感染症予防のためじゃなくって、人間を汚く感じて、その人たちの口や鼻から出たり入ったりした空気に、直接触れたくないからなんだよ。マスクも着けずにあんなぎゅうぎゅうの電車に乗っている人たちのこと、頭がおかしいなって思ってるの。前を見ないで道路を歩く人のことも、怪我をして痛い思いをしたうえで死ねばいいと思ってる。そんなこと思ってる人間と結婚を考えるなんておかしいと思ってたけど、本気で考えているわけじゃなかったんなら、おかしくなかったね。やっぱり大地は本物だ。まともで、正しい。 驚くもんなんだな、と自分の反応に冷める。喉がぎゅっとしまって声が出なくなるほど、びっくりしていて、心の表面をざっと手で触ると、ところどころにひっかかりがあるようだった。傷が付いてるんだ、とこれにも驚く。ずいぶんやわな出来の心だ。傷ついたところに爪をたてて、さかむけを剥くみたいにして引っ張る。中身が見える。ほら、心の中ではわたしのことを好きでいる大地をばかだなと思っていたくせに。ようやくばかじゃないことが判明した大地に、びっくりして傷つくなんて。ださい。しんどい。うざい。 電柱の下、植込みの間に嘔吐の跡がある。投げ捨てられてひしゃげたビール缶が転がっている。泥水を吸ってコンクリートにはりついているハンカチは誰にも拾われない。こんなところで、丁寧なことばだけで、どうやって生きていけというの。 みんな、いい子だって言ってるくせに。にこにこしていたら安心するくせに。自分が傷つけられたぶん、囚われたぶん、取られたぶん、削られたぶん、同じだけを他人にも、と思う。だっておかしい。割に合わない。 わたしは、わたしが悪い時でも、わたしは悪くないって主張する。だって割に合わせただけだから。いいとか悪いとかじゃないから。わたしはわたしのぶんだけしかやりたくないから。全部背負っていくのは嫌だから。嫌だけどでも、やっぱり悪いことをしたって思ってる部分はあって、だけど誰にもそれは言えない。わたしが悪かったって認めたら、それは、わたしが割に合わないことを受け入れて生きていかなきゃいけないってことになる。顔をあげて前を向いて歩いている人ばかりが、先に気付く人ばかりが、人のぶんまでよけてあげ続けなきゃいけないってことになる。 プライベートの知り合いと比べて遥かに低いラインを引いて、職場の人たちを嫌いだと思えてしまう。この確信はなんなんだろう。自分が選んだのは仕事であって人間ではない、自分が選んだ人間ではないから、嫌ってしまってもかまわないと、そういう心理だろうか。大嫌い、と自分から切り捨てるように思うことができるのだから、わたしはきっとどこに行っても、誰と働いても嫌いになってしまうのだろう、と分かる。今目の前にいるこの人たちが特別悪い人間というわけではないのだ。 子どもの頃に出席した親族の結婚式で覚えているのは、マッシュポテトの上にキャビアなるつぶつぶが載っていたことと、「花嫁さん綺麗ね」と母に言われて見上げたウエディングドレスの女性をたいして綺麗だと思えなかったことだ。純白のきらきらした美しいドレスに、人間色の緊張した魂が突き刺さっているように見えた。けれど幼心に「うん」と答えるしかないと分かっていたので、そうした。わたしは今でも分からない。母が「花嫁さん綺麗ね」と言ったのは、本心からのことだったのか、親族に囲まれて座る丸いテーブル席で幼い娘にかける言葉の正解があれだっただけなのか、どっちなんだろう。今更訊いても、そんなこと覚えてないしやっぱり性格悪いわね、と嫌な顔をされるだけだろうけれど気になる。 結論としては、バージンロードから嫌だったから、つまり、初めから嫌だったということになる。直訳して処女道であるそれを、父親の腕に手を添えて歩き、道の先で待つ新郎に引き渡される図。新婦、物みたいだなあ、と最初に思った。それから、下品だなあとも思った。思ってしまったら、ふんわり広がった純白のドレスの下で、何センチもあるヒールに足をぷるぷる震わせながら必死で歩いているのも、新婦を一人で歩かせないための罠にしか見えなくなった。 式場スタッフが三人がかりで運んできた大きなウエディングケーキを前に、ケーキ入刀とファーストバイトが行われ、「ファーストバイトには、一生おいしいごはんを作るからね、という新婦からの誓いと、食うのには困らせないからな、という新郎の誓いが込められています」と説明がなされる。なにそれまじで気持ち悪いっ、と慄きながら辺りを見渡すと、握りこぶしほどもある特大スプーンを新郎に差し出した新婦と、こぼれるっこぼれるってとおどけて大口を開ける新郎に、みんながあたたかい笑い声をふりかけていてまたぞっとした。じごく、と言葉が浮かびかけ、結婚式の日にその言葉だけは頭に思い浮かべてはいけないような気がして、慌てて意識から遠ざけ、スマホのカメラを新郎新婦に向け直してボタンを連打して写真を撮った。 大音量で流されるウエディングソングでは二人の愛の尊さが表現され、自宅で家族だけに伝えた方がいいように思われる両親への感謝の気持ちを、なぜか新婦だけが手紙にしたためて参列者全員の前で涙ながらに発表し、新郎は泣いている新婦を支えるように肩や腰に手を添えているのだけど、自分は感謝の手紙を取り出す気配もない。新婦の涙を見つめながらなんでだろうと考えてみると、女性は生家から出され、夫の家にもらわれるので、夫側から見ると「別に今親にありがとうとか言わなくてもいいでしょ、これからもおれはおれの家にいるんだし」となるのだ!と思い至って衝撃を受けた。じんしんばいばい、とこれもまた今日このおめでたい日に当てはめるべきではない言葉が頭に浮かんできてしまう。会場のあちこちからすんすんともらい泣きの音が響き、拍手とともに「末永くお幸せに」「末永く」「末永く」と呪文が繰り返される。 人は人、自分は自分、などと言いながら、思いながら、これを気持ち悪いと思わないなんておかしい、と心から思って見渡すと、気持ち悪がるどころかみんな幸福そうに微笑んで、うんうん頷いて、目に涙を浮かべて感動している人までいた。末永く、末永くだよほんと。また呪文が聞こえる。うそでしょわたしだけ?一人一人に訊いてまわりたい。おかしいでしょあんなの、気持ち悪いじゃん、どう見たって。「分かる」と言ってほしかった。分かるよ、そうだよね、おかしいよねって。 家族の期待に応えること、地元で家族に囲まれて過ごし、家族を増やすこと。学生時代から人前に立つのが得意ではなかったりっちゃんが、自分が主役になる結婚式をしたいと思う意味。そこから生まれる幸福を、わたしは心で感じることができない。分からないから、触れられないから、近づくと苦しくなるから、同じようには願えないけど、りっちゃんが求めている幸せの形は明確で、「それっておかしいと思う」などと言い出すわたしがいない方がいいのは分かり切ったことだった。

    1
    投稿日: 2025.11.01
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    高瀬さんの本を読むのはおいしいご飯が食べられますようにに続いて2冊目です。 人間の嫌なところ、不条理な世の中が心がゾワゾワする感じで描かれていて、自分は主人公のように実行には至らないし、いちいち苛つきを頭の中で言語化することもないけど、共感するポイントが多いです。

    0
    投稿日: 2025.10.31
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    めっちゃ主人公性格悪かったけど私も心の中で暴言吐くことあるからちょっと安心した 東京とかの満員電車に巻き込まれるのが日常だったら性格淀みそうだなぁとおもった。

    0
    投稿日: 2025.10.26
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    駅などでぶつかってくる人を避けない人の話と、願いを叶えてくれる置物を持つ同僚がいる人の話と、結婚式などの女性が男性の家に入り家事をすると言う風潮が嫌で結婚式に行かない人の話。 1番最初の話が1番印象に残った。話の進み方が主人公が感じたことよりも考えていることで進んでいくから、普段似たような温度感でものを考えている私としては途中で一旦もういいやってなった。他の話では長い文章の中で一つか二つでてくる、そんな感じの気持ちあるよねというポイントが矢継ぎ早に出てきたりする。

    7
    投稿日: 2025.10.26
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    三作とも面白いけど、まったく共感はできない。したくない主人公たち!意地悪というか、繊細というか、考えすぎというか、生きづらそうというか... たぶんこのタイプの人たちには、私みたいな何も考えていないデリカシーないタイプは嫌われる笑 なぜかトイレのシーンがしっかり描かれていて印象的だった。

    0
    投稿日: 2025.10.26
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    「いいこのあくび」 ながらスマホで自転車に乗る中学生にわざとぶつかる主婦、転倒した自転車に車でぶつかってしまったレジのおばさん、その中学生の先生である夫。思わずあるあると思ってしまう深層心理の意地悪さがユーモラスに描かれています。 「お供え」 主人公の職場の後輩社員が机に会社の創業者フィギアを飾り、いつしか皆が願い事をするお祈りの対象に。 「末永い幸せ」 親友の結婚式参列を拒みながら、式場のホテルの窓から式の様子をそっと伺う主人公。

    0
    投稿日: 2025.10.16
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     表題作の「いい子のあくび」が面白かったです。普段日常生活をする中で何気なく目にしたり感じることを文章でうまく表現してて、その文章も難しくなく、スラスラ読めました。  特にスマホ見ながら歩いてて人にぶつかった時の心情が上手く表現されててまして、印象に残りました。  「ながら歩きは危険なのでやめましょう」というアナウンスをよく聞きます。自分もこの小説を読んで「ながら行動」はやめよう、と改めて思いました。

    9
    投稿日: 2025.10.16
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    ゾワゾワするし、主人公の行動力、というか普通の人なら常識的にやらないことをやっちゃうところ?が怖かった。 でもすごく気持ちはわかる。結婚式が正直好きじゃないとか、人が前から歩いてきた時、自分が避ける側であることへのモヤモヤとか。 この気持ちが一定ラインを超えたら自分も主人公みたいになれてしまうかも、と思うと、こ、怖い。。

    3
    投稿日: 2025.10.15
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    表題作はいい意味でイライラさせられる話。 自分はこう言うタイプの人が嫌いなんだなと言うことがよくわかった。 どの主人公も考えすぎ、気にしすぎとも思えるし 多くの人が見逃しているおかしな当たり前に気づいていると捉えることもできる。 なんせ生きづらい人たちだろうなと思う。

    1
    投稿日: 2025.10.11
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    ぶつかったる。 そんな一言で始まる小説。 人間の心の汚いところを書かせるならこの人だなと思います。 歩きスマホをしていない側が避けないのは悪なのか、仕事が出来る人ばかり仕事をして、先に気付く人ばかり損をする。 まさに割に合わない。 日頃生きていたらつい思ってしまう、だけどそれはいけないことだからみんな心に蓋をしている言葉を、うまく言い表してくれています。 いい子の反対は、悪い子ではなく、やな子。 出る前に押し殺されたいい子のあくびはどこに行くのか。

    0
    投稿日: 2025.10.07
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    高瀬隼子っぽい、気持ちはわかるけど、なんかゾワゾワする感じの小説。 歩きスマホの人をよけずにぶつかっていく女性の話。 私もイライラしているとき、混んでいる駅で(歩きスマホの人に限らず)あっちが何も考えず歩いてきて、「なぜこっちが道を譲らなきゃいけないんだ!」と思って、なるべく 道を譲らないことがある。普段は無意識に譲っているのに。 この主人公は体の大きな彼氏といる時はバリアが張っているみたいにあっちが勝手に避けてくれるけど、1人の時は避けてもらえないと言っている。 私は意識したことないけど、そうなのかも。 意識しだしたら余計道を譲りたくなくなってしまうかもしれないな〜。 この小説では歩きスマホの人に道を譲らないことが 象徴的に書かれているけれど 、この女性のイライラはそれだけでなく、「なぜよく気のつく私が私が気を使わなきゃいけないんだ」ということだと思う。 気がつかなければ楽なのに。 こういうのってあるよね。 できる人ばかり仕事を頼まれてしまうような感じ。 割に合わない。 主人公は自分の可愛らしい部分が好きな彼氏、自分の悪い部分を出すことで盛り上がる友人、自分の控えめのところを出す友人とキャラを使い分けている。 誰しもあることだろうけどここまで違ってくると苦しいだろうなと同情してしまう。 主人公のありのまま、いろんな面を全て包み込んでくれる人がいるといいんだろうな〜。

    13
    投稿日: 2025.10.07
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    本当はそんなこと思っちゃダメなんだろうと、心の奥底にしまってきた感情を表現してくれた。すごく心が楽になった。

    1
    投稿日: 2025.10.05
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    いい子のあくびを含む3作が収録されている本作、やっぱり私は高瀬隼子さんの作品が全部好きだろう。 人の悪意を書くのが本当に上手で、しかもその悪意はとびっきりの悪意ということではなく、本当に嫌な、犯罪者とかの悪意とかではなく、これ私のことって思う人が多数いるような。そして私もその1人である。 描いてる悪意を、持っている側の苦悩というか、そこまで書いてくれるので、これ私だ。と思った私も救われる。 次の高瀬隼子さん作品も早く読みたい… 自分の心を言語化してほしい。

    1
    投稿日: 2025.10.04
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    私もあくびを噛み殺す「いい子」だ。 自然体で優しい、のびのびとしている人に憧れるけど、決してなれない。「自然体でのびのび」しているフリはできる。相手に合わせて。あー!もう、これ、私やん! 主人公と自分が重なりすぎて、少し辛くなった。 3編とも、ちょっと変わった女性が主人公。しかも、全部私のことのよう。   最近、鏡を見ていなかったけど、 どうだー!これが今のお前だ!と 現実をつきつけられたような気持ち。 相手に合わせて 世間に合わせて 本来の自分を隠しているうちに 本来の自分がわからなくなる。 ストレスがかかる。 吐き出し方がわからない。 「ぶつかってやる」という、 えいやっ!という行動でしか、 吐き出せなかった主人公。 私は「ぶつかる」勇気もないから、小さく小声で毒を吐いたり、海や山や川へ行き、 リフレッシュしたり、本を読んで本の世界にどっぷり浸かったりして、やり過ごしている。 あれ?もしや、こうして考えてみると、 誰しもが、そうやって、環境に合わせて生きていて、たまったストレスを趣味で発散してエネルギーチャージしてるのかな? 「いい子」は特別でないのか?  だって主人公の恋人の大地くんだって、 「自然体で良い人」のはずが、浮気してたし! 誰が悪なのか、 誰が善良なのか、 誰が普通なのか、 誰が変わりもんなのか、 意外と線引きはできないのかも? 決して爽やかな読後感ではないけれど、 自分を振り返るには 良いきっかけを与えてくれた一冊。

    20
    投稿日: 2025.09.30
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    私は共感の嵐だった。 普段心の中にどろどろと溜まっていく“言えないこと”を言語化してもらったような気分。 表題作の彼女は私だ。 「ぶつかったる」って思うしこっちばかりがいつも避けて「割に合わない」と思う。 歩きスマホをすれば、前を見てなければ、みんなお前を避けてくれると思うな、甘えんな、期待すんなよって思う。 来世は絶対高身長で体格のいい強面の男に生まれ変わりたい。 女ってだけで舐められて、ぶつかられて、舌打ちされて、そんな思いばかり。 このどうしようもない感情を分かってもらえたような嬉しさと同時に、醜い自分を見せられたような感覚。 時々、芯の突いた言葉で刺してくる鋭さ。 彼女は私だ、また読み返したい本に出会えた。

    2
    投稿日: 2025.09.29
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    (自分は男性だが)女性が都会で暮らす上での息苦しさ、そしてやるせなさが緻密かつ繊細に描かれていて読了後も何とも言い難い苦々しい後味がずっしり残るような作品だった。

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    投稿日: 2025.09.29
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    表題作が、今まで読んだ高瀬先生の作品で1番好き。 他人に見せている一面なんて、その人の本当に一部でしかない。

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    投稿日: 2025.09.25
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    『おいしいごはんが食べられますように』を越える衝撃。毒気が強い、強すぎる。 さらに冒頭から「ぶつかったる。」で始まるインパクトの強さ。 普段、本を読み進める中で、印象に残ったフレーズ等があると付箋を貼るのだが、それに該当する箇所があまりにも多すぎて、途中で貼るのを諦めました 笑。こんな読書体験は初めて。 共感できる部分もあれば、「そこまで考える?」という負の感情まで所狭しと書き連ねられていて、読者がどのように感じているのかが気になる作品で、いつもよりもブクログユーザーの評価や感想を見るのが楽しかった。 P.S DSのマリオカートのふうせんバトルの話が出てきて懐かしかった。小さい頃ずーっと遊んでました。

    8
    投稿日: 2025.09.21
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    おいしいごはんが〜を読んで、別の作品も気になり読了。 自分の集中力がない時期に読んでしまったからなのか?若干話が頭に入ってこず...(涙) ただ、モヤモヤと、なんとなーく苦い気持ちになる感じはやっぱり好きだった。 人とぶつかったモヤモヤ、職場でのモヤモヤ、結婚式のモヤモヤ、分かる〜って思う自分のことが後ろめたくなるけど、肯定してくれているような、そんな気持ちになった。

    0
    投稿日: 2025.09.21
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    きっとどこかで自分も思っているけど、自分の中でも気付かないふりをしているような黒い部分を言い当てられたようだった。『おいしいご飯が食べられますように』もそうだけど、好きだ~

    0
    投稿日: 2025.09.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    *公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作* とてもとても不思議な読後感。 「いい子」でいることの必要性や優位性は十分わかっているけど、「いい子」でいることの割に合わなさ、理不尽に摂取され、消費されることに対して疲れ果ててしまう気持ち…わかるなあ。 我慢の限界と静かな怒りがじわじわと沁みてくる様がリアル過ぎて痛い。 決してキレイなお話ではないけど、読んでいて苦しいのになぜか心地よい解放感もある読後感… クセになりそうです。

    0
    投稿日: 2025.09.18
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    P106「大地が隣にいようといまいと、さみしさは変わらない。だけど、今わたしがさみしいのはおかしい。自分が窮地に立った時だけ感傷的になるというのはずるい。」 最後の一文を「別によくない?」と感じる私。 主人公は「いい子」だからそう思うのか。だったらいい子って仕事面ではよくても、プライベートまでそうだと無理がたたるしつまんないな。

    1
    投稿日: 2025.09.15
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    いい子のあくび、面白かった。共感できる部分もたくさんありつつ、けど現実には言えないし動けないし、、な微妙なライン、読んでて新鮮。

    0
    投稿日: 2025.09.14
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    配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。 https://opac.shigakukan.ac.jp/opac/volume/520511

    0
    投稿日: 2025.09.08
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    2025.9.7 読了 3編の短篇集。どの話しもいやぁ〜な感じだけど、たくさん共感出来るところがあって。でも、口に出して言っちゃうのは憚れる…と言うか性格悪いと思われるというか…。とにかくグサグサくるのです。特に最後の『末永い幸せ』の私の共感度はエグたらしいのです!はい!大好きです❤️

    1
    投稿日: 2025.09.07
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    相変わらず容赦のない火力で…ええ、もう、ほんとに…。罪とは言わない、でも善良とは言えない感情。わたしにも絶対心当たりがある。おかげでぐさりと横腹を刺された気分。現代的で生々しい心理描写はもはやちょっとグロくて変な笑い声が出る。善良なまま生きていけるわけがない。

    0
    投稿日: 2025.09.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「いい子のあくび」 主人公の生き方をしていたら疲れそう。ずっといい子でいられるのは強みだと思うが、嫌われたくなくて友人相手にもビクビクしているのは単純に可哀想と思ってしまう。なんで歩きスマホをしている側がよけなくてよくて普通に歩いている人がよけないといけないのか、という気持ちは共感できるが、かと言って自分が怪我をするリスクを負ってまでぶつかりに行く気持ちはわからない。正直この主人公とは友達になりたくない。関わりたくない。この作者は人間の濁った感情を言語化するのが得意だなと思う。 「末永い幸せ」 結婚と結婚式に対する気持ちが主人公と全く同じだった。私は参列しないことはないだろうけど、家族への手紙を読む時間とか、キリスト教形式の挙式で父親の手から新郎に新婦が手渡される瞬間は気持ちが冷え切ってしまう。茶番だと思う。関係ないが、キリスト教徒でもない日本人がキリスト教の結婚式で神に誓ってるのが理解できない。

    2
    投稿日: 2025.09.05
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    いい子はつかれる。 素っ裸にされて醜態を晒されて、 理不尽に打ちのめされて 楽に生きるのはなんて難しいんだと絶望してしまう。 物語が悪いんじゃなく、 キャラクターが悪いんじゃなく、 ただただ無駄で無意味な労力がこの世にはたくさんあって、割に合わない報われないもので溢れていて、それに気づいて。 ほんの少しでも報われて欲しいと思いつつ、私はその恩恵を享受した分、はたして誰かの報われる材料になり得ているのか。 誰かの「今日は得したな」になれるような生き方をしたいと思った。

    1
    投稿日: 2025.09.03
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    スマホをしながら自転車をこいでいる中学生が見えた。ぶつかろうと思って避けずにいたら案の定ぶつかって、自転車はよろけて後ろから来ていた車と軽い接触事故を起こす。 避けない人の分を避けないことにした、ということらしい。なるほど、と思った。 避けない人が怪我をしないのは避けている人の善意のおかげで、避けない人たちはそういう善意を持つ人を無意識に消費しているように思えて、避けない人も避ける人も対等な価値の人間のはずなのに、なぜ避けない人が一方的に搾取しているのだろう、という理不尽さなのかなと。 「割に合わない」という単語が何回かでてきて、その感情はすごくわかるなぁと思った。得をしたいんじゃなくて、損をしたくない。 最後、望海に自分をさらけ出そうかと考えるところで終わっていて、ここが救いになるかもしれないのか、と意外だった。直子の本心をさらけ出す相手が大地でも圭さんでもないのは、彼女なら受け入れてくれるかもしれないという打算かもしれないけど、でもそこでこの人に打ち明けてみようかと直子が思えたことが希望に思えた。

    0
    投稿日: 2025.08.29
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    おいしいごはんが食べられますようにからの2作品目。 こちらも、分かるようなわからないようなもんやり?とした読了感。 ただそれが何だか癖になります。 私もどちらかというといい子を演じがちなので、主人公に重ねて読めました。 主人公の心の声が何だか気持ちよかったり。 他の作品も読んでみたいです。

    0
    投稿日: 2025.08.27
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    いい子のあくび、好きだな。 というか、わかる!って感じ。 私もこの人みたいに常に何か悪いことを考えているから。だから読書してるんだけど。 思考って止まらないよね。 ほんと、何でこっちがよけるのが普通な世界になったんだろ。 高瀬隼子さんの本は、どれも最後があやふや。それが持ち味なのか。

    1
    投稿日: 2025.08.26
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    おいしいごはんが食べられますようにを呼んで、次に同じ作者のこちらを読みました。 一言で言うと全然共感出来ないお話でした。

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    投稿日: 2025.08.25
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    思っていた以上に、ドス黒い言葉や感情が書かれていて面白かった。自分自身もいい子の着ぐるみを被っているタイプで、相手に合わせて人が変わる。でもそれがどれが表でどれが裏かなんてないと思っている。いい子さを評価される度に、消費されていると感じる気持ちにも共感した。後味の悪さはあるけど、そこがまたリアルでよかった。

    1
    投稿日: 2025.08.24
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    本屋にて冒頭を立ち読みしてすぐに気付いた。 『やばい、これめっちゃ面白いやつだ。』 内容が面白いのはもちろん。読めば読むほど高瀬さんの言葉や文章の紡ぎ方、私の心に潜んでる意地悪で醜悪な得体の知れない何かに核心がせまる。。 思わずドキッとしたり、共感したりと、読了後の満足度がとても高い一冊。 (周りにこの本を勧めたときに、自分の性格の悪さがバレてしまいそうで少し気が引ける、、笑)

    1
    投稿日: 2025.08.23
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    【前を向いてまっすぐ歩く人だけが、よけていくべきなんだろうか】 いい子が損をする理不尽な世の中に対し「割に合わない」と訴えかけ、一石を投じる作品。品行方正と露悪的な言動・行動のコントラストが効いていて高瀬さん作品の中でも毒っ気満載。モラルに反した行動をとり、必要なことを怠っている人のためになぜ自分が余計に気を配らなければいけないのか?共感できるな。世の中そういう風にできているとはいえそう簡単に割り切れないよね。人間は上手く生きていくためには着ぐるみ以上の猫をかぶり、多少のことには目をつむるしかないのか…

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    投稿日: 2025.08.22
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    どちらが道を譲るのかという日常にあるモヤモヤを私に変わって追究してくれたことに感謝したい。 そして敢えての譲らない選択肢は私も持ち合わせている…… スマホに熱中してるように見える人も、実は通行人が視界に入ってはいて選んでもいるから腹が立つ。

    0
    投稿日: 2025.08.21
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    主人公の心情、全て分かる。全部思ったことある。 ・会社の上司のおじさん、いつも私を助けてくれるけど、好きになれない。生理的に気持ち悪いし、嫌いだと思ってしまう。 ・電車、歩きスマホしてる人が悪いと私も思う。相手が避けるそぶりしなかったら私も避けたくない。嫌なことしてくる相手にいいことしたくない。 ・友達に対する私、彼氏に対する私、会社の人、 に対する私、もう会わない他人に対する私、少しでも嫌なことされた場合の私、友達の前での他人に対する私、全部違う。対面する人にとって好ましい私に七変化、でも1回しか会わない他人は居ないものみたいに思う時がある。掃除の人などgiveしてくれてる人、お爺さんお婆さんなど弱い人には丁寧にする。自分が自分を嫌な奴だと思いたくないからかな?その嫌な奴の定義は子供の頃に刷り込まれたもの。 とにかく、この作者の方は本当にすごい。今まで読んだ小説の中で、1番心理が私に近く、リアルと思った。 聖人君子のように振る舞う彼氏が結局こっち側で、浮気してるのもよかった。正直、その場面を読んでテンション上がった。

    1
    投稿日: 2025.08.19
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    「いい子のあくび」周りからいい子だと思われている主人公が心の中で感じている黒い気持ちがキレキレで面白かった。歩きスマホしてくる人を避けずにぶつかっていくスタイル尖ってるなーと思った。望海と会う時は口悪く、自分に起きた出来事を面白おかしくして話すのに、圭さんと会う時は圭さんの人柄に合わせて健気な心優しい女の子を演じているところ、彼氏の大地にも彼氏での前の自分があってというところが少し極端だけど分かるなと思った。誰といる時の自分が一番好きなのかが大事なのかもと思った。 「お供え」会社のデスクの上で個性が出るところとか、描写が想像でき過ぎて面白かった。会社の創業者のフィギュアをデスクの上に置いて配られたお土産をフィギュアの前に置くと、ちょっとした願い事が叶うという設定が既に面白い。舐めた態度をとってくるけどなんだかんだ一緒にいる後輩が、自分の異動をかぎやしょうぞうフィギュアに祈っていると直感で感じたところは、自分が後輩のことをそう思っているからそう思い込んでしまったのではないかと思った。 「末永い幸せ」結婚式に嫌悪感を抱いてないと書けない話だと思った。

    2
    投稿日: 2025.08.17
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    わかるわかるわかる!私も心ん中でクッソ汚い言葉言ってる。まぁリアルでも言ってるんだけどさ私は けどめちゃわかる。いかに汚く言えるかで考えてる。 いい子ぶってね、ぶれてるか知らんけど わかるわかるが久しぶりに本読んでて思えてよかったな

    0
    投稿日: 2025.08.17
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    いいこのあくびというのは、誰も聞いてない校長先生の話をうんうんと真面目に聞いていながら、本当はあくびを噛み殺しているようなもの。 この話の主人公は誰かにとって良い子でいることが自分のアイデンティティでありながらも、その反面、良い子でいなければ私と一緒にいてくれないんでしょ?という反発した内面を持っている。 それでも良い子でいることをやめられない。 どうして自分ばかりが割を食って、不真面目に生きている人が得をするの?という理不尽を描いていて、その心の描写に「わかるわかる〜!」となった。 一部行きすぎた行動もあるけれど、それも含めてとても面白い作品でした。 もう少し先の話を知りたかったので最後はここで終わるんだ…と少しがっかりしましたが、いつか先の話を書いてほしいなぁと期待してます。

    9
    投稿日: 2025.08.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    本当は言ってやりたいけど言えない言葉がつまってて共感も多かった。 自分が正しくてあなたが悪いよねと思った事を突き通そうとする感じもわかる〜 そんなに堂々としていますが、あなた間違っていますからって心で思ってしまっている気がする(笑) いい子に見られるからいい子がする事したのに、それは違ってて…なんかわかる〜(笑)

    1
    投稿日: 2025.08.05
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    自分の話をためになると言われると「あ、消費されてる」と思ったり、ながら運転をしてる自転車を避けずにわざとぶつかったり、、 そんな主人公の心の声と、それぞれの友達や彼氏に見せる違う顔、矛盾する感情が湧いてくるのが自然に描かれていた。 すごく物事をネガティブに見る主人公にも思えるけど、ふと自分もこう思うことがないだろうかと日々のモヤモヤを言語化してくれる。

    1
    投稿日: 2025.07.27
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    歩きスマホの人を避けたり、職場の備品を気づいて補充したり、「名もない家事」のような敢えて評価もされないような行動のひとつひとつが積もり積もっていく。褒めてほしいわけでも、良い評価をされたいわけでもないのだが、日々のほんの些細な理不尽が少しずつ自分を圧迫していく。 全面的に共感できるわけではないが、わかってしまう部分が少なからずあって、社会は譲り合いで成り立っているはずなのに、どうしていつも自分ばかり、というあぶくのような不満があふれた結果ののちょっとした抗議行動のようなものなのかもしれないと思う。 しかも、多少の抵抗をしたとしても、そんな自分を少しだけ嫌いになってしまうのがまた厄介なところで、何も感じない人は、あちら側で一生を終えるのだろうと、それがまた理不尽に思われる。

    4
    投稿日: 2025.07.26
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    これは賛否両論分かれる作品だと思う。 私はあまり共感出来なかった。後味も悪い。 見た目ではニコニコしてて、周りからはいい子に見られる、でも完全に口から出るものと思っていることが真逆。 人によって自分のキャラを変えてる。 一つの事実を話す時も、友達のAならこう言う、Bならこう言うみたいな。 共感できる人はいるのかもしれないが、私には少し過剰だなと感じた。 仕事関係ではそう思うこともあるかもしれないが、プライベートの友達や彼氏にまで本当の自分を隠していい子であり続けることに疲れないのかな?と思った。 私は少なくとも自分を隠して人と付き合うことはしたくない。 改めて裏表なく真っ直ぐ人と付き合っていこうと思えた作品。

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    投稿日: 2025.07.23
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    「私には心が二つある」という感覚、わかる。 会う人に合わせて自分の考えも変わるような感覚。 それにしても直子はすごい。八方美人の最終形態? 出会う人々は「一定期間の接近と離反、その繰り返し」 私にとってはそれが楽だけど、直子にとっては辛いのか? いつもにこにこ、分かっていても「分かりません」、教えてもらったら「ありがとうございます」。人が人を好きになったり嫌いになったりするのは、それで造られている…あざといんだろうけど生きづらそう。考えすぎてしまう性格なんだな。

    4
    投稿日: 2025.07.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    自分が身長180センチでガタイが良くてムキムキでピアスたくさん空けて身体中にタトゥー入ってたら、それでさらに男だったら、むしろ人が避けてくれるんだろうなって思うことしぬほどある。その度に女という自分を許せなくなるし相手を殺したいと思うよ。 前を見ている自分が損をするのが嫌で歩きスマホしてる男を避けなかったことがある。当然ぶつかるけど当たり前に自分の方が突き飛ばされてぶつかった肩が痛くて最悪だった。許せないと思って心の中でその男を殺した。車に轢かれて死ねばいいのにとか全然思うよ。最後警察の人が言ってた言葉自分が逆の立場だったらおんなじことが言えるんだろうか。 大地と望海と圭さんと桐谷さん?どの人の前でもうっすら本当の自分ではないこと。いい子のふりをしてときにはそんなことまで言っちゃう自分を演じたりして、こうするべきこう振る舞うべきな道を歩かされてるともう全部どうでもいいなと思うときがある。意志を持ってぶつかってやるって思ったその気持ちは本当なんじゃないか。見せないように忘れようとしてる怒りがあると思った。 収録されてる3遍全部女にしか書けないなって思う。男はそんなこと思ったことも考えたこともないんだろって話。(『お供え』は違うかも)人が先回りして避けてくれていることに気づいていますか?その身長や風貌だけで生きていくのに有利であることを自覚していますか?その上で女を弱い生き物だと本気で言っていますか?生まれ持った性別や体格のことを考えたらキリがないのだろうけどいい子でいることは、いい子でいさせられることでもあるよなと思う。そうでないと面倒で後で不都合だから。理不尽だけど仕方ない。仕方なさを飲み込めなくなったらどうしたらいいんだろう。飲み込めなくなる前にこれからも心の中で人を殺していくと思う。

    0
    投稿日: 2025.07.15
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    駅や街中で人にぶつかられる、職場の若い後輩、結婚式など、女性特有の日常の苛立ちを描いた3編。 歩きスマホをしている人に、こいつならぶつかってもいいやと選別されてぶつかられていたという視点に驚き。 「分かっていたけど、分かっていないことにしていたような」まさにそんな感じ。 確かに自分ばかり人をよけて歩くことに不満を抱いてもおかしくはないと思った。 かと言ってよけないという選択をすると、やはりトラブルになる…

    0
    投稿日: 2025.07.15
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    世にいう聞き分けのいい子、よく気がつく子だが、本音は素直でもいい子でもない。周りがもっとやればいいのに、自分だけが気を使って道を避けるのは公平じゃない気がする。 こういう気持ちって誰もが持ってるんじゃないかと思う。だからといって、わざとぶつかるかどうか、実際に行動に起こすかどうかは別として。 そういう気持ちをうまく本に表わしてるなぁと感心した。 彼氏のようなガタイのいい人はぶつかられない、弱くてか弱そうな自分だからぶつかられる。人は結構見た目で判断される。 自分のイメージを大事にして、何枚も猫かぶっていい子にしても、本当の自分が居場所がなくなって辛くなるだけだと思うけどな。 他短編2編があり、どちらもなんかわかる感じ。作者はこういうあまり言葉には一口に表せないような、「もやる」気持ちを表現するのがうまいなと思った。

    29
    投稿日: 2025.07.07
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    自分のことを見透かされているように感じたくらい共感できるのと、こんなふうにムカつく気持ちを抱えているは自分だけじゃないんだと安心した 電車で後から隣に座ってきた男性が無遠慮に足を開いたり肩をぶつけて私のテリトリーを脅かす時、わざとこちらも体や荷物をぶつけて対抗するし、新幹線で隣になった男性が間の肘掛けを我が物顔で占領して、おまけにその肘が私の座席側にはみ出している時も、負けん気を発揮して肘を押し返してる 自分が低身長な女だから頻繁にそんな機会に巡り合うのであって、体格の良い男だったら、人生で一度もこんな目には合わないんだろうなって悲しくて惨めな気持ちになる 彼氏と隣にいると、他人から舐めた態度をとられることがパタリと無くなるのも、なんとも言えない悔しさがある こんな境遇おかしい、受け入れると負けた気がする 軽んじられることと軽減されることが同時に起こる場面や、ある面を評価されることと消費されることが同じベクトルで発生することがある

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    投稿日: 2025.07.05
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    優等生タイプを演じていた人が実は腹の中ではメチャクチャ毒吐いてるとか、普段静かな人が急にブチギレるとか人間は表面だけではわからないというのをこうもありありと書いていて面白い。

    0
    投稿日: 2025.06.28
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     実際にやろうとは思わないけれど、それでも「気持ちはよく分かる」と言いたくなるし、よくぞ書いてくれたとも言いたくなるのだが、おそらく共感すると、とても嫌な奴だと思われかねないような絶妙なところを突いてくるのは、いつもの高瀬隼子さんでありながら、そこにフィクションならではの鬱憤晴らしもしてくれたのではと感じられた点には、閉鎖的で満たされない、現代社会の窮屈な生きづらさが見事に表れていたのだと思う。  歩きスマホって危険だからしてはいけないと思うのに、「何故、それをする人がいるのでしょうね?」のような、人間が人間であるが故にと思わせる問題には、時にどうにもならないような諦めや苛つきが付き纏うのだけれども、おそらくそれは違った状況に於いて違った形となって、自分自身も誰かに与えているのかもしれないと思わせるものを、本書の表題作から見出したような気がしてならない。  人間というのは、その数だけ生き方も考え方も様々に異なるのだということは、その一場面だけで、その人の全てが分かる訳ではないことでもあるのだと思われた、それは想像もつかないような物の見方であったり、何に対して絶対に譲れないと感じるのかであったり、「いい子」と言われるような女性も、そのイメージだけが全てではないことであったりと、決して人間は単純な存在ではないことが、皮肉にも現代社会に生きる彼ら同士を、互いに苦しめ合う要因となっているのではとも思えてくる。  メインは歩きスマホだけれども、彼女の中の満たされない思いは、それだけではなく、満員電車や職場の人間関係に、過去のトラウマとも思える家族間の出来事と、様々な満たされない思いを抱えながら、それでも何とかしたいという心の叫びが胸を打つのは、彼女自身も、かつて思われていた「いい子」の姿勢を貫き通したいのだけれども、それをするにはあまりにも精神的に疲れすぎていて、そんな『一日が単純化』した日常の繰り返しだからこそ、『早く週末にならないかな』と感じてしまう、そうした心境に劇的さはないのだとしても、誰もが一度は共感できるような普遍性は、ごくありふれたものの中にこそあるのだということを実感させてくれるからだ。 『優しくしたくたって与えられるエネルギーを持っていないと施せない』 『いつも同じルールで、同じ物差しを持って世界と対峙できる人になりたいけどなれない』  こうした思いは、きっと彼女のせいではないと思うのだけれど、それでも「いい子」の部分が、今でも個性の一つとして色濃く残り続けている、そんな彼女の拘りの強さが言わせたのだとも感じられた中で、彼女自身が話し相手それぞれにキャラクターを使い分けることに、『自分の中には心が本当に二つあるのだと思う』と真剣に悩んでいたことに見られた、そうした点にこそ本来の人間が持つ、時に真逆なものも共存した繊細な複雑さがあるのだろうに、彼女の歪んだ中にも確かに残る真っ直ぐな一途さがそう思わせていることは、『いい子の反対は悪い子じゃない。やな子だ』にもよく表れていて、彼女の中でどれだけ自分の中にある多面性に苦しんでいたのかが分かるものの、人間としてはそれが当たり前なんだということを、高瀬さんは本書の表題作を通じて教えてくれたのだろう。  そして、彼女の日々のしんどさには無分別な女性蔑視もあることから、きっと溜飲を下げた女性もいるのだろうと感じられたことによって、高瀬さんは多様性のあり方を不穏なムードの中で描くのが印象的なのだけれども、そこにはずっと女性を主人公にした作品を書いてきた意義を感じさせるものがあって、やはり女性作家だからこそ女性の辛さが分かる信頼度というのは、小説を選ぶ過程に於いて、とても大切なことなのではないかと私は思う。

    71
    投稿日: 2025.06.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    図書館にて。 高瀬さんの描く、どこかちょっとずれた世界が好きで、本棚に読んでいない本を見つけると借りてきている。 表題作、暴走する正義は怖いな。 最近SNS上で特に言われることだけれど、正義の暴走はもはや正義ではない。 もともとは正しい考えから始まっていたり、ただそうとしているだけだったりするのに。 やり方はこれで合ってるかな?と考える落ち着き、ちょっと待てと一時停止できる余裕のようなもの、このやり方で本当に相手のためになっているか、あるいは自分の思い通りに相手を動かせているかというような腹黒さと表裏一体の要領の良さのようなもの。 あったらいいなと思うし、それがあったらこんなことにはならないのだろうな。 だからといってこうすればよかったのに、なんて説教臭いことも言えない。正しいことばかり正しい方法で出来るわけがない。自分の中にもあることだ。 身につまされる。

    0
    投稿日: 2025.06.24
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    高瀬隼子が好きだ。『おいしいご飯が食べられますように』に出会ってから夢中だ。女が腹に抱える悪い心や黒い心の描写が素晴らしい。わたしも同じようなことを考えているなあと自覚させられる。とはいえ、「分かるけど、さすがにそんなことするかよ」とも思う部分もあるので、フィクションならではの良さもある。わたしと似たようなとこを考えている人がわたしの代わりにフィクションの世界でめちゃくちゃやってくれている感じがする。

    4
    投稿日: 2025.06.23
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    “心は、どうしてこんなにばらばらなんだろう。ばらばらで、全部が全部本当であるために、引き裂かれるというよりは,元々ばらばらだったものを集めてきて、心のかたちに並べたみたいだった” “にぶさと優しさは少しだけ似ている。ばかが卑怯になれないのと同じ感度で”

    0
    投稿日: 2025.06.16
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    歩きスマホしてる人への不満は共感だけど、まさか避けない人がいるとは、、とかとか共感できる部分もありながらそこまで??みたいなところが個人的には多かった。でもその思考が事細かに描かれていて、こんなふうに考える人もいるのかととても面白く、引き込まれました。大地の良い人具合もこんなにまっすぐな人もいるのかと感心しました。あ、浮気はしてたのか。とにかく面白かったので高瀬さんの本読み進めます!!

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    投稿日: 2025.06.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    う〜ん。すごい作品だなぁ。 共感はほぼできないけど、一部強く共感している人を見るとそういう人もいるんだと学びにはなる。 この作品(と色んなところでの感想)を読んだ限り、共感できたのは5パーセントくらい。世の中にはこう思う人(主人公)がいて、それに共感する人がこんなにいるんだ!と驚いた〜。 向かってくる自転車や歩きスマホ…しかもこちらに気づかない!危ないよ!なんで私が避けないといけないの?!←これはまぁわかる。わかるよ、いやだよね。私もそう思うもん。でも避けるかな、ぶつかりたくないからね。 でもお茶の発注を怠った事務さんへの対応や自転車の子への対応は心底理解不能だし、嫌だったことをわざわざ書き残しているのも理解できない!あとから見て嫌な気持ちにしかならなくない?嫌だったことをわざわざ書いて見返すことって、私にとっては心の自傷行為みたいで絶対できないなぁ。それだったら嬉しいことを買いて見返したいと思う。 自分がした話を彼氏が消費してるって思うのも何言ってるんだろうって感じ。 お茶の発注をするのも、彼氏にその話をするのも自分が決めたことなのになんで嫌な気持ちになって被害者ぶるんだろう。自分が決めたことによる自分の感情になぜ責任を持たないんだろう。 知り合いがこの本を読んで、私のことが書いてあるのかと思ったと言っていて、読んでみたらこんな感じでした。なんか、色々すごいな〜。新しい世界を見た気分です。

    1
    投稿日: 2025.06.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    私にとっての良い子とは、誰にも迷惑をかけない、褒められるようなことをする子です。 困ってそうな人がいたら、気が向いたら声をかける。みんなは声をかけないのだから、自分は良い子。 体調が悪くても、無理して毎日を同じように過ごすこと。 確かに良い子なはず、でも本心は誰かに認められたいという、承認欲求の塊。 誰にとって良い子であればいいのか ぐちゃぐちゃとした人の心を鮮明に描写されている、素晴らしい作品だと思いました。

    0
    投稿日: 2025.06.10
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    いい子って呪縛みたいなもので、一度そうしてしまうと抜けられなくて、でもそれって生きやすいし何かと利益がある気がするし、ていうかそもそもやな奴って思われる勇気がないのかもしれない。 あと、気付けば自分を消費されているような感覚になって勝手にその人にも自分にもいら立つみたいなこと、すごくわかる。途中からのめり込んで読み入ってしまった。

    1
    投稿日: 2025.06.01
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    高瀬さん、本当悪意を取り出して書くのが上手すぎて! 日常生活でのもやもやする嫌悪感をここまで言葉にして小説として消化できるのがすごい。 こういう危うい感情に触れるとヒリヒリする。それがすごい好き。

    0
    投稿日: 2025.05.28
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     人には見せられない、見せたくない、自分でも嫌だと思う個人の内面をきっちり書いて晒してくれる。読んでいて楽しい気分にはならないけど、どんどん読み進めてしまう。そして読み終えるとなぜかスッキリしてる。ぶち当たったると勢いだけはもらえたような気もする。好きじゃないけど嫌いでもないのかと思い直す。

    0
    投稿日: 2025.05.27
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    あまり目を向けたくない側面にフォーカスし、それが分かってしまうのが辛いというか、この人の書いた本はそこが嫌だけど読んじゃうし、自分だけじゃないことに安心するから好きでもある。

    1
    投稿日: 2025.05.25
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    嫌な人を書かせると日本一だと思う。高瀬さんは。 こんなに性根の悪い主人公はみたことない 損得勘定で物事を考え、いつも何かしらに不満を待っている主人公 毎日嫌なことがあると小さなことでもノートにメモっておく癖がある彼女 それを読み返してはまた嫌な気持ちになる 負の連鎖だな 誰かの頭の中を文字に起こすとこんなにも不快なのか 人の考えてる事が聞こえなくてホント良かった

    5
    投稿日: 2025.05.22
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    嫌なことや嫌いなことの解像度がものすごい それを丁寧にていねいに表現していて大好き いい人は都合のいい人で割に合わないのにやってしまう、相手によって変わる態度、それも自分だよね〜と言えずモヤッてる直子の素直さ若さ正直さを感じた 「お供え」の職場の人みんな嫌いにはニヤついた 「末永い幸せ」しっかり断る奏ではいい子 高瀬隼子さんまた好きになった

    1
    投稿日: 2025.05.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    誰しも表と裏、人によって自身のキャラクターを変えてしまうということはあるけれど、その乖離が大きかった。いい子にふるまい、周りにもよく気がついて動いてしまう主人公、けれども自分が損なわれていく感覚が蓄積したのだろうか。黒いものが内にたまっていく描写と呪いのような言葉を書き付けていくノートの存在がこわかった。正義感も方向性が変われば、恐ろしい行動をひきおこす危うさを感じた。

    2
    投稿日: 2025.05.21
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    いい人とみんなよく使うけど それって都合のいい人だよねと思う 正直に生きたら人は引く。 いい子が良い事をしても8割くらい当然みたいな気持ち心に持ってるでしょ。 世間っていう一つの主軸があって、 そうすべき、しなきゃいけない、普通、こういったどこの誰でもないけど全員である歪な共通ルール。 社会を回すために必要なのかもしれないが、 みんなのためって顔してふんぞりかえってる気もする。 まあ世間にウケれば特異点も、クリスマスのスターになって、ウケなきゃただの異物扱い。

    0
    投稿日: 2025.05.19
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    高瀬隼子さん3作目。人間の嫌なところもしっかり言語化してくるのでゾクゾクする感じ?が全体的に楽しいのが高瀬先生の作品ですが、表題作の「いい子のあくび」が一番ページ捲る手が止まりませんでした。歩きスマホしてる人が向こうからやってくるのを見ると「わたしいまよけた」って直子のように思っちゃうし、ちゃんと前向いて歩いている人がよけてあげなきゃいけないの、なんで?と思う。「優しい人は、東京じゃ電車にだって乗れない」ってのも共感。

    1
    投稿日: 2025.05.18
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    高瀬さんの本を読むと、いつも自分の嫌いな部分をまざまざと突きつけられるようで、辛くて共感できて、そのあとに少しだけ救われた気分になる。 すべての話に「分かる…」となったけど、あまりにも自分のことのようで衝撃を受けたのは表題作。 いい子でいる自分、社会で生きる上でのいい子でいる意味をわかっている自分、けれど頭の中では周囲に腹を立てて、汚い言葉をつかって他人を貶す自分。 こういう気持ちを(というかこういう人もいるということを)理解してくれる作家さんがいることが、すごく嬉しい。 本当のいい子には私はきっとなれないけれど、いつか嫌いな自分もまるごと愛せるようになったらいいな

    1
    投稿日: 2025.05.02
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    1番目と3番目の話が好き。人はなんとも思ってないところに違和感を感じる気持ちにピッタリハマってくれる感じがしてよかった。 結婚式を気持ち悪いと思う、心から同感した 表面上の昔からある取り繕いにみんな喜んで参加してる宗教の信仰じみた感じ、、、 誰でもいい子を取り繕っている人間にすぎない

    0
    投稿日: 2025.04.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「末永い幸せ」について、結婚式を見た時の主人公の心情がとても共感できた。新郎新婦が磔にされているのと大差ない。

    0
    投稿日: 2025.04.20
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    気になっていた作品。読んでみる。 この感じですか。細かな心情を描くタイプのやつ。 人間の二面性というか、良い人でもあり、嫌な奴でもある。 そんなの誰しもそうだし、ただただ良い人なんていない。 ただ、私は読んでいて、段々と主人公が面倒臭い奴に思えてきて、もうコイツにはどう思われてもどうでも良いやと感じてしまった。色々と考えて疲れませんか、と。 この感じの作品なら、もう他の作品はいいかな。 ただ、エッセイとかなら楽しめるような気はする。 星は3つ。3.3とか。

    0
    投稿日: 2025.04.10
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    人よりも少し先に気づく直子は道端で具合を悪そうにしている老人に水を渡し、会社でよく飲まれているコーヒーを補充する。誰かに頼まれても愛想良くにこにこするのは、そうしちゃうからしてるだけ。だが、歩きスマホの人を見る度になぜ真っ直ぐに歩く人間が避けねばならないのか?こう考えた直子は避けずにぶつかろうと決心する。そして、のろのろスマホをいじる中学生の自転車のカゴに腕をぶつける。その瞬間自転車はよろけ、後ろにいた自動車に更にぶつかってしまい……なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作『いい子のあくび』、他『お供え』『末永い幸せ』を収録。

    0
    投稿日: 2025.04.10
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    一見いい人に見えている人が、本当は何を考えているかなんて誰にもわからない。そんな当たり前のことについて、改めて考えた一冊でした。 『いいこのあくび』は、スマホを見て前を見ずに歩く人を、いつも自分の方が避けていることなどに怒りを感じている女性の話でした。人に合わせて自分のキャラを作り、怒りを沈めるために手帳に記す、彼女の日々の心の葛藤が描かれていました。 彼女が起こした行動は、褒められることではないけれど、そういう気持ちをもっている人は多いだろうなと思いました。 人と繋がったり切れたりしながら、生きていくしかないと思った女性が、少しの希望をもって歩いていく最後の場面が印象的でした。 今は「いいこ」と言われる人が、余計にストレスをためて損をしている世の中だと思います。この本を読んで、何かを感じる人が増えてほしいと思いました。 他『お供え』『末長い幸せ』

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    投稿日: 2025.04.01
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    「割に合わない」 と度々出てくる主人公の言葉に共感。 人より先に気がつくこと・気が回ること、相手が良い気分になる言葉がパッと出てくること、それをやることで自分にも多少良い見返りがあるから続ける、相手にとってのいい人を装うのが上手いひと。自分で言うのもあれだけど自分もそうである。主人公と同じく、なんかやっちゃう。 最初はいいけれどだんだん都合のいい人として使われてしまう。提供しているスキルをただ消費されるだけで相手からの見返りが無く感じて割に合わなくなってくる。そして心の中でキレ始める…笑 相手にとって都合のいい人になってしまう問題、これどうしたらいいんでしょうね? 歩きスマホみたいに周りに目もくれないでどしどし歩いているひとが最強で、周りに気を使ってもらいながら元気いっぱいにスクスク生きていくのですか。気が回る人は損ですか。避けることができる人たちはずっと気を張りながら都合よく使われていくのですか。 心の中で毒づいても見えてるものがすべてか…。 自分が最近抱えていたモヤモヤを、主人公がどんどん言語化していってくれるのが心地良くて読んでて気持ちが少し整理された気がします。 最後全肯定してくれよっ!とも思いましたが笑 正解がないのが答えか〜と納得しました。

    0
    投稿日: 2025.03.20
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    感情の歪みやダメージが残る毒のある表現にずっと心がざわざわして、それでも読み続けてしまうほど、言葉選びが魅力的でした。 人の本質を見せつけられているような、誰にでも私にもこういう捻れた感情はあって、うまく折り合いをつけて生きてるんだって思うと読後は意外にもすっきりした感じです。

    0
    投稿日: 2025.03.19
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    なかなか思想は過激だけれど、ちょっとわかるなと思いながら読んだ。 なんで自分がどかなきゃいけないの?遠慮しなきゃいけないの?て思うことあるよなー 想像の中の自分は物申すことができるけど、現実の自分はそれができない。言いたい事を噛み殺して生きている人って世の中いっぱいいると思う。

    3
    投稿日: 2025.03.18
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    自分の同じような感覚の人がいて安心した。全ては理解できなかったけど、汚い自分、毎日色々なことを考えて生きている自分、それでいいのかも。それを受け入れるしかないのかも。もっと純粋な人間でいたかった。

    2
    投稿日: 2025.03.17
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    自分の持っていた汚い感情は、自分だけじゃなかったんだ、と思って救われた。歩きスマホが許せなくて見知らぬ人に心から殺意がわくのも、ある点において絶対に思ってはいけない感情を感じてしまうのも。私だけじゃない。みんな思っていて、出さないようにしているだけなのかもしれない。だからといって、表に出したらいけないんだよなあ。つい口から出そうになる気持ちを、あくびをするフリをして噛み殺し続けている。 多分、主人公たちは昔、本当にいい子だった。いい子だからこそ、経験しなければならなかった我慢や葛藤。幸せそうにしている人たちは、そんな我慢をしてこなかったんじゃないだろうか?例えばAさんは、我慢なんてせず自分らしく生きてきた対極的な存在だと思う。そういう人にも気を遣って接していたのに、そういう人に嫌われやすかったりするのも、リアル。 では、なんで、自分だけ?もしかして、自分が性別上の女じゃなければ、こんなことは思わなかったのででは。こんな我慢はしなくてよかったのでは?…じわりじわりと重なってきた、今までの我慢がある日、ぷっつり切れたら。でも、もうずーっといい子でいたから、それ以外の方法で人と上手くやっていくことなんて出来ないんだろう。うまーく正解を選んできたのに、突然突きつけられる不正解。毎話毎話、これからも主人公たちは何も変えず、変わらず、同じ生活が続いていくような終わり方で、より一層リアルな地獄だなと思いながら、読了!

    8
    投稿日: 2025.03.16
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    読んでる間、自分もどんどん捻くれていくような感じがした。主人公の感情に引っ張られて現実でも嫌な人になってるような感じがした。 表の顔と裏の顔、あの人の前とこの人の前、でも全部自分。素直な気持ちが書かれていたと思う。素直に嫌なことが書かれているから、モヤモヤした。

    4
    投稿日: 2025.03.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「いい子のあくび」 会社のシーンとか、満員電車の気持ち悪さとか、他人の悪意とか、そういうものの描写がすごくリアルで圧倒された。 主人公の直子は、見た目も中身もいわゆる「女性らしい」感じ。社会で生きていくために、自分でそういう風に演じてもいるんだろうし、元々の雰囲気もそうなのかなと思う。女性だからということだけで毎日いろんなことで心がじわじわ削り取られて、よくわからない社会のレッテルを貼られて、そうやって生きることにものすごく怒って、というか、疲れている。 私自身、気づいてしまったから私がやるけど、なんで私ばっかりやってあげないといけないんだろう、私のことは、誰がやってくれるんだろう、って思うことがよくあるので、「前を向いてまっすぐ歩く人だけが、よけていくべきなんだろうか」という言葉には本当に共感した。そう思うのが私だけじゃなくてよかった。 最後のシーンの直子の行動はものすごい結果を引き起こしてしまう。こんなことを思うのは過激かもしれないけど、正直これは直子だけが責められるようなことなのか…と思った。直子も直子なんだけど。 「お供え」 いや、怖いよ!!と思う反面、全部なんとなくはわかるし全く身に覚えがないかと言われたらそんなことはないことばっかりで恐ろしい(自分が)。 誰かと一緒に誰かの悪口を言ってる時って、秘密の共有というか、あなたとしかできないここだけの話、って感じがして距離が近づくような気がするの、わかる。そして、それをやってる間は不思議なことに、相手が私のことも同様に嫌っているかもしれないという可能性にも気づかないぐらい、私が正しいんだという気になって喋っている感じも、わかる。ふとした瞬間に、会社の人たちを全員嫌いになれてしまうし、あーもう全部終われよ、って思うのも、よくわかる。 女の怖いところとか暗いところとか陰湿なところがリアルすぎて怖い。うっすら全てに身に覚えがあるのも怖い。すごい。 会社の人に話しかけるのが怖くなった。 「末永い幸せ」 この作品にはものすごく共感した。まだ誰の結婚式にも出たことはないけど、きっと出席したらそう思うんだろうなと思った。でも、私が気持ち悪いと思うのは「家庭に入って夫のために生きる良き妻であること」をやたら強調してくる結婚式なのであって、もし友達が結婚するとなったら幸せになってほしいと心の底から思うだろうと思う。だから主人公の奏の、一見異常に見える行動も、わかるような気がする。結婚式を気持ち悪く思う感情と、友人の幸せを心から願う感情が一緒に存在している複雑な奏の心情がものすごく刺さった。 奏たちの年齢がそこまで若くないからというのもあるだろうけど、結婚式に出席している人達の服装が黒っぽくて、それがなんだかお葬式を彷彿とさせる。私には人生の墓場に向かっていくお葬式のように見えるけど、どうかりっちゃんが行くのが地獄じゃありませんように、というような感情で見ていたのかな。 一瞬、りっちゃんと目が合ったように思えて、そのあとで必死に、偽チャペルからホテルがどう見えるかを確認しに行った奏の行動が、もう。頭がいい大学を出たのに就職活動に失敗して、地元でフリーターみたいなことをやって暮らして、そしてパチンコを趣味で嗜むお腹の出た老け顔の男性と結婚するんだ、そうなんだ。という、りっちゃんの感性と自分の感性との違いを認めたいけど、おそらくうっすら見下してしまっているようなこの気持ちをその一瞬で見透かされたような気になって、だけどりっちゃんのことは大切なので、そうじゃないんだよと必死で弁解しているような、そんな気がした。

    3
    投稿日: 2025.03.02
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    主人公の心情、全く分からないわけではないが、さすがに拗らせ過ぎかなぁ。ほんの少しだけ、明るさ、爽やかさが欲しい。

    3
    投稿日: 2025.02.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    思ってることを言語化してくれて、読んでて気持ちがスーっとするような、そんな文章だった。主人公たちの行動(りっちゃんの結婚式を部屋から見てる、とか)もすごくリアルに感じた。わたしも主人公たちの行く末を辿るのかなあ。

    3
    投稿日: 2025.02.25
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    高瀬隼子さんは、身近な小さいことに対するもやもやを言語化するのが上手いなあ、ちょっと過剰だけど笑 かなり主人公に共感派だった!

    1
    投稿日: 2025.02.21
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    読み終わった後すぐ思ったのは、主人公みんなひねくれている...っ!でした。でもただただひねくれているところばかりでなくて、一度は思ったことあるよねぇというところが多く、全部嫌な話ではなかったです。(後味も良くないですが笑)気にしない人はとことん気にしないところを主人公達は悩んでいる。自分を軸に生きていける人からしたら、そんなところで!?と思われるかもしれないけど、私は主人公寄りの考えを抱いてしまうところが多いのでどの話も沁みてしまうというか痛感してしまう感じがありました。

    1
    投稿日: 2025.02.18
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    高瀬さんの書く話、たまに首がもげそうなくらい共感できる時があるんだけど、ひとつ確かなのはこの考え方を持っていると絶対に不幸になるだろうなっていうこと。捻くれてるとはまた違うのかも知れないけど、内心思っていても絶対に口に出せないようなこと、出してしまったら自分が恥ずかしい存在になってしまいそうで怖くなってしまう思想。だから高瀬さんの本を読んでいる時は日記と語り合ってるみたいな安心感があって好き。3冊目も借りちゃった、依存しそう

    4
    投稿日: 2025.02.16
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    前情報なく読んでびっくりした。イヤミスではないけどあんまり読み終えていい気持ちにはならなかった。いい子が本当にいい子なのかは外からはわからない‥。

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    投稿日: 2025.02.15
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    ・相方が良い人すぎる(または都合のいい人間)とその善行しない自分が腐った人間に思えてくる。、けど、そんな人を相方にすると一生限りなく善でないといけなくて疲れる。 ・高瀬さん、言語化が上手いなーと思う。日頃モヤモヤすることを言語化してくれる。が、このモヤモヤ、大体ネガティブなことなので、この言語化がポジティブな方に向いた高瀬さんの作品も読んでみたい。 ・道で絶対に避けない人。いるいる!!私が避けるが、なんか人を選んで避けてると、『あなたが避けるでしょ当然でしょ』って思われてるような気がして避けたくなくなる。わかる。ぶつかってでも避けない。わかる。これ書きながらダメだな〜自分なんて思いながら、そんなの人に言えないしw高瀬さん、汚いところ共感させてくれてありがとう。 ・それにしても主人公の女性(悪い側面の方)性格悪過ぎでしょ。ひくレベル笑。とても生きづらそう。圭さん側(いい方の主人公)がおおかた表になればとても幸せなのでは本人。 ・優しい人と鈍い人は表裏一体/紙一重。 ・卑怯とばかは混在しない。わかる。 ・気づく人が気づけない人(または気づく気がない人)の分で動かなくてはいけない。自分は自分の分しか動きたくない。。わかる。一人一人が少しずつ自分の分動けば誰かに皺寄せがいって大変なことになることもないのに。

    4
    投稿日: 2025.02.10
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    高瀬さんってなんとも言えないビミョーな、でも心のどこかに潜んでいるような気持ちを言語化するのが上手くてヒリヒリする。

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    投稿日: 2025.02.04
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    社会に出て感じた心のささくれを 余すことなく言語化してくれている本書。 人間の、理屈じゃないところというか、 気持ち悪さみたいなところが カラッと表現されていて、 物語にも自分自身にも飲み込まれすぎず ある程度冷静に向き合える。 しっかりと主人公と距離を感じる筆致なのに 心の奥底を深くのぞき込めるのはなぜなんだろう。 すごい。職人芸。 かなりよかったなあ。 個人的には芥川賞 受賞作を超えている。

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    投稿日: 2025.02.03