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powered by ブクログ「答えを教えない」指導法の提唱とその背景 本書は、サッカー漫画「アオアシ」の福田監督の指導法を題材に、従来の「答えを教える」指導の問題点を指摘し、自律的な学びを促す「答えを教えない」指導法を探求します。現代において指導する側が「教え方」を体系的に学んでいない現状に対し、指示待ち人間を生み出しやすい一方的な指導ではなく、学習者が自ら考え成長する力を養う指導の必要性を説き、「お題設計アプローチ」「1:n:nの実践コミュニティ」「愚者風リーダーシップ」という3つのキーワードを中心に議論を展開します。 自律性を育む「お題設計アプローチ」 伝統的な教え方と対比される「お題設計アプローチ」は、正解を教え込むのではなく、理想の状態を示す「タスク」と、そのための指針となる「生成の型」で構成された「お題」を学習者に提示します。「お題」には達成すべき「理想」と守るべき「制約条件」が含まれ、制約条件によって難易度を調整することが可能です。このアプローチの核心は、学習者自身に「理想」と「現実」のギャップを認識させ、「気づき力」を養い、試行錯誤を通じて自ら答えを見つけることで、深い学びと忘れにくい知識の定着を促す点にあります。 学び合いを促進する「1:n:nの実践コミュニティ」 「答えを教えない」指導法のもう一つの重要な要素は、指導者と学習者だけでなく、学習者同士が良い関係性を築き、互いに学び合う「1:n:n」のコミュニケーションを形成することです。指導者はメンバーの進捗状況を見ながら、必要に応じて学習者同士を近づけたり、交流を促したりすることで、学びが生まれる場をファシリテートします。この水平な学び合いの環境をいかに多く作れるかが、「何もしてない風」に見える指導の重要なポイントとなります。 学習者の自律を促す「愚者風リーダーシップ」 リーダーシップのスタイルとして、知識や経験を直接教え込む「賢者風」に対し、学習者自身が考え、行動することを促す「愚者風(何もしてない風)」リーダーシップが提唱されます。福田監督は、賢者然とした態度とは異なり、一見すると何もしていないように見えますが、その裏には学習者の成長を綿密に設計する高度な思考があります。この「愚者風」リーダーは、興味を引く問いかけを重視し、繰り返しのない学びを通じて学習者の自律性を引き出します。 チームの成長段階を示す「イモムシ・チョウ理論」 チームの成長プロセスは、リーダーの指示で動く「グループ期(イモムシ)」、意見が活発に出るが対立も生じる「カオス期(サナギ)」、そしてメンバー間の信頼関係が構築され、自律的に成果を出せる「チーム期(チョウ)」の3つのステージで説明されます。心理的安全性が低い日本では、カオス期を経験せずにグループ期のまま停滞したり、対立を避けるあまりチームとして成長できない傾向があることが指摘されています。 「個」を活かし変化に強い組織へ 組織のあり方については、「個か組織か」という二者択一ではなく、メンバーそれぞれの個性を活かし、相互に補完し合うことで変化に強く崩れない「個を活かす組織」を目指すことが提案されます。これは、それぞれのピースが異なる形状を持つジグソーパズルに例えられ、個々の能力を最大限に引き出し、組織全体の力を高めることの重要性が強調されます。 成長を加速させるための重要概念 本書では、学習者が課題に夢中になる「フロー理論」、短期目標と長期目標を組み合わせた「ダブルの目標」、安心して意見を言える「心理的安全性」、他者の意見を柔軟に受け入れる「心理的柔軟性」など、個人の成長と組織の発展に不可欠な様々な概念が紹介されます。これらの理論や概念を「アオアシ」の具体的なシーンと結びつけながら、「答えを教えない」指導法の実践とその効果が解説されています。
0投稿日: 2025.05.16
