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ノースライト(新潮文庫)
ノースライト(新潮文庫)
横山秀夫/新潮社
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総合評価

160件)
3.9
32
73
40
7
0
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    実は以前テレビドラマを見ていたので、あまり興味をそそられず積読してしまっていたのですが、読み始めるとぐんぐん、引き込まれていきました。 建築家の話しでもありますが、魂を燃やしながら仕事に掛ける思いに胸熱です。 横山先生の中でも大好きな作品です。

    0
    投稿日: 2022.05.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    一級建築士の青瀬への謎の依頼「あなたが住みたい家を建ててください」。 完成した家の主人に連絡を取ると家族全員、その家に住んでおらず、音信不通に。 一家に何が起きたのか、青瀬への依頼の謎。建築事務所の奮闘。 興奮と感動とラストの驚きといろいろ詰め込まれた小説。

    2
    投稿日: 2022.05.14
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    熱いものがこみ上げてくるヒューマンドラマ+ミステリー! これは、よかった。 ある意味、主人公の再生の物語。 設定、展開にどうなのよって思いながらも、それを凌駕するエンディングでした。 ストーリとしては、 離婚から酒におぼれていた建築士の青瀬稔。 親友の岡嶋に拾われ、岡嶋の事務所で仕事をしています。 その青瀬は、施主の吉野から信濃追分に 「あなた自身が住みたいと思う家を建ててください」 との依頼で北から光線が差し込む家を建築します。 これがノースライト そして、この家が青瀬の最高傑作に! しかし、これを引き渡したものの、そこから、吉野は音信不通になります。不審に思った青瀬は吉野邸を訪問。 しかし、そこには住んだ形跡がないまま、ブルーノ・タウトが作ったと思われる椅子がおかれていました。 ここから吉野とその家族の消息を追い始めます。 そして、タウトとの関係も徐々に明らかになっていく という設定、展開なのですが、 警察や探偵に任せず、なぜ自分で吉野を追いかけるの? とか その消息がタウトがらみという細い糸でつながりながら都合よくとんとんと明らかになっていくの? とか、 ちょっとどうなのよって思いました(笑) また、建築物の描写や技術的な話、タウトの設計などなど、専門的な描写が細かすぎて、ついていけない(笑) ググってタウト関連で旧日向別邸、桂離宮を確認しました。 しかし、そんな前半はおいておいて、後半につながるヒューマンドラマが素晴らしい! 青瀬の生い立ち、離婚した家族との関係、岡嶋との関係がじっくり前半で語っておいて、もう一つのサイドストーリ。 岡嶋の事務所では、大きなコンペを取るため岡嶋自身も建築士としてのプライドをかけて臨みます しかし、ある事件が... ここからが、とても熱い このコンペを取るための事務所の人間たちの想い。 この仕事系のところはサラリーマンにはガツンときちゃいます。 コンペはどうなる? 吉野失踪の真相は? 様々な伏線が回収され、すっきりするとともに、そこに描かれたヒューマンドラマに熱いものがこみ上げます。 暖かい愛と再生の物語! これは、とってもお勧め

    46
    投稿日: 2022.05.14
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    横山秀夫作品は、『64』など警察小説のイメージが強かったので、全く印象の違う小説でしたし、なにより建築の知識にも長けている事に驚嘆しました。 ストーリー展開が遅めで、建築の知識、タウトの歴史、心情描写、情景描写などが多く、特に建築関係の描写はイメージ図が頭に描けず、個人的には苦手でしたが、建築家という未知の職業の世界を覗けて興味深く読めました。 タウトという実在する建築家のストーリーと吉野の生い立ちを絡めつつ、一家蒸発の謎に迫り、青瀬と妻子との関係や、事務所のコンペ、岡嶋の生き様など様々な要素を詰め込んだ厚みのある読み応えのある作品でした。 

    7
    投稿日: 2022.05.12
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    横山秀夫の作品をいくつか読んできたが、「ミステリー」という点では共通しているけれど、全く味わいが違う作品。建築家、青瀬稔が信濃追分に立てた家。しかし、そこには依頼主の姿がない。依頼主はどこにいったのか。青瀬は消えた依頼主の痕跡を求めるうちに、物語は予想外の展開を見せる。物語の進行と共にいくつもの出来事が起こり、それらすべてが読者を飽きさせることがなく、感動させてくれる。

    0
    投稿日: 2022.05.08
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    ❇︎ 長編 面々と続く家族の歴史を綴った 心に温かいミステリー 依頼者の希望は、一級建築士の青瀬が 住みたい家を作って欲しいという 変わったものだった。 引き渡しの際、依頼主の喜んだ表情を見た はずなのに一家は引っ越しておらず、 家はも抜けの空で連絡も取れない。 消えた一家を探す中で、仕事でのコンペや 事務所での人間関係、別れた家族とのわだかまり、 そして歴史的な建築家の足跡を辿る。 依頼者が青瀬に設計を依頼した理由は、 思いもよらない時間と歴史を経たものだった。 ノースライト: 北の窓から差し込む遠慮がちで物静かな光、 穏やかな優しさと静謐な空気を想像しました。

    12
    投稿日: 2022.04.29
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    非常に読み応えのある作品でした。ストーリー展開もテンポが良いわけではないのですが、興味が削がれることなく最後まで読めました。面白かったです。

    0
    投稿日: 2022.04.28
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    人生で初めての横山秀夫の本 建築士が主人公であるため建築の知識がこれでもかと出てくるが、それがまったく押し付けがましくなく、むしろ矜持や生い立ちなど登場人物の性格にまで結び付けられ、読み応えのあるストーリーを作り出している あらすじでブルーノ・タウトが出てくることを知り、名前だけ出てストーリーから浮いてしまうのでは?と思っていたが、読み終えたあとは主人公の青瀬と同様にブルーノ・タウトの人生も見せつけられたようなそんな印象を受けた すべての登場人物の想いがひしひしと伝わってくるような、素晴らしい作品だと感じた

    0
    投稿日: 2022.04.24
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    弟が設計者で、過去彼から聞いていた話しと照らし合わせながら読ませと頂きました。彼の話が鼻について受け入れがたかったのですが、これを彼にも読んでもらって設計者の矜持というか思いを含めて飲み交わしたくなりました。素直に聞けそうです。

    0
    投稿日: 2022.04.14
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    本作は、世界を魅了した「64」から6年、横山秀夫が満を持して上梓した作品。しがない建築士である青瀬稔(あおせみのる)が、失われた居場所と時間を取り戻そうとする愛と再生の物語。文庫本で543頁と一筋縄ではいかないボリュームを誇っているが、その重量感ゆえの深みや美しさは言葉では表しきれない。まさに芸術作品と言える。 長編ミステリとしての質はもちろん素晴らしい。しかし、ミステリと一括りにするのももどかしいほどに、人と人の愛を描いた生きた小説でもあった。ぜひ、多くの人に読んでいただき、涙を流してほしい。

    1
    投稿日: 2022.04.13
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    ドラマで既に観てた 本を買った後に嫁に指摘された けど ドラマより深い内容で面白かった 主人公を想像すると頭の佐々木蔵之介が出てたんだけど、改めてチェックしたらドラマは西島くんだった 結局のところ 大体ドラマで見るより本の方が面白い

    0
    投稿日: 2022.04.11
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    改めて建築という仕事の魅力を知った 自分が住みたいと思った家を設計して建てる 思い描いた建物を建てる それは形になって残り続ける このお話は、一級建築士が 自分が想いを込めて建てた家に 誰も住んでいないというミステリーに 建築士の苦悩、タウトという建築家、家族の再生、 友情を絡ませて重厚な作品になっている とくに最後の建物の構想は 想像するだけで素晴らしいと思った

    3
    投稿日: 2022.03.30
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    作りたい家の違いで別れた妻と、親の恩返しをしたい人が偶然会って、作りたい家を作らせる。あまりぴんとこなかった。恩を返したければ直接本人に伝えに行けばいい。 最終的に家族が元に戻る方向になったのは良かったけれど、戻す努力をしたわけでもなく、結果オーライだなと。

    0
    投稿日: 2022.03.25
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    「64」以来、久し振りの横山秀夫さん。 建築士の青瀬が、自分の設計した自信作の新築の家に一度も住まずに、ただ一脚の古い椅子を残して姿を消した一家の謎を追うお話。 なんだけど、話が進む内に何を追っているのか、消息を絶った施主・吉野の居所か、椅子を巡る伝説の建築家ブルーノ・タウトの痕跡か、青瀬自身の生きてきた証か、それに事務所の命運を懸けたコンペの成り行きも絡んで、得体の知れない展開が続く。 何だかつかみどころのないようにも感じる話だが、それでもそれぞれに読ませどころがあって興趣は切れず。 信濃追分のY邸に北からの光線が差し込む情景やダムをつくる山あいの町の暮らしの描写、ネットで検索したカウフマン邸の姿やタウトの作品などそこかしこに清涼な空気を感じるところも良い。 巷間の評価も含め読む前からハードルが上がってしまっているので★はやや辛めとなった。

    8
    投稿日: 2022.03.24
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    一つ一つの表現がすごく丁寧で頭にすっと入ってきた。 メモリアルホールの完成が見てみたい。 自分が想像していたのとは全然違うような結末でとても感動した。綺麗なお話だった。また今度読み返したい。

    0
    投稿日: 2022.03.21
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    このミス2020年版2位、本屋大賞2020年4位。売れない建築士の起死回生の個人向け住宅。日本の建築200選にも選ばれた住宅の引き渡し後、施主が消息を絶った。主人公の建築士が施主の痕跡を追う話が本筋。平行して主人公の所属する建築設計事務所が、大きなコンペ挑戦する話が絡んでくる。 この人の本は骨太で文学的な表現を駆使して主人公を中心とした人間関係を心象風景を中心に丹念に追っていく。決して、読みやすい文章ではなく、時間もかかるが、謎が解明していくときに感動を伴い、何度も鼻ツン状態になる。お話が進むにつれぐいぐい物語に引き込まれ読む速度が一気に加速していく。 この人の本が平均評価値一番高いかも。 ちなみに現在4.25(8冊)でした。

    5
    投稿日: 2022.03.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    文庫化されて購入 読書会 青瀬の別居の理由が最後までよくわからない 最初から子供に話さない 吉野淘汰 タクト 父親が事事故で殺害してしまった人の息子に罪滅ぼしで、家を依頼 ちょっと現実離れかな

    0
    投稿日: 2022.03.16
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    ブルーノ・タウトについて初めて知った。知らないことを物語を通じて知れるという喜び。そしてやはり、横山秀夫作品は人がアツい。

    0
    投稿日: 2022.03.10
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    私自身は建築関係に全く疎いので、前半は少しだけ義務感のようにページをめくっていたけど、後半にかけての引き込まれ方はすごかった。 直射日光のようなぎらついた光ではなく、北から差し込む暖かすぎず、かといって寒々しいわけでもない清らかな光に照らされた結末を見届けさせてもらった。

    0
    投稿日: 2022.03.09
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    ミステリーとしては珍しい内容な気がする。 「家がもし、人を幸せにしたり不幸にしたりするのだとしたら、建築家は、神にも悪魔にもなれるということだ」 という一文が頭を離れない… 登場人物が一人一人すごくリアルで、全てのことがありありと想像できた。 読み応えがあって、少し読むのに時間がかかってしまったけど…綺麗なミステリーだったと思います。

    0
    投稿日: 2022.03.07
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    横山秀夫の長編ミステリ 自らが理想とする家を建てた設計士が、引き渡し以降一度も住まれた形跡がない事を知り、消息を絶った施主の痕跡を追いながら、様々な事に直面していく様を描いています。 非常に重厚で深い人間ドラマであり、一級のミステリと思います。が・・・ 建築や造形、様式美、著名建築家にまつわる記述が多く、ちょっと戸惑うというか、読み進めにくい感じが前半にありました。 ま、後半は一気読みで、さすがは横山秀夫!と思いました。 帯書きの「横山秀夫作品史上、最も美しい謎」かどうかは、個々の感じ方かと・・・

    0
    投稿日: 2022.03.06
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    久々の新作で、さらに文庫版になるまで待ち侘びて買った本。元々は事件や事故に鋭い角度から強い気持ちを持った人間の葛藤を描くのが得意な作家さんなんだなと感じてた。 今回もやはりその流れというか、この作家さんでなければ描けない人間の生き様だったと思う。 ノースライトという言葉の魅力と、その光の当たるタウトの椅子を映し出す表紙の魅力。それを辿っていく物語と最後のカタルシス。 ただ、あくまで個人的な感想で言うと、やや時代劇かかった文体なのかなと感じた。それが盛り上がっていく場面に気持ちが乗っかっていく人にとっては最高だし、一度レールから外れると、急に部外者になった気分になるような気がする。 個人的には後者だったのが残念だけど、この作家さんの語りは相変わらず凄い。読み続けてきた人ほど好き嫌いが分かれると思うけど、好きな作家さんなら飲んだ方がいい。

    0
    投稿日: 2022.02.17
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    以前に原作を知らないまま、この小説がテレビドラマ化されたものを観たのですが、とても印象深く心に残りました。小説が映画化されたりテレビドラマ化されることは頻繁にありますが、この場合、私は原作を読んでから観るというパターンが殆どです。その場合、大抵は小説で抱いたイメージが期待どおりということがなかなかありません。しかし、今回は逆の場合にも関わらず小説と映像化された内容がほぼ一致しました。 ブルーノ・タウトというドイツの建築家の人物像が底流にあるこの小説ですが、主人公の建築士、青瀬が依頼された風変わりな設計依頼からこの小説は始まっています。「あなた自身が住みたい家を建てて下さい」という依頼で建てた「Y邸」は高い評価を得ました。バブルの時代、その渦に飲み込まれ、勤めていた建築事務所を追われ妻子とも別れ、失意の中にいた彼を救う契機となったこの家でした。その思い入れのある家が引き渡し後、どういうわけか住んでいる形跡がない!という事実が発覚します。このミステリー仕立ての筋書きがこの小説の根幹です。 その謎を追っていくうちに彼自身の生い立ちとともに交錯する、依頼主の驚くべき真意。それは亀裂の入った家族関係を修復していく過程でもあり、建築士の友人との友情の証を実現する機会でもありました。 信濃追分というY邸の立地に加え、北向きの窓という独創的なデザインが印象的で、(先に映像で観てしまったので)更にブルーノ・タウトの制作した?椅子が一つ置かれているシーンが目に浮かびます。時折登場する野鳥の観察の場面もそのシーンと相まって味わい深いものでした。

    1
    投稿日: 2022.02.17
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    家を買う、建てることについて、最近私自身自宅を転居したこともあり、また、友人から奇遇にも現在進行形の居宅に纏わる色々な話を聞く機会が複数あり、友人関係、仕事、死、人と人との距離と交流など、様々なことがリンクされた内容だった。 私はこの本の出版をあまりの忙しさに紛れ知らなかったが、三分の一ほど読んだところでやめたという、某友人から譲り受けた。 この著者の作品のファンであり、素晴らしさは知っているはずなのに、やはり感動は感銘を伴って想像を超える波となって私を呑み込んだ。 予想できる展開とはいえ、そこに差し掛かって読めば、深さに嗚咽を感じる。 「埋めて」いく。 それしかできないことを、追い詰められた気持ちでなく、これからも続けていくことを、「言葉」にして身のうちに留めることができた。 著者に対する感謝を心から思うのは、そうそう読書経験の中でもあることではない。 本当に良い本です。

    3
    投稿日: 2022.02.13
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    うーん 新幹線で読んでいて泣いてしまった「64」クラスを期待していたので。タウトもいいけど、ちょっと冗長すぎと感じた。後半1/4でテンポが上がり、面白くなったので3点まで挽回。

    0
    投稿日: 2022.02.05
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    めちゃくちゃよかった。 主人公の心の描写が丁寧で、ぐいぐい掴まれた。 謎よりも建築やタウトの方面に引っ張られていくのが心地よくてあっという間に読んでしまった。 透明感のあるきれいな物語でした。 Y邸みてみたい。

    0
    投稿日: 2022.02.03
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    ミステリーというよりかは建築学と経営学。ただ人間ドラマが面白く、涙するところもあり。美しい物語だった。

    0
    投稿日: 2022.02.02
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    建築業界の話は個人的に好きだし、普通に面白かった。 でも何かが足りない。物語に浸かりきれない感じが少しした。謎にそこまで惹かれなかったのかな?

    0
    投稿日: 2022.02.01
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    これはミステリなのかな。横山秀夫さんの作品はほとんど読んでいますが、これは今までの作品の中では異彩を放つものだと思います。

    0
    投稿日: 2022.01.30
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    手に職を持つというか、技を持ってれば食っていける。確かにそうだよなと思って生きてきた。傑作と思える作品を作り上げるってどんな気持ちなんだろうね。発想を形にできる人を尊敬します。 見当のつかない謎ばかりというより、あーこうなったらやだなーという感じの話しの流れで、過去と現在が結ばれていくところは絶妙でした。 こじつけだけど、それこそ作品全体が「ノースライト」に射されている感じでした。 最終章の青瀬と能勢のやり取りはかっこよかった。

    22
    投稿日: 2022.01.29
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    「あなた自身が住みたい家を建ててください。」 バブル崩壊後、建築士としてただ生きていくためだけの仕事を無難にこなしてきた青瀬。そんな中、施主吉野からの依頼は、建築士・青瀬稔を再び目覚めさせた。 Y邸(吉野邸)の引き渡しの日、吉野夫妻は素晴らしいと感嘆を漏らし、青瀬もまた感無量の中にいた。がしかし、Y邸をそのままに吉野が消えた。 たった1脚の椅子を残して…。 世界的な建築家ブルーノ・タウトの椅子を巡って謎は深まって行く。謎が紐解かれて行く。 序盤から、幾つかの謎が絡み合い、重苦しく進むけれど、真実にたどり着いたとき、重さの中にある温もりに触れてしまう。 過去、幼少期などの経験から人生をかけた復讐劇!は有名どころにもありますが、この作品は真逆を行ってる。 償いというにはスケール大きいけど、人を信じてみたくなる一冊です。 今年の4冊目 2022.1.29

    12
    投稿日: 2022.01.29
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    久々に、打ちのめされた。こんなにも緻密で、周到で、感動させられる作品があったとは。 手に取ったきっかけは、ブクログ。私の拙い感想文に「いいね」してくださった方が、ご自身の本棚でえらく褒めてらしたので、気になって購入。横山秀夫作品はお初...と思っていたが、後になってだいぶ前に反落ちを読んでいたことに気がついた。 内容は、ブルーノ・タウト絡みの史実を軸に据えつつ、数多くのキャラクターが複雑に絡み合ういくつかの平行したストーリー。それぞれのストーリーは、それぞれの「事情」を抱え込んだまま進むが、破綻も無理もなく全てが結実して終わる。そして最後は、電車の中でも滂沱の涙(^ ^; しばらく余韻で動けないほどの感動でした。 一応ミステリにカテゴライズしましたが...謎解き成分はあれど、お仕事小説でもあり、ヒューマンドラマでもある。何なら「最初は何が問題なのか」すら明らかでなかったりもしますが... でも行方を晦ましたY邸の主が、なぜその家を建てたのか、なぜ無人となってしまったのかが判明するシーンで、話が大きく動くので、謎解きメインと据えました。「その後」は、Y邸こそが新たな物語の軸となりそうだし... 文体は独特で、「説明」の文があまりない印象。多くのことが主人公の目と頭を通した情報として、モノローグで提供される。「これこれこうでした。」とはっきり書かず、でも読んだ人全員が「同じ結果」を予想できる巧みなリードが、読後の余韻を増す役目を果たしている。気障ではない、粋な文章って感じ。 登場人物の「年齢」がはっきり出ているのも重要な気がする。年寄りは年寄りなりの、若い人は若い人なりの「世界観」を持った上での言動をする。そこにさらに仕事だの肩書だの立場だのが絡んできて、本当に一人ひとりのキャラが生身の人間として目の前に浮かぶ感じ。 ストーリーは完璧、文章も魅力的、キャラクターも生きているという、本当に非の打ちどころがない一冊(^ ^ それでいて、読み疲れる感じは全くなく、先へとページを繰る手を止められない。 いつも会社の行き帰りの電車内で本を読み、一冊読み終わるとすぐ次にかかるのが常なのですが... 本作は、読後の余韻に浸っていたくて、次の一冊をなかなか手にできず(^ ^; 二日経って、ようやく次を読み始めました(^ ^; それほど「インパクトの強い」一冊でしたとさ(^ ^;

    6
    投稿日: 2022.01.28
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    ミステリアスな謎解きから入っていくところがなんとも神秘的な感じがする 謎解きだけれど、警察は関係ない これはある建築家のはなし 日本と関わりのあるドイツ人建築家が作った一脚の椅子も謎解きのひとつで それも少し高貴な印象を与えているのかもしれない

    1
    投稿日: 2022.01.23
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    親子関係がキーになって主人公とその他の登場人物との人生が重なって、最後の結末に繋がっていきます。あゝ良かったと思うエンディングになっているので、希望が持てる読後感でした。

    0
    投稿日: 2022.01.23
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    建築士の青瀬にY邸の設計を依頼し、引き渡し後に消息を断った家族。その家には、タウトの椅子が残されて。 高度経済成長でダム建設などで潤う一方で、ダム建設で全国を渡り歩く家族。地域の人との確執。この頃から決して日本は平等ではないかもしれないけど、働くことで成長を実感できたのかもしれません。 最初は、大きな進展もなく退屈な展開が続きます。 後半、ある人物の死を中心にものごとが大きく動き出します。青瀬はバブル時代に生きたからこそ譲れない考えや生き方があるのかもしれません。 昔は良かったと言う人もいるけれど、いつの時代も人が生きている以上は、楽な時代なんてなかったのではと思います。 熱海の日向別邸は、一度行ったことががありますが、改めて本を読む中でタウトの世界に引き込まれました。

    2
    投稿日: 2022.01.21
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    500P以上の本なので、読み終わるまで日数かかるかなぁと思っていたのですが…。 2日で読み終えてしまいました。 読んでよかったー、と思えた本でした。

    1
    投稿日: 2022.01.19
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    読み始めてすぐに、この話知ってる…と思い、記憶を辿りながら読み進めると、西島秀俊さん主演のドラマを観ていたことを思い出しました。 横山秀夫先生は警察関係の小説しか読んでなかったので、建築家の話の原作者と結びついていませんでした。 映像で観ていたせいか、真相に近づくまでが長く感じてちょっと辛かった。 何がどこに繋がっていくのか、主人公の生い立ちからの伏線回収…後半はぐいぐい行きました。 振り返るとあの前半はどれも必要だったのかなと思います。 面白い!と言うよりは、上手いなぁ〜と言う作品。

    2
    投稿日: 2022.01.18
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    北からの光 太陽の光は直接には差し込まない。まぶしさのない間接的な柔らかい灯り。熱のない静かな光線。 青瀬さんの静かな生き方に通じるものを感じる。静かなだけではない粘り強さが彼の奥底に隠れているかもしれない。 少しずつ明るさが増えているから

    1
    投稿日: 2022.01.18
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    人生に訪れる過去と向き合う瞬間を感じた。 生きていると、対価を払わねばならない時がやってくる。 前半は、目の前に情景が浮かんできてぐいぐいと物語に引き込まれる。 私は青瀬になりきってしまった。中年男性の悲哀やナルシシズムの中に、どっぷりと浸かった。 後半、ミステリーが一枚一枚めくられていく。 最後、ご都合主義なくだりはあるが、小説にロマンがあることを受け入れたい。 理屈ではなく、涙が流れた。 もう10年若かったら、読んだ感想がまるで違ったかもしれない。作者の力量に驚いた。 以下、余談 ブルーノタウト、大学時代の建築史を思い出したり、調べたり。桂離宮や熱海にも行きたくなった。 ノースライトを、Y亭を、メモリアルを、劇中に出てきた建築物を見てみたい。去年、ドラマ化されたらしい。気になる。

    1
    投稿日: 2022.01.17
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    とても静かな大人の小説。 中盤、タウトの建築の描写など、建築の知識がないと少し集中力を要する印象があったが、読み終わった後でも、まるで自分で見てきたかのように美術館の風景が記憶に残り、独特の読後感があった。終盤で明らかになる謎の解決は見事で、重いながらも、爽やかさがあり、作者のさすがの力量を感じた。

    0
    投稿日: 2022.01.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2022/1/13読了。 様々な人間模様が絡み合うが、どれも主軸の謎を解くための重要な話であり、濃密だけど一つも無駄がないと感じた。 建築士として建てた家にクライアントが引っ越してきていない、という渋い謎だが奥が深く、設定も最高。 家族との絆、仕事への情熱、近しい者の死からの大団円。久々に読む手が止まらなかった。

    5
    投稿日: 2022.01.13
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    【映像化に期待】 横山秀夫でイメージする作品の中でも 家族に重きを置いた一冊 建築の知識が全然ないので Y邸、映像で見てみたいなぁ

    0
    投稿日: 2022.01.13
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    今まで読んだ横山氏のイメージとはだいぶ違います。 主人公の青瀬が、吉野から依頼されて設計、建築した邸宅に吉野一家が住んでいないことが分かるが、邸宅にブルーノタウトの一脚だけが残されており、そこからミステリーが始まる。 自身の出自と父。離婚れた妻と娘。設計事務所のコンペ参加。友である事務所長。吉野。ブルーノタウト。これらがゆっくりと交錯していきます。

    15
    投稿日: 2022.01.09
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    信濃追分に建てたY邸 建築雑誌に載って設計者の青瀬稔は達成感に満たされていた! しかし、Y邸に本来居住すべき施主の吉野が居住していない事に気付く!? しかも住んでいないどころか引き渡し以降一度も居住されていない様な状態となり放置されている現状に不満と不信を抱き青瀬稔は吉野の痕跡を追う・・・ ・ブルーノタウトというドイツ人建築家を本作で知りました! ・PHS、喫煙、バブル後など時代設定は平成15年前後と推測 ・今迄、設計事務所の建築士を主人公とした作品と出逢った事がない ・信濃追分という地名を本作で知りました! 設計事務所の建築士視点の物語は珍しいと思います!建築業会で働き読書が趣味の人は必見です!

    17
    投稿日: 2022.01.08
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    長くてダレる。おもしろかったか?と言われると…。 建築、設計の世界が少し知れて、そこはとても興味深かった。

    0
    投稿日: 2022.01.08
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     自分を取り戻すことができた作品と自負していたY邸の施工主から何の連絡もないことに自尊心を削り取られていた青瀬は,施工主一家が一度もY邸に住むことなくいなくなっていることを知る.残されたカギはタウトの椅子のみ.施工主の謎の失踪と,孤高の画家のメモワールのコンペ,別れた妻と娘,設計事務所の人間関係などが絡み合って物語が進んでいく.  建築には疎いのだけれども,タウトの作品に興味をもった.みてみようかな.

    6
    投稿日: 2022.01.07
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    途中でやめたので評価しません。 ワクワク感無し。 ダラダラしていて説明のような本筋と逸れた脱線も多く飽きてしまった。

    3
    投稿日: 2022.01.05
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    去年5月に横山秀夫の著作を20年ぶりに再読した時に、最近描けていないのはネタ元が尽きたからだという意味のことを書いた。全く失礼なことを書いた。横山秀夫は新たなステージに登った。 久しぶりの新作がやっと文庫化した。勇躍して紐解くと、その新しいテーマ、その瑞々しさ、隅々まで絞り込んだ表現、それなのに変わらないスタンスに驚愕した。誤解を恐れず言えば、女流作家には描けない、ぶざまにも美しい「男の矜持」が、全篇にわたって描かれていた。 建築を設計し建てることは、小説を書くことに似ている。青瀬の〈Y邸〉は、横山秀夫にとっては、辿り着いた最高傑作に似ているのだろう。かつて横山秀夫は、新聞記者時代に培ったサツ回りの経験を膨らませて10数年を突っ走った。今回それを総て捨てている。捨ててどうしたかというと、おそらく子供時代から培ってきた「感性」を、この作品に注ぎ込んだ。 じぶんの原点は何かを問い直し、 それに沿って一から創り上げた。 まるで、青瀬が〈あなた自身が住みたい家を建ててください〉という言葉に救われたように、 まるで、岡嶋が〈足りないものを埋めること、埋めても埋めても足りないものを、ただひたすら埋めること〉という言葉で救われたように おそらく横山秀夫が描きたかったものは 「巧い、暗い、恐い、そして美しい」ナニカなんだったのだと思う。 上質のミステリとして巧く 緊密で硬質な文体は暗く 時折見せる心理描写は恐く そしてすべてが美しい ずっと積読状態だった「日本美の再発見」(ブルーノ・タウト)は、今年は紐解こうと決心した。 kinya3898さんのレビューで文庫化を知った。

    82
    投稿日: 2022.01.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    たぶん初めての横山秀夫作品。 ミステリーだけど、結局悪い人はいなかった。それぞれがよかれと思って行動した結果、謎ができてしまった。美しい謎ってそういうことか。

    10
    投稿日: 2022.01.04
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    ○前半のドキドキ弱め ○思い入れの強い建築物、とはいえ、なぜそんなに居住者にこだわるのか、感情移入し辛かった ○最後はまとめてきたが、過去の横山先生作品と比べるとスケール感など劣ってた印象

    1
    投稿日: 2022.01.03
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    よくできたお話 どうやってこういう小説を書くことができるのか感心する。 参考文献の数が物語っている。

    0
    投稿日: 2021.12.30
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    北からの光線が射し込む信濃追分のY邸。建築士・青瀬の最高傑作である。引き渡し後、消息を絶った施主・吉野はどこへ消えたのか。横山秀夫作品史上、最も美しい謎。 傑作「64」以来の横山作品。ちょっと大人のミステリーとハードボイルドを意識しすぎた感があって、期待したテイストとは異なった。

    1
    投稿日: 2021.12.26
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    横山秀夫は『64』がよかったので、今回も期待して読んだ。建築士青野稔の最高傑作Y邸に住むはずの一家が姿を消してしまう。その謎が動き出すまで冗長な気がしたが、まるでそこにいるかのように人の表情や心情をきめ細かに描いている。特に病室での岡野が思いを吐露するシーンに心打たれた。ノースライトというタイトル通り、暖かな光が差し込むような結末でした。

    8
    投稿日: 2021.12.25
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    北からの光線が射しこむ信濃追分のY邸。建築士・青瀬稔の最高傑作である。通じぬ電話に不審を抱き、この邸宅を訪れた青瀬は衝撃を受けた。引き渡し以降、ただの一度も住まれた形跡がないのだ。消息を絶った施主吉野の痕跡を追ううちに、日本を愛したドイツ人建築家ブルーノ・タウトの存在が浮かび上がってくる。ぶつかりあう魂。ふたつの悲劇。過去からの呼び声。横山秀夫作品史上、最も美しい謎。

    0
    投稿日: 2021.12.20
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    文庫化を今か今かと待っていた一冊が年末に登場。正月休みに読むつもりで仕事帰りに購入。数ページを車中で読み出したら止まらず、500ページ超えの大部を一気読み。 上質な大人のミステリーというより、僕は〈気障〉を抜き、〈ほろ苦さ〉をまぶしたハードボイルド小説として読んだ。 ◉さわり… 施主の吉野より自邸設計の依頼を受けた主人公 建築家の青瀬。与えられたテーマは『あなた自身が住みたいと思う家を建ててください』という、たった一点。かつてない好条件に青瀬はかねてより頭にあった、北の方角から柔らかな光が差し込む〈ノースライト〉の家を設計する。無事引き渡しをすませ、青瀬の手を離れる。 しばらくして、施主家族はそこに住んだ形跡もなく、姿をくらます。その不可解な失踪を確認すべく吉野邸に乗り込む。そこに残されたのはノースライトの暖かい光の下にたたずむブルーノ・タウト作と思われる椅子一脚。失踪した施主は?家族は?青瀬は打合せ時に見せた吉野夫婦や子どもたちの様子を思い出しながら残された椅子に微かなメッセージを嗅ぎ取り、足取りを追う…。 ◉短評… 本書は建築家がやむを得ずにわか探偵となり、失踪家族を探すといった、そんな柔なストーリーではない。青瀬の離婚した妻・娘との関係、生まれ育った環境、落ちぶれていた青瀬に手を差し伸べてくれた設計会社社長 岡嶋への感謝をしつつも割り切れない思い…等の濃厚な人間ドラマの要素が加わり、佳境に近づくにつれ『あれが伏線だったのね…』と唸らせるストーリー展開となっている。 まぁ、そんなことは手練の著者にとってはお手のもの。そこに、もうひとつの軸〈ある公共施設の大きなコンペ案件〉が加わる。ストーリーは俄然白熱を帯びコンペ作品を生み出していく様子があたかも現場実況よろしく詳述される。業界は違えど競合プレゼンが目前に迫る際の特有の高揚感を肌身で知る者としてその怒涛のクライマックスは爽快感と同時に失踪の謎が明かされ、ふぅ〜と安堵する。 最後にもうひとつの魅力は、建築設計業界に籍を置いていたかのような著者の碩学ぶりとその描写力。文章は一次元。にもかかわらず、三次元の建築意匠を筆一本で描き、読者には眼前にその意匠が明確に浮かび上がる。凄絶な筆力。それだけでも一読の価値あり。

    11
    投稿日: 2021.12.17
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    久しぶりの本に、久しぶりの横山秀夫さん。久しぶりすぎて頭があまりついていけてないのか、前半部分が暗く重めで何度か中断しかけたけど、結局ほぼ一気読み。追い上げの爽快感はやっぱいいなぁ。 久しぶりに、読書した感と涙が出た。

    2
    投稿日: 2021.12.13
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    久々に読んだ横山秀夫作品でしたが、圧巻の息が詰まるような描写力が、警察や新聞社の利権や縄張り争い、プライドのぶつかり合いではなく、また違った人間ドラマに昇華されていることに新鮮さを感じました。 今回の作品の主人公は建築士の青瀬。妻との離婚、友人であり雇い主でもある岡嶋への割り切れない思い、バブル崩壊後の自分の仕事への不満など、様々な鬱屈した感情を抱えつつ、自分が建てた家に住むことなく姿を消した家族の足取りを探します。 単なる失踪人探しのミステリかと思ったら、その謎が主人公である青瀬の人間ドラマや心理と濃密にまじりあっていく描写が見事! 本来なら結び付かない二つのストーリーの軸が、青瀬の人生の惑いや鬱屈で共鳴し、交点が表れていく。 やや力業ではあるものの、それを可能にするのが横山秀夫さんの筆力であり、ストーリーに宿った熱であり力なのだと思います。 物語全体のトーンは、どこかほろ苦いドラマの雰囲気が漂っています。しかしタイトルに『ノースライト』とあるように、北天から差し込む温かい光が徐々に視界いっぱいに広がっていく。温かく、熱く、美しい光が作品に満ち溢れていく。その感覚の素晴らしさに改めて横山作品の力強さを感じます。 これまでの横山作品は長編でも短編でも、横山作品独特の威圧感というものが前面に押し出されていた気がします。その威圧感を生み出していた描写力が、ほろ苦い人間ドラマとして、そして温かくも美しい光として現れた作品だと思います。 2020年版このミステリーがすごい! 2位 2020年本屋大賞4位

    4
    投稿日: 2021.12.12
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    横山さん、常にも増して筆がノッているなぁ!という印象そのままに、疾走する読書体験をさせて頂きました。とにかく本人がいちばん楽しんで書かれたのではないかと(大事です!)。 建築という、初めて取り組まれる分野を選んだことで、物語全体が若さや青臭さみたいなものを纏っている。しかし、さすが手練れた作家、未熟な部分は微塵もなく、丁寧に繋がれた伏線に読み応えを感じました。 ブルーノ・タウトを知っている方は、もっと面白く読めそう。登場人物の名前に絡めたヒントがあります。 『ノースライト』という美しいタイトルに相応しい作品でした。

    1
    投稿日: 2021.12.12
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    今までと違う作品に新たな横山秀夫を見た。 全体に流れる印象は静かで、少しだけ暗い ただ…やはり横山作品 主人公の心の動きが細かく描写され、まるで自分が真相を探る感覚。 先へ先へと繰る手も止まらない(´ー`) わかった様でわからない… 謎を残しながらラストまで惹きつけるストーリーは流石の横山秀夫!としか言いようがないm(_ _)m ラスト数ページはまさに一気読み まるでノースライトに包まれたような感覚な読後感でありました(T ^ T) ブルーノ・タウト作品を観ながら読了(`_´)ゞ

    11
    投稿日: 2021.12.06
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    横山秀夫『ノースライト』新潮文庫。 建築士を主人公にしたこれまでの横山秀夫作品とは趣の違うミステリー小説。全く想像の及ばない建築士の世界が当たり前のように描かれ、まるで人生を棒に振ったようなミステリーの結末に呆然とするばかりだった。確かに『横山作品史上、最も美しい謎。』なのかも知れないが、終盤の謎解きがその場をただ一周回った挙げ句のお伽噺の世界にしか思えなかった。 2019年の週刊文春ミステリーベスト10の第1位にかなりの期待をしたのだが…… 信濃追分に佇む木造住宅のY邸。建築士の青瀬稔が敢えて北側からの採光『ノースライト』を取り入れて設計した彼の最高傑作であった。しかし、引渡し以降、一度も施主の吉野からの連絡は無く、不審に思った青瀬がその家を訪ねると一度も使われた形跡は無く、ドイツ人建築家ブルーノ・タウトによるものと思われる稀少価値の高い椅子だけが残されていた。 本体価格850円 ★★★

    14
    投稿日: 2021.11.29