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明治十四年の政変(インターナショナル新書)
明治十四年の政変(インターナショナル新書)
久保田哲/集英社
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総合評価

6件)
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    開拓使官有物払下げ事件から発した大隈重信の追放と明治政府の変革。数年の話ではあるが、激動の時代のそれぞれの人物の動きが詳細に記された約250頁。払い下げ自体の問題は大きくなかったはずだが、薩長と宮中、財政の方針、国会や憲法制定の是非や時期などの課題、新聞など世間の盛り上がりにより、せざるを得ない形で物事が動く。なかなか充実。

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    投稿日: 2025.07.25
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    憲法制定や国会開設といった近代日本の形を決定付けた重要な出来事であるにも関わらず、ミステリーが多くて詳しく取り上げられることが少なく、受験で覚えてオワリという印象が大きい明治十四年の政変。本書はその謎を解明しようとする意欲作で大変面白い。大隈の「沈黙」が謎を深めている印象もあるが、西郷の二の舞は避けたかったということか。 また、井上毅と福澤諭吉が伊藤や大隈の「関係者」という程度までは知っていたが、両者の対立という背後構図までは気が付かかず、言われてみれば「ナルホド」でありとても参考になった。福澤は井上の存在を知らなかったというのもイガイで、当時は単なる官僚でしかなくそれほど有名でもなかったということか。あとは大隈の失脚だけでなく、黒田の冷遇をどう考えるのかという視点も興味深い。

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    投稿日: 2024.12.16
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    明治十四年の政変。 1881年に起きた、大隈重信を追放する一連の政変である。財務卿として、実力を保有した大隈が追放された政変にも関わらず、高校の日本史の教科書にはごく僅かな記載にとどまっている。 この政変は実に奇妙で、難しい。 明治六年の政変のような熱さがないからなのか。 こういった不可思議な歴史の事象に対して、平易な文で記述された本書は、歴史学を学ぶ、学ぼうとしている人に読んでもらいたい。

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    投稿日: 2021.08.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    大隈重信が政府を去り,伊藤博文が地位を盤石なものとしたうえで初代総理に就任し,憲法の公布・議会の開設に中心的役割を果たすようになった過程を詳細に考察する. 大隈はスケープゴートにされて政府を追われるのだが,結局その後に2度も総理大臣を務めることになったのは,また別の話. なお,わが国の私学蔑視もこの政変の余波という.

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    投稿日: 2021.07.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    明治10年代の状況は刻々と変化する 数多くの機構改革を繰り返し、多くの利益、不利益に一喜一憂する国民により、湧き上がる不穏な空気が醸成されている 陰謀論が好きな作家であれば幾通りの物語をドラマチックに紡ぎだせる 大久保・木戸亡き時代、政治決断力に欠ける政府は、民衆の憑きあげる不満に耐えかねる累卵の如き危うい状態 (1)西南戦争軍費調達に不換紙幣を発給してインフレ禍に財政問題が発生する、大隈は積極財政で借財まみれの処、外債を募り切り抜けようとするが、明治天皇すらその手腕や発想に不安を覚えた(神州が外国に買われてしまうぞ)宮廷派は外債を拒む(歴史は松方デフレを用意しています) (2)有司専制に民衆や薩長以外の権力者がこぶしを突き上げる、だが自由民権運動とは現代人が幻想に思う貴いものではなく、権力争いに過ぎない(インフレで多くの豪農が選挙権を得る) (3)開拓使払下げ事件は、薩摩グループの長である黒田が側近たちに破格値で税金投下されたものを手に入れる中で権勢を維持しようとした(が、リークされ御和算) (4)自由民権運動は議会開設の問題から、憲法制定問題へと別のステージに変質したのだが、一時的に残念な事に政変の要素にもなった、民の声を誘導する大立者の福沢諭吉も権勢に接近したが、政変のゴタゴタに巻き込まれフェードアウトするが「べ、別に政治なんて興味ないもんね」とツンデレでプライドを守る (5)実力者の立場はそれぞれ重点とする問題が異なる、また東京不在という物理的な条件を加える 岩倉は京都で療養、大隈は明治天皇の巡幸に随行、黒田は北海道で天皇を迎える・・・厄介事はそんな時に起きる 明治の知識者の実力はハンパない、神羅万象、古事古典あらゆる書物が脳内にある井上毅 彼がこの危うきバランスを壊したのかもしれない 明治11年暗殺された大久保卿に代わり次世代のリーダー大隈重信、伊藤博文、井上馨、黒田清隆達には議会開設、憲法制定、貨幣制度など近代国のデザインという難問に挑むが、絶対エース不在でバランス政治に陥り、物事が決まらない(思惑も絡み合うし不協和音も煩い) 明治十四年の政変は大隈の言葉少ない行動に不信感をいだいた閣僚の毒がもたらした 開拓使払下げを マスコミにリークしたのは誰か? 憲法などの意見書を密奏としたのはナゼ? 黒田が政権内に残るも政治力下降した 大隈は放逐されたものの、改進党という基盤を得た 西郷下野の如く明治政府はテロを警戒し、兵糧絶ちとして大隈・福沢の学校への銀行資金提供を禁じ、徴兵制免除を廃止して閉校の危機に落とす 政府は西南戦争の再発を恐れていたのだ(´・ω・`)

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    投稿日: 2021.06.01
  • 暗闘する井上毅のフィクサーぶり

    誠に奇妙な政変である。 当時の新聞も、勝者の思いが挫かれ、敗者の建言が通ったこの政変を不思議がった。 明治六年の政変のような閣議での激しいやり取りがあったわけではなく、維新三傑の突然の退場に伴う主導権争いが起きたわけでもない。 政府から追放された大隈は、天皇の信任も厚く、伊藤や岩倉らから仕事ぶりを高く評価されていた人物。 それゆえ下野した西郷と同じく、薩長藩閥を批判する勢力を糾合するのではと大いに恐れられたが、当の本人は沈黙を保つ。 真相を語る当事者としては、大隈とともに敗者の側に立つ福沢諭吉の証言が知られている。 本書は、その福沢諭吉でさえ知り得なかった、伊藤の背後で暗闘する井上毅のフィクサーぶりを描いている。 それが真相の解明につながっているのかは釈然としない。 というのも、伊藤にとって大隈を追放することがどれだけ本心に叶ったものなのか甚だ疑問で、政変後に心身のバランスを崩した一端も、「最も肝要な」時に有能な人物が閣外に去ることの悔恨にあったのではないかという気がしてならない。 議会開設は濃淡こそあれ概ね同意しているため、これが路線対立を生んだわけではなく、争点は財政政策を巡る対立にあったのだが、遺した結果は重大だ。 著者によれば、伊藤博文の「巧みでしなやかな」手腕で、藩閥政治は強化され、財政の主導権を握った松方正義は、財政健全化を実現し、金融制度の近代化を成し遂げたとする。 しかし実態は、「松方デフレ」と呼ばれる深刻なデフレ不況を引き起こし、社会的混乱を招いた。 これに対して、大隈重信が主導した財政は、短期的に通貨価値の安定を強行するのではなく、長期的な視点から、経済発展を促進するために必要な紙幣を供給し、国際収支を均衡せしめ、政府紙幣の価値を安定化させようというもので、いまでは松方財政よりも高く評価されている。

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    投稿日: 2021.04.20