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ツタよ、ツタ
ツタよ、ツタ
大島真寿美/小学館
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総合評価

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  • 真実を元に書かれたノンフィクション風フィクションでした

     冒頭から、どこか普通の小説ではなく、詳細な調査に基づいたルポルタージュ風に書かれています。それが次第に物語調になるのですが、そこが作品として功を奏していた気がします。勿論、本の最後に掲載された「本書のプロフィール」欄には「本作は、実在の人物をモチーフにしたフィクションです。」と改めて断り書きがありました。幻の作家本人の心情については作者の想像なのでしょうが、第三者的視線で語られているような書きぶりにより、その状況がよくわかった気がします。  物語は琉球王の東京転居から始まりました。その後のツタの数奇な運命は、弁舌尽くしがたきと、言ったところです。と同時に、とても興味深いものでありました。そしてペンネームを使っての投稿が、別の自分になる方法だったというのも、何となくわかります。また、沖縄出身と言うだけで差別を受けていたというのも驚きでした。そして、その書いた小説に対する批判。よくあることかもしれませんが、詳細な内容も知らずに、ただ雰囲気のみで中傷する輩は、今でもいますよね。全体を通して、どこか救いようのない話に見えますけど、親友キヨ子との合奏の場面は、ホッとするシーンでした。双方がピアノもヴァイオリンが弾けて、ましてや、大人になってから、ずっと触っていないかったにも関わらず合奏できると言うことは、かなり基礎がしっかりしていたのでしょう。  それから、トートーメーに関してですが、いくら沖縄の話を知らないと言っても、子供達や孫達までそのお守りを拒否する心持ちというのは、ちょっと理解しがたい気がしました。  結局、彼女は最後の最後にツタ自身に戻れたのでしょうか?それとも、ずっと千紗子を演じていたのでしょうか?「ツタよ、ツタ」というタイトルは、作者大島満寿実の呼びかけなのでしょうが、私には、本当の自分を生きることができなかった、ツタの自身への呼びかけのような気もするのです。

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    投稿日: 2023.05.08
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    ツタさんと同じように、この本はちっとも「おとなしくない」小説だった。ページをめくるたびに、ぶわっと風が吹いたり、一面に光が、そして闇が広がったりした。 小さな人間の生きざまが、雑に切り捨てられたり、良いところだけ大げさに取り立てられたりすることなく、熱をはらんだ獣のように飛びこんでくる。

    3
    投稿日: 2021.01.20
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    せっかく良い素材なのに、あらすじのような浅い小説にしてしまい、本当にもったいない。沖縄について作者の思索が圧倒的に欠けているので、ツタが描いた沖縄出身者の物語やその独特の視点とやらがまったくこちらに伝わってこない。

    0
    投稿日: 2020.12.22
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    直木賞受賞で一躍話題になったが92年デビューのベテラン作家さんだと知った。少し前に「ピエタ」がヒットしたのが私の記憶に新しく、それでポプラ社のイメージがあったので直木賞作や今作のような時代ものを書いていると知りちょっと意外。 ほとんど「ツタは」といって主人公の行動、考えを神の視点で描く地の文で、視点が定まっている分ぐいぐいと読み進められた。ツタの激動の半生そのもののような勢い。 沖縄からやって来た女性であるということは、もちろんツタの芯であり事態が動く要因なんだけど、嵐のような内面、魂を抱えてさまようツタは"沖縄の人"である前に"ツタ"なんだなと思う。仕事に悩み、結婚に悩み、愛におぼれ、書くことに心の行き場を見出し・・・かと思えばそれを捨てて家族を慈しみ。一人の人間が、選ぶ間もなく懸命に生きた道筋。"沖縄"の部分と"人間"の部分がそれぞれによく見える。 キヨ子の存在が最後までとても良くて、こんな友を持ちたいものだと思う。 印象的だったのはやはりツタがなぜ文を書くに至ったのか、につながるところ。 「そこにある虚構に触れることが、ツタには必要らしかった。――娯楽というにはあまりに切実な、ツタの活動館通いなのだった。」 「ささくれた気持ちを抱えて暮らすのはもうたくさんだった。ちゃんと考えたい。」

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    投稿日: 2020.08.23
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    自分を見つめること。今の自分は本当の自分?これは私か私でないものか…… 短慮でも熟慮でも決めたことは決めたこと。瞬間の反発か流された結果か、そこにいるのはそれを選んできた自分。

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    投稿日: 2020.01.22